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廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

シルヴィア・シムズの秀作

2016年07月20日 | Jazz LP (Vocal)

Sylvia Simms / Sylvia Is !  ( 米 Prestige PR 7439 )


シナトラが「最高のサルーン・シンガー」と絶賛したシルヴィア・シムズがプレスティッジに残したこのアルバムはギター・トリオがバッキングをつける。
ジャズ・スタンダードはケニー・バレル、ボサノヴァはバッキー・ピッツァレリが受け持っているが、ケニー・バレルが抜群の出来だ。 これを聴く限り、
ヴォーカルの伴奏はジョー・パスやジム・ホールよりもケニー・バレルのほうが上手い。 静かで奥行きのある空間を作り出し、シルヴィアが伸び伸びと
歌える場を提供している。 一聴してすぐにケニー・バレルとわかる褐色の澄んだトーンが夜の深い時間の雰囲気を醸し出している。

シルヴィアの声質は美声ではないが、実直に歌うことで相手の心に迫ろうとする。 その声をRVGが深いエコーを効かせた素晴らしい録音で録っており、
リッチで高級なサウンドが愉しめる。

時代の流行りを受けてボサノヴァのスタンダードも歌っているが、"How Insensitive" の揺蕩うような旋律を上手くコントロールしながら進めていく様は
素晴らしく、軽く流されがちなボサノヴァも非常に手応えのある音楽になっている。 

3大レーベルはヴォーカルをさほど熱心には録らなかったけれど、残された数少ない作品はその厳しい選球眼に耐えただけあって、よく出来た内容のものが
多い。 そしてジャズ専門レーベルらしく、バックの演奏陣にも一流どころを使って、単なる歌伴ではない本格的なジャズに仕上げられている。 
このアルバムは、その最も良い見本だと思う。


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消え去ってしまう前に

2016年06月25日 | Jazz LP (Vocal)

Al Hibbler / Sings Love Sings  ( 米 Verve MGV-4000 )


ヴァーヴのレコードには時々こういう女性の姿をあしらったデザインのジャケットがある。 ジャズを聴くのは男性のほうが圧倒的に多いから、
こういうジャケットはそれなりに販売に寄与したんだろう。 3大レーベルなんかは硬派だったからこういう戦略は取らなかったが、商売人だった
ノーマン・グランツはそんなことにはお構いなしで、おそらくその影響で他のマイナーレーベルも時々真似するようになったんじゃないだろうか。

アル・ヒブラーはハーブ・ジェフリーズの後任としてエリントン楽団に入った人で、50年代にソロで作ったレコードにはその人脈でエリントン楽団の
メンバー達が参加しているものが多い。 このアルバムではカウント・ベイシー楽団やルロイ・ロベット楽団など複数のビッグバンドを背景に歌って
いるが、その中には当然ジョニー・ホッジスの楽団もいる。 そういうオールドビッグバンドのリッチなサウンドをバックに快調に歌っていく。
ハーブ・ジェフリーズの名唱で知られる "Flamingo" も表敬としてちゃんとやっている。

商業的にはR&Bシンガーとしての認知度が高いのかもしれないが、やはりこの人の本懐はジャズの作品のほうじゃないだろうか。 特に美声という訳では
ないし、深いバリトンというほどでもないけれど、情感豊かに表現するし、意外にさっぱりとした後味が残る。 不思議と心に残る歌い方をする人で、
やはりそこは何かを持っているんだと思う。 

昔はエサ箱でよく見かけたこの人のレコードも、今では見かけることはまずない。 もう誰も聴かないんだろうし、きっとこのまま忘れ去られてしまう
んだろうなと思う。 "Unchained Melody" だって、日本ではこの人が歌ったオリジナルヴァージョンを知っている人はあまりいないんだろう。 
残念なことだがアルバムとしての有名作がないと、こういう末路を辿るのはある意味やむを得ないことなのかもしれない。


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"Emily" の名唱

2016年04月02日 | Jazz LP (Vocal)

Tony Bennett / The Movie Song Album  ( 米 Columbia CL 2472 )


