万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”日中刺し違え”でも法の支配の確立を

2016年07月16日 13時33分02秒 | 国際政治
南シナ海、判決順守迫る=中国・李氏「介入するな」―対テロ、経済で協力・安倍首相
 今月12日に下された南シナ海問題に関する仲裁判決は、中国の主張してきた「九段線」を明確に否定しました。「九段線」は、領土的主張の根拠でもありましたので、それは同時に、中国が、南シナ海全域の島や岩礁の領有権を主張する根拠をも失ったことを意味ます。

 中国側は、「九段線」は歴史的権利に基づくと主張していますが、過去において中国が南シナ海全域に対して支配権を及ぼしていた証拠は皆無です。中国が提示している史料も、牽強付会によって”証拠”を装っているに過ぎず、既に専門家によって論破されています。「九段線」については、国連海洋法条約と相いれないのは明白であり、中国以外に、この判決に異議を唱える国は殆どないことでしょう(もっとも、台湾の不支持の理由として「十一段線(「九段線」の前身)」の否定もあるかもしれない…)。

 その一方で、当仲裁判決では、「九段線」以外の問題にも判断を示しています。特に問題となるのは、形状による島の地位の認定であり、これまで、水上岩が島の地位を得られるか否かは曖昧でした。この点について本判決では、複数の判断基準が設定された上で、南シナ海の全ての満潮でも沈まない岩礁に対して島の地位を認めないとする結論に至っています。そして、この判断は、当事国のみしか法的に拘束しないものの、当事国以外にも影響を与える可能性が指摘されているのです。日本国もまた、今後、沖ノ鳥島等に対しても同様の訴訟が起こされた場合、EEZを設定できる島の地位を失う可能性があります。言い換えますと、中国が、仲裁判決に従い南シナ海での権限を失うと同時に、日本国も沖ノ鳥島のEEZを喪失する、”日中刺し違え”構図となりかねないのです。

 それでは、日本国は、沖ノ鳥島のEEZを護るために、仲裁判決を不支持とすべきでしょうか。おそらく、日本国政府は、このリスクを十分に承知しながら、覚悟の上で仲裁による解決を擁護し、判決後もそれを支持したのでしょう(尤も、判決後に沖ノ鳥島は別問題としていますが…)。世の中には、何かを得るために、もう一つの何かを失わなければならない、究極の選択を迫られる場合があります。国際社会において法の支配を確立することこそ、アジア諸国、さらには、世界のすべての国々を中国の暴虐から護り、全世界に平和と安定の基礎を築くことであるとしますと、日本国は、捨て身の名誉ある決断を下したことになるのではないでしょうか。

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南シナ海仲裁判決ー誰が公海を防衛するのか?

2016年07月15日 09時44分17秒 | 国際政治
日本政府に申し入れ=判決順守要求に反発―中国
 本月12日に下された南シナ海仲裁判決は、国際社会に対して緊急に取り組むべき課題を提示することにもなりました。それは、”誰が公海を防衛するのか?”という問題です。

 当裁判では、中国が主張してきた「九段線」の違法性、ならびに、スプラトリー諸島の岩礁の地位が争われました。判決の結果、「九段線」の違法性が確定し、満潮時に水没しない幾つかの岩礁には領海設定の資格は認められたものの、”スプラトリー諸島においてEEZを設定できる”島”は存在しない”とする判断が示されたのです。

 この判決により、スプラトリー諸島の周辺海域は、どの沿岸諸国のEEZにも含まれない公海部分が、ぽっかりと出現することとなりました。そして、中国が自国の国内法である「領海法」に基づいて管轄権を及ぼし(EEZの権利も主張…)、防空識別圏の設定まで視野に入れて軍事施設の建設を進めている現状に鑑みますと、公海の水域が、中国によって、”侵略”、あるいは、”不法占拠”されている状況であることになります。このことは、将来においても、全世界の公海において同様の事態が発生する可能性をも示しております。

 ある国によって他国の領域が侵害された場合には、被害国の政府によって個別的、又は、集団的自衛権が発動されると共に、国連の集団的安全保障体制の枠組みにおいて侵害が排除される可能性はあります(常任理事国が拒否権を行使する、あるいは、決議が不成立な場合を除いて…)。しかしながら、公海については、国家のようには侵害排除を任務とする常設の機関は存在しておらず、国連安保理等や有志国で対処するしかなくなります。この問題は、もはや二国間関係に留まらないことを中国政府は理解すべきですし、国際社会もまた、公海防衛について対策を急ぐべきであると思うのです。

