世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。
メキシコでは、政府と巨大犯罪組織化した麻薬密売グループとの間で麻薬戦争が闘われており、多くの一般市民も犠牲になっております。信じ難いことですが、その背景には、中国ルートの合成麻薬原料の供給があるというのです。
麻薬密売組織が一大勢力に肥大化した原因は、合成麻薬が大量に製造され、闇のルートで販売されたからです。合成麻薬はアメリカ等にも密輸されており、その被害はメキシコ国外にも及んでいます。国際的に張り巡らされた原料輸入・製造・販売ルートこそが、メキシコに巨大犯罪組織を蔓延らせたのです。この側面を考慮しますと、巨悪を退治する最も有効な方法は、このリンケージを分断し、合成麻薬の製造を不可能にしてしまうことです。メキシコ政府は、専ら国内で麻薬密売勢力を闘っておりますが、実のところ、真っ先にすべきは、中国からの原料輸入ルートを遮断することなのです。肥料等の別の品目名で輸出されていますが、メキシコ政府は、中国政府に対してメキシコ向けの原材料輸出の取締強化を求め、自らも、水際で密輸を阻止することが、麻薬密売組織を壊滅に導く一歩なのです。ところが、この中国産麻薬原料、中国政府公認、否、国家ぐるみとの指摘があります。仮に、この情報が事実であれば、メキシコ政府は、中国という国家と対峙する構図となり、麻薬をめぐる対立は、19世紀の”アヘン戦争”を髣髴とさせます。今度は、中国が麻薬を輸出する側として。
メキシコの麻薬戦争は、現代の”アヘン戦争”の様相を呈してくるのですが、麻薬が禁輸品となった今日では、国際社会は、メキシコ政府を支援することでしょう。犯罪加担国という不名誉な立場にある中国は、メキシコの麻薬戦争を終わらせ、国際犯罪組織を壊滅させるためにも、合成麻薬原料輸出を、即、停止すべきと思うのです。
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民主で投票した無党派層、約7割はサンダース氏
今年のアメリカ大統領選挙は殊の外波乱含みであり、共和党のトランプ氏優勢のみならず、民主党でも、本命とされたクリントン候補が、早、失速を見せています。ニューハンプシャー州の予備選挙では、バーニー・サンダース氏に大差を付けられて敗北しました。
若年層からの支持を得て1位となったサンダース氏は、筋金入りの社会主義者であり、その演説には、”チェンジ”どころか”革命”という言葉が飛び出してきます。一昔前ではあり得ないのですが、こうした現象が発生している背景には、アメリカ社会の変質を指摘することができます。アメリカでは、中間層が崩壊の危機に瀕しており、その漠然とした不安感が、”アメリカの富は1%の富裕層に集中している”と訴えるサンダース氏への支持を押し上げているのです。しかしながら、”1%問題”は、ある意味において、”アメリカンドリーム”の行き着く先であったかもしれません。
何故ならば、貧困から身を起こした人でも、億万長者になれることが、人生の夢であるならば、その夢を叶えられる人は極少数となるからです。アメリカンドリームとは、チャンスは全ての人々に開かれながら、多数が敗者となる宿命をも負っているのです。そして、今日では、その前提であったはずのチャンスの平等も、怪しくなりました。もはやフロンティアは消滅し、エスタブリッシュメントに属していない人々には、アメリカンドリームを追求することさえ難しくなっているのです。アメリカンドリームを失ったアメリカは、果たして、どこに向おうとしているのでしょうか。その行き先が社会・共産化であるとしますと、共産党員が、富と権力を独占しているとサンダース氏が非難しているその”1%”となっているソ連邦や中国の誤りを繰り返すことになります。
耳に心地よい理想に飛びつくよりも、むしろアメリカは、メイフラワー号の誓約や独立宣言に謳われた建国の精神を蘇らせるべきなのではないでしょうか。全ての人々の平等、自由、そして幸福の追求を目指し、より良き国造りを誓ったその不屈の精神に。
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【世界市場混乱】日経平均終値1万5000円割れ 東証終値は760円安の1万4952円61銭
アメリカFRBの利上げを前にして、中国が資金引揚を懸念する一方で、アメリカでは、海外からの資金還流から景気が上向くとする期待が寄せられていました。この予測は、低金利国から高金利国への資金移動を前提としています。