私はジョニー・マンデルが書いた曲が特別に好きで、アルバムの中にそれらが入っているとそこを軸にして聴くことが多い。 どの曲もかなり高度な
コード進行を敷いていて、独特の陰影の深い雰囲気を持っている。 和音の響きやコードが移り変わっていく様を味わうのは音楽を聴く時の重要な
愉しみの1つで、この人の曲はそういう部分でとても感動させてくれる。

ビル・エヴァンスが愛した "Emily" もマンデルが書いた代表作の1つ。 7thのコードの響きが曲を支配する幻想的な曲想で、とても好きな曲だ。
だから意識的にこの曲が入ったアルバムはたくさん聴いてきたけれど、やっぱりこのトニー・ベネットのヴァージョンが最高だと思う。

映画の主題歌ばかりを集めたこのアルバムはトニー・ベネットの美質が最高に発揮されたこの人の最高傑作。 曲ごとにバックのオケのアレンジャーが
異なっており、ニール・ヘフティ、クインシー・ジョーンズ、アル・コーン、ラリー・ウィルコックスら錚々たる面々が並ぶが、"Emily" ではジョニー・マンデル
が自らアレンジと指揮をしている。 とても繊細で洗練されたスコアで、これだけを独立して聴いても十分聴き応えがある。

トニー・ベネットはそのベルカント唱法のせいでデカい声を張り上げてうるさいと思われがちだが、実際は全く違う。 声量にたっぷり余裕があるお蔭で、
フォルテッシモでもピアニッシモでも声が震えることもなく、非常に抑制が効いた歌い方をする最高のテクニシャン。 こういうところは、ブラウニーの
トランペットと非常によく似ている。 本当の実力者にしか実現できない世界だ。

管楽器奏者がワンホーンでエンターテイメント性の高いスタンダード集を作ることは多いが、その数の多さに比べて本当に成功していると思えるものは
実際はかなり少ない。 つまり、それだけこのフォーマットは難しいということだ。 そういう中で、ヴォーカリストが作る作品には上手くできているものが
多いというのは、実はすごいことだ。 そういうところはもう少しきちんと評価されてもいいはずだ。

トニー・ベネットの歌う"Emily"は、いつも私の心を洗い、気持ちを奮い立たせてくれる。 そういう歌があるということは素晴らしいことだと思う。



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洗練され過ぎた代償

2016年03月20日 | Jazz LP (Vocal)

Mel Torme / Swings Shubert Alley  ( 米 Verve MG V-2132 )


"シューベルト・アレー"(ジャズの世界では"シューバート・アレイ"と表記される)はニューヨークのブロードウェイにあるシューベルト劇場の前にある
50m程の小さな通りの名前で、現在は様々な催し物が賑やかに行われる観光名所として有名な場所。 1959年にここを舞台にしたミュージカルがラジオや
TVで放送され、その中で使われたスタンダードナンバーを集めた企画物のレコードがこれだが、西海岸のミュージシャンを配してマーティー・ペイチが書いた
スコアが如何にもウェストコーストの明るい夜の雰囲気で、企画の本質とは根本的なところでズレているような気がする。 

ただ、そこを不問にすれば闊達な演奏と最盛期のメル・トーメの上質な歌が楽しめる。 ベツレヘムの作品のほうが切れるような勢いがあって音楽的には
優れていると思うけれど、その延長上にあるこちらはさすがに歌も演奏ももっとまろやかに成熟していて、一般的な商品価値はこちらのほうが高いのかも
しれない。 

不思議なことに、ブロードウェイのヒット曲、西海岸の有名演奏家、M.ペイチのアレンジ、というような表面的なデータだけでは語りきれない、どこか微妙な
苦味が聴き終えた後に残っていることに気が付くが、これはおそらくこのレコードをプロデュースしているのがラッセル・ガルシアだからなんだろう。
単純なヒット狙いの企画もののレコード、という話だけでは済まないところがあって、そこに微かな手応えというか、引っかかって心に残るところがある。
これが代表作の1つと言われるのは、軽快な歌と演奏が楽しめるからと言うよりは、そういう所を無意識のうちに聴き手が感じとるからじゃないだろうか。




Mel Torme with The Meltones / Back In Town  ( 米 Verve MG V-2120 )


