[3月1日 09:00.仙台市内の敷島のマンション 敷島孝夫、アリス・フォレスト、エミリー]
「What’s?シキシマ、どこか出掛けるの?」
「