ある日の財団仙台事務所。
「マリオでス」
「ルイージです」
「2人揃っテ……“スーパーマリオ・ブラザーズ”!」
♪♪(あの曲)♪♪
「さっきから何やってるんだ、あいつら?」
ここはエントランスホール。いかにロボット研究の最先端を行く研究機関を統括する財団の地方事務所とはいえ、かつては無差別テロロボットとして設計、製造された2機のロボットが漫才やってるのに敷島は呆れた。
「ドクター・アリスの・“ビジネス”の・ようです」
エミリーが敷島の疑問に答えた。
「ノー!ノー!ダメよ!そんなんじゃ、ウケないわよ!!」
パンパンと手を叩いてダメ出しをするアリス。
「ボーカロイド・プロジェクトの・成功により・ドクター・アリスも・参入される・と……」
「あのなぁ……」
そして……。
「どこが問題だっていうのよ!?今、ボーカロイド達は歌って踊れるだけじゃなく、ドラマや映画、ミュージカルと引っ張りだこでしょ?そのニッチとして、コメディアンに参入するのよ!」
事務室で敷島に説教を受けたアリスは、猛反発。
「いや、確かにボカロはお笑いは基本やってないけど……」
「メディア展開によっちゃ、やってなくもないッスけどねー。ちびミクさんとか」
敷島の部下が口を挟む。
「黙ってろ。まあ、アイディアとしては悪くは無いけども……」
「でしょ?」
「バージョンはもっと違う用途に使うべきだろう。バージョン・シリーズは、無差別テロロボットというイメージが強いんだし……」
「それをコメディアンへの転用に成功したってなれば、大注目じゃない!」
「いや、だからさ……」
「ずっと倉庫に保管じゃもったいないわよ」
「そりゃそうだけど、もっと他に用途を考えようよ。例えば更に改良して、それこそ福島第一原発への作業ロボットにするとかさ」
「それこそ、ムリよ」
「何で?」
「それこそ無差別テロロボットを原発地域に送り込もうとしたら、猛反対されるに決まってるじゃない」
「そんなことないさ。バージョン・シリーズは、どんなに放射能に汚染されている地域でも、人間に代わってどんどん奥に入って行けるんだろ?」
「まだ無事な原子炉を更に爆破させる為だってよ」
「お前の祖父さん、世界の滅亡が目的だったのか?」
「年金が目的だったんじゃない?」
「関係あるのか、それ!」
「とにかく、テロ用のロボットはあくまでも、そのイメージを変える為に、まずはエンターテイメント用に転換すべきだわ」
「いやいや、実用性からして危険地域での作業ロボットに転用した方がいい!」
それから……。
「コレハコレハ、カーネル・エミリー!」
ビシッと敬礼を決めるマリオとルイージ。
「カーネルとは……初めて・呼ばれた。まあいい。それより・総務部で・トラブル発生と・聞いた。何が・あった?」
「ハッ。私共ノ用途ヲドノヨウニ転換スルカデ、敷島参事トドクター・アリスとデ、トラブルニナッテイル模様デス」
「既ニ総務部ハ、業務休止状態デス」
「!」
エミリーが中の様子を伺うと、ギャーギャーと敷島とアリスが大ゲンカになっているのが分かった。
エミリーが分析してみる。
「ん?……」
「ドウナサイマシタ、カーネル?」
赤い塗装のマリオが違和感を顔に出すエミリーに聞く。
「いや……。分析エラーだ。再度、分析する」
「ハッ」
「……ダメだ。良い分析結果が・出ない」
「ドノヨウナ結果ガ?」
緑の塗装のルイージが聞いた。
「敷島さんと・ドクター・アリスの・トラブル。夫婦喧嘩と出た」
「ハア!?」
2機の無差別テロロボット兄弟は、崇敬するガイノイドの突拍子もない分析結果に、危うくフリーズするところだった。
「犬も・食わない・とか・どういう意味だ?」
「ソレ、諺デアリマス!」
「いいから、早くその夫婦喧嘩を止めんかい」
訪ねて来た十条が、事務室前で屯っている2機のロボットと1機のガイノイドに突っ込んだ。
「ドクター十条。ですが・敷島さんと・ドクター・アリスは・結婚していません。この・分析結果は……」
「やかましい!後で説明するから、取り急ぎ早くケンカを止めんかーい!」
折衷案。
〔「エー、皆サン、長ラクお待タセ致しまシタ。マモナク、ボーカロイドのトップアイドル、初音ミクのソロライブを開催シタイト思イマス!」〕
マリオはボーカロイドのライブイベントの司会者に、
「皆サン、行キマスヨ!ニーハイ!オーハイ!」
ルイージは最前列席でサイリウムを振りながら、他の熱狂的ファンのヲタ芸を指揮する役をやっていた。
(気が散る……)
ミクは用途転換の実験中とはいえ、あのバージョン2機がライブ会場にいるということを物凄く気にしていた。
「何これ……?」
舞台袖で呆れた顔をするアリスだった。
「いきなりステージに上がるのはまだ早い。まずは裏方の仕事からだ!」
敷島は大きく、拳を握って言った。元プロデューサーとして、昔取った杵柄のつもりのようだ。
「No...違うと思う……」
アリスは首を横に振った。
最後列の観客席では、十条がライブの様子を観客として見に来ていた。
「しかしこの折衷案、どちらかというとアリス君寄りではないかね。だいぶ敷島君も譲歩したな」
「そうですね」
キールとエミリーも、一緒にサイリウムを振っていた。
「ふむ……。意外のお似合いの2人ではないかね?」
「ええ」
「イエス」
2人のガイノイドとアンドロイドは、同時に大きく頷いた。