メル・トーメのレコードだと思って聴くと、裏切られた、と感じるレコード。 品名詐称スレスレ、ではないだろうか。

主役は "メルトーンズ" と名付けられた4声コーラスの歌で、最初から最後までこのコーラス隊が歌い続けて、メル・トーメやアート・ペッパーらがそれに
ほんのりとオブリガートをつけるような感じでさらりと登場して、さっと去っていく。 メル・トーメは完全に楽器としての位置づけになっている。

マーティー・ペイチのスコア自体は元々がいつも可もなく不可もなく、という感じで特に何の感慨も覚えないけれど、ここではそういう没個性的な
ところを4声コーラスが上手く彩を添えるという補完の役割を果たしていて、心地いい音楽に化けているところは見事だ。 そこにメル・トーメのさすがに
上手いボーカルがすっと横切っていくところなんかは、なるほどなあ、と感心してしまう。


ただ、"シューバート・アレイ" も含めて、どちらも明らかに経済的に少し余裕のある白人中産階級をターゲットにしているという所に少しあざとさを感じる。
全体的にあまりに清潔で洗練され過ぎていて、これがアメリカのすべての階層に快く受け入れられていたのかどうかはちょっと怪しい。 
ロシア系ユダヤ人の移民だった両親の下で4歳の時に初舞台を踏んだという早熟の天才に変なレッテルが貼られはしなかったのか、と余計な心配をしてしまう。 
だから、コーラルやベツレヘム時代のもっと直球ど真ん中のシンプルなジャズをやっていたアルバムのほうがいいな、と思ってしまうだろう。



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アーネスティン・アンダーソンを偲んで

2016年03月19日 | Jazz LP (Vocal)

Ernestine Anderson / It's Time For Ernestine  ( スウェーデン Metronome MLP 15015 )


今月の10日、アーネスティン・アンダーソンが亡くなった。 87歳だったそうだ。 とても好きな人だったので、本当に残念だと思う。

音楽好きの両親が所有していたSPレコードを聴いて育ち、地元のバプティスト派の教会でゴスペルを歌い始めた。 高校時代にシアトルのローカル
バンドのリーダーにスカウトされて、舞台に立つようになった。 そのバンドでは若きクインシー・ジョーンズがトランペットを吹き、これまた若き
レイ・チャールズがピアノを弾いていた。

その後、順調にキャリアを重ねて良質なアルバムをコンスタントに発表したが、60年代後半のアメリカではロックに圧されてジャズの仕事は全く
無くなってしまい、止む無くロンドンに一時的に住まなければいけない時期もあった。 でも70年代後半にはまたアメリカに戻り、コンコード・
レーベルから作品を出せるようになり、穏やかで充実した晩年を送ることができたようだ。 素晴らしい歌手として、人生を最後まで過ごせたのは
よかったと思う。

彼女の名前が世界的に知られるようになったこのデビュー作は素晴らしい出来で、私にとっては大事なアルバムだ。 スウェーデンのジャズ・
ジャーナリストのClaus Dahlgrenの計らいでデューク・ジョーダンらクィンテットと共に渡欧し、ジョーダンらををバックにした録音と地元の
ハリー・アーノルドのビッグバンドとの録音の2つが収められている。

リンダ・ロンシュタットがネルソン・リドルと作った3部作の中で歌った "Little Girl Blue" がこのレコードで聴かれるアーネスティンの歌い方や
アレンジと全く同じで、きっとリンダもこのレコードを愛聴していて、録音に際してはお手本にしたんだろう。 そう思うと、私も嬉しくなる。

でも、このアルバムで最も素晴らしいのは、コール・ポーターの "Experimennt" だ。 1932年にロンドンで行われたミュージカル "Nymph Errant" の
中で歌われた曲で、化学の先生が教え子に恋に臆病にならずに何でも冒険して経験するように説いた歌。 コール・ポーターはハーヴァードに通った
インテリで、作った歌はどれも捻りが効いたハイブラウなものが多いけれど、この曲は夢見るような美しいメロデイーを誇る。 ただこじんまりと
した曲なので、インストの演奏には向かないせいか誰も取り上げないし、歌手でこれをレコードに残したのはメイベル・マーサ、
シルヴィア・シムズ、ジョー・ウィリアムスという日本人があまり聴かない人たちばかりなので、残念ながら日本ではまったくと言っていいほど
知られていない。