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中国は南シナ海から名誉ある撤退を

2016年07月14日 15時07分57秒 | 国際政治
「緊張高める」と中国批判=南シナ海人工島への飛行―米
 今月12日に示された南シナ海問題に関する仲裁裁定に対して、中国は、あくまでも無視を決め込む意向のようです。しかしながら、当判決により、中国は、南シナ海全域に対する法的根拠を失ったのですから、これまでと同様の既成事実化作戦がとれるはずもありません。

 中国贔屓の識者からは、中国が仲裁裁定を無視したところで、何も起こらないとする楽観的な見解も示されています。しかしながら、中国の仲裁裁定無視が、国際法秩序の破壊に加えて、南シナ海における違法な軍事要塞化の完成と、全域に対する中国の主権的管轄権の成立を帰結する限り、国際社会が黙認するとは思えません。特にスプラトリー諸島においては、中国が軍事要塞化を図っている諸礁は、何れも武力で奪うか、一方的に占領したものです(例えば、1988年のスプラトリー諸島におけるベトナムとの海戦…)。今般の裁定は、中国が、国際法上の法的権原なくしてこれらの諸礁を不法に占領している現状を法的にも明確にしましので、中国には、同諸礁から撤退し、原状回復を行う義務が生じます。乃ち、中国は、原則として、造成した人工島を解体するとともに、駐留している軍や民間人を引き揚げさせなければならないのです。つまり、中国が現状を維持することさえも、違法行為となるのです。

 中国による南シナ海の軍事拠点化は、中国本土から遠距離にあるという点から、防衛的な目的であるはずもなく、”中国の夢”の実現、即ち、アジア一帯における支配圏の確立と海洋支配であることは疑いようもありません。いわば、”世界支配”を狙った戦略の一環であり、しかもそれは、国際法に違反して遂行されているのです。となりますと、仮に中国が仲裁裁定を”紙くず”として破り捨てますと、国際社会は、この行為を国連憲章違反とみて(義務不履行は国連海洋法条約違反でもある…)、当然に、経済制裁を含め、中国に仲裁裁定を履行せしめるための動きを強めるものと予測されます。また、仮に、武力による強制執行が行われた場合でも、仲裁裁定が存在する以上、たとえ安保理決議が成立しなくとも、それは、国際法上、合法的な行為と見なされることでしょう。

 中国が、歴史に汚名を残さない唯一の方法は、南シナ海からの名誉ある撤退を決断し、自発的に実行することです。それとも、あくまでも軍事力で”中国の夢”を実現する道を選ぶのでしょうか。決断の時期は迫っていると思うのです。

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南シナ海仲裁裁定の重大な意義ー国際法による拡張主義の阻止

2016年07月13日 15時20分29秒 | 国際政治
比に仲裁判決「棚上げ」要求=対話解決へ「白書」発表―中国
 昨日、オランダのハーグに設置されている常設仲裁裁判所が示した南シナ海問題に関する判決は、中国の主張を真っ向から否定するものとなりました。とりわけ、中国が、南シナ海全域を囲い込む「九段線」の根拠としてきた歴史的権利が、国連海洋法条約上、認められないとされたからです。

 中国の反応は、案の定、”逆切れ”であり、当裁定の受け入れを拒絶すると共に、再度、歴史的権利の正当性を声高に叫んでいます。その声も、国際社会にあっては虚しく響くのですが、ネット上では、中国寄りの立場から、過去に中国以外にも国際司法裁判所や国際仲裁の判決を無視した国が存在したことを挙げて、中国の仲裁裁定の受託拒否が、あたかも当然の行為のように主張する意見も見受けられます。

