30【晏子の御】……たいしたことのない( )に満足しおごりたかぶる小人物。
31【晏嬰の孤裘】……きわめて( )なことのたとえ。
★ 空欄に適当なことばを選んでください。
30 ア・財産 イ・権力 ウ・地位 エ・住居
31 ア・ぜいたく イ・貧乏 ウ・質素 エ・派手
30番は、司馬遷の『史記』で取り上げられている話です。晏子(あんし)さんがいなくなってからかなり後の人である司馬遷さんには、やたら晏子さんがかっこよく見えたらしいのです。たぶん、王様に対して黙っていないところだと思います。袖を引っ張ろうが、小男だと非難されようが、こうだと確信したことに晏子さんはしっかり言うべきことは言う人でした。そういう人が、あの広くて古い中国にも、あまりいなかったということなんでしようか。
晏子さんの馬車は四頭立ての立派な乗り物でした。その御者(ぎょしゃ)は、自分がこんなすごい乗り物を運転する自分にほれぼれして、得意げに運転したというのです。仕事を終えて家に帰ると、奥さんが「離婚したい」と切り出してきました。こんなに立派な仕事をしているカッコイイ自分から、どうして妻は別れたいというのか? 夫である御者はびっくりして、妻が別れたいという理由を訊ねました。
妻は言います。「晏子さまは小柄な方ですが、毅然とした中にも謙虚さを感じさせる雰囲気をお持ちです。一方あなたは、大柄で立派な体格であるにもかかわらず、馬車の運転手で大満足の様子で、自分は何もしていないのに、天下を取ったような気持でいるんじゃないですか? 私は、こんな男と連れ添っていても、いつまでたっても将来の見込みはないし、小さなことで満足するようなお尻の穴の小さい男はキライです!(なんていうお下品なことばは言ってないですね) 私は、あなたみたいなつまらない男の人とはもう別れたいと思うのです。」と。
ダンナの御者はびっくりしたことでしょう。得意の絶頂から蹴り落とされた感じです。そして、今後の自分の方向性が見えたことでしょう。小さな満足を捨てて、大きな展望を持ち、日々を謙虚に過ごして、何事も勉強の姿勢で人に接していこう! そう決めたら、奥さんにこれからは生き方を改めると宣言して、妻の激励に答えたのでしよう。すぐに晏子さんは御者の態度が変わったことに気づき、彼を違うポストに昇格してくれました。素直に妻のアドバイスを聞けるところがよかったのです。このような素直さを持ちたいものです!
31番は、儒家の問答の中から生まれたことばです。曾子(そうし)さんが「晏子は礼を心得ているのだ」と主張すると、有若(ゆうじゃく)は、「晏子は一枚の狐裘(こきゆう)で30年を過ごしたけれども、それが礼を知っていることにはならない。ただのケチな野郎だ。」とけなしました。
曾子さんは、国の中に無駄づかいやぜいたくな雰囲気があるときには、君子は倹約の模範を示すのです。自分で見本を示すことができるのが君子なんですよ。だから、当然、晏子は礼儀が何であるかを知っていたのですよ。」と述べました。
昔の事例の中から、今を生きるルールを見つけるのが哲学者の仕事であり、口で言うだけじゃなくて、態度で示すことって大事である、というのは今の私たちも同じです。キツネの皮で作った上着を30年着続けること、言うのは簡単だけど、行うのは大変だし、手入れも大変だったでしょう。だから、「晏嬰の孤裘(あんしのこきゅう)」とは、立派に有言実行する質素の見本だったのです。
すごいですね。
★ 答え 30・ウ 31・ウ でした!