Erroll Garner / Solitaire ( 米 Mercury MG-20063 )
これは、今まであまりこの人を真剣に聴いてこなかったことを反省させられたレコードになった。 正直に告白すると、エロール・ガーナーは "Concert
By The Sea" しか聴いたことがなかった。 昔から有名な名盤だけど、まあこんなものか、というくらいの感想しか持てず、そこでこの人への興味は
止まってしまっていた。 音楽を聴くためのレコードというよりは、当時如何にジャズが人気があったかを説明するための教材という感じに思えた。
ところが、このレコードはそうではない。 全編がガーナーのソロ・ピアノで、グランド・マナーで最後まで弾き切ってみせる。 その演奏力に圧倒された。
そのアプローチは古風なスタイルで、それはアート・テイタムをお手本にしているわけだけれど、テイタムのように強い支配力でねじ伏せるようなことはせず、
もっと柔軟でしなやかなうねりを見せる。 音楽はとても自然に流れて行くけれど、取り上げられたスタンダードたちが見事なまでにガーナーの音楽に
塗り替えられている。 圧巻の演奏力だけど、同時にとても繊細で隅々まで神経が行き届いている。 これは凄い、という感想しか出てこない。
おまけに、このレコードは音がとてもいい。 ピアノの音が輝いている。 グランド・ピアノがフル・ヴォリュームで鳴っているのが手に取るようにわかる。
ソロ・ピアノを聴くのには最適な音場感だろうと思う。
安レコ買いの一番のメリットはこういうところだと思う。 いろんな音楽に気軽に触れることができて、その中で思いもよらず新しい窓が開くことがある。
そうやって自身の音楽生活の幅は拡がり、充実していくのだ。