 しかしながら、今般の南シナ海に関する国際仲裁は、過去の事例とは比較にならないほどの重大な意義があります。過去の前例の大半は、主として二国間関係において過去に生じた問題が争われましたが、今般の仲裁は、現在進行中の出来事を対象としています。主として”海の憲法”とも称される国連海洋法条約違反によって生じた争いであり、海洋秩序を定めた国際法に反する中国の権利主張と現下の活動が咎められているからです。ある国が一方的に海域を実力行使で囲い込み、現状を変更して軍事拠点化する行為が許されますと、全世界は、無法状態に至らざるを得ません。つまり、中国の不服従の態度は、平和的解決手段の拒絶であると同時に、放置すると国際秩序の破壊行為をも帰結するのです(他の紛争当事国のみならず、公海に対する”侵略”、”不法占拠”でもある…)。それ故に、中国の仲裁裁定の拒絶は、決して許されないのです。仮に、違法状態の継続が許されるとしますと、中国は、全世界を支配するまで、他国の権利を踏みにじり、国際社会の公共財をも侵害し続けることでしょう。

 当仲裁裁定には、現在進行形で進んでいる中国の覇権主義を、国際法によって阻止するという人類史的な意義があります。仮に、国際社会が、司法判決を以って拡張主義を阻止することに成功するとしますと、それは人類にとりまして、新たな一ページを開くことになるのではないでしょうか(もっとも、中国がやはり不服従を貫くならば、仲裁裁定の強制執行問題に移行する…)。

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中国の仲裁裁定拒絶理由は「九段線」の違法性にあり

2016年07月12日 16時39分01秒 | 国際政治
【緊迫・南シナ海】注目される仲裁裁 軍事拠点構築する中国へ初の国際判断示す
 本日、オランダのハーグに設置されている常設仲裁裁判所において、遂に南シナ海問題について仲裁の裁定が示される日を迎えました。中国が既に裁定の受け入れ拒否を表明しているところを見ますと、おそらく、中国に不利な内容となるものと推測されます。

 中国は、裁定拒否の主たる理由として、(1)自らが同意しない仲裁手続きによる裁定であること、そして、(2)仲裁官の人選に偏りがあることを挙げております。しかしながら、これらの拒絶事由の何れもが、中国の過去の行動に原因しております。仮に、中国が、フィリピンが提訴した際に、誠実に仲裁手続きに同意していたならば、これらの問題は存在しないのですから。否、当事国の双方の合意を要する他の司法解決に中国が応じることを期待できないからこそ、フィリピンは、一方の当事国のみによる提訴であっても受理可能な仲裁裁判を選択したのです。ですから、中国の仲裁批判は、自らの過去の行動に対する自己批判に他ならないのです。自らの行為の法的正当性に自信があるならば、中国は、仲裁裁判所に出向き、これをチャンスとばかりに自らの立場を堂々と主張してもよいはずなのです。

 そして、この点が期せずして明らかしているのは、中国が仲裁を拒絶する真の理由です。真の理由とは、言わずもがな、中国には、南シナ海全域に対して主権的な権利を主張するだけの法的根拠が存在しない、という厳粛な事実です。つまり、中国が主張する「九段線」は、国連海洋法条約とは相いれず、違法なのです。今般、仲裁裁定で「九段線」についての判断が示されるか否かは不明のようですが、「九段線」の違法性は、中国以外の誰が判断しても、動かし得ないと思うのです。

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良いポピュリズムと悪いポピュリズム

2016年07月11日 15時12分30秒 | 国際政治
 最近、アメリカのトランプ現象やイギリスのEU離脱は、”悪しきポピュリズム”として辛口の批判を浴びています。理性ではなく感情に任せると、悪い方を選択すると…。しかしながら、ポピュリズムには、二つの種類があるのではないかと思うのです。

 ”悪しきポピュリズム”とは、古代アテネの衆愚政治のように、知識や情報に乏しい民衆を扇動して自らの支持基盤とし、僭主(独裁者)が政治を思うがままに動かすというものです。民衆は、僭主に操られた無力な存在であり、判断力も、自治能力をも備えておらず、熱狂と倦怠とを繰り返すのみです。この場合、民衆のみならず、僭主もまた愚かなのです。その一方で、”良きポピュリズム”もないわけではありません。古来、”民の声は天の声”と称されたように、一般の人々の判断は、為政者のそれに優っていることもあります。民主主義も、個々人の判断力や能力を信じればこそ、よく機能するのであり、最初から”衆愚”を前提としたのでは、民主主義もまた成り立たないのです。言論の自由や報道の自由も、一般の人々の判断力や倫理観を前提としなければ、無意味となるのではないでしょうか。

