報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「敷島とアリスの因縁」 4

2014-02-14 20:17:56 | 日記
[3月5日 15:00.仙台市泉区 宮城県図書館 アリス・フォレスト]
(三人称に戻ります)

 まだ周辺の道の路肩には、残雪の固まる高台の図書館。そこにアリスが単独でやってきた。
 午前中は昨日に発見した震災の行方不明者のことで、マスコミの対応に追われてしまった。
 敷島に任せて真相究明に走りたかったが、開発者としてコメントを出さなければならなかった。
 ここにやってきた理由は、地元新聞社のアーカイブスを閲覧する為である。午前中、地元の新聞社が取材に来たことで、アリスがふと気づいたのだ。
 逆にアリスが新聞記者に聞くと、あのバージョン2.0暴走事件の際、真っ先に現場に駆け付けた新聞社であるという。
「Excuse me.アーカイブスはどこでしょう?」
「3階です。あちらのエスカレータかエレベータで……」
「Thank you.」

(こういう時、日本語を一気に覚えておくとラクだわ……)
 と思いつつ、辞書のような感じでプレスされたアーカイブスを見る。
 全ての漢字が分かるわけではないが、アリスが確認したいのは暴走した個体についてである。
 シリアルナンバーが分かれば万々歳なのだが、新聞社がそんなところまで押さえているとは思えなかった。
 おおかた、養祖父が開発して投入したくらいにしか思われていないのだろう。
 せっかくなので午前中のインタビューの時に、養祖父のテロリズムについては賛同できない旨を話した。
 その上で、養祖父からは後継者とされつつも、自分は独自路線を行くと答えておいた。
 何しろ、あの大事件だ。新聞は大きく取り上げているはず。
 発生した年月日は知っているので、それで新聞を見て行けば、日本語の文字は全て分からなくても追って行けるはずである。
(あった……!)
 そうして、当時の新聞を発見することができた。
『謎のロボット大暴れ!』『市街地、阿鼻叫喚!』『自衛隊出動へ!』
 大きな見出しが現れた。
「!!!」
 写真の一部に、アリスが見覚えのあるものが写っていた。
 後頭部についたハートマーク。
 恐らくは新聞社がヘリを飛ばして、上空から撮影したものだろう。
 他の新聞社の写真も見てみた。全体ではないが、他にスペード、クラブ、ダイヤのペイントがしてある個体を見つけた。
(これって……!)
 何かの偶然であろうか。この町で暴走した個体は、全てアリスが子供の頃にトランプの絵柄を描いたものだった。
(よし。あとはこいつらのシリアルナンバーを調べて……)
 イタズラのつもりで落書きしたペイントが、こういう所で役に立つとは。
 子供のイタズラも侮りがたいと思ったアリスだった。

[3月5日 同時刻 財団仙台支部 敷島孝夫&十条伝助]

「ほお……。あのバージョン・シリーズの最新モデルが、いいことしたものじゃの」
「ええ」
「で、アリス嬢は今どこかね?」
「2.0が暴走した事件の新聞記事を見に、図書館まで行ってますよ」
「ほお。それは結構……」
「参事!参事に電話です。アリス博士から!」
「おっ、噂をすれば……」
 敷島は電話に出た。
 談話コーナーに座る十条はその間、出された茶菓子のヨーカンを口に運び、ズズズと茶を啜った。
 敷島はすぐに戻ってきた。
「すいません」
「いやいや。で、アリス嬢は何と?」
「暴走した個体の絞り込みに成功したそうです。あとはシリアルナンバーを調べて、更にその個体の設計図と照らし合わせて、どこに欠陥があったか調査するそうです」
「新聞で絞り込めたということは……?」
「何か昔、アリスが子供の頃に落書きした個体があって……?写真に、それがたまたま写ってたそうなんですよ。暴走した4機が全部それだったおかげで、更に絞り込みやすくなったと。昔からアタシって天才、と」
「ああ、うむ。まあ、運も実力のうちと言うからの」
 ズズズと茶を啜る十条。
「自分が手を加えたことで暴走したことについては、何も疑わんとは……若い娘はいいの」
「落書きしたくらいで暴走するんですか?」
「いや……。まあ、ウィリーもウィリーで、抜けている所は多少あったがの。ヤツが出した欠陥のせいである確率の方が高いことは確かだが……」
「はあ……。とにかく、これでアリスはまた徹夜ですね」
「調査には私も助力しよう」
「えっ?」
「今や3バカトリオで生き残ったのは、もうこのワシしかおらんからな。生き残った責任を取って、老体に鞭打つことにしよう。研究室はどこじゃったかな?」
「ああ、あちらです」
 敷島は老科学者を研究室まで案内した。
「キールや。わしはしばらく研究室におるでの」
「かしこまりました」
 製造から5年ほど経つ執事ロボットのキールは、恭しく頭を下げた。
「なあ、キール」
「何でしょう?」
 敷島はふと思いついた疑問をキールにぶつけた。
「南里所長にはエミリー、ウィリーにはシンディというマルチタイプがいた。その法則なら、十条理事にもマルチタイプがいたんじゃないか?」
「……詳しいデータはありません。が、私は、かつて博士に付いていたマルチタイプをモチーフに製造したとあります」
「そうか」
 公式には、今や世界でマルチタイプはエミリーしかいないことになっている。
 何らかの理由で、十条は自分のマルチタイプを手放すことになったのだろう。
 マルチタイプのスペックは全個体で統一されていた。
 今でも全体的な個数は、軍事用だったこともあって明らかになっていないが、男女型が等しく存在していたという。
 ということは、十条に付いていたマルチタイプは男性型だったのだろうか。それをモチーフに、執事ロボットのキールを作ったわけだから……。