政策金利を下げる政策は、国内的には景気刺激策ですが、金融市場がグローバル化した今日では、むしろ、資金流出のリスクが高まります。実際に、FRBが利上げを実施すると、中国から外資の流出が止まらず、上海等の証券市場でも株価が下落しています。過去にも、既にこの現象は報告されていますので、今日では、中央銀行の利下げは、他の国の金利と比較して低い場合には、景気を冷え込ませる効果の方が高いと言えます。しかも、公開市場操作による量的緩和策では、輸出競争力の向上に繋がる自国通貨安を伴いますが、政策金利を上げる場合には、直接的な通貨安効果を期待することはできません。また、前者では、中央銀行の買いオペで手持ち資金を増した金融機関が、その資金を株式市場で運営すれば株価は上昇します。これらの面を考慮しますと、利下げ政策は、資金の海外流出、自国通貨高、株価下落…等を通して、経済全体にマイナス影響を与えかねないのです。リーマンショック以降、ECBでもマイナス金利を実施しましたが、これは、欧州経済の激しい落ち込みを背景としており(景気浮上効果には乏しい…)、欧州ほど打撃を受けなかった日本国まで、この時期にマイナス金利を実施する必要があるのか疑問でもあります。
金融市場のグローバル化とは、金融機関が、国境を越えて資金を自由に移動させることができるようになることを意味しています。資金を移動させるだけで利益を生むのですから、国家間の金利差は、投資家にとりまして、投資先を判断するための重要な要因です(金融ソフトにもプログラミングされているはず…)。そして、リスク回避であれ、投資先を変えるに際しては、証券等の資産を”売る”わけですから、当然に、”売られる市場”では、暴落の事態に直面しかねません。金融政策の決定には、自国経済のみならず、グローバル市場全体を考慮する必要があるのではないかと思うのです。
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焦点:政府・日銀が市場動揺に警戒、「宝刀」出番うかがう展開も
ここ数日の間、日銀が、マイナス金利に舵を切ったにも拘わらず、東京株式市場では大幅な下落が生じています。教科書的には中央銀行による利下げは景気刺激策の手段なのですが、現実には、利下げが株価の大幅下落と円高の更新を引き起こし、日本経済に黄信号が灯っています。それでは、何故、このような逆方向の現象は起きるのでしょうか。
この現象は、一般的には、原油安と中国経済の減速という外的要因によって説明されています。投資家の不安心理が比較的安全な資産とされる円や日本国債に向けられ、円高の結果として輸出競争力が低下する企業の株式が売られているする説明です。この説明では、日銀のマイナス金利政策は、一先ずは無関係のように見えますが、金融市場がグローバル化していることを考慮しますと、そうとばかりは言えないように思えます。昨今の金融工学の発展を受けて、大抵の金融機関は、投資判断に金融ソフトウェアを導入しています。様々な要因が複雑に絡む金融メカニズムにあっても、プログラミングによって、ある程度、利益予測が計算され、最適投資をはじき出してくれるのです。リーマンショックの時にも、プログラミングが一斉に発動したことで暴落を起こしており、倫理面からも問題視されたのですが、金融の世界は瞬時の判断が利益を左右しますので、現在でも、人間の判断に待つことなく、コンピュータに任せていることでしょう。となりますと、今般のマイナス金利=中央銀行間の金利差の変化、円高、国債買いの一連の動きも、全ての条件が揃う”必勝パターン”が出現しており、一斉にコンピュータが売買注文を出した可能性があるのです。
AI技術もさらに発展した今日では、金融市場の動きを読むことは、金融工学プログラミミングを解析することでもあります。日銀は、負の連鎖を断つためにも、金融工学プログラミング対策を急ぐべきではないかと思うのです。
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北朝鮮の黒鉛炉再稼働確認=プルトニウム抽出も―米情報長官
北朝鮮が核・ミサイル開発によって国際社会の平和と安全を脅かしている現状は、誰もが否定し得ない事実です。にも拘らず、国連常任理事国でありながら、中国やロシアといった国境を接する諸国は、大量の難民流入を怖れてか、北朝鮮に対する制裁強化には二の足を踏んでおります。
