Jimmy Raney / Two Jims And Zoot ( 米 Mainstream S / 6013 )
このレコードはモノラル盤が多く流通しているが、とにかく音がこもっていて音楽の良さがさっぱりわからず、残念なレコードの筆頭だった。
シブいメンツが揃った内容的には最高であるはずのレコードだが、まあ、音が悪い。ズートが入った盤なのに何とも残念だよなあということで、
エサ箱で見かける度に手にとっては見るものの「これ、音が悪いんだよなあ」とため息をついて、後ろ髪を引かれつつも毎回スルーしていた。
ところが、あまり見かけないステレオ盤が転がっていたので拾ってみると、これが音が良くてびっくり、目から鱗が落ちた。
ジミー・レイニーは右チャネル、ジム・ホールとズートは左チャネル、スティーヴ・スワロウとオジー・ジョンソンは真ん中、というよくある
中抜けのサウンドだけど、スピーカーから出る音は違和感なく定位しており、なにより楽器の音がハイファイでクリア。
特にいいのはズートで、深みのある淡くまろやかな音色がサイコーである。60年代のズートの演奏では、これが最も音がいいのではないか。
ツイン・ギターによる粗い網目の中をズートのテナーが悠々と揺蕩うように泳いでいく。ピアノレスなので全体が落ち着いた雰囲気で、
ひんやりと冷たい空気が漂う。趣味の良い人たちが夜中に集まって、静かに語り合っているような親密なムードがとてもいい。
知らない楽曲が多い中、ジム・ホール作の "All Across The City" の寂寥感に泣かされる。短く儚い演奏だが、ズートにしか出来ない究極のバラード
演奏が心に染みる。モノラルではわからなかったこのレコードの真価が、ステレオ盤を聴くことでようやくわかった。