 今般のトランプ現象やイギリスのEU離脱をめぐりましては、前者のケース、即ち、”悪しきポピュリズム”と見なして、声高な批判がある一方で、現実そのものは、後者の側面がないわけではありません。『パナマ文書』で明らかとなったように、貧富の格差の拡大は紛れもない事実ですし、どの国でも、中間層は消滅の危機に直面しています。また、人の自由移動に伴う移民や難民問題は、国民国家を融解しかねない状況をもたらしています。行き過ぎた新自由主義の破壊力に対して”待った”がかかるのも、そのマイナス影響が、常識的な人々が受忍し得ないレベルに達しているからに他なりません。

 一般の人々の現状への不満や将来に対する不安の表出を、単に”感情的”であるとか、”大衆迎合”であるとして、’良いポピュリズム’と’悪しきポピュリズム’を区別せず、一色たんに、’衆愚’として否定してしまいますと、一体、誰が、今日の人々が抱えている諸問題を解決するのでしょうか?”新自由主義に基づく経済システムこそ唯一絶対である”、とする視点からあらゆるポピュリズムを一括りにして批判している人々は、民主主義をも崖の淵に追いやってしまう危うさがあると思うのです。

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イギリスのEU離脱再投票の否定ーやり直しても結果は同じ?

2016年07月10日 14時50分36秒 | ヨーロッパ
国民投票のやり直し行わず 英政府が明確に
 先月23日にイギリスで実施された国民投票は、大方の予想を覆し、離脱派の勝利に終わることとなりました。この結果を受けて、イギリス政府に対して、再投票を求める請願が410万も寄せられたそうです。やり直しを求めているのは残留に投じた人々なのでしょうが、その一方で、離脱による影響の大きさに慄き、自らの投票に後悔している離脱派も少なくないとの指摘もあります。それでは、やり直し投票を実施したとしますと、投票結果は、逆になるのでしょうか。

 英政府の対応を見ますと、国民投票のやり直しを求める請願に対しては、正式にこれを否定したと報じられております。仮に、離脱に投じた国民の大半が真剣に投票結果を変えたいと望んでいるとしますと、政府も、その道を探ったかもしれません。しかしながら、やり直し投票を実施しても結果は同じとなる公算が高いと見て、きっぱりと否定したのではないかとも憶測するのです。あるいは、また、仮に、国民投票をやり直して残留派が勝利したとしても、今度は、離脱派から選挙のやり直しを求める同規模の請願が殺到することが予測され、再度、選挙のやり直しを実施せざるを得なくなります。離脱派と残留派の人口比が僅差である以上、国民投票のやり直しは永遠に続く、といった奇妙な事態ともなりかねないのです。

 このように考える理由は、EU離脱には、プラス・マイナスの両面があり、立場によって評価も違うからです。EUからの離脱により、ポンド安のみならず、不動産価格の下落も予測されており、イギリスの不動産投資ファンドでは将来への悲観から解約が相次いでいるようです。この現象は、確かに離脱のマイナス影響と見られがちですが、離脱派の人々にとりましては、決して”悪いニュース”ではないのかもしれません。何故ならば、近年、イギリス、特にロンドンでは不動産バブルが発生し、不動産価格の上昇により一般のイギリス国民がロンドンに住むことが難しくなっていたからです。ロンドンの人口が、過半数を越えて移民系となった理由も、全世界の富裕層が集まる”コスモポリタン都市”に変貌したからに他なりません(その一方で、SOHOなどのスラム地区では移民労働者が増加…)。不動産価格の下落は、一般の人々にとりましては、都心の不動産が手の届く範囲になるのですから、朗報ですらあるのです。また、ポンドの下落も、輸出競争力を考慮すれば、これもまた、必ずしも”悪いニュース”ではありません。金融シフトにより製造業が衰退したとはいえ、産業革命の発祥の地であるイギリスの産業基盤は、まだまだ強固であるとする指摘もあります。

 以上に述べたように、プラス・マイナス両面の評価に注目しますと、たとえ国民投票をやり直したとしても、一般のイギリス国民が、必ずしも残留を選択するとは限らないように思えます。”真の豊かさや幸せとは何か”を問う時、そこには、経済規模や経済成長率では測れない”何か”があるのではないかと思うのです。

