万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ひきこもり61万人を呼び戻そう

2019年07月07日 17時34分10秒 | 日本政治
兵庫県明石市では、中核都市としてはじめて「ひきこもり支援課」を設け、ひきこもりとなった人々をサポートするそうです。報道に依りますと、ひきこもり状態にある人の数は全国で凡そ61万人にも上るそうですが、この問題に対する公的支援、あるいは、対策が遅すぎたようにも思えるのです。

 日本国政府もマスメディアも、‘多文化共生主義’といった標語を掲げて異なる文化的背景を持つ人々の受け入れを奨励してきました。その主たる支援対象は外国人であり、実際に、今般の入国管理法の改正を機に地方自治体レベルでも様々な外国人支援策が試みられています。その一方で、足元を見ますと、日本国民の中には61万人もの数の人々が社会、あるいは、経済から疎外されており、自宅に閉じこもる生活を余儀なくされているのです。

 おそらく、ひきこもりとなった理由としては、一旦は会社等に就職したものの、組織優先の論理に馴染めなかったり、社内の人間関係を拗らせてストレスをため込み、精神的に破綻してしまったり、上司からのパワハラや同僚からの‘いじめ’にあってしまった、あるいは、仕事そのものに意義を見出せなかった…といったケースが多かったのではないかと思います。学校を舞台とする登校拒否と同様に、職場に出向くことに精神的に耐えられなくなったのでしょう。

 しかしながら、ひきこもりとなった人々も、組織や職場の環境が改善されれば、自らの能力を発揮し得る可能性を秘めています。否、ひきこもりとなりがちな内向的な人ほど想像力に富んでいたり、物事を深く考えて突き詰める性向がありますので、隘路にあってブレークスルーを見つけ出し、イノヴェーションを起こすかもしれないのです。すなわち、日本国は、貴重な人材を埋もれたままにしており、その社会・経済的な損失は計り知れないのではないかと思うのです。

 このように考えますと、日本国政府も地方自治体も、そして企業も、徒に外国から人材を呼び寄せることに夢中になるよりも、自らの国の中にこそ‘宝の山’が存在していることに気が付くべきなのではないでしょうか。ひきこもり61万人が再び社会や経済を舞台に活動を始める時、日本国もまた、真の意味で多様な人々を包摂し、一人一人が自らの能力を活かして活躍し得る国となるのではないかと思うのです。

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15 コメント

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Unknown (櫻井結奈(さくらい・ユ-ナ))
2019-07-07 21:07:18
この、ひきこもり無職者(いわゆるニ-ト)は
今、深刻な問題になっています。

 おっしゃるように、外国人労働者の受け入れの拡大政策よりも、
この引きこもり無職者の社会復帰対策のほうが、はるかに
重要課題のはずなんですね。

最近、一部自治体で、この引きこもり問題の対策を講じていることは
時宜にかなっていると思います。

★ただ、この問題は、各企業の人事担当者のかたにもご理解いただきたいです。
例えば、引きこもり無職青年が、一念発起して就職活動をしても、企業の面接者が、
厳しい辛辣な咎めるような質問を青年に浴びせたりすれば、その青年は、ますます就職活動が厭になり
さらに深く引きこもってしまうわけです。
 むろん、引きこもり無職者の、モティベ-ションにも、問題があります。

引きこもり無職者を、『社会の落伍者』ときめつけるのではなく、
国家、企業、、地域社会、当事者のすべてが、責任を共有するかたちで、
この引きこもり問題の解決に取り組むべきでしょう。

