(これはたぶん卯の花です。すぐに花は散ってしまいます!)
奥さんから「卯の花って、どんな花?」と訊かれました。お花のことなら何でも知ってる彼女なのに、最近少しトリとか、ムシとか、そっちにシフトしてるから、木の花なんてわからなかったんだろうか。まあ、木の花はボクの専門にしているところではあるんですけど、いつも見たとこ勝負で、写真撮って、何だかすごく気になるから、あれこれ調べるだけで、今まで特に卯の花と呼ばれるものに出会ったことはなかったのです。
でも、それは三重県民としては恥ずかしいことでした。
三重県の鈴鹿市に生まれ、松阪市にも住んだことのある歌人の佐々木信綱さんの作品があるのです。
明治29年ということは、調べてみると、1896年の唱歌集に載っているそうで、私は岩波文庫で見ています。
一 うの花のにおう垣根に、時鳥(ホトトギス)
早もきなきて、忍び音もらす 夏は来ぬ。
有名な歌でした。私でも知っています。でも、肝心の卯の花はどんななのか、名前は知っているのに、実物を知らなかった。
ネットで調べてみたら、「卯の花」は「ウツギ(空木)」ということでした。えっ、だったら、うちにも空木はあるよ。今年は、たくさん伐られたせいなのか咲いてないけど、いつもだったら、どんなに伐られようとも、その名の通りに茎は空洞だけで、再生能力は高くて、あっという間に大きな木になり、白いな花をつける木でした。
あのウツギが卯の花なんですね。なあんだ。答えは、うちの庭にもあったのかぁ。ウツギの扱いは何だかぞんざいでした。ちゃんと花も付けるし、大きくなるし、日のあまり当たらないところに植えてあるのに、エライ木だったんですけど、今年は機嫌が悪かった。
あれ、ホトトギスの忍び音って、どっちなんだろう?
「テッペンカケタカ」(この聞きなしは、ザビエルはげの私には、イマイチ素直になれない言い方です)なんだろうか、それとも「トーキョートッキョキョカキョク」の方なんだろうか。
わからないですけど、でも、今でも時々、突然に耳に届きます。延々と鳴き続けないし、ほんの一回だけ鳴いてみて、しばらくは自分の生活のあれこれをして、また気が向いたら、里の方に向けて鳴いてみるようです。一回聞けたら、もう何だかありがたいし、夏の初めの山里気分は盛り上がります。そのあとの静けさも何とも言えない。町中ではなかなか聞くチャンスはないから、聞けたらしあわせです。
そんな小さな幸せを得るために、私たちはそういうのを聞き逃さないように生きていくみたいな感じになってますね。それを信綱先生は見事にまとめてくださった。
三 橘(たちばな)のかおるのきばの窓近く
螢とびかい、おこたり諫むる 夏は来ぬ
ホタルはいいけど、内容はキビシイですよ。ミカンの花の匂いがした。それはたいてい夜の雰囲気と共に流れてくるものでした。体はほてっていて、何となくけだるいのです。そんな時は、お酒でも飲んでも寝てしまったらいい。なのに、先生は、ホタルが窓近くまでやって来て、どうしてるの? 休んでるの? そんなんでいいの? 勉強しなくていいの? と、言ってるよということでした。
まさか、ホタルは、そんなつもりはないと思いますよ。できたら、人間たちとは違う世界で生きていきたいと思ってますよ。カゴに入れられて、読書のための照明にしないで! そう思ってるとおもうんですけど、先生は真面目に夏のけだるさを吹っ飛ばしておられます。
そうです。のんきにブログなんかしてる場合じゃないかも。本でも読まなくちゃ。すぐにコテッと寝てしまうけど。