制裁強化に消極的である理由には、難民の大量発生のリスクの他にも、表面化していない理由があるのかもしれませんが、仮に、北朝鮮が体制崩壊した場合、今日のシリア難民のように、大量の北朝鮮難民が周辺諸国に押し寄せるという事態は起きるのでしょうか。体制崩壊の時期や形態によって難民の規模や流出経路は異なるのでしょうが、北朝鮮の難民流出は、少なくともシリア程に深刻化しない可能性があります。その理由は、第一に、韓国が、”難民”、否、北朝鮮国民の受け皿となるからです。北朝鮮の体制崩壊は、即、韓国との南北統一問題に転換します。東西ドイツの再統一に際しては、東ドイツから周辺諸国への大量の難民流出は起きませんでした。つまり、迅速な占領と行政機能の維持が実現すれば、北朝鮮国民の難民化を回避しつつ、早期に事態が収拾されるシナリオも想定されるのです。第二の理由は、シリア難民の発生要因が、多様な勢力が複雑に絡む内戦の泥沼化にあるとしますと、北朝鮮の体制崩壊過程にあっては、内戦リスクがそれ程高くないことです。軍部を含め、国民の多くは金正恩氏に対する不満を鬱積させており、外国勢力の介入がない限り、ルーマニア式の体制崩壊が起きるかもしれません。また、イスラム教徒のように、外部的な国際ネットワークも存在しておらず、目下、国民が独裁体制の下で孤立状態にあることも、難民化が抑制される要因となります。第三に、シリアでは、高額の手数料を受け取り、難民を国外に移送する密航事業者が暗躍しています。統制経済の下で国民が貧困状態にある北朝鮮の場合には、こうした違法ビジネスが成立する余地は殆どなく、国民は国内に留まらざるを得ない状況に置かれるものと推測されます。もっとも、北朝鮮の土地柄を考慮しますと、人身売買には警戒する必要はあるかもしれません。
北朝鮮に対する制裁については、国連安保理での議論の本格化を待たねばなりませんが、少なくとも、北朝鮮難民に対する懸念は、全常任理事国を含む国際的な合意の形成により、予め払拭することは不可能なことではありません。過去の歴史を見ましても、体制崩壊は必ずしも大量の難民を発生させていないからです。難民問題という”刺”を貫くことができれば、北朝鮮の体制崩壊も、現実味を帯びて行くことになるのではないでしょうか。
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南シナ海における中国の拡張主義的な行動は、覇権争いの観点から、19世紀のアメリカのカリブ海支配に類似しているとする見解があります。それでは、19世紀におけるアメリカのカリブ海での行動は、今日の中国による南シナ海での行動とどのように類似しているのでしょうか。
南シナ海・カリブ海類似説は、’表面的には国際社会の法秩序の問題に見えながら、その実、南シナ海問題は、その本質において米中間の覇権争いである’、とする見方に基づいてます。つまり、この説の前提には、アメリカのカリブ海での行動は、アメリカが当海域で覇権を握る契機となったとする認識があるのです。しかしながら、歴史を紐解いてみますと、カリブ海でのアメリカの活動には、実のところ、海賊退治と奴隷貿易の取締の側面が強いのです。
このことは、19世紀前半にアメリカ海軍によって遂行された”西インド諸島海賊掃討作戦”として、よく知られております。当時の国際社会では、純粋な海賊のみならず、国家が海賊船に特許を与えて敵対国の船に攻撃を仕掛けさせる私掠船も跋扈しており、カリブ海は、極めて危険な海域でした。時代背景としては、中南米諸国のスペインからの独立問題がありますが、当時のアメリカのカリブ海での行動は、覇権争いというよりも、カリブ海を安全な海にするための行動であり、全ての船舶が当海域で海賊船から襲われることを防ぎ、航行の安全を確保するという意味において、米国は、まさに”航海の自由”を実現しているのです。
南シナ海・カリブ海類似論は、アメリカによる”航行の自由作戦”を牽制すべく、”アメリカも同じことをしていた”と主張したい中国側の意向が反映させているのかもしれません。しかしながら、仮に、カリブ海の問題と南シナ海の問題が、類似しているとしますと、海賊や奴隷貿易船、即ち、無法者の立場と認定されるのは中国側であって、アメリカが、やはり、”航海の自由作戦”によって、無法者を取り締まっている、とうい構図となるのではないでしょうか。
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北ミサイル、米首都も射程圏か…SLBMも開発
年明けの”水爆実験”に続き、昨日、北朝鮮は、衛星打ち上げと称して大陸弾道ミサイルの発射実験を実施しました。各国とも、当実験の分析を急いでいるようですが、北朝鮮には、背後で操っている”黒幕”が存在しているのでしょうか。限られた情報から、その可能性を探ってみることにします。
