[1月5日15:00.ユタの家(威吹の部屋) 威吹邪甲&威波莞爾]
「先生、お餅が焼けました」
「おっ、そうか。今日のおやつは、お餅か」
「これで在庫は全て無くなりました」
「うん。もはや餅の時期も終わり。名残の餅というわけだな」
威吹は餅を1つ手に取った。
「ユタ殿がお昼過ぎに出かけたようですが……」
「うん。法道院?とかいう寺で、スリハンドクの劇があるのと、法話会があるんだとか言って……」
「何ですか?その、釈迦牟尼仏の弟子みたいな名前の劇は?」
「いや、釈迦の弟子の名前らしいんだ」
[同日16:00.JRA銀座ウインズ 藤谷春人&佐藤公一]
「ざけんじゃねぇ!このクソ馬ぁ!!」
ボゴーン!
「いてぇよォ……クスン……」
↑自販機に八つ当たりして自爆。
ガラガラ……ガコーン!
「ありゃ?缶コーヒー、誰か忘れてる。ラッキー」
サトーが殴った拍子に出て来た缶コーヒーをタダで手に入れる藤谷。
「オルフェがいなくなって、ますますワケわかんねーレースになったからな。でもまあ、収支プラス2000円じゃ、トントンってとこだな」
藤谷、軽い足取りで払戻機に向かった。
[同日同時刻 再びユタの家(威吹の部屋) 威吹邪甲&威波莞爾]
「先生、どうしたらユタ殿のようなS級“獲物”を手に入れることができますか?」
カンジは至って真面目な顔で、威吹に茶を出しながら聞いた。
「そうだなぁ……。こればかりは、コツってのは無いんだ。本当に運だよな。オレだって運が良かったんだ。もし悪いままなら、今頃まだ狐の石像に閉じ込められたままだろう」
「そうですか……」
「だが、1つ方法はある」
「何でしょうか!?」
「基本的に盟約者1人につき、“獲物”は1人までという掟だが、例外があるのは知ってるな?」
「あ、ハイ。えーっと……『“獲物”の配偶者並びに、その子孫に至るまでの所有を認む』と……」
「ユタの両親はあいにくと丙種(C級の旧称)だが、恐らく先祖に特種がいたと思われる。その先祖返りで、ユタの霊力は一見何の脈絡も無く特種なんだろう」
「ということは……」
「ユタの血を引く子孫達の中に、特種の霊力を持つ者が現れる可能性は高い。最初の“獲物”は譲渡が認められていないが、子孫に関しては“獲物分け”が認められているから、もしその中に特種の者が現れたら、カンジに譲るよ」
「本当ですか!」
「だから、それまで待つのも1つの案だな。それまでの間に、別に特種を手に入れられればそれで良し。もしダメなら、ユタの子孫の中にそれが現れるのを待つのみ」
「はい」
「しかし……アレだな」
「何ですか?」
「確かに特種の“獲物”を食らえば、捕食者の妖力は倍増どころではないほどの割合で物凄く強化することができる。しかし、カンジ。オレは偶然手に入れただけだからいいようなものの、お前はどうしてそこまで特種を欲しがるんだ?正直、丙種や乙種(B級の旧称)であっても、聖職者などであれば、そこそこの妖力上昇は期待できるんだぞ?」
「それは……」
「まあ、オレの剣技を身に付けたいという理由と同じかな?」
「そうなんです」
聞けばカンジはちゃんと話すことだろう。
しかし、どうやら若いのにそこまで力を求めるということは、何か大きなものを背負っていると思った。
威吹だって封印前、まだカンジよりも若かった頃、強くなることに憧れていたから、彼の気持ちが分からないでもない。
とはいうものの、どうも強さの方向が違うような気がした。
威吹の場合、最初は里での利権奪取のため(要は強くなることで幅を利かせたいというもの)、さくらに惚れてからは、数多の妖怪から狙われる彼女を守りたいがための強さ。
カンジはどちらとも違うようだ。
(逆に、ユタが羨ましくなってきた)
と、威吹。
[同日16:45.JRA銀座ウインズ 藤谷春人&佐藤公一]
「営業終了まであと15分でーす!払戻の方はお急ぎくださーい!」
緑色の制服を着た整理員が広報する。
「あ、なに?お前、顕正会員だったの?」
藤谷はサトーを見てびっくりした。
「ざけんじゃねぇ、法華講員!折伏の精神も無ぇからって、ギャンブルやってやがってよ〜!」
「お前、ヒトのこと言えねーだろ!自分だって、9時10分からいたくせに!」
※JRA銀座ウインズの開場時間は9時10分。
「俺んとこは誓願達成したからいーんだよっ、ああっ!?」
「うるせっ!どうせ入信報告書の枚数稼いだだけで、即日退転者続出だろうが!」
「誓願達成できなきゃ意味無ぇーだろうがっ!ああっ!?」
「うちの寺じゃ、退転者出す方が問題だっつーの!」
「仏種蒔きゃそれでいいんだよ、ああっ!」
「浅井会長の平成25年の誓いはどうなった!?」
「んなもん覚えてねーよっ、ああっ!?」
外から見ていた作者。
「御書読めてませんね〜?あの人達?習い損ないの寛師教学に取り憑かれて、かわいそうに」
「ええ。(俺も人のことは言えん)」
「本当の仏法を知りたいのなら、私の家へおいでなさい。仏法を求めて、千里の道も一歩より、ですよ?」
「考えておきます。沖浦さん。(白馬まで行くのかよ、こんな真冬に!)」
沖浦さん、友情出演あざざざざーっす!