[3月5日 18:00.仙台駅西口付近の居酒屋 敷島、アリス、十条]

「そうなの。プロフェッサー十条は、講演会に……」
「うむ。今日と明日な。そうじゃ。アリス君、君もゲストで来ないかね?」
「そうねぇ……」
「何かいい情報が仕入れられるかもしれんぞ?」
「まさか……」
「プロフェッサー十条がそう言ってくるということは、何かあるね?」
「んふふふ……。そう思うかね?」
(本当にあの2人とよく似てるわぁ……十条理事って)
 敷島はビールを口に運びながらそう思った。
 因みに居酒屋の壁には、日本酒の瓶を持ったMEIKOのポスターが貼られている。
「一体、何なんですか、十条理事?」
 敷島が聞いた。
「明日の講演会には、財団の本部の役員も来るのじゃよ」
「それは知ってますけど……」
「私は別の主眼で、事件の真相を追うことにした」
「別の主眼と言いますと?」
「アリス。ウィリーは自らの手を汚さず、汚れ役はほとんどシンディが引き受けていた。そうじゃな?」
「ええ。でもシンディは、アタシには優しくしてくれたわ」
「知っておる。それはエミリーも同じ役回りじゃったからの」
「理事のマルチタイプも、ですか?」
「はて?ワシにはマルチタイプなどおらんが……?」
「昔ですよ、昔」
「さあのぅ……」
 あまり良い思い出が無かったのだろうか。
「ヒントを言うと、バージョン・シリーズの使役権があったのは製造者たるウィリーとシンディじゃった。今は後継者として、アリス君がそれを継承しておる」
「一応、サブとしてエミリーにも継承させてるよ。まあ、エミリーは今更人殺しなんてしないと思うけど」
 そう。実質的に、今やバージョン・シリーズの脅威は消えたと言える。
「まあ、ヒントはここまでじゃな」
「さっぱり分からん」
「敷島君、頭を柔らかくして思い出してみたまえ。シンディは確かに処分したが、その前に色々としたことが無かったかね?」
「ええっ?」

 ※タイトルに誤字がありました。訂正して、お詫び申し上げます。
コメント (9)
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“アンドロイドマスター”「敷島とアリスの因縁」 3

2014-02-14 15:17:17 | 日記
[3月4日 16:00.宮城県岩沼市仙台空港付近 敷島孝夫、アリス・フォレスト、マリオ、ルイージ]
(ここでは敷島による一人称です)