黒幕説が実しやかに流れるのは、核であれ、ミサイルであれ、技術力からすると、北朝鮮が単独でこれらの先端兵器を開発することは不可能であるからです。外部からの技術・財政支援なくして開発不可能である以上、”黒幕”が存在すると推測せざるを得ないのです。となりますと、次に、誰が黒幕か、という問題が提起されるのですが、黒幕については、中国説、ロシア説、アメリカ説、イラン説、パキスタン説、そして、何らかの国際組織説が候補となります。まず、イランとパキスタンは水爆や大陸弾道弾ミサイルを保有しておらず、また、イランについては先日の核合意もありますので、過去に核開発の技術協力があったにせよ、この二国は候補からは外れます。
となりますと、残りは三カ国と国際組織となりますが、中国が北朝鮮の最大の後ろ盾であることは周知の事実であり、少なくとも、2013年に張成沢氏が公開処刑されるまでは、全面的にバックアップしていたのでしょう。しかしながら、中国国内での北朝鮮切り捨て論や中韓接近を受けて、中国の対北支援は緩衝地帯としての延命だけが目的の打算的、あるは、惰性的なものに変質しており、しかも、韓国のTHAAD問題が絡んでいるとしますと、北朝鮮の実験は、配備を阻止したい中国にとりましては不利となります。仮に、中国の意向を受けて実験を行ったとしますと、脅迫効果のみに関心を払い、その後の展開を予測しなかったか、あるいは、政策判断ミスとなります。もっとも、以前の記事で指摘したように、人民解放軍の一部が北朝鮮軍部と連携している場合には、独裁化を進める習政権に対する威嚇や牽制の意味合いがあるかもしれません。
その一方で、北朝鮮の軍事的脅威の増大は、米韓同盟の強化とTHAAD配備には追い風となることから、アメリカ黒幕説もあります。この説が成り立つには、アメリカが北朝鮮を完全にコントロールしている必要があり、事実上、朝鮮半島の南北両国ともアメリカの掌の上で茶番を演じているという、奇想天外なシナリオとなります。殆どあり得なそうもない想定なのですが、北朝鮮に米国本土への核攻撃能力を与えるのは、アメリカとりましてはリスクが高すぎますし、仮に本土攻撃であれば、北極ルートでミサイルを発射するでしょうから、アメリカの本土防衛の観点からは、それほど深くTHAADの配備問題と関連しているとは思えません(ただし、中国から韓国を引き離す一定の効果は認められる…)。また、米軍は朝鮮戦争を戦ったのですから、北朝鮮との協力は、何よりもアメリカ国民に対する背信行為となります。もっとも、アメリカ政府ではなく、アメリカの一部勢力、あるいは、内部化した国際組織であれば、この説も完全には否定できないかもしれません。
それでは、ロシアが黒幕である可能性はあるのでしょうか。ロシアについては、北朝鮮の発射実験とほぼ同時に衛星用ロケットを打ち上げており、北朝鮮の実験との関連性が疑われています。国家としては、ロシアだけは、何らの不利益をも被っておらず、対北制裁強化にも消極的なそうです。”事件は、最も利益を得た者から疑え”とも申しますが、果たして、真実は、どこにあるのでしょうか。
黒幕の正体については今後の精緻な情報分析を要するのでしょうが、ただ一つ確実に言えることは、国際社会にとりまして、北朝鮮は、平和と安全を脅かす、放置し得ない脅威であることです。国際社会が、体制崩壊を視野に入れた制裁強化に取り組みませんと、無法国家による脅威は拡大の一途を辿ることでしょう。そして、この黒幕との関係、あるいは、複雑に絡み合った背後関係を正確に把握することが、効果的な対北政策を策定する第一歩であると思うのです。
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政府発表を信じるとすれば、かろうじて6%台の経済成長率を維持したとはいえ、減速感が漂う中国経済。上海証券市場の株価も不安定な動きを見せている昨今、習近平主席は、危機脱出の道を海外企業の大型買収に見出そうとしているようです。しかしながら、果たして、中国企業を、”普通の企業”と見なしてもよいのでしょうか。
中国企業による企業買収については、イタリアのタイヤ・メーカーピレリを買収した時にも驚きの声が聴かれましたが、先日公表されたスイスの農薬大手シンジェンダの買収は、その規模からして群を抜いています。買収総額が5兆円を越えるというのですから。買収先のシンジェンダは、モンサントやデュポンと並ぶ世界最大規模のアグリビジネス企業であり、昨年には、モンサントが、シンジェンダの買収を打診していたそうです。この時は、モンサント側の提案額が低いとして、シンジェンダ側が提案を拒否していますが、巨額のチャイナ・マネーには抗し難かったようです。