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ダラス警察官銃撃事件ー陰謀論を考える

2016年07月09日 14時46分28秒 | アメリカ
【ダラス警官銃撃】現場近くで涙の追悼集会 「用意周到な犯行」「どの都市でも起こりうる犯罪だ」「憎しみの連鎖を止めなければ」…
 昨日、アメリカのダラスで白人警察官が銃撃され、5人が死亡する衝撃的な事件が発生しました。犯人は、警察官による黒人射殺に憤った、25歳のアフリカ系元退役軍人とされ、単独犯とする見方が有力です。

 しかしながら、ダラスがケネディ大統領暗殺事件で知られる都市でもあったことから、素直に当局が発表した単独犯説を鵜呑みにできない人が多いのではないでしょうか。ケネディ暗殺事件でも、政府の公式な調査報告書である「ウォーレン報告」では、リー・ハヴェイ・オズワルドの単独犯と結論付けながら、射撃の正確さからプロの殺し屋、あるいは、スナイパーが狙撃したとする有力な説があります。本事件では、犯人は元退役軍事ですので、”プロ”による犯行であることには疑いありませんが、短時間に12人に命中させていますので、たとえ、連続射撃を可能とする戦闘用の射撃法があったとしても、単独犯説には疑問が残ります。また、当初は、高所からの狙撃とされながら、犯人は移動しながら撃ったとする説もあり、この点も不可解な点です。しかも、こうした犯罪には、緻密な計画と準備が必要ですが、問題となった黒人射殺事件が起きた直後に実行していますので、偶発的な事件とも思えません。となりますと、この事件は、アメリカ国内において人種対立を煽るために仕組まれた陰謀であるとする説も、あながち、否定もできなくなります。そして、仮に陰謀であれば、”憎しみの連鎖”こそ、この事件の背後に潜む真の犯人の狙いなのですから、双方とも、冷静にこの事態を受け止めるべきなのかもしれません。

 現状において陰謀論を否定できない以上、その可能性を示唆した方が、憎しみの連鎖を止めるよう訴えるよりも、案外、アメリカ国内が落ち着きを取り戻す可能性もあります。ネット上では、ISや中国の関与も推測されていますが、ケネディ大統領暗殺事件でも背後の政治的動機が指摘されましたように、この事件も、背景を疑って然るべきではないかと思うのです。

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中国の”同意なき仲裁批判”は的外れー国内法では当たり前

2016年07月08日 10時16分39秒 | 国際政治
国連事務総長、中国外相と会談 南シナ海問題を協議
 オランダのハーグに設置されている常設仲裁裁判所での裁定を12日に控え、国際社会における中国の活動も活発化してきております。昨日は、中国の王毅外相が、北京で国連の藩事務総長と会談したとも報じられています。
 
 共同記者会見で、国連の事務総長が、王毅外相による国際仲裁批判を隣で黙って聞いているとしますと、これもまた国連の存在意義からして大問題なのですが、王毅外相の主たる批判点は、”対話を拒み、当事国の同意を得ずに一方的に強制的な仲裁手段を推し進めたことは法治の精神に違反する”というもののようです。しかしながら、この批判、的外れとしか言いようがありません。何故ならば、同意なき裁判こそ、”法治の精神”の本質的な部分であるからです。

 法の支配のみならず、たとえ法治主義にあっても、法とは、当人の同意なくして強制的に適用されるものなのです。例えば、”他者の土地を侵奪してはならない”とする法が存在し、この法の下で各自の権利が保障されている状態にあって、ある人が、隣家の土地を侵奪する事件が発生したとします(本件の仲裁では、領有権帰属そのものは裁定の対象とはなっていませんが…)。この場合、侵奪した側の同意がなければ裁判を開くことができない、となりますと、永遠に隣家の土地は奪われたままとなります。侵奪した側が、自らの行為を裁判に付すことに同意するはずもないからです。これでは法秩序は保てませんので、裁判には、必ずしも当事者、特に、違反者側の同意を要しないのです。しかも、本件の仲裁手続きは、国連海洋法条約において正当な手続きとして定められた平和的な紛争の解決手段の一つです。

 仲裁は平和的な紛争の解決手段でありながら、中国は、フィリピンの提訴を一方的であると責めていますが、武力を以って南シナ海を”中国の海”に囲い込もうとしている中国の方が、よほど一方的であり、他国に対して強制的です。また、国連への加盟、並びに、国連海洋法条約の締約国となるに際して、国際法の順守には既に合意しているはずです。”同意なき仲裁批判”は、法秩序というものの本質を理解していない中国の危うさ、あるいは、異質さを、むしろ露わにしたのではないでしょうか。