アーネスティンは美しいメロディーラインを崩すことなく、下から上へと押し上げるように歌っていく。 だから柔らかくしなやかで弾力性の高い
歌に仕上がっている。 濁りのない、まっすぐできれいな声も素晴らしい。 この歌唱は永遠に忘れられない。

Ernestine Anderson, Rest in peace. 私はあなたの歌をこれからも聴き続ける。 素晴らしい音楽を本当にありがとう。


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世界最高と言われた歌手

2015年08月23日 | Jazz LP (Vocal)

Tony Bennett / This Is All I Ask  ( Columbia CL 2056 )


音楽にはいろんな種類やスタイルがあるけど、結局のところ、最後に行き着くのは「歌」になる、というのは真実だと思います。
楽器というのは元々歌声の模倣品、代替品として始まっているし、その演奏は如何に「歌う」かで善し悪しが決まってくるもので、
人の素晴らしい歌声以上に感動させられるものは音楽の世界にはない。

そういう意味で、このトニー・ベネットは最高の歌声を持つ1人だろうと思います。 ベルカント唱法で最高のジャズを歌える唯一の人です。
絶頂期のオペラ歌手の歌声はグラスをも割る、と言いますが、この時代のトニー・ベネットもそうだったんじゃないでしょうか。
その圧倒的な声量がもちろんトレードマークですが、弱音部での情感の込め方も上手く、どこにも隙の無い歌い手だと思います。

それ以上に怖いのが、歌にはその人の人柄がそのまま出てしまうということです。 トニーの歌にはこの人の人柄の良さがそのまま出ていて、声量や上手さを
超えてそういうところに直感的に感動させられるのです。 これにはさすがのシナトラも「トニーが世界最高の歌手だ」と言わざるを得なかった。

彼のキャリアの最高の時期が上手い具合にレコードにたくさん残されていて、これはとてもラッキーなことだと思います。 ジャズの世界ではこのレーベルに
残された "Kind Of Blue" や "Time Out" の音の良さに話題が集中しがちですが、コロンビアがその音に最も注意を払ったのがこういうヴォーカル物だった
ことがこういうレコードを聴くとよくわかります。 トニーが絶唱するところではスピーカーが壊れるんじゃないかと思ってしまうような凄い音です。

このアルバムはジャズのインスト物では取り上げられない曲ばかりが収録されているのでジャズの中古屋ではまったく出回らない。
ラルフ・バーンズのオーケストラの豪華な演奏の中を自由に泳ぐようにトニー・ベネットが最高の歌声を聴かせます。 
この人はオーケストラをバックにした録音のほうがより素晴らしいです。



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愛聴する1枚

2015年07月05日 | Jazz LP (Vocal)

Buddy Greco / At Mister Kelly's  ( Coral CRL 57022 )


日本では本当にヴォーカル作品が好きな人にしか認知されていないバディ・グレコですが、アメリカのエンターテイメントの世界ではトップクラスの
大物でした。 このアメリカのエンターテイメントの世界というのはどうも日本ではうまく理解されないところがあって、その実態はほとんどまともに
伝わっていないし、あまりいい印象も持たれていないんでしょう。 

アメリカや欧州のジャズシンガーはみんなこのレコードの舞台になったような音楽を聴きながら気軽に食事ができるクラブに出演することで鍛えられ、
そこで業界関係者に認められてレコードを作る機会を得て、有名になっていく。 日本でジャズシンガーがまったく育たないのはそういう土壌が何も
ないからで、こればかりは文化の違いとはいえ、残念なことです。 だから、ジャズヴォーカルが好きな人はこうやって廃盤レコードをこそこそと
買い漁るしかなくなってくるのです。 

Mister Kelly's は50年代のシカゴにあったナイトクラブで、店の表には "HANG YOUR HAT at Mister Kelly's" という電飾の看板が出ていました。
このレコードジャケットはそれに引っ掛けたデザインになっていて、洒落ています。