◎引きこもり 無職青年の 立ち直る 体験談に 思わず涙す
返信する
Unknown (mobilis-in-mobili)
2019-07-07 21:56:18
実態を知るだけにひきこもりの社会復帰は難しいと思います。
-------🌠🌠🌠-------
外出することに、いいしれない不安を感じたり、人と接することができない人間を(言うは容易いが)どうやって社会復帰させることができるのでしょう。
-------🌠🌠🌠-------
可能性がゼロとは言いませんが、大変な労力が必要となることでしょう。
-------🌠🌠🌠------- 
専門の社会再適応のための施設を作り、従来のひきこもり生活から切り離した環境でリハビリを行わなければならないと考えます。
返信する
Unknown (mobilis-in-mobili)
2019-07-07 23:16:11
【追記します】
復帰のきっかけは必要ですが、今後ITを活用した『リモートワーク』が一般的になり、オフィスを必要としない会社形態になれば、ひきこもりの人間も復帰できる可能性があるかもしれない、と考えます。
返信する
ベーシックインカムすれば簡単解決 (Unknown)
2019-07-08 03:56:41
 働かざるもの食うべからずなどと言っているから、引きこもった人は精神的に追い込まれる。日本は心理的に”母殺し”をしていないから問題が起こる。ベーシックインカムがあると親が「働け」と言ったら「わしの食い分は家計に入れているぞ」と反論できるので親も言わなくなる。
 文字通りのオタクなのだが、実はオタクの精神を持つものが新しい文明を生み出す。江戸時代の世界史にも残る偉大な学者、芸術家、企業家を見ると武士は誰もいない。
北斎は浮世絵と言う特殊な世界が生み出したのだが、波の中の富士などダヴィンチも敵わないだろう。芭蕉は伊賀の農民の子、藤堂の殿様が「お前は俳諧が上手だのう」と藩士にしたが、江戸に出て間もなく、武士をやめ、俳人一筋で生きたオタク。仁斎は富裕な商家の出で孔子の儒学を再現しようとしたオタク、本居宣長は医者だが日本の古典文学オタク。北斎を除くとわりと富裕な家の出だ。
 貧乏人もオタクになれる方法がベーシックインカム。最低限の生活保障があれば、虫の研究でも何でもやればよい。才能はどこに眠っているかわからない。さかなクンだってオタクだが両親はどんな人だろうか?
 良い高校を出て東京大学へ行くのよと母親が言えば言うほどノイローゼとなる。で、元次官が息子殺害などと言うトンデモ事件を引き起こす。
 東京大学はオタク精神が足りないからノーベル賞が、あまりとれないのだろう。もうこれ病葉かゾンビ葉だから取り除いて研究費を京都大学などに振り向けたらノーベル賞ジャンジャン状態かな?ALSの治療でまた京都大学の者がノーベル賞をもらえそうだな。
返信する
政府は抜本的な引きこもり対策に取り組むべき (本田伸樹)
2019-07-08 05:11:32
倉西先生
いつもご指導ありがとうございます。
引きこもりの人は、先生ご指摘のように、職場で精神的ショックや過重労働により出社拒否になりそれが向上したケース、また同じような原因で精神を病み治療に専念しているケース、もともと登校拒否で、それが成人しても継続しているケースなど千差万別ですが、私も彼らに社会との接点を構築し、労働者としても、また経済的にも疎外の頸木を解くべきだと思います。
ただ、もともと就業に挫折したわけですから、彼らに適した就業環境の整備と、職業訓練が欠かせないと思います。
十数年前の新聞に、引きこもりの人が職場復帰をしても、突然の欠勤を繰り返すことから、継続的な就労に穴をあけても良いような職場の提供が必要だと識者が主張していました。
もちろん事務所での就労が可能であれば、それに越したことはないのですが今はテレワークなどの新しい就業形態が出てきておりますので、彼らの職場復帰のハードルは徐々に下がりつつあると言ってもいいのではないでしょうか?
またテレワークでなくとも自宅就労、またグループワークなど可能な就業形態はさまざまに考えられます。
私も引きこもりの人たちには知的で感性に優れた人たちが多く含まれていると思いますので、彼らが生産活動から疎外されているのは日本の大きな損失だと考えております。
政府は妥当な予算を割いて、そのための対策に乗り出すべきだと思います。
対策の骨子は職業訓練と職場環境整備です。
また併せて所謂、氷河期世代の正規雇用の促進も必要となっており、こちらの方は政府の案が示されましたが当初予算が僅か5億円と聞いております。
引きこもり対策、氷河期対策ともに、政府は本腰を入れて抜本的対策に取り組み、批判の多い実質的移民に頼ることなく、人手不足解消の方策を探るべきです。
返信する
Unknown (櫻井結奈(さくらい・ユ-ナ))
2019-07-08 08:17:10
引きこもり無職者の、社会復帰については、政府・自治体・企業・各種団体が、
真剣に議論し、対策を構じるべきだと思います。

しかし、この解決は、基本的には、当事者本人の人生に対する意欲の問題になります。
私は、引きこもり無職者には、強い同情を感じますが、また同時に、いらだたしさをも
感じます。なぜ、『ふんぎり』をつけて社会復帰をしようとしないのか?!、、、
そう言いたくもなります。
おそらく、一般の人は、たいてい、そう思うでしょう。

