万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカに見る政府による健康危機管理の危険性

2023年05月31日 11時57分18秒 | 統治制度論
 日本版CDCとされる「国立健康危機管理研究機構」については、科学技術分野における研究・開発機関ではなく、政府の政策を忠実に実行する政治機関化するリスクがあります。しかも、その名称が示すように、新型コロナウイルス感染症への対応が不十分であったことを踏まえ、迅速な公衆衛生危機への対応を実現することを目的としながら、政治家である厚生相が6年という中期目標を作成するという矛盾もあります。緊急時における厚労相の命令権に関する規定は見られるものの、予めパンデミックを起こすウイルスや細菌を知ることはできないはずですので、何故、中期目標を設定する必要があるのか、自ずと疑問も沸いてくるのです。突然に地球上に出現し、瞬く間に全世界にパンデミックを起こすような未知の病原体に対して、予め即応できるような予防や治療の研究開発ができるとは思えないからです。

 そこで推測されるのは、同機構は、政府が説明するように国民の健康危機管理を目的としているのではなく、隠された目的があるのではないか、ということです。おそらくそれは、日本国政府が掲げているムーンショット計画、あるいは、世界経済フォーラムが進めている「グレートリセット」なのかもしれません。‘長期目標’もしくは‘最終目標’が存在しているからこそ、中間地点としての‘中期目標’が設けられていると推測されるのです。

 この疑いは、日本版CDCの設立が、アメリカのバイデン民主党政権からの要請であった点において強まります。新型コロナウイルス(Covid19)については、武漢ウイルス研究所から流出したとする説が有力であり、同研究所には、オバマ政権下にあってアメリカから資金が提供されていました。資金提供の経路は、アンソニー・ファウチ氏が所長を勤めていた国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が感染症研究を専門とする非営利団体「エコヘルス・アライアンス」に業務委託したところ、同団体が、武漢ウイルス研究所と共同でコウモリを宿主とするコロナウイルスの機能獲得実験を実施していたというものです。委託事業の研究成果についてはファウチ所長への報告は義務づけられていたでしょうから、同氏は武漢での研究内容を知っていたはずなのです(同氏は、2021年5月に開かれた公聴会で資金提供の事実を否定したため、偽証罪を問う声もある・・・)。

 就任早々、バイデン大統領は、巨額のワクチン利権を有するビル・ゲイツ氏が主要出資者であり、世界権力との癒着が指摘されているWHOとの関係を改善しています(トランプ前大統領はWHOからの脱退を表明・・・)。また、同大統領は、ファウチ氏を「首席医療顧問」に任命し、コロナ対策の陣頭指揮をとらせています。バイデン政権下の米国にあっては、ワクチン接種が推進され、国際的なワクチン供給の枠組みであるCOVAXへの参加も表明されました。

 それでは、日本国の「国立健康危機管理研究機構」はどうでしょうか。同法案の第一条にあって「予防及び医療に係る国際協力に関し、調査、研究、分析及び技術の開発並びにこれらの業務に密接に関連する高度かつ専門的な医療の提供、人材の養成等を行う」と記されると共に、第23条には、業務の一つとして「予防及び医療に係る国際協力に関し、研究開発を行うこと。」を挙げています。これらの条文から、同機構も海外の研究機関との共同研究を実施できるものと解されます。

 また、厚労相は、同機構の中期目標の作成に際して諮問が義務づけられている「研究開発審議会」に「公衆衛生その他の分野の研究開発に関して高い識見を有する外国人」を任命できるとしています。審議会の委員長に就任できないことや委員総数の5分の1を超えてはならいとする制約が付されつつも、外国人が「国立健康危機管理研究機構」の目標設定に関わることができるのです(バイデン政権、否、世界権力の狙いはここにあるのかもしれない・・・)。

 加えて、同機構は、民間企業との連携をも視野に入れています。何故ならば、同法案の第24条では、同機構が‘成果活用事業者’に対して無償で支援する場合には、同社の株式あるいは新株予約権を取得・保有できるとされているからです。同条文は、日本国の出遅れが指摘されている研究成果の製品化やバイオ分野における起業促進を目的としているのでしょうが、上述したアメリカの「エコヘルス・アライアンス」のような団体への業務委託を介した中国等への技術流出、あるいは、特定の医療・医薬品メーカーとの癒着や利益誘導が生じるリスクともなりましょう。そしてテクノロジーの官民を問わないグローバルな拡散や人材交流は、世界権力に対して人類支配のための基盤を与えるかもしれないのです。

 コロナ禍にあっては、ロックダウンを実施した諸国も多く、また、ワクチン・パスポート構想の下でのワクチン接種も半ば強制的に進められました。今日でも、マイナンバーと保険証との一元化の真の目的は、政府による国民の身体・健康に関するデジタル管理なのではないとする指摘があります。本日、同法案は参議院にて可決成立しましたが、点と点が繋がって線となるとき、そこに現れるのは、国民本位とはほど遠い人類支配のシステムなのかもしれないと危惧するのです。

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