バディ・グレコはピアノを弾きながら歌い、ジョン・フリゴのベースがそれに寄り添うように演奏されるシンプルなスタイルですが、ここでのグレコの
ピアノのスイングする様は凄まじくて驚かされます。 とても歌の余技とは思えない、歌を強くドライヴする弾きっぷりです。 

私はこの人の声質やメロディーのコントロールの仕方がとても好きで、どのレコードも愛聴盤になっていますが、このアルバムはライヴであることや
バックの演奏が最小限であることから彼の歌がとても親密な雰囲気に溢れていて、特に好きな1枚です。 心地よくスイングする曲としっとりと穏やかな
バラードがうまくブレンドされていて、いつまでも聴いていたいなあと思わせてくれる素晴らしい内容です。



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若き日の Sarah Vaughan その2

2015年02月08日 | Jazz LP (Vocal)

Sarah Vaughan / Sings with John Kirby and his orchestra  ( Riverside RLP 2511 )


これは、1946年にジョン・カービーのスモール・コンボのSP録音に若きサラ・ヴォーンが招かれて数曲歌ったセッションを1955年に10インチLPとして
切り直されたもので、22歳の時の彼女のみずみずしい歌声がきける愛すべきレコード。 収録された8曲のうち、4曲で歌っています。

オペラ歌手の唱法を取り入れた独自のヴォイシングが早くも聴ける、素晴らしい出来です。 たった4曲だけで、しかもどの曲も短いですが、
それでも1度聴いたら忘れられない印象が残ります。 彼女のお気に入りの "It Might As Well Be Spring" もちゃんと聴くことができます。

更に嬉しいことに、残りの4曲で聴けるジョン・カービーのコンボの演奏が上品で洗練されたオールド・ジャズで、これが素晴らしい演奏です。
ラッセル・プロコープ、バスター・ベイリー、ハンク・ジョーンズという顔ぶれが嬉しい。 これを聴けば、カービーのレコードを買いに
レコード屋へ思わず走り出したくなります。

サラ・ヴォーンの若い頃の歌声が聴けるLPは限られていますが、そのどれもが珠玉の内容です。 LP化されていないSPもたくさんあるので、
そういうのもそのうちに少しずつ聴いていきたいと思っています。 レコードを聴くというのは、本当に果てしない所業です。



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The Christmas Waltz

2014年12月23日 | Jazz LP (Vocal)

Frank Sinatra / A Jolly Christmas  ( Capitol W-894 )


12月になってこのレコードをよくかけるようになると、「もうすぐクリスマスね」と相方が毎年嬉しそうに言います。
「何がそんなに嬉しいんだ?」と訊くと、「だって、嬉しいでしょ?」と答える。

宗教観に関係なく、クリスマスには人を暖かい気持ちにさせるところがあります。 
人々の心の中の、ある共通したところから生まれてきたものだからなのかもしれません。 

他の音楽ジャンルと比べてジャズにクリスマス・アルバムが多いというのは、この音楽のある側面を象徴しているような気がします。
そして、私たちがジャズが好きな理由も、そういうところに無意識のうちに惹かれているからなのかもしれません。

シナトラはコロンビアにもクリスマス・アルバムを残していますが、まだ若い頃の歌唱で声の線も細く、物足りないところがあります。
それに比べてこちらのアルバムは声に深みがあり、ゴードン・ジェンキンズの繊細で感動的な伴奏も素晴らしく、私にとっては最高のアルバムです。
昔はクリスマス・アルバムを見かけるたびにあれこれと買い漁っていましたが、今はもうこれだけあれば十分です。

このアルバムにはジュール・スタイン&サミー・カーンが書いた "The Christmas Waltz" という素晴らしい曲が収録されており、これが私の一番の
お気に入りです。 アメリカのジャズのクリスマス・アルバムには、数多くの定番の曲たちの中に必ずこういう地味だけど素晴らしい曲を1つ、
こっそりと忍ばせるのが "暗黙のお約束" になっていて、それを聴くのも大きな愉しみの1つです。 そこに、アルバム制作者のセンスが問われます。
みんなそういうところで、実はひそかに競争していたんですね。