「マリオでス」
「ルイージです」
「2人揃っテ……“スーパーマリオ・ブラザーズ”!」
♪♪(あの曲)♪♪
「さっきから何やってるんだ、あいつら?」
ここはエントランスホール。いかにロボット研究の最先端を行く研究機関を統括する財団の地方事務所とはいえ、かつては無差別テロロボットとして設計、製造された2機のロボットが漫才やってるのに敷島は呆れた。
「ドクター・アリスの・“ビジネス”の・ようです」
エミリーが敷島の疑問に答えた。
「ノー!ノー!ダメよ!そんなんじゃ、ウケないわよ!!」
パンパンと手を叩いてダメ出しをするアリス。
「ボーカロイド・プロジェクトの・成功により・ドクター・アリスも・参入される・と……」
「あのなぁ……」
そして……。
「どこが問題だっていうのよ!?今、ボーカロイド達は歌って踊れるだけじゃなく、ドラマや映画、ミュージカルと引っ張りだこでしょ?そのニッチとして、コメディアンに参入するのよ!」
事務室で敷島に説教を受けたアリスは、猛反発。
「いや、確かにボカロはお笑いは基本やってないけど……」
「メディア展開によっちゃ、やってなくもないッスけどねー。ちびミクさんとか」
敷島の部下が口を挟む。
「黙ってろ。まあ、アイディアとしては悪くは無いけども……」
「でしょ?」
「バージョンはもっと違う用途に使うべきだろう。バージョン・シリーズは、無差別テロロボットというイメージが強いんだし……」
「それをコメディアンへの転用に成功したってなれば、大注目じゃない!」
「いや、だからさ……」
「ずっと倉庫に保管じゃもったいないわよ」
「そりゃそうだけど、もっと他に用途を考えようよ。例えば更に改良して、それこそ福島第一原発への作業ロボットにするとかさ」
「それこそ、ムリよ」
「何で?」
「それこそ無差別テロロボットを原発地域に送り込もうとしたら、猛反対されるに決まってるじゃない」
「そんなことないさ。バージョン・シリーズは、どんなに放射能に汚染されている地域でも、人間に代わってどんどん奥に入って行けるんだろ?」
「まだ無事な原子炉を更に爆破させる為だってよ」
「お前の祖父さん、世界の滅亡が目的だったのか?」
「年金が目的だったんじゃない?」
「関係あるのか、それ!」
「とにかく、テロ用のロボットはあくまでも、そのイメージを変える為に、まずはエンターテイメント用に転換すべきだわ」
「いやいや、実用性からして危険地域での作業ロボットに転用した方がいい!」
それから……。
「コレハコレハ、カーネル・エミリー!」
ビシッと敬礼を決めるマリオとルイージ。
「カーネルとは……初めて・呼ばれた。まあいい。それより・総務部で・トラブル発生と・聞いた。何が・あった?」
「ハッ。私共ノ用途ヲドノヨウニ転換スルカデ、敷島参事トドクター・アリスとデ、トラブルニナッテイル模様デス」
「既ニ総務部ハ、業務休止状態デス」
「!」
エミリーが中の様子を伺うと、ギャーギャーと敷島とアリスが大ゲンカになっているのが分かった。
エミリーが分析してみる。
「ん?……」
「ドウナサイマシタ、カーネル?」
赤い塗装のマリオが違和感を顔に出すエミリーに聞く。
「いや……。分析エラーだ。再度、分析する」
「ハッ」
「……ダメだ。良い分析結果が・出ない」
「ドノヨウナ結果ガ?」
緑の塗装のルイージが聞いた。
「敷島さんと・ドクター・アリスの・トラブル。夫婦喧嘩と出た」
「ハア!?」
2機の無差別テロロボット兄弟は、崇敬するガイノイドの突拍子もない分析結果に、危うくフリーズするところだった。
「犬も・食わない・とか・どういう意味だ?」
「ソレ、諺デアリマス!」
「いいから、早くその夫婦喧嘩を止めんかい」
訪ねて来た十条が、事務室前で屯っている2機のロボットと1機のガイノイドに突っ込んだ。
「ドクター十条。ですが・敷島さんと・ドクター・アリスは・結婚していません。この・分析結果は……」
「やかましい!後で説明するから、取り急ぎ早くケンカを止めんかーい!」
折衷案。
〔「エー、皆サン、長ラクお待タセ致しまシタ。マモナク、ボーカロイドのトップアイドル、初音ミクのソロライブを開催シタイト思イマス!」〕
マリオはボーカロイドのライブイベントの司会者に、
「皆サン、行キマスヨ!ニーハイ!オーハイ!」
ルイージは最前列席でサイリウムを振りながら、他の熱狂的ファンのヲタ芸を指揮する役をやっていた。
(気が散る……)
ミクは用途転換の実験中とはいえ、あのバージョン2機がライブ会場にいるということを物凄く気にしていた。
「何これ……?」
舞台袖で呆れた顔をするアリスだった。
「いきなりステージに上がるのはまだ早い。まずは裏方の仕事からだ!」
敷島は大きく、拳を握って言った。元プロデューサーとして、昔取った杵柄のつもりのようだ。
「No...違うと思う……」
アリスは首を横に振った。
最後列の観客席では、十条がライブの様子を観客として見に来ていた。
「しかしこの折衷案、どちらかというとアリス君寄りではないかね。だいぶ敷島君も譲歩したな」
「そうですね」
キールとエミリーも、一緒にサイリウムを振っていた。
「ふむ……。意外のお似合いの2人ではないかね?」
「ええ」
「イエス」
2人のガイノイドとアンドロイドは、同時に大きく頷いた。