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南シナ海問題-中国の安保理拒否権を封じる方法

2016年07月07日 15時23分18秒 | 国際政治
中国機に緊急発進199回=過去最多、4〜6月―防衛省
 今月12日に予定されている南シナ海問題をめぐる仲裁の裁定については、中国不利の内容が予測されているため、既に中国は、裁定に対する不服従を表明しております。この行為は、国際社会に対する一種の”反逆”ではありますが、”いざ制裁”という段になっても、国連決議が成立しない可能性は極めて高いのが現状です。事実上、中国には、常任理事国としての拒否権があるからです。

 しかしながら、このまま中国による軍事力による既成事実化を黙認しますと、無法国家化した中国の拡張主義は留まるところを知らず、周辺諸国は増大し続ける中国の軍事的脅威に晒されます。中国の拡張主義を止めるための正式な手続きとしては、国連安保理において国際社会の総意として、対中裁定順守勧告、並びに、対中制裁決議の成立が最も望ましいのですが、中国の拒否権については既に述べたとおりです。それでは、中国の安保理における拒否権行使を封じる方法はあるのでしょうか。

 第1の方法は、安保理での多数決を定めた第6章の問題として扱うことです。今般の南シナ海問題は、中国による平和的な解決手段の拒否への対応ですので、紛争の平和的解決のために設置されている第6章の問題となる可能性は決して低くはありません。国連憲章の原則違反でもありますので、非常任理事国を含む拒否権なしの多数決となれば、中国に対する制裁決議は円滑に採択されることでしょう。

 第2の方法は、1971年10月25日に、中華人民共和国の国連における地位をめぐって採択されたアルバニア決議(第26回国際連合総会2758号決議)を逆手に取ることです。すなわち、中国から常任理事国の地位を剥奪するか、この決議自体を取り消すのです。当決議には、「国連総会は、国連憲章の原則を思い起こし、中華人民共和国の合法的権利を回復させることが、国連憲章を守り、かつ国連組織を憲章に従って活動させるためにも不可欠であることを考慮し…」とあります。この一文に見られるように、アルバニア決議の主たる目的が、中国に対して国連憲章を順守させることにあるとしますと、今日、中国が国際仲裁の裁定を拒絶する以上、この前提条件が崩壊します。つまり、常任理事国の地位を取消す条件が整うのです。この方法も、総会での多数決による採択が可能ですので、常任理事国の資格を喪失させることにより、中国の拒否権を封じることができます。

 第3の方法は、国連憲章第6条に基づいて、中国を国連から除名することです。第6条には「この憲章に掲げる原則に執拗に違反した国際連合加盟国は、総会が、安全保障理事会の勧告に基づいて、この機構から除名することができる」とあります。問題は、安保理による勧告ですが、この勧告でも、第6章方式の多数決方式で採択されるとしますと、総会での多数決による除名は可能です。

 以上に安保理における中国の拒否権封じの方法を検討してみましたが、仮に、何れも失敗に終わるとしますと、後は、世界各国から構成される有志連合、あるいは、各国個別に対中制裁を実施することとなります。何れにしましても、仲裁裁定拒絶が国際法秩序を破壊する行為である以上、対中制裁は不可避となるのではないでしょうか。

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中国は必ず”開戦責任”を日本に押し付ける-思い出される盧溝橋事件

2016年07月06日 15時12分55秒 | 国際政治
「中国軍機への挑発ない」…萩生田官房副長官
 先日、中国攻防省が、日本国の航空自衛隊機が中国空軍機に挑発行為を行ったとする談話を公表する一方で、日本国政府は、これを真っ向から否定するという一幕がありました。”空自機が中国軍機に向けて火器管制レーダーを照射"というのですから、ただ事ではありません。

