万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

‘ヤフコメ’の北方領土断念論の不可思議

2023年12月19日 12時17分43秒 | 国際政治
 本日のウェブ・ニュースにおいて、奇妙な現象を発見いたしました。それは、Yahooニュース上で起きた出来事です。それでは、どのような現象であるのかと申しますと、「対日領土論争「終わった」 ロシア外相、日本の反発必至」というタイトルの記事と、同記事に投稿された‘ヤフコメ’と称されているコメントとの間において、奇妙な不一致が生じているのです。

ロシアのラブロフ外相の発言の趣旨は、‘北方領土問題は、第二次世界大戦の戦勝国であるロシア(ソ連邦)への、敗戦国日本国による割譲という形で解決しており、日本国との領土交渉は打ち切る’というもののようです。ロシア側が一方的に終了宣言をするのですから、日本国政府並びに日本国民は必ずやロシアに対して強く反発するであろう、というのが、同記事のタイトルから読み取れる記配信者の憶測なのです。ところが、‘ヤフコメ’において最も多くの‘共感した’を集めているのが、北方領土を断念すべきと言うロシア側の主張に沿った意見なのです。

同コメントは、12月19日の午前7時46分の時点で専門家のコメントを押しのけて、2.1万人の共感を得たのですから圧倒的な数です。この数が正しければ、日本国民の大多数がラブロフ首相の意見に賛同していることとなります。言い換えますと、同記事を配信した側が推測した反応と実際の日本国民のそれとは真逆なのです。北方領土については、日本国側に歴史的並びに法的根拠がありますので、日本国民の多数が同領土の放棄に賛意を示しているとは俄には信じがたく、まことに不可思議な現象と言えましょう。なお、日本国政府はウクライナ紛争をロシアによる侵略と認定していますので、北方領土に対する‘侵略’の承認は自己矛盾であると共に、将来的にはさらなる軍事力によるロシアの領土拡大を是認することにもなります。

もっとも、最大数の‘共感’を得たコメントの論法は、いささかトリッキーでもあります。同論理構成は、(1)北方領土問題はロシア側が経済支援を得るための外交カードである⇒(2)ロシアによる終了宣言は日本国によるこれまでの支援の無駄を意味する⇒(3)日本国は北方領土を断念すると同時に経済支援も打ち切る決断をすべき、というものです。もっともらしくも思えるのですが、よく考えてもみますと、これは悪しき三段論法の典型であるかも知れません。何故ならば、経済支援の無駄遣いと領土放棄という結論の間には、論理飛躍があるからです。否、論理的断絶と言ってもよいかも知れません。経済支援の失敗を出発点とするならば、‘日本国は、‘歴史的・法的根拠に基づいて領土の返還要求は継続する一方で、経済支援は無駄であったことが判明したのだから、経済支援は止めるべき’という主張の方が、余程、論理一貫性があります。

 加えて、2万人を超える共感の数が正確であるのかどうかは不明です。何故ならば、試しに「北方領土を断念すべき」というコメントに対して、否定的な評価の‘うーん’をクリックしてみますと、「正常に処理できませんでした。暫くしてからお試しください」とするメッセージが表示されるからです。この表示からしますと、否定的な評価に対して運営主体であるYahoo側あるいは外部の何者かが操作している可能性もあります。日本人は多数迎合型であり、同調圧力に弱いとされておりますので、多数派の偽装もあり得ることなのです。否定評価がカウントされずに消されているか、あるいは、‘共感’の数に繰り入れられているのかもしれません。デジタル社会では、数字の操作は簡単なのですから。

 何れにしましても、ラブロフ外相の今般の発言は、北方領土を戦利品とするプーチン政権の従来の主張と大差はなく、目新しいわけでもありません。仮に、今という時期に同発言がニュースとしての価値があるとすれば、同コメントに見られるように対ロ経済支援の問題と絡めたかったのかも知れません。そして、同支援が安倍政権の下で推進されたことを思い起こしますと、昨今の自民党安部派に対する逆風とも関連しているとも推測されます。対ウクライナ支援並びに対イスラエル支援、あるいは、第三次世界大戦を想定した陣営がためのために、日本国側の対ロ感情を悪化させる目的で同発言をニュースとして取り上げたのかもしれません。

 アメリカを中心とした西側陣営が日ロ関係の悪化を狙って同情報を配信したとすれば、情報操作の疑いの濃い‘ヤフコメ’の北方領土放棄論は、ロシア陣営によるその‘カウンター’と言うことにもなりましょう。Yahoo内部に中国の影響力が及んでいるとしますと、ロシアを擁護しつつ日本国民の批判の矛先を安倍政権の対ロ政策、つまり、自国の政府に向わせるための、中国による対米・対日工作活動かも知れません。そして、ラブロフ首相の発言もヤフコメの北方領土放棄論も、共に戦争による結果の固定化を目論んでいるとすれば、一連の不可解な現象の背後には、イスラエル・ハマス戦争も絡んだイスラエル並びに全世界を上部からコントロールしようとするユダヤ勢力が潜んでいるとする見方もできましょう。

今般の出来事が、ニュースの配信のみならず、それに対するコメント、あるいは、世論までもが操作されている現実を象徴しているとしますと、これらの情報をそのまま信じるのではなく、発信する側や操作する側の意図を探知することこそ重要となります。人類の未来を暴力に委ねてはならず、国際社会における法の支配の確立こそが、パンドラが開けた箱に残された希望なのですから。

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