【事例】
長いあいだ、引きこもり無職生活をしていた人が就職活動をするのは、たしかに、困難です。
引きこもり無職青年が、奮起して、就職活動をしても会社の面接者からは、きびしい辛辣な言葉が飛んでくるでしょう。
『ええっ!!君は、今、29歳になるのに、ずうっと無職だったのかね?、、、その歳になるまで親のスネをカジってたんだって?!
恥ずかしく無いのかい!俺が君の親だったら君をはり倒すわ!!、、、で、君は何ができるんだ?!、、営業はできるのか?経理のことは知ってるのか?!』
と、、まあ、こういう言葉があびせられます。
たしかに、普通の社会人が見たら、誰だって、この、面接者と同じ意見でしょう。

でも、引きこもり無職青年にとっては、それこそ『針の、筵(むしろ)』に座らされてる思いかも知れません。

しかし、引きこもり無職青年は、ここで挫けたらダメだと思います。
こんな、面接者の言葉は、大学卒業したばかりの就職活動者に、たいしても飛んでくるんですから、、、、

人生には、多くのハ-ドルがあります。
社会人としての正常運転ができるか、それとも、引きこもり無職者になつてしまうかは、
この最初のハ-ドルを飛び越えることができるかどうか、の違いでしょう。

★、、、、私などが、こんな人生論を言う立場ではないんですけどね、、、(笑)

◎人生に 躓くことが ありとても 明日みつめて 涙をぬぐえ
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櫻井結奈さま (kuranishi masako)
2019-07-08 09:22:34
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 引きこもりの人々が社会復帰するに際し、最もその障壁となるのが採用する企業側の対応であるとしますと、専門家等の意見や研究成果等を取り入れながら、政府が、引きこもりの人々の心理面にも配慮し、就業意欲を高めるための企業向けガイドラインを作成するのはどうでしょうか。受け入れ側の対応が変われば、社会復帰のハードルはかなり下がるのではないかと思うのです。

 あたたかき こころを添えて はげまさむ 明日のとびらを 開かむひとを
返信する
mobilis-in-mobileさま (kuranishi masako)
2019-07-08 09:35:30
 コメントをお寄せくださいまして、ありがとうごじました。

 引きこもり問題につきましては、最初から諦めるのではなく、61万人もの人々が苦境にあるのですから、重大な社会問題として対策を講じてゆくべきではないかと思います。おそらく、これらの人々は、ハローワークにも登録しておられないことでしょうから、失業率にも現れていない数字なのではないでしょうか。リモートワークやテレワークが解決策となるのであれば、政府が税制上の優遇措置や補助金を支給するなど、これらの率先して普及に努めるのも一案ではないかと思います。
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根性論では解決しないことを念頭におくべきです (mobile)
2019-07-08 09:38:57
世間では「ひきこもり」に対して「仕事もせずグダグダ過ごして」と思いがちですが、これは立派な精神疾患なのです。
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精神疾患の人間に対して「頑張れ」とか「根性を出せ」などと言うのは全くの逆効果でしかありません。人生訓を語るなどもってのほかです。さらなるプレッシャーを与えて治る可能性のある人間まで再起不能にしてしまいかねません。
-------🌠🌠🌠-------
本当に復帰を考えるなら、全寮制の復帰センターを設けることが必要ではないかと思います。
①親子間の共依存関係をある程度遮断する。
②同じ復帰の目的を持つ人たちとの共同生活を行う。
③それぞれが体験を語り共有できるよう支援する。
④インターンシップを通じて職場復帰の道を模索する。
等の支援が最適ではないかと思います。
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Unknownさま (kuranishi masako)
2019-07-08 09:43:39
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 何故、心理的に’母殺し’をしていないと、引きこもりが増えるのでしょうか…。また、ベーシックインカムにつきましては、経済システムそのものを破壊しかねないリスクがあると共に、かつて共産主義諸国が失敗したように、配給制により人々の勤労意欲が低下し、怠惰な生活を営む人々が激増するかもしれません。つまり、人類は、文明の危機に直面するかもしれないのです。なお、東京大学には天才型の人が少なくなく、また、かなり’おたく’傾向も強いと思うのですが…。
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