万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

エジプトの混乱―民主化なくして安定なし

2011年02月10日 15時48分46秒 | 中近東
無秩序には軍介入も=エジプト外相(時事通信) - goo ニュース
 しばしば、中東の安定のためには、非民主的なムバラク独裁体制の継続を支持する意見が聞かれます。民主化と安定は両立しない、と。が、本当に、そうなのでしょうか。

 もし、このままムバラク政権に何らの変化もなければ、国民の不満は解消されることなく、何度でも国政改革を求める大規模なデモが発生することでしょう。反体制派の人々は、ゼネストをも呼びかけているそうですので、エジプト経済の完全な麻痺も予測されます。しかも、中東の安定は、イスラエルのための安定、となりますと、エジプト国民の怒りの矛先はムバラク政権と一体化したイスラエルへと向かい、それこそ、長期的には、中東の安定を脅かすことになります。民主化による不安定化と、民主化しないことによる不安定化のリスクは同じてあり、民主化の否定は、必ずしも安定を約束しないのです。

 混乱が避けられないならば、民主化の道を選択した方が、エジプトの未来は開けます。今日、民主主義を享受している国の多くも、耐えがたい混乱を経験してきたのですから。新聞記事によりますと、発表されたムバラク政権の”懐柔策”というものは、公務員給与や退職軍人の年金アップなども含まれているそうで、国民向けとは思えません。野党側は、足並みの乱れを克服し、エジプト国民のための制度改革を迫るべきと思うのです。国民が納得する制度改革が行われて、はじめて、エジプトは安定するのではないでしょうか。

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