その一方で、買収側である中国企業とは、国有企業である中国化工です。中国については、”市場経済国”と認めるか、否かをめぐって、現在、議論されていますが、現在進行しているのは、政府系企業の”ドラゴン化”です。一般的な予測とは逆に、中小の民間企業は、政府系の企業に買収され、政府系企業のみが巨大化しているのです。しかも、中国化工は純粋な国有形態らしく(少なくとも株式は非公開らしい…)、当然に、中国共産党の支配下にあります。シンジェンダの買収の背景には、13億の人口を抱える中国国民の食糧問題があり、買収後に、私企業であったはずのシンジェンダは、中国政府の農業政策の一環に組み込まれる、すなわち、中国の国策企業となることでしょう。
今のところ、EUの競争当局の動きは鈍いようですが、このように考えますと、中国国営企業による買収の案件については、私企業間における一般のM&Aと同列に扱うことには疑問があります。今後とも、中国の政府系企業による海外大手の買収が続くとなりますと、”万国の労働者よ、中国共産党のために働け!”ということになりかねない、と思うのです。
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ミャンマー新議会、元軍幹部を法務諮問委員長に指名 シュエ・マン氏、スー・チー氏と連携して解任された前党首 憲法条項の一時停止も視野か
ミャンマーの民主化の象徴とも言えるアウン・サウン・スー・チー女史。国民の期待を背負ってミャンマー政治に登場してきたものの、その手法を見ておりますと、不安要因もないわけではありません。
本日も、スーチー女史率いる与党国民民主連盟(NLD)が、憲法の条項を一時停止する法案を提出する予定とする情報が飛び込んできました。現行の憲法の規定では、外国籍の家族を持つ者は大統領に就任することができません。そこで、”スー・チー大統領”への道を開くために、一時的であれ、法案も以って憲法の効力を停止させようとしたのでしょう。しかしながら、この手法、ヒトラーに独裁的な権限を与えた、悪名高き授権法に酷似しています。法律の制定によって、憲法を乗り越えてしまうのですから。仮に、一般の法律が憲法に優位する前例が敷かれますと、以後、憲法は骨抜きとなり、如何様にも法律によって改変可能となります。ミャンマーは長らく軍政下にありましたので、憲法にも国軍寄りの要素はあり、スー・チー女子にとしては不満なのでしょうが、アメリカ大統領にも就任資格が付されているように(米国憲法第2条1節5項)、大統領職の資格に対する制限自体は、非民主的制度というわけではありません。
民主化の名の下で立憲主義が破壊されてしまうのでは、スー・チー女史の評価は、一変することになるかもしれません。その手法においてヒトラーと並び称されるとしますと、ミャンマー民主化の旗手としてのイメージは、地に墜ちてしまうのではないかと思うのです。
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【シャープ再建】電機大手で初の外資傘下入りか 日本企業のM&A姿勢に影響も 識者「成功すれば不安感を払拭」
経営悪化から再建を模索していたシャープは、昨日の報道によりますと、台湾の鴻海精密工業の傘下に入る可能性が高いそうです。支援総額は7000億円とも伝えられおりますが、この買収、大丈夫なのでしょうか。
報じられるところによりますと、鴻海の創業者である郭台鉐会長は中国との結びつきが強く、中国にも多くの工場を抱えているそうです。政治的スタンスとしては、対中融和を基本路線とする国民党支持者であり、”ひまわり運動”といった台湾の学生による反中運動に対しても、否定的な発言をしています。そして何よりも、中国の習主席との距離も近く、将来的には”一つの中国”を目指しているようなのです。となりますと、今回の鴻海によるシャープ支援の背後に中国の意向が働いているとする推測も、あながち、否定できないように思われます。先日も、中国企業が、スイスの世界最大の肥料会社の買収に成功たと報じられており、習政権は、先進国のブランド企業に狙いを定めた積極的な買収攻勢に出ています。その目的は、技術力の獲得による中国産業のさらなる高度化とされておりますが、時期が重なるだけに、不安を払拭することができません。中国企業であれば、ハイアールの前例があるだけに、日本国内において警戒論が噴出するでしょうが、台湾企業であれば、それ程の抵抗もなくシャープを手中に納める可能性があります。今のところ、シャープ側は”技術流出はない”と説明しているものの、鴻海の背後に”手段を選ばず”の中国が控えているとしますと、当初の合意も将来的に反故にされるか、間接的ルートでの技術流出が起きるかもしれません。