 通常、迂闊に火器管制レーダーでロックオンすると、レーダーの周波数に関する情報を相手方に与えることになるので、中国側の主張は”ウソ”であるとする見方が大勢です。そもそも、今日の日本国には、中国に対して戦争を仕掛ける理由は全くないのですから。しかしながら、この一件で、真っ先に頭を過ったのが、1937年7月7日に起きたかの盧溝橋事件でした。この事件も、専門家による詳細な検証により、最初に発砲したのは中国軍側であったことがほぼ確定していますが、中国側は、今なおこの事実を認めず、日本国側が仕掛けた侵略戦争と主張しています。中国共産党の行動パターンが昔も今も変わりがないとしますと、仮に、中国が、近い将来において戦争に訴えるとしますと、間違いなく、日本国側に開戦の責任を押し付けてくることでしょう。日本側から先に攻撃してきたのであり、我々は、犠牲者であると…。また、戦争の舞台が、東シナ海ではなく南シナ海であったとしても、中国側は、全力でアメリカに開戦の全責任を負わせようとすることでしょう。

 今月12日の仲裁の判断を前に、南シナ海では、中国海軍が、5日から11日の予定で最大規模な軍事演習を実施しているそうです。盧溝橋事件では、夜間演習が現実の戦争へと転じましたが、中国の時代感覚が前世紀に留まっているとしますと、日本国政府は、責任転嫁を含む不測の事態への対処を急ぐべきではないかと思うのです。

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EUの”いいとこ取り”は中東欧諸国?-受益と負担の不均衡

2016年07月05日 16時54分25秒 | ヨーロッパ
英とEU、ブレグジット後も市民の在住権利継続を=英移民担当相
 イギリス国民の多数がEU離脱を決断した最大の理由は、移民問題にあります。年間、30万人もの移民が押し寄せるのですから、イギリス人が悲鳴を上げるのも頷けます。

 イギリスへの移民は、域外からも然ることながら、域内、特に2004年5月の第5次拡大以降にEUに加盟した中東欧諸国からの移民が群を抜いています。ポーランド人移民が既に80万人を超え、2014年から規制が解除されたルーマニアやブルガリアからの移民も増加しているそうです。イギリスにしてみますと、EUへの加盟により、大量移民の受け皿となる一方で、当初主張されていた額よりは少ないとはいえ、年間で計算して凡そ7000億円のEUへの財政移転を引き受けていることになります。デメリット面が誰の目にも明らかなほど表面化しているのですが、その一方で、EU加盟のメリットの最大の享受国は、中東欧諸国です。インフラ整備などにEU予算が投入されていますし、安価な不動産価格や労働力は、製造拠点としての強みでもあります。その上、若年層を中心に西欧諸国に移民を送り出すことができるのですから、失業問題も緩和できます(西欧から東欧への逆パターンの移民は少ない…)。先日、EU側は、イギリスに対して”いいとこ取り”は許されない、と釘を刺しましたが、EUで”いいとこ取り”をしている加盟国があるとしますと、それは、中東欧諸国なのです(一人勝ち状態とされるドイツもまた、移民問題には苦しんでいる…)。

 このように、EU全体を見ますと、加盟国間に受益と負担の不均衡が見られます。仮に、真っ先に負担に耐えられなくなったのがイギリスであるとしますと、受益側である中東欧諸国は、受け入れ国側の人々の苦境を理解し、人の自由移動については譲歩すべきなのかもしれません。国造りに必要となる人材流出を止めるという面においても、この譲歩は、必ずしもマイナスとは限らないかと思うのです。 

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バングラテロは”日本国政府のせい”は筋違い

2016年07月04日 15時00分44秒 | 国際政治
バングラディシュ人質事件で日本人7人死亡。主要メディア報道まとめ
 バングラディッシュのダッカで発生した無差別テロ事件は、7人の日本人を含む20人の命を奪う残虐な犯行でした。IS系やアルカイダ系のイスラム過激派組織との関係も取り沙汰されているため、ネット上には、日本人の犠牲は、イスラム過激派を”敵”と見なした日本国政府に責任があるとする批判も聞かれます。

 批判者は、”私は日本人だ。撃たないでくれ。”と懇願したにも拘わらず、テロリストによって問答無用に殺害された事実を以って、日本人がイスラム教徒の敵となった証としています。しかしながら、この日本政府への批判は、筋違いなのではないでしょうか。何故ならば、無差別殺人を容認するテロ集団は、それがイスラム系であれ、何であれ、人類共通の敵であるからです。しばしば、”いじめ問題”で指摘されるのは、虐める側を批判したり、虐められている人を庇うと、自分も苛められる怖れがあるため、虐めを黙認してしまう人が多いというものです。深刻な社会問題化しながら、”いじめ問題”がなかなか解消しないのは、こうした見て見ぬふりをする”事なかれ主義”にも一因があります。本来は、皆で協力して虐め側に対抗し、その行為を止めさせなければならないにも拘わらず…。”自分だけ助かれば、他者の犠牲はどうでもよい”という態度は、決して誉められたものではありません。本事件において日本国政府を批判する人々の発想の根源も、”いじめ問題”と共通する”事なかれ主義”にあります。