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Ernestine Anderson の素晴らしさ

2014年12月21日 | Jazz LP (Vocal)

Ernestine Anderson / It's Time For Ernestine  ( Metronome Records MLP 15015 )


私がサラ・ヴォーンの次に好きな女性シンガーが、このアーネスティン・アンダーソンです。

この人を好きになったきっかけはジジ・グライスのシグナル盤に収録された "(You'll Always Be) The One I Love" を聴いたことでした。
変なクセのない真っすぐで伸びやかな歌声が忘れられず、当時はこのレコードをかける時はこの曲は入ったA面ばかりを聴いたものです。
私は、例えば、"We Are The World" の映像を観ても、一番感動するのはダイアナ・ロスの歌のパートだったりするので、こういう黒人女性シンガーの
ストレートな歌い方に根本的に弱いのかもしれません。

ジジ・グライスのセッションへの参加後の1956年、彼女はロルフ・エリクソンのスェーデン・ツアーに誘われて渡欧し、全くの無名だったにも関わらず、
3か月の滞在中にクラブで歌ったりラジオでその歌声が流れるようになると現地では暖かい好意をもって受け入れられ、ストックホルムに来ていた
デューク・ジョーダンのトリオや地元のハリー・アーノルド楽団たちと初めての本格的なレコーディングを行います。 

これらの録音は、まず1956年にメトロノーム社から数曲がEP盤として数枚リリースされ、そのすぐ後に米マーキュリー社から "Hot Cargo"という
タイトルでLPが発売されます。 すると、これがアメリカでスマッシュ・ヒットとなり、彼女の名前は広く知られるようになりました。
そこでメトロノーム社もようやく重い腰を上げてこの録音を1958年にLPとしてリリースすることになり、それが写真のアルバムになるわけです。
スェーデン録音だからこのメトロノーム盤がオリジナルなんだろうと思っていたのですが、このジャケットの裏の解説を読むと上記のような経緯が
書かれており、なんだ、マーキューリー盤のほうが初出だったのか、とがっかりしたのでした。

まあ、それはいいとして、このアルバムで聴かれる彼女の歌声は素晴らしい。 帯域は芯のしっかりとしたアルトですが、原曲のメロディーを
変にいじらずに大事にした歌い方で、歌がしっかりと自分の中に入ってきます。 そしてなにより伸びやかな歌声に聴き惚れてしまいます。
ハリー・アーノルド楽団も立場をよくわきまえた、歌を邪魔しない控えめな伴奏をしており、これも大変好ましいです。 

珍しいコール・ポーターの "Experiment" が収録されていますが、これが感動的な名唱となっていて絶品です。 
私にとってこれは女性ヴォーカルの3指に入る大事なアルバムとなっています。




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赤と黒

2014年01月26日 | Jazz LP (Vocal)

Lorry Raine / Interlude ( advance LP 714 )


白人の美人女性ヴォーカルが概ね好きではない私ですが、例外的にこれは持っておきたいと思うものがごく少しですがあります。
このロリー・レインが、その少ない1枚です。

でも、これはジャケットが好きなだけで、内容は全くダメです。 ヴォーカル盤はまずは声の魅力、次にバックの演奏、だと思いますが、
この人の声はいわゆるおばさん声で、お世辞にも魅力があるとは言えません。 バックのオケもラッセル・ガルシアとネルソン・リドルという
上品とはとても言えない連中で、特にガルシアの演奏はいかにも彼らしいデリカシーのないうるさい伴奏で、女性ヴォーカルなんだから
もっと気をつかえよ、とブン殴りたくなります。 これがゴードン・ジェンキンスなら見る目も変わったかもしれませんが・・・

と、まあ、内容のほうはさっぱりですが、このジャケットの魅力にはどうしても抗えません。 昔、フレッシュサウンドから再発された時に
このジャケットを見て、それ以来ずっと好きでした。 赤と黒のコントラストが絶妙です。 だから、これはジャケットだけがきれいであれば
盤質はどうでもよかったのですが、それでも安くは買えませんでした。 265ドル。 たぶんレコード自体はもう聴くことはないかもしれませんし、
こういう買い方をするのは、きっとこれが最後でしょう。




