goo blog サービス終了のお知らせ 

廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

魅力を語り尽くせず

2018年09月23日 | Jazz LP (Columbia)

Duke Ellington / Piano In The Foreground  ( 米 Columbia CL 2029 )


ここで演奏されているエリントンの自作は他のレコードでは(おそらく)あまり聴けない珍しいタイトルが並んでいる。 エリントンの場合、その作曲の全貌は
私にはよくわからないし、本当に他の録音がないのかどうかまでは把握しきれない。 だから一連の有名な作品群には含まれず、演奏される機会もほとんどない
であろうこれらの楽曲の素晴らしさを手軽に享受できるこういうレコードは貴重だと思う。 

それらは演奏時間も短く、まるで一筆書きで描かれた薄墨による水墨画のように簡素で淡く儚いものではあるけれど、楽曲の核心部分がエリントン独自の
優雅なタッチによって示唆されており、曲が終わってもその余韻がいつまでも部屋の中や自分の中に漂っているような感じがある。 エリントンのピアノアルバムは
何枚かあるけれど、そういう静かな感情を喚起させるようなレコードはこれだけかもしれない。

"Fontainebleau Forest" や "A Hundred Dreams Ago" という魅力的なタイトルが付けられた小品はどこまでも抒情的で、こんなにも人間の感情の
ある側面を上手く曲にできるなんて、何と凄いことだろうと思う。 いろんなエピソードを読む限りでは俗っぽいところのある人だったみたいだけど、
こういう曲を聴いていると、そういうのが何だかうまく信じられない。

エリントンの魅力を語り尽くすのは難しい。 それはあまりに巨大で多面的で重層的で、何を語っても、どこに触れても、全然足りないような気分になる。
近寄れば近寄るほど遠ざかっていく蜃気楼のようにそれは永遠に触れることができず、その追いかけっこは果てしなく続く。 それがデューク・エリントンの
魅力なのかもしれない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 暗黒時代だなんて、誰が言っ... | トップ | 既に完成されていたワークシ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Jazz LP (Columbia)」カテゴリの最新記事