鴻海の方が、誰かに急かされるかのように、むしろ焦っているように見えること、そして、支援額が7000億円という巨額に上ることも、気になるところです。シャープは、決定を急がず、十分な情報収集や調査を行い、鴻海の背景を見定めるべきではないかと思うのです。
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新基地に30年期限 国は返還か軍民共用、米と協議を 代執行訴訟の和解案
現在、普天間基地の辺野古への移設問題をめぐって、国が県を訴える訴訟と、県が国を訴える訴訟の二つが同時進行するという異例の事態が生じています。前者の辺野古代執行訴訟については、昨日、福岡高裁那覇支部において二つの和解案が示されたと報じられています。
何れの訴訟も、その基本的な争点は権限の所在にあり、国と県の双方が、防衛・安全保障に関する政策権限をめぐって権限を争っているのです。ところが、裁判所は、この訴訟において、何故か、和解案なるものを作成しおります。この行為、イソップ童話の『狡い狐』の物語を彷彿とさせます。『狡い狐』は、食べ物の取り合いをしている二匹の猫の間に入った狐が、同じ大きさに分けると称して、大きい方を食べてゆき、終いには、自分が全部食べてしまうというお話です。この物語の展開が今般の裁判の行動と共通しているのは、何らの権限もない仲裁者が、最後には、係争物を自分のものとしてしまう点です。裁判所が示した和解案は、紛れもなく防衛・安全保障上の政策であり、実質的に、裁判所が、政府に代わって政治的な権限を行使しております。和解案の作成自体が司法の越権行為であり、民主主義を根底から覆しかねない危険な行為です。
政府は、和解案には応じない姿勢を示しておりますが、”狡い狐”と化した裁判所こそ、再発防止のために、弾劾裁判などを通して、その越権行為の責任を問われるべきです。米軍基地移設問題に限らず、最近の司法の暴走は、既に危険水域に達していると思うのです。
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移民の社会保障制限容認=英に改革合意案提示―EU大統領
今年の6月にも実施が計画されているEU離脱を問う国民投票を前にして、イギリスのキャメロン首相は、譲歩を引き出すべく、EU側と交渉を続けてきました。昨日、EU側の譲歩案が明らかとなりましたが、この案は、イギリス国民を満足させることはできるのでしょうか。
当交渉において焦点とされたのは、移民政策の分野です。イギリスは、増え続ける移民に制限を加えるべく、EUに対して、移民への福祉制限を求めてきました。ところが、このイギリスの要求に対してEU側が示した譲歩案とは、「急激な移民流入が発生した場合に限定し、”福祉制度に「過度な圧力」が加わったと証明できた加盟国”に対してのみ、EU理事会が、最大4年間の受給制限を決定できる」とするものであったのです。
イギリスは、移民政策の領域における自国の権限強化を目指して、移民への福祉の制限を実施できるようEU側に求めたと考えられますが、譲歩案では逆であり、移民への福祉制限の決定権は、EUレベルに認められています。委員会の提案により、EU理事会によって承認する手続きとなるからです。これでは、イギリスなどが移民流入による財政悪化に業を煮やして緊急措置を申請したとしても、必ずしも認められるとは限らず、特定多数決制の下で、却下される可能性もあります。また、既に指摘されているように、受給制限の申請条件も曖昧であり、EU側の裁量、即ち、”さじ加減”に任されることにもなりかねません。このように考えますと、譲歩案には、加盟国の権限強化とは反対に、EUの権限を強化する側面もあるのです。
イギリス国内のEU懐疑派は既に不満を表明しているようですが、イギリスへの移民の多いポーランドなど、自国出身の移民たちに対する受け入れ国側の受給制限が実施されかねない中東欧諸国からも慎重な意見が報告されており、加盟28か国の足並みは乱れています。人間とは利己的な側面があり、自らは負担を回避したがる一方で、他者には負担を押し付けがちです。福祉を要する移民に対して、第一義的な責任はどの国が担うべきなのか、実のところ、この問題は、権限のみならず、移民に対する責任の所在に関する根本的な問題をも提起していると思うのです。