「ドクター!発見シマシタ!」
 マリオの声がこだました。
「OK!すぐに回収して!」
「ラジャー!」
「マジかよ!?」
 絶対無理だろう。私は最初から諦めていた。
 ドクター・ウィリーが開発した無差別テロロボット、バージョン・シリーズ。
 日本国内に潜伏していたウィリーが国外逃亡する際に廃棄していったバージョン2.0。
 20機のうち、4機が何らかの理由で暴走し、仙台市内でテロ活動を行った。
 私の家族もそれに巻き込まれ、両親と兄弟を亡くしている。
 あと1週間で発生した東日本大震災でも、都内にいてほとんど被災しなかった私は悪運が強いのか。
 マリオが発見し、ルイージが回収作業に当たる空港付近の荒地。時折、航空機の離発着の轟音が耳に響く。
 暴走した4機は出動した自衛隊によって破壊されたとされている。
 が、回収されたのはそのうち3機だけ。1機は行方不明になった。
 アリスが手を尽くして、その行方不明になった1機の居場所を突き止めた。
 しかし、ここは東日本大震災による大津波で大きな被害が出た場所だ。
 人間ですら未だに行方不明者がいる中、震災前から行方不明になっていたロボットが見つかるのかと思っていた。
 確かに、パーツ全てを回収することはできなかった。
 ルイージが引き出したパーツは、アリスが期待したものではなかった。
「胴体と右手部分、あと、右足か……」
「頭部を探して!そこに人口知能とメモリーがあるはずだから!」
「イエス!」
「ラジャー!」
 2人のロボット兄弟は周辺を捜索し、始めた。
 しかし、これ……。ちょっと用途を変えるだけで、行方不明者捜索できるんじゃないか?
「津波でダメかもしれんよ?」
 私はタブレットでマリオとルイージを監視しているアリスに言った。
「バージョン・シリーズは2.0の頃から、完全防水仕様だからね」
「しかし、津波の衝撃と……しかも、津波って海水だからね。いくら完全防水でも、無理なんじゃないかなぁ……」
 私は首を傾げた。
 もっとも、私はバージョン・シリーズの仕様を全ては知らない。知っているのは、ここにいる若き女性科学者のみ。
「そんなことないよ。絶対に見つけるからね」
 自信満々にそう言っていたので、多分大丈夫なのだろう。
 マリオとルイージは地中から、色々なものを発見した。
 被災地ということもあって、瓦礫関係の物が多かった。
「パーツを発見シマシタ!」
「本当か!?」
 茶色く錆び付いた先ほどの物とは違って、今度は少し白っぽい。
 先ほどは見つけられなかった左手部分と左足、それに……肋骨かな?
「肋骨……???」
「ヘッドを探して!必ずあるはずだって!」
「イエッサー!」
「骨盤、発見シマシタ!」
「骨盤……???」
 私は嫌な予感がした。
「頭部ヲ発見シマシタ」
「やっぱり……」
 それは人間の頭蓋骨。行方不明者、1人発見である。
「すぐに警察に連絡しておく」
 私はケータイを取り出した。

 で、結局見つけられなかった。失意のうちに、私達は車に乗って仙台東部道路を走行した。
 この高速道路も、築堤の上にある構造のおかげで堰の役目を果たし、大津波から避難した付近住民の命を救った道路でもある。
 もっとも、築堤区間では避難民を津波から救った一方で、橋梁区間では走行中の車両を更なる大きな揺れが襲って、ケガ人を出している。
 高速道路ではトンネルよりも、橋梁の方が地震には要注意ということか。
「もう少しだったのに……!」
 助手席に座るアリスは、何度も舌打ちして悔しそうにしていた。結局、回収した個体のパーツも警察に押収された。

 んでもって翌日には、嗅ぎ付けた地元のマスコミが取材に来たほどである。
 行方不明者捜索に当たらせるのか、それとも原発関係の用途に使う予定があるのかとインタビューしてきたが、それに対してアリスは、
「今はまだ実験段階であり、そういったレベルには達していない。行方不明者の発見も、たまたま実験中での出来事だったことによるもの。しかし研究成果の積み重ねによっては、いずれそういった用途への変更も考えている」
 と、答えた。
 変更と答えたことに、私は少し苦笑した。
 バージョン・シリーズが無差別テロ用として開発されたことを何よりも知っている当事者の1人だからこそ、自然に出た単語だろう。
 真相究明は、まだ先になるのか。
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他人事ではなかった!

2014-02-14 00:49:14 | 日記
15日にかけ太平洋側大雪警戒=東京23区も積雪、交通注意―気象庁(時事通信) - goo ニュース

 いや、参ったね。今週末、御山への登山を予定していたのに。
 段々と登山不可の確率が高くなってきたよ。
 まあ、中止になったらなったで、お呼びでない?ってことになるわけだが……。
 それにしても交通機関全てマヒ状態で、登山者が1人もいないという場合でも御開扉ってやるんだろうかと、余計な心配してみたり。

 顕正会では、仕事でもクビ覚悟でそれを蹴って大会に参加するのが美徳という風潮が昔はあったという。いやいや、今でもあるよと突っ込んでくる元あっつぁブログリスナー方がいらっしゃるかもしれないが、私はそれを現認したことがない。ただ単に、私がいた隊がたまたま優しかった所なだけなのかもしれないが。
 顕正会の大会は夏に行われることが多いので、大雪で会場入りが果たせないということは基本的に無いだろう。台風直撃で、【お察しください】といったところか。

「御宮仕えも法華経と思し召せ」
 という御金言がある。ほとんど教学ナッシングの私でも、これくらいは知っている。
 つまり、普段の会社勤めや役所勤めも、法華経の修行だと思いなさいということだな。
 仕事が忙しくて、なかなか寺院参詣ができなくても、理由がそれなら、あまり気にすることなく、仕事を頑張りなさいという意味で使われることが多い。
 もっとも、どこかに“仕え”ているわけではない自営業や学生、専業主婦や第一次産業関係はどうするんだろうというツッコミができなくはないが。
 御金言に突っ込むと、どこからともなく名無しの信者さんから御指摘を受けるので、やめておこう。

 とにかく、天候については当日になってみないと分からないというのが辛い所だ。
 予め、はっきりとムリと分かれば、早々に諦めもつくのだが……。
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