この土日、大阪の古本市をめぐろうという気構えで、実家の方へ行って参りました。収穫は、冒頭のわけのわからん呪文みたいな3冊です。
私は、何を探しているんでしょうね。主に歴史物ということなのかなあ。奥さんは「あなたは歴史が好きなのよ」と言いますが、私自身は、いや、そうではなくて、もっと民族的なもの、民衆史みたいな、大好きな色川大吉先生のされてたような、そういう世界にあこがれたりします。でも、どうなんでしょうね。それをやるには取材力が足りないな。
ちゃんと決まっていないです。それに何しろ不勉強ですから……。
言い訳はいいから、本の内容ですね。
1 フィリッピン独立戦話 あぎなるど/山田美妙著 中公文庫 1990 ……200円
題名の「あぎなるど」とは、独立戦争で活躍した将軍の名前だそうです。そういう人がいたなんて、もちろん私は知りません。歴史で習ったこともありません。そもそも私たちが習う歴史って、表面的だし、なかなかそこに人が生きていたことを感じるのがムズカシイです。
今回、四天王寺の古書市で最初に買ったのがこれでした。二十数年前に出た本ですけど、とてもキレイな本でした。フィリピンの独立に興味があるわけではありません。いつか母方の祖父が戦死した土地にお参りにいきたい気持ちはもっています。でも、フィリピンという国のイメージが尻込みをさせます。でも、いつか行けるなら行きたい。そして、ただそこの空気を感じて、お祈りしたい。
それは私の個人的な思い入れ(しかもあまり微弱な思いかも……)です。それと山田美妙がどう関係するのです。そして、そもそも山田美妙ってだれです? それさえあやふやです。
文庫のカバーの著者紹介を見ると、1868年に生まれです(漱石先生の一つ下)。尾崎紅葉たちと硯友社(けんゆうしゃ)を組織し、1888年に短編集「夏木立」を刊行、これが出世作となる。そして、一時好んでフィリピンの亡命者らと交流をもったりしていたそうです。晩年は辞書の編纂(へんさん)と歴史小説の執筆に終始し、作家としては不遇のままに終わり、1910年に亡くなります。
最初の本は1902年にでていて、その40年後にふたたび「アギナルド将軍」という形で出されています。おそらく当時の日本の南進ブームをふまえ、スペイン・アメリカから地元の人たちが独立したように、日本の力でフィリピンを再生してやろうというような、著者の思いとは違った意味で出されたものなのかもしれません。
それがさらに半世紀後に中公文庫が取り上げるんですから、中央公論という会社も意欲的なことをしていたのだと思います。
さあ、私はこの本を読むのでしょうか? 少し危ないけど、今は特に読みたい物もないし、気持ちは世界に向かっているので、百年前の本ですけど、読みたいなあと思います。
2 ケナリも花、サクラも花/鷺沢 萠(めぐむ) 新潮社 1994 ……100円
彼女の本は、うちに1冊ありますね。自伝的な「私の話」だったかな。それ以外の小説みたいなのは、読んでもなんだかつまらなかったんです。どうしてこの本を買ったのかというと、韓国に短期留学をしたときのことが書かれているようで、異文化に触れた思いが書かれているのかなと思ったんです。
異文化とはいえ、彼女はクォーターかで、ご先祖様には韓国の人の血が流れているので、いわばルーツに回帰していきたくなったことが書かれているのかなと軽い気持ちで買いました。となりに短編集も置いてあったから、ついでに買えばよかったんですけど、みみっちい私は買いませんでした。
今さらながら、みみっちいのが染みついてますから、あとでいつも後悔してしまいます。
好きになったり、嫌いになったり、何かあるんだろうと詮索(せんさく)したり、私のやることって、気まぐれです。でも、少しは好きなのでしょう。だから、わざわざ彼女の本を買いました。嫌いと言いつつ好きなのかもしれません。
3 国文学 徒然草(雑誌) 学燈社 1990 ……100円
