松阪の市街地の中に、サイトウミュージアムというのができたそうです。公立ではないので、既存の建物をリニューアルした美術館でした。
だから、1階の展示室の天井は、昔の建物の鉄骨をそのまま生かしてあるようでした。なるべく変な色がつかないで、ブランクのままで、展示内容やこれからの人々へのつながりで美術というものに向き合ってもらおう、そういう意図が感じられる建物です。
以前のことをいうと、申し訳ないけど、地元密着の衣料などの総合スーパーだったところです。それが、美術館になったなんて、信じられない感じです。だから、私みたいなのん気ものとしては、自分の町にできた美術館を支えなくちゃ、という気分でもありました。これがずっこけるようでは、私の町の力というのも、その程度のものだったんでしょう。さあ、どうなることか……。
1階のメイン展示場は、三宅克己(みやけこっき 1874-1954 阿波藩の江戸屋敷の方の子どもさんなんだそうです。三重県と関係ないですね)という人の水彩画が展示されていました。水彩画の大下藤次郎さん、島崎藤村さん、国木田独歩さん、浅井忠さん、いろんな人と交流したようです。そして、水彩画を活躍の場とした。
水彩画は、紙に描くものなので、永遠に残るというものではなくて、少し不安定な作品ではあります。あと何百年も同じ状態である、というのはかなり難しいでしょう。ただ、今、それを見た人たちに愛される、優しい世界を描くために、単純なようでいて、実は細かく、人々も織り込みながら、作品作りはされたようです。
どういう訳か、「伊賀・名張川の初秋」という作品は撮影OKということなので、撮らせてもらいました。でも、実際の作品の世界には、これでは入っていけません。「ああ、川が流れているなあ」と思うばかりで、実際の絵を前にしないと、私たちはどうも本気になれないようです。そこがライブなんでしょうね。
先輩にあたる大下藤次郎さんの「風景」という作品もOKということでした。
でも、これだけでは、ちっとも作品世界に入れないです。田園風景、秋の実り、遠くの山、遠景の小さな人の姿、そんなのをじっくり見なくっちゃ。大下藤次郎さんは、島根県の益田市に作品がたくさんあったような、いつか見に行きたいくらいです。
ライブって、どうしてこんなに違うんでしょう。写真で貼り付けても、写真を見る人をその世界の中に引き入れてくれないですよね。
2階の展示室は、石井柏亭という方で、克己さんより八つ年下です。こちらは油絵で、中禅寺湖と男体山を描いています。
私は、ただ見せてもらったというだけで、それを載せることばかり夢中で、作品世界に入れてないことに気づきました。こんなんじゃダメですね。
こういうのを、松阪の町中で見られて、そのうれしさが強すぎて、浮き足立ちましたね。まだ三か月はあるみたいだから、また見に行きます。今度は奥さんを連れて!