Sarah Vaughan / Swingin' Easy ( 米 Emercy Records MG-36109 )
ロイ・ヘインズの訃報に接した。99歳、死因は伝えられていないようだ。
彼のキャリアを眺めていると、サラ・ヴォーンと一緒に活動していた時期が長いのがわかる。サラと最初にレコーディングしたのは1947年のレスター・ヤングを含めたもので、
53年からは彼女の専属バックを務めるようになった。翌54年にサラがエマーシーと契約して録音を始めると彼の演奏もエマーシーで聴けるようになる。その時期の代表作が
このアルバムやミスター・ケリーでのライヴになる。
このアルバムはサラの素晴らしい歌唱が聴ける極めつけの名盤だが、バックがピアノ・トリオなのでロイのドラムが非常にクリアに聞えて、彼の演奏を堪能するのにも
うってつけのアルバムだ。ゆったりとスイングする曲からしっとりとしたバラードまでがいい塩梅で収録されていて、音質も素晴らしい。54年のジョン・マラチのピアノ
トリオによる録音と56年のジミー・ジョーンズのピアノ・トリオによる録音がカップリングされているが、どちらも素晴らしい。ロイのブラシ音が生々しく聴ける曲が多く、
サラが気持ちよさそうに歌っているのが印象的で、中でも "Words Can't Describe" の深い情感が最高だ。
ロイ・ヘインズのドラムは同時代の有名ドラマーたちの個性ある演奏と比べるとかなりオーセンティックな感じで、ヴォーカリストや管楽器奏者たちの個性がよく引き立つ。
だからこそ、あらゆる演奏者たちが彼を指名したのだろう。私たちは意図せずとも必ずどこかで彼のドラムを聴くことになる。誰かのアルバムの裏ジャケットを見て、
ドラムの名前が彼になっていると「おっ、ロイ・ヘインズじゃん」と呟いたことがある人は多いのではないか。彼はそういう人だった。
彼はその晩年まで精力的にアルバムを制作しており、生涯を通じて第一級のドラマーとしてジャズを支えてくれた。ご冥福を祈りたい。