 テロを怖れてテロ組織の要求を受け入れたり、残虐行為を見過ごすのでは、この世は、暴力と恐怖によって支配されます。日本国政府がテロリスト戦うことは、国際社会の安全を守るための責務であり、決して批判されるべきことではないと思うのです。

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バングラテロ事件ー経済協力より治安支援が先か

2016年07月03日 14時56分40秒 | 国際政治
「最大の衝撃」狙う?…集客施設、また標的に
 今月1日にバングラディッシュのダッカで発生したテロ事件は、外国人を含む多くの無辜の人々の命を奪いました。日本人もJICA関係の7名の方が犠牲となられており、現地の発展に貢献するために活動しておられただけに、まことに心が痛みます。

 ISやアルカイダ系集団による犯行との見方が有力ですが、今回の事件のような無差別殺戮は、ダッカでも初めてなそうです。昨今の中東での劣勢が南アジア方面での活動を活発化させているとの指摘もあり、今後とも、外国人を狙ったテロの多発が予測されます。そして、テロの標的が外国人であり、その外国人の多くが、経済支援活動のために同地を訪れているとなりますと、国際的な途上国支援の将来にも暗い影を投げかけているのです。また、イスラム過激派は、とりわけインフラ事業に対して攻撃的であり、多額の資金を投じてインフラ整備を行っても、テロによって破壊されれば、全ての努力が無に帰してしまう可能性も否定はできません。おそらく、イスラム過激派組織の主たる狙いも、外国との関係の切断にあるのでしょう。

 治安上のリスクが高まれば高まるほど、支援国は、途上国に対する経済協力に二の足を踏むことになります。こうした側面を考えますと、今後の途上国支援は、経済協力に先立って、治安状況を改善するための支援を要するかもしれません(安全が確保できないと、外国人の居留地区を設置したり、インフラを軍隊で防御せざるを得なくなり、時代は逆戻りする…)。安全の確保こそ、安定した経済発展の基礎であるとしますと、途上国の統治能力の向上は、今後、国際社会が真剣に取り組むべき課題なのではないかと思うのです。

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英EU離脱ー原因は58年前にあった?

2016年07月02日 14時48分27秒 | 国際政治
英EU離脱、撤回認めぬ=仏大統領
 イギリスのEU離脱をめぐっては、人の自由移動が問題の核心となりつつあります。先月29日に開かれたEU首脳会議でも、EU側は、人の自由移動を認めない限り、イギリスに単一市場へのアクセスを認めないとする強固な姿勢を示しています。

 ところで、争点となっている人の自由移動ですが、この原則は、58年前に発効したEEC条約において初めて明記されたものです。EEC(ヨーロッパ経済共同体)とは、その名が表わすように経済統合を目指す地域経済機構であり、主たる設立の目的は、共同市場を基礎とした加盟国間の共存共栄でした。そして、この共同市場を形成するために、”もの”と並んで、”人”、”サービス”、”資本”の自由移動が訳されたのです。今日では、”四つの自由”と呼ばれています。しかしながら、今になって冷静に考えてみますと、この時、”人”を、”もの”、”サービス”、”資本”と同列に扱ったところに、今日の混乱の根本的な原因があったのかもしれません。

確かに、”人”とは、経済の側面から見ますと生産要素の一つである労働力(マンパワー)ですが、政治面や社会面をも供えた多面的な存在です。しかも、”人”の移動とは、本来は、国境管理を司る国家の管轄事項ですので、経済的な理由のみから自由化を図るには無理があります。

 人の自由移動については、本来、1993年に、政治や司法分野にも政策領域を広げたEUが発足する際に、見直しを行っておくべきであったのかもしれません。しかしながら、現実にはその逆に、EU発足以降、人の自由移動はさらに加速し、限界に達した今日、遂にイギリスの離脱に行き着いてしまったように思えるのです。

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