柴咲友香さんの「百年と一日」を読み終わりました。彼女は、うちの実家の大阪市大正区出身で、高校も同じです。残念ながら、私の方が年寄りで、彼女は現役バリバリです。
本当に、誇らしい後輩です。彼女のデビュー作「きょうのできごと」(2000)は、大阪弁の浮遊感はおもしろかったけれど、中身はどうだったのかな。私はイマイチわかりませんでした。もう一度読んでみたいですけど、もううちにはありません。また、買いに行かなきゃいけないです。
「百年と一日」は、彼女のツイッターで知りました。やたら宣伝しているし、筑摩書房から出ているし、内容紹介もネットで見させてもらったから、では、奮発して買おうと、先月買ったんでした。
三十三の物語があるそうです。
そのひとつ目が、高校の同級生の話でした。高校になって初めて混合名簿になった二人の女子高生。今までは男女別で、女子は男子の後の番号になっていた。それが混合になったのは、90年代の後半だったでしょうか。ということは、友香さんが経験したことだったんでしょう。
青木さんと浅井さん、二人は1組と2組、それぞれのクラスで出席番号が1番だった。そういうのに面食らって、それでも、そういうのもありかとなじもうとしていた。体育は1・2組が合同の時間帯で、授業は男女別だから、二人の女の子は体育の授業などで、お互いクラスの一番だねとか、話したのかどうか、という関係です。別に友だちではなかった。
それがたまたま、校舎の裏手で雨の日にオニフスベみたいな大きなキノコを見つけて、その横に宇宙人みたいなのを見つけた。
二人は、高校卒業後、京都にライブにそれぞれに出かけて、たまたまそこでチラッと再会して、それからはなかなか会えなくなったそうです。まあ、そんなのはよくあることで、二度と会えないことなんていっぱいあるはずです。
2組の1番の人は、瀬戸内の島でうどん屋さんでバイトをしているところをテレビで取材されたり、ギターを弾いてるところも番組内で流されたりしていた、それを1組だった女の子は見てしまう。
1組の女の子は、東京に出て、そちらでお勤めしながら、ブログで記事とか書いているうちに、深夜ラジオの人生相談のコーナーを受け持つようになり、何年かしたら、大学の講師をするようになった。
最初の授業の時、声をかけてきた学生は、2組の女の子の子どもさんで、母親は再婚した相手と大連に住んでいる、というのを教えてもらう、そんな内容でした。
高校の時から始まって、京都、瀬戸内、東京の放送局、大学の構内と時間と空間を移動していきます。それが8ページの中で語られてるので、細かい話は抜きでポンポンとした展開です。
宇宙人は本当にいたのか、それを二人はどう思ったのか、ライブは楽しかったのか、どんなふうにして瀬戸内でうどん屋さん? そこから再婚、ギターの演奏はどうなのか、そんなのは細かく書かれていません。
題名がそうであるように、いろんな時間を飛び越え、いろんな人生が繰り広げられ、その中でささやかな物語が起こる。
ラーメン屋だったり、駅、田舎の町、戦争があったところ、外国の話、脈絡なく飛び出てくる。どことなく中世の説話集を読んでる気分になってきて、物語は読み切りで、とりあえずその世界をしばらく味わう、という感じになっていました。
読んだらすぐに何もかも忘れてしまう私には、何も残ってないのだけれど、人生の勉強になるなあとは思います。いろんな人生の長い時間を十ページくらいにまとめた形になっています。そうしたそれぞれの人生を、当然私は歩けないので、チラッとコンパクトに見させてもらって、そういう生き方・そういう人もいるのかもしれないなと、教わった気分でした。
人生の勉強ができる本ですか?
いや、そんな偉そうなものではないのだけれど、まあ、楽しかった。