甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

新宮のまち 東直子「ゆずゆずり」より

2016年08月18日 07時37分33秒 | 三重の文学コレクション
 東直子さんという歌人の写真にあこがれて、初めて彼女の本を最近買いました。それが「ゆずゆずり」(中公文庫 2009)です。

 その中に講演で紀伊田辺に行き、ついでに新宮を回ってきたという記述がありました。それで、私も、18キップで新宮に出かけたんです。新宮滞在は1時間にも満たなかったけれど……。

 神倉神社を出て、熊野速玉大社へ向かった。途中、ほの白い犬を連れた婦人に道を尋ねた。親切に道を教えていただいたあと、その犬は紀州犬ですか、と訊いてみる。幼い頃、和歌山の親戚が飼っていた、白くうつくしい紀州犬のことをふと思い出したのだ。しかし婦人は、いいえ、柴犬です、と毅然(きぜん)と述べ、眉をかすかに寄せて、紀州犬は、気性が荒くていけない、というようなことをやんわりと教えてくれた。

 それには、和歌山を歩いている犬はみんな紀州犬と思っているでしょう、あなたは、という柴犬婦人のけげんな気持ちが込められていたように思う。そんなことも察知しつつ、まだ紀州犬への憧れが捨てきれないわたしは、そうですか、でもこの犬、柴犬にしては色が白いですよねえ、と、食い下がってしまった。


 今回、那智勝浦と新宮市と熊野市を駆け足で回って、見かけたワンコは何匹かいましたが、みんなお座敷犬で、しかも観光にきたワンコさんばかりでした。地元のワンコには出会わなかった。

 ただ一匹、地元のネコさんには会いました。普通なら逃げていくはずなのに、このネコさんは空き家の番ネコらしく、私が近づくと、「どうしたコラ、何をしに来た!」と怒っている感じでした。

 ネコにすごまれて、私は怒っておられる写真を撮ったら、さっさと退却したものでした。那智勝浦の街なかのクロネコは強かった。



 街の写真は、何枚か撮りました。本来なら、温泉にゆっくり浸かりに来るのがここのカタチなのに、私は、ほんの一時間と少ししかここに滞在できなくて、めあての温泉に入り、さっさと移動するだけでした。もっとゆったりと来なくちゃね、本当にもったいない。……たぶん、こんなふうに人生でもセカセカしているうちに大事なことを忘れて、いいかげんにサラッと通り過ぎていることでしょう。

 だから、たまにはゆったり行く。でも、今回はセカセカ歩くのでした。紀伊半島南部はにわか雨が降ってきました。というのか、勝浦の街だけが降っていたのかもしれない。



 生のまぐろなどが上がる魚市場をチラリと撮りました。大粒の雨が落ちてきます。



 入り江を渡ります。海に面した家々の風情のあること! 中に入ってみたいけど、たぶん、私にはそのよさが味わえないでしょう。そういうところは、暑くて暗くて、狭いに決まっている。そうした不便な所で、どうして私がのんびりできるというんです。……でも、たぶん、そこに住むとなったら、それが都になるんでしょう。うちの実家と同じです。ゴミゴミして汚いし、狭いし、暑いのです。でも、それが都になる。お盆に帰った時は、エアコンの使い方が下手くそで、少ししんどかったけれど……。とにかく、住んでみたら、そこは都です。



 那智勝浦町のはまゆは、なかなか観光ルートからはずれているし、駐車場もないし、なかなか行けないところです。駅から歩いて15分程度なのに、なかなか行かない。この日は、愛知県のお客さん夫婦が先に入っておられて、壁越しに話しておられました。私が入ったら、奥さんは黙ってしまった。申し訳ないし時間もないのですぐ出たら、また壁越しに話しておられたみたいです。さすが中年夫婦! うらやましい。


 東直子さんのつづきです。

 しかしその質問は、しずかな笑顔で流され、速玉へ行かれるのなら、浮島の森も寄られるといいですよ、と、教えてくれた。
 
 浮島の森?

 熊野を何度も訪ねたことがあるというノダミさんも、その存在は知らなかった。

 浮島です、浮いてるんですよ、と柴犬婦人は言う。空にぷっかりと浮かぶ島を、瞬間思う。沼があってね、沼に浮いているんですよ、と柴犬婦人は説明を加えてくれた。なにがどういいのかは分からなかったが、わざわざ薦めてくれるからには「いい」を、体験できることは間違いないだろう。

 速玉大社に詣でたのち立ち寄った洋菓子店に、「新宮市内お菓子銘店めぐり」という地図が置いてあった。浮島の森の場所も記載されている。地図を頼りに歩いた。目指すあたりに緑色のこんもりとした森が見える。あそこに違いないと近づいた。

 一直線に近づける道はなく、ぐるりと迂回しなくてはならなかった。しかし、そこに沼はなく、普通に山に木が生えているだけであった。しまった、これは違う。浮いていない。迂回して目指していたつもりが、いつの間にか、アサッテの方角へきてしまったらしい。



 指定をとった電車の時間が迫っていたので、それ以上浮島の森を探すことはできず、断念して駅へ急いだ。わたしの胸の中に、沼にぷかりと浮かぶ孤高の森が生まれた。行ってみたかったが、行けなかった場所は、想像力が、想い出に変えてくれる。




 勝浦の路地から海(勝浦港)が見えます。なかなかいい感じ。今度、漁師町を歩いてみないといけないです。また、つまらないテーマがみつかりましたね。海と人の家とのコントラストがなかなかです。



 船だって、いつも、どこでも同じようなものだけれど、なんだかステキです。

 新宮の街、もっと撮ればよかったのだけれど、こちらは滞在時間が30分程度だったので何も撮りませんでした。



 昔、大好きだった仲ノ町商店街、ここがすべてシャッター通りになっていて、それが残念でした。商店街は消滅する運命なのかもしれない。

 もっとみんなが、クルマから降りて、電車で移動しないとダメですね。青春18じゃなくて、白秋60キップということで、免許証を見せたら買える行楽シーズン用のキップを売るとかしてくれると、中高年は飛びつくと思うけどなあ。そうしたら、各地の商店街は、中高年であふれるのに!



 仲ノ町商店街のお魚タイルです。いろんなのがありましたが、タツノオトシゴだけ撮りました。マンボウも撮ればよかったなあ。また、次の楽しみに取っておきましょう!


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