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日米同盟が締結されて以来、アメリカは、日本国にとりまして、厚い信頼を寄せる友好国であり、日米関係は盤石であると信じられてきました。同盟強化を目指して、自衛隊と米軍との協力関係も深化してきたのです。しかしながら、先日、偶然に明るみに出た尖閣諸島国有化の経緯からしますと、日本国政府が、最も手薄な状態としてきた外国相手国はアメリカではなかったのか、という疑いがもたげます。
尖閣諸島の国有化を前にして、当時の米国務次官補であったキャンベル氏は、中国との事前協議を日本国に勧めたとされています。結局、日本国政府は、米側の要請に応じることなく国有化に踏み切るのですが、事前協議による”領土問題化”のリスクを考慮しますと、この事実は、日本国政府が、尖閣諸島について十分に日本国の立場をアメリカに説明しておらず、また、理解を求めることも怠ってきたことを示しています。その一方で、アメリカ側もまた、日本国に対して自国の政策の詳細を語っているわけではなく、ピルズベリー氏の『China 2049』によれば、水面下での米中間協力については、日本国は全くもって”蚊帳の外”にあったそうです。海洋等における拡張主義的な行動を受けて、今日では、アメリカも中国に対する警戒心を強めておりますが、2012年当時のアメリカは、現在よりも中国に対して宥和的であり、尖閣諸島についても、日米安保の適用が不安視されていました。尖閣諸島に関するキャンベル氏の先の要請も、このようなアメリカ側の対中政策が影響していた可能性もあるのです。
このように考えますと、日本国政府が、日米同盟の上に胡坐をかき、対米外交を疎かにしてきたことが、2012年の尖閣諸島領土問題化の危機を招いたとも言えます。日米同盟の存在が、逆に日米関係を疎遠にしてきたとしますと、これはまさしくパラドクスです。日本国政府は、半世紀以上にわたる空白を埋めるべく、今こそ、対米外交を強化すべきなのではないでしょうか。
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尖閣国有化「中国と事前協議を」=米高官が日本に要請
アメリカ民主党のクリントン候補による私用メールアドレスを介した機密情報漏洩事件は、国家機密の管理問題とは別の意味におきまして、日本国にも衝撃が走ることとなりました。何故ならば、漏洩した機密情報の中には、2012年9月の日本国政府による尖閣諸島国有化に際しての日米間のやり取りも含まれていたからです。
報道によりますと、尖閣国有化を前に、当時アメリカの国務次官補であったキャンベル氏は、日本国政府に対して、事前に中国と協議するよう要請したそうです。国有化後、中国国内では激しい反日運動が発生し、丹羽大使を載せた公用車が襲われたり、日系企業や日本人が暴徒に襲撃されましたので、中国側の激しい反発を招いたことは確かなことです。このため、メディアの多くは、日本国政府は中国側の反発を十分に予想しておらず、危機意識が薄かったのではないか、として批判的な論調を張っています。しかしながら、キャンベル氏の勧める通りに、仮に、日本国政府が、尖閣諸島の国有化について事前に中国に協議を申し入れたとしますと、その後の展開について、どのような推測ができるでしょうか。
中国側は、尖閣諸島を中国領と主張しておりますので、日本国政府による尖閣諸島の国有化の提案には、断固として首を縦に振らなかったことでしょう。国有化の承認は、即、中国の領有権主張の取り下げとなるからです。そして、何よりも懸念すべきは、尖閣諸島が領土問題化してしまった可能性です。仮に、日中間の事前協議の場で何らかの合意が成立し、反日暴動を回避できたとしても、その代償として、日本国は、尖閣諸島の”領土問題化”を認めざるを得ない状況に追い込まれたはずです。
となりますと、日本国政府がキャンベル氏の要請には応じずに、対中協議なくして尖閣諸島の国有化に踏み切ったことは、読みの浅さの現れであれ、政治的決断であれ、適切な判断であったと言うことができるのです。日本国民は、クリントン候補の機密情報私用メール漏洩事件によって、2012年当時、外交の裏舞台において尖閣諸島の”領土問題化”の危機があったことを、奇しくも知ることとなったのです。
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