Anne Phillips / Born To Be Blue  ( Roullette R 25090 )

昔は知っている人だけがひっそりと聴いていたレコードですが、今ではすっかり定番となりました。 
この人は声が最高です。 選曲も良く、音質も抜群。 バックの演奏も素晴らしい。 もう、何も言うことはありません。 16ドル。


昔はあれもこれも魅力的に見えて結構たくさん聴いたこの手のレコードたちも、今はなぜかわかりませんが、すっかり魅力が褪せてしまいました。
ただ、ヴォーカル盤は買いだすとキリがないので、今の私にはこれでちょうどよかったのかもしれません。



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若き日のSarah Vaughan

2014年01月19日 | Jazz LP (Vocal)
女性ヴォーカルで一番好きなのは、サラ・ヴォーンです。 それも、まだ若かった頃のサラ・ヴォーン。


After Hours / Sarah Vaughan ( Columbia CL 660 )

このレコードは、女性ヴォーカルの中で1番好きなレコードです。 名盤ガイドなどでは定番扱いなのでコレクターには相手にしてもらえない盤
なんでしょうが、昔、私がレコード漁りをしていた頃はこの初版の金文字・エンジレーベルのフラットディスクは隠れ稀少盤でした。

とにかく滅多に見かけない上に綺麗な状態のものが皆無で、当時はガタガタのキズ盤でも1万円では絶対に買えない有様で、少なくともビバリー・ケニー
なんかよりは遥かに入手困難でした。 当時(20数年前)、都内でヴォーカルに強かったトニーの西島さんやコレクターズの岡さんにこの初版が欲しい
という話をしましたが、岡さんからはこのエンジレーベルの綺麗なのはもう無理じゃないかと言われ、西島さんからは綺麗なのを見たのがいつだったか
思い出せないと言われる始末。 西島さんは優しくて、綺麗なのが入ったら取っといてあげるよと言ってくれましたが、それも叶わず・・・・

で、それから年月は流れて、無理だと言われた盤もジャケットも無傷の綺麗なやつをとうとう入手することができました。 ヤフオクで、500円です。 
私はどうしても欲しかったので念のために3万円で札入れしたのに、誰も応札しなかった。 何と言うか、言葉もありません。
今どき、もう誰もサラ・ヴォーンなんて聴かないんですね。

エマーシーやルーレットに吹き込んでいた頃はレコードを量産していたせいか集中力や丁寧さがすっかり無くなってしまっていて好きではありません。 
一般的に代表作と言われるブラウニーとやった盤も、あまり好きではない。 でも、若い頃の彼女の歌声には本当に神々しさのような気高さがあって、
本当に好きです。 レミントンやリバーサイドの10inchやMGMのレコードも昔は愛聴していましたが録音が悪くて、彼女の神々しさが聴ける最後の時代が
このコロンビア録音なわけです。 そして後年のパブロ時代になると、今度は別の意味で歌に凄みと深みが出てきて、素晴らしくなります。

私は美人白人女性ヴォーカルが基本的に嫌いで、レコードもその99%は興味がないのですが、サラの若い頃のレコードだけはしっかり買おうと
思っています。 

サラ・ヴォーンとくれば次はエラ・フィッツジェラルドが出てくるわけですが、私はエラの声質がどうしても好きになれなくてほとんど聴きません。
ただ何事にも例外はあって、これだけは愛聴しています。


Ella Fitzgerald Sings George and Ira Gershwin Song Book

ヴァーヴにたくさん録音があるわけですが基本的にどれも雑な創りのものが多いし、デッカ録音もなぜか精彩のないものばかりなのですが、
このガーシュウィン集だけは歌も演奏も驚くほど丁寧で、名唱ばかりです。 私は、Oh,Lady, Be Good! がこんなにも美しい唄だったんだ、
ということをこのアルバムで初めて知りました。 (巨匠たちがガチャガチャと速弾きするだけの曲だとばかり思っていました。)
この未発表音源を含むリマスターCDは音質がとても良くて重宝していますが、レコードもそのうちに買おうと思っています。



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