これは趣味となつかしさで買いました。徒然草は好きな古典ですけど、何と言っても高校の時、教えていただいた先生が執筆者の一人でおられるので、たぶん読まないと思うけど、先生の文章に接することができると、無条件で買いました。
この先生、青森県の八戸のご出身で、帰宅すると短時間寝て、それから勉強し、明け方にまた少しだけ寝てと、高校時代は毎日3時間くらいしか寝なかったということでした。それくらい勉強されて、東京の大学に通われ、お仕事は大阪で教員をされ、私たちの指導に当たってこられた。時折、出張等で学校を早く出られることがあって、やはりあの先生は、ほかの先生方とは違って、いつも上向きの先生なんだとか思っていました。
東山魁夷の「唐招提寺への道」(新潮選書)をテストの時に読まれていたこと、そういう場面が思い出されます。
一度奈良国立博物館の仏像館でお姿を拝見したような気がするのですが、奥様と一緒におられたので、声をかけられず、そのままやりすごしてしまいました。できのわるい私のことなんか当然憶えておられないでしょうし、それでいいのだ、知らんぷりしようと念じてたものですが、とにかく教えていただいたのは事実だし、クールな先生だったので、そちらの印象もありありとしていて、とりつく島はない感じなんだけど、好きな先生だったんです。というわけで、買っちゃいました。
たったの3冊の古本市。全部で400円しか使いませんでした。もったいないことです。でも、すぐに疲れてしまうし、土曜日の大阪は日差しもきつくて、とても太陽の下にはおれませんでしたし、これが限界でした。
ああ、古本屋のオヤジへの道は遠いです。
この秋の伊勢の一箱古書市、参加するんだろうか。自分でもよくわかりません。さあ、どうしよう……。
★ あれから1年。今年はたくさん買いましたけど、例によってみみっちく、7冊くらいしか買ってません。ケチですね。欲しい本もあったくせに、ついつい手が出なかった。そういう私なんですね。(2017.10.8 Sun)
私は、何を探しているんでしょうね。主に歴史物ということなのかなあ。奥さんは「あなたは歴史が好きなのよ」と言いますが、私自身は、いや、そうではなくて、もっと民族的なもの、民衆史みたいな、大好きな色川大吉先生のされてたような、そういう世界にあこがれたりします。でも、どうなんでしょうね。それをやるには取材力が足りないな。
ちゃんと決まっていないです。それに何しろ不勉強ですから……。
言い訳はいいから、本の内容ですね。
1 フィリッピン独立戦話 あぎなるど/山田美妙著 中公文庫 1990 ……200円
題名の「あぎなるど」とは、独立戦争で活躍した将軍の名前だそうです。そういう人がいたなんて、もちろん私は知りません。歴史で習ったこともありません。そもそも私たちが習う歴史って、表面的だし、なかなかそこに人が生きていたことを感じるのがムズカシイです。
今回、四天王寺の古書市で最初に買ったのがこれでした。二十数年前に出た本ですけど、とてもキレイな本でした。フィリピンの独立に興味があるわけではありません。いつか母方の祖父が戦死した土地にお参りにいきたい気持ちはもっています。でも、フィリピンという国のイメージが尻込みをさせます。でも、いつか行けるなら行きたい。そして、ただそこの空気を感じて、お祈りしたい。
それは私の個人的な思い入れ(しかもあまり微弱な思いかも……)です。それと山田美妙がどう関係するのです。そして、そもそも山田美妙ってだれです? それさえあやふやです。
文庫のカバーの著者紹介を見ると、1868年に生まれです(漱石先生の一つ下)。尾崎紅葉たちと硯友社(けんゆうしゃ)を組織し、1888年に短編集「夏木立」を刊行、これが出世作となる。そして、一時好んでフィリピンの亡命者らと交流をもったりしていたそうです。晩年は辞書の編纂(へんさん)と歴史小説の執筆に終始し、作家としては不遇のままに終わり、1910年に亡くなります。
最初の本は1902年にでていて、その40年後にふたたび「アギナルド将軍」という形で出されています。おそらく当時の日本の南進ブームをふまえ、スペイン・アメリカから地元の人たちが独立したように、日本の力でフィリピンを再生してやろうというような、著者の思いとは違った意味で出されたものなのかもしれません。
それがさらに半世紀後に中公文庫が取り上げるんですから、中央公論という会社も意欲的なことをしていたのだと思います。
さあ、私はこの本を読むのでしょうか? 少し危ないけど、今は特に読みたい物もないし、気持ちは世界に向かっているので、百年前の本ですけど、読みたいなあと思います。
2 ケナリも花、サクラも花/鷺沢 萠(めぐむ) 新潮社 1994 ……100円
彼女の本は、うちに1冊ありますね。自伝的な「私の話」だったかな。それ以外の小説みたいなのは、読んでもなんだかつまらなかったんです。どうしてこの本を買ったのかというと、韓国に短期留学をしたときのことが書かれているようで、異文化に触れた思いが書かれているのかなと思ったんです。
異文化とはいえ、彼女はクォーターかで、ご先祖様には韓国の人の血が流れているので、いわばルーツに回帰していきたくなったことが書かれているのかなと軽い気持ちで買いました。となりに短編集も置いてあったから、ついでに買えばよかったんですけど、みみっちい私は買いませんでした。
今さらながら、みみっちいのが染みついてますから、あとでいつも後悔してしまいます。
好きになったり、嫌いになったり、何かあるんだろうと詮索(せんさく)したり、私のやることって、気まぐれです。でも、少しは好きなのでしょう。だから、わざわざ彼女の本を買いました。嫌いと言いつつ好きなのかもしれません。
3 国文学 徒然草(雑誌) 学燈社 1990 ……100円
これは趣味となつかしさで買いました。徒然草は好きな古典ですけど、何と言っても高校の時、教えていただいた先生が執筆者の一人でおられるので、たぶん読まないと思うけど、先生の文章に接することができると、無条件で買いました。
この先生、青森県の八戸のご出身で、帰宅すると短時間寝て、それから勉強し、明け方にまた少しだけ寝てと、高校時代は毎日3時間くらいしか寝なかったということでした。それくらい勉強されて、東京の大学に通われ、お仕事は大阪で教員をされ、私たちの指導に当たってこられた。時折、出張等で学校を早く出られることがあって、やはりあの先生は、ほかの先生方とは違って、いつも上向きの先生なんだとか思っていました。
東山魁夷の「唐招提寺への道」(新潮選書)をテストの時に読まれていたこと、そういう場面が思い出されます。
一度奈良国立博物館の仏像館でお姿を拝見したような気がするのですが、奥様と一緒におられたので、声をかけられず、そのままやりすごしてしまいました。できのわるい私のことなんか当然憶えておられないでしょうし、それでいいのだ、知らんぷりしようと念じてたものですが、とにかく教えていただいたのは事実だし、クールな先生だったので、そちらの印象もありありとしていて、とりつく島はない感じなんだけど、好きな先生だったんです。というわけで、買っちゃいました。
たったの3冊の古本市。全部で400円しか使いませんでした。もったいないことです。でも、すぐに疲れてしまうし、土曜日の大阪は日差しもきつくて、とても太陽の下にはおれませんでしたし、これが限界でした。
ああ、古本屋のオヤジへの道は遠いです。
この秋の伊勢の一箱古書市、参加するんだろうか。自分でもよくわかりません。さあ、どうしよう……。
★ あれから1年。今年はたくさん買いましたけど、例によってみみっちく、7冊くらいしか買ってません。ケチですね。欲しい本もあったくせに、ついつい手が出なかった。そういう私なんですね。(2017.10.8 Sun)