昨日、太陽光発電を中心に多角的な事業を展開してきたトライベイの三浦清志氏が業務上横領罪の容疑で逮捕されたとの報道がありました。同氏の逮捕だけでは然程の関心を呼ばなかったのでしょうが、同氏が国際政治学者として頻繁にマスメディアに登場していた三浦瑠麗氏の配偶者であったことから、様々な憶測が飛び交うことともなりました。そして、この一件ほど、太陽光発電の問題の深刻さを示す事件はないように思えます。本日の記事では、僅かな情報を手がかりにして、同事件が示唆する再生エネ固定価格買取制度の問題について考えてみたいと思います。
地球温暖化問題、並びに、それに伴う再生エネルギー導入拡大政策につきましては、当初から政治的利権との繋がりが噂されてきました。日本国内でも、東日本大震災を機に民主党の管政権によって導入された固定価格買取制度(FIT)の裏では、ソフトバンクの孫正義氏の積極的な働きかけがあったそうです。‘地球を救おう’という大義名分が掲げられ、国民は、電力料金の値上がりを受け入れざるを得なくなったのです。しかも、再生エネの普及及び拡大が優先されたため、発足当初にはドイツの2倍の買い取り価格が設定されています。発電施設さえ建設できれば、安定した利益が保障されるのですから、事業者にとりましては、これほど有利な条件は他になかったことでしょう。
かくして、日本国内各地に大規模なメガソーラを始め、中小の太陽光発電施設が雨後の竹の子のように建設されたことは、いかに大勢の起業家や事業者が太陽光発電市場に参入したのかを物語っています。この流れにあって、再生エネルギー市場を有望な投資先とみなす投資家や金融機関も目白押しであったことでしょう。その一方で、誕生したばかりの事業分野ですので、全ての参入希望者がノウハウを備えていたわけではなかったはずです。建設用地の取得、資金の調達、住民の合意獲得、地方自治体との折衝、管轄官庁への事業許認可の申請、FITの活用方法などなど、事業を始めるには専門的な知識や煩雑な手続きを要することでしょう。ここに、太陽光発電事業をビジネスチャンスとみた人々を顧客とする事業コンサルタントや投資相談の需要が生まれたものと推測されます。トライベイは、自ら事業を手がけると共に、コンサルタント業や投資管理業などにも手を広げていました。
一種のバブル状態が発生したとも考えられるのですが、今般の事件は、太陽光事業というものが、事業受託事業者(トライベイ)に10億円を支払ってもなおも利益が期待できる事業である実態を明らかにしています。現在、トライベイは、1から2割程度の自社開発を含め、凡そ200件の固定価格買取制度の認定を受けた低圧事業用太陽光発電所を所有しています。2023年まで1000件に増やす計画なそうですので、今般の一件も、そのうちの一つであったのでしょう。
しかしながら、太陽光発電の普及に際して生じるコストは、最終的には国民の電力料金に上乗せされます。しかも、自然破壊や災害の原因ともなりかねないのですから、太陽光発電事業に対する国民の眼差しは必ずしも暖かいわけではありません。しかも、中には、三浦夫妻のようにコンサルタントや投資管理等で巨額の利益を得てセレブ生活を満喫している人々もおります。否、公的制度を利用しつつ、国民の負担など素知らぬ顔での豪遊ぶりこそ、同夫妻に対して激しいバッシングが引き起きた主たる原因なのでしょう(もっとも、三浦夫妻につきましては、その他の無神経な発言や人格面、さらには元統一教会との関係からの批判も強いのですが・・・)。国民の多くは、相次ぐ電力料金の値上がりで生活水準を落とさざるを得ない状況にあります(なお、たとえ不起訴となっても、太陽光発電事業から巨額の利得得た三浦夫妻が豪遊していた事実は消えない・・・)。
そして、ここに一つの重要な疑問が生じます。それは、何故、トライベイに10億円という高額が支払われたのか、という疑問です。東京地検特捜部から家宅捜査を受けた際の最初の容疑は、兵庫県福崎町における太陽光発電所の建設に関して、住民の反対により建設見込みがないにもかかわらず10億円を出資させ、その出資金をだまし取ったとする詐欺罪でした。その後、同氏の容疑は、同発電所の建設を目的として設立された合同会社に振り込まれた10億円の資金の内、残りの4億2千万円を横領したとする業務上横領罪に変わっています。容疑変更の時点で、同4億2千万円は債務返済に充てられたとも報じられていましたが、直近の報道では、三浦清志氏は、‘業務委託の報酬’として支払われたもので、同社の裁量により他のプロジェクトに使ったので問題はない‘とする旨の供述を、無罪を訴えているそうです。
それでは、この4億2千万円、一体、どこに消えたのでしょうか。債務の返済(みずほ銀行が14億円を融資していたとする報道も・・・)、他のプロジェクトでの使用(本人の供述)、そして、三浦氏の私的流用(客観的な事実としてのセレブ生活)などが考えられますが、太陽光発電所の建設には、地方自治体や経済産業省や国土交通省などの管轄官庁の許認可を要する点にも注意を要しましょう。三浦瑠麗氏は、自民党との繋がりもあり、元首相をはじめとして政界にも人脈を広げているとされます。東京地検特捜部が動いたとなりますと、同件は政治家案件であるとする見方もあります。つまり、管轄官庁に影響力を持つ政治家への口利き料、あるいは、斡旋料が支払われている可能性はゼロではないように思えるのです。そしてそれは、トライベイ一社のみではないのでしょう。
地球温暖化対策の美名の元で、政治家たちは、海外の金融・経済勢力(世界権力)の指南の元でしっかりと自らの懐にも利益が転がり込む仕組みを造っていたのかもしれません。マスコミを通しての世論誘導には、三浦瑠麗氏がその役割を担うと共に、同夫妻は、トライベイ、政治家、官僚、事業者、内外の投資家や金融機関、並びに一大太陽光パネル輸出国である中国の関連事業者をマッチングする要の存在であったとも推測されます。そして、三浦清志氏逮捕は、太陽光発電市場において密かに構築されてきた政治利権のからくりの一端が図らずも露呈した瞬間であったのかもしれないのです。太陽光発電事業には、反社会勢力も入り込んでいるともされます。東京地検特捜部に対する政治介入が懸念されるところですが(検察の独立性は何としても護られるべき・・・)、負担を強いられている国民のために、太陽光発電をめぐる闇を、是非、明らかにしていただきたいと思うのです。