![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/f1/956ee56e50e35a509272949e294c076c.jpg)
日曜日、十数年ぶりに昔自分が勤務していたところを訪問しました。1人では2、3度たずねたことはありますが、妻が一緒というのは十数年ぶりでした。
自分たちが住んでいた住宅を、少し離れたところから振り返って眺めてみました。当時は南側に製材所があって、朝から夕方までずっと製材所の轟音がして、1日中家にいる妻はその音とともに生活をしていました。かわいそうなことをしました。そんな所に何年も住んでいました。製材所はすでに無くなり空き地になっていました。
住宅は規格の決まっているコンクリートの建物で、今もそこに住んでいる人のクルマや洗濯物が見えました。十数年前にはここに自分たちのくらしがあったのだなという思いで振り返ると、今そこに住んでいないのが不思議なような、時間は過ぎたのだから仕方がないような……。中に入ってあれこれ見たい気持ちもありましたが、今はだれかの生活の場所なので、ただ遠目に見るだけでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/41/07d048f35e9b82baaf108b15b7c645f4.jpg)
毎日通ったスーパーマーケットの中をぐるっと回りました。売り場の位置が多少変更されていたり、にぎやかそうなお土産が並び、あまり若者はおらず、買い物客はたくさんいるのに、知った顔はまったくおらず、浦島太郎のような気分になりました。当時は狭い町なのでここへいけば必ず見知った顔がいて、挨拶したり言葉を交わしたりしたのです。そういう田舎暮らしが面倒だなという気持ちも持っていました。それが今は、全く自分たちとわかってくれる人がいなかったのです。不思議な浮遊感がありました。
「おい、自分たちは昔ここに住んでいたのだよ。どうしてみんな、そんなに無表情なんだよ。声くらいかけてくれたっていいじゃないか!」と叫びたくなります。でも、私たちは、たまたま通りすがりの旅人を装い、さびれた町のさびれたお店を冷やかしに来た客になりすまし、あっさりと出てきました。
その町はミカンが名産でした。昔買ったように道路沿いのお店や無人市場、直販所などをめぐり、ミカンをいっぱい買いました。どのミカンも甘く、しっかりした味で、感傷旅行をしている自分たちを昔にもどしてくれて、自分たちの暮らしは今はここにはありませんが、ここからつながっている今の暮らしがあるのです。仕方がないから今の暮らしの本拠地へ戻ろうっと、帰路についたのでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/52/a1d2b5ea1eb3ae399799f2efac715d54.jpg)
★ 昔住んでた町を訪ねると、何とも言えない不在感があります。なじみのある町なのに、すでに自分たちの根っこは切られてしまっている。切り花になった私たちは、花瓶の中であったり、移し替えられた土の中だったりしたところへ少しでも根を張って生きていくしかないのであります。
いっそのことずーっと同じ町に住んでいられたらいいのだけれど、時には出て行かなきゃいけないし、ここで安定したと思ったら、どこかへ行かされることってよくあることだし、一寸先は闇なのだから、とにかく今、そこにあるところで精一杯やっていこうと思うのであります。昔住んでた所にふたたび根を張るのも楽しいのだけれど……。
自分たちが住んでいた住宅を、少し離れたところから振り返って眺めてみました。当時は南側に製材所があって、朝から夕方までずっと製材所の轟音がして、1日中家にいる妻はその音とともに生活をしていました。かわいそうなことをしました。そんな所に何年も住んでいました。製材所はすでに無くなり空き地になっていました。
住宅は規格の決まっているコンクリートの建物で、今もそこに住んでいる人のクルマや洗濯物が見えました。十数年前にはここに自分たちのくらしがあったのだなという思いで振り返ると、今そこに住んでいないのが不思議なような、時間は過ぎたのだから仕方がないような……。中に入ってあれこれ見たい気持ちもありましたが、今はだれかの生活の場所なので、ただ遠目に見るだけでした。
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毎日通ったスーパーマーケットの中をぐるっと回りました。売り場の位置が多少変更されていたり、にぎやかそうなお土産が並び、あまり若者はおらず、買い物客はたくさんいるのに、知った顔はまったくおらず、浦島太郎のような気分になりました。当時は狭い町なのでここへいけば必ず見知った顔がいて、挨拶したり言葉を交わしたりしたのです。そういう田舎暮らしが面倒だなという気持ちも持っていました。それが今は、全く自分たちとわかってくれる人がいなかったのです。不思議な浮遊感がありました。
「おい、自分たちは昔ここに住んでいたのだよ。どうしてみんな、そんなに無表情なんだよ。声くらいかけてくれたっていいじゃないか!」と叫びたくなります。でも、私たちは、たまたま通りすがりの旅人を装い、さびれた町のさびれたお店を冷やかしに来た客になりすまし、あっさりと出てきました。
その町はミカンが名産でした。昔買ったように道路沿いのお店や無人市場、直販所などをめぐり、ミカンをいっぱい買いました。どのミカンも甘く、しっかりした味で、感傷旅行をしている自分たちを昔にもどしてくれて、自分たちの暮らしは今はここにはありませんが、ここからつながっている今の暮らしがあるのです。仕方がないから今の暮らしの本拠地へ戻ろうっと、帰路についたのでした。
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★ 昔住んでた町を訪ねると、何とも言えない不在感があります。なじみのある町なのに、すでに自分たちの根っこは切られてしまっている。切り花になった私たちは、花瓶の中であったり、移し替えられた土の中だったりしたところへ少しでも根を張って生きていくしかないのであります。
いっそのことずーっと同じ町に住んでいられたらいいのだけれど、時には出て行かなきゃいけないし、ここで安定したと思ったら、どこかへ行かされることってよくあることだし、一寸先は闇なのだから、とにかく今、そこにあるところで精一杯やっていこうと思うのであります。昔住んでた所にふたたび根を張るのも楽しいのだけれど……。
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