「先生、お餅が焼けました」
「おっ、そうか。今日のおやつは、お餅か」
「これで在庫は全て無くなりました」
「うん。もはや餅の時期も終わり。名残の餅というわけだな」
威吹は餅を1つ手に取った。
「ユタ殿がお昼過ぎに出かけたようですが……」
「うん。法道院?とかいう寺で、スリハンドクの劇があるのと、法話会があるんだとか言って……」
「何ですか?その、釈迦牟尼仏の弟子みたいな名前の劇は?」
「いや、釈迦の弟子の名前らしいんだ」
[同日16:00.JRA銀座ウインズ 藤谷春人&佐藤公一]
「ざけんじゃねぇ!このクソ馬ぁ!!」
ボゴーン!
「いてぇよォ……クスン……」
↑自販機に八つ当たりして自爆。
ガラガラ……ガコーン!
「ありゃ?缶コーヒー、誰か忘れてる。ラッキー」
サトーが殴った拍子に出て来た缶コーヒーをタダで手に入れる藤谷。
「オルフェがいなくなって、ますますワケわかんねーレースになったからな。でもまあ、収支プラス2000円じゃ、トントンってとこだな」
藤谷、軽い足取りで払戻機に向かった。
[同日同時刻 再びユタの家(威吹の部屋) 威吹邪甲&威波莞爾]
「先生、どうしたらユタ殿のようなS級“獲物”を手に入れることができますか?」
カンジは至って真面目な顔で、威吹に茶を出しながら聞いた。
「そうだなぁ……。こればかりは、コツってのは無いんだ。本当に運だよな。オレだって運が良かったんだ。もし悪いままなら、今頃まだ狐の石像に閉じ込められたままだろう」
「そうですか……」
「だが、1つ方法はある」
「何でしょうか!?」
「基本的に盟約者1人につき、“獲物”は1人までという掟だが、例外があるのは知ってるな?」
「あ、ハイ。えーっと……『“獲物”の配偶者並びに、その子孫に至るまでの所有を認む』と……」
「ユタの両親はあいにくと丙種(C級の旧称)だが、恐らく先祖に特種がいたと思われる。その先祖返りで、ユタの霊力は一見何の脈絡も無く特種なんだろう」
「ということは……」
「ユタの血を引く子孫達の中に、特種の霊力を持つ者が現れる可能性は高い。最初の“獲物”は譲渡が認められていないが、子孫に関しては“獲物分け”が認められているから、もしその中に特種の者が現れたら、カンジに譲るよ」
「本当ですか!」
「だから、それまで待つのも1つの案だな。それまでの間に、別に特種を手に入れられればそれで良し。もしダメなら、ユタの子孫の中にそれが現れるのを待つのみ」
「はい」
「しかし……アレだな」
「何ですか?」
「確かに特種の“獲物”を食らえば、捕食者の妖力は倍増どころではないほどの割合で物凄く強化することができる。しかし、カンジ。オレは偶然手に入れただけだからいいようなものの、お前はどうしてそこまで特種を欲しがるんだ?正直、丙種や乙種(B級の旧称)であっても、聖職者などであれば、そこそこの妖力上昇は期待できるんだぞ?」
「それは……」
「まあ、オレの剣技を身に付けたいという理由と同じかな?」
「そうなんです」
聞けばカンジはちゃんと話すことだろう。
しかし、どうやら若いのにそこまで力を求めるということは、何か大きなものを背負っていると思った。
威吹だって封印前、まだカンジよりも若かった頃、強くなることに憧れていたから、彼の気持ちが分からないでもない。
とはいうものの、どうも強さの方向が違うような気がした。
威吹の場合、最初は里での利権奪取のため(要は強くなることで幅を利かせたいというもの)、さくらに惚れてからは、数多の妖怪から狙われる彼女を守りたいがための強さ。
カンジはどちらとも違うようだ。
(逆に、ユタが羨ましくなってきた)
と、威吹。
[同日16:45.JRA銀座ウインズ 藤谷春人&佐藤公一]
「営業終了まであと15分でーす!払戻の方はお急ぎくださーい!」
緑色の制服を着た整理員が広報する。
「あ、なに?お前、顕正会員だったの?」
藤谷はサトーを見てびっくりした。
「ざけんじゃねぇ、法華講員!折伏の精神も無ぇからって、ギャンブルやってやがってよ〜!」
「お前、ヒトのこと言えねーだろ!自分だって、9時10分からいたくせに!」
※JRA銀座ウインズの開場時間は9時10分。
「俺んとこは誓願達成したからいーんだよっ、ああっ!?」
「うるせっ!どうせ入信報告書の枚数稼いだだけで、即日退転者続出だろうが!」
「誓願達成できなきゃ意味無ぇーだろうがっ!ああっ!?」
「うちの寺じゃ、退転者出す方が問題だっつーの!」
「仏種蒔きゃそれでいいんだよ、ああっ!」
「浅井会長の平成25年の誓いはどうなった!?」
「んなもん覚えてねーよっ、ああっ!?」
外から見ていた作者。
「御書読めてませんね〜?あの人達?習い損ないの寛師教学に取り憑かれて、かわいそうに」
「ええ。(俺も人のことは言えん)」
「本当の仏法を知りたいのなら、私の家へおいでなさい。仏法を求めて、千里の道も一歩より、ですよ?」
「考えておきます。沖浦さん。(白馬まで行くのかよ、こんな真冬に!)」
沖浦さん、友情出演あざざざざーっす!