Peggy Lee / Christmas Carousel ( 米 Capitol Records T-1423 )
白人女性ヴォーカルは基本的に嫌いなのでほとんど聴かないが、クリスマス・アルバムとなると話は別。特に、キャピトル・レコードとなるとこういうのはうってつけである。
ただ、誰でも簡単にクリスマス・アルバムを作らせてもらえたわけではないようで、数はさほど多くない。選ばれし者だけに与えられたある種の特権のようなものだったようだ。
ペギー・リーは果たしてジャズ・シンガーなのかどうかはよくわからないが、50年代のアメリカのポピュラー音楽の主流はどれもゆるいジャズがベースになっていたから、
あまりその辺りの区別は意味がないのだろう。ポップスやブルース、ラテン音楽など複数の音楽が曖昧な境界線の上を行ったり来たりしながらジャズは形成されていった。
クリスマス・アルバムにはビング・クロスビーやフランク・シナトラなどのビッグ・タイトルが先行事例としてあるので後続歌手たちはいろいろやりにくかっただろうが、
ベギー・リーは少年コーラスなども交えながら柔らかく朗らかなアルバムに仕上げた。アメリカの中産階級のファミリーをターゲットにしたような印象だ。
このアルバムを聴くと、アメリカ人が抱く「幸福のイメージ」がどういうものだったのかがよくわかる。クリスマスという行事はその最たるものだったのだろう。
このアルバムには "The Christmas Waltz" が収録されている。これはシナトラがアルバムの中で歌った知られざる名曲で、これが含まれているのが何よりうれしい。
シナトラの名唱をなぞるように、曲想を壊すことなく大事に歌われている。このアルバムはそこがいい。クリスマスの時期くらい、世俗の憂さを忘れてこういう夢見るような
雰囲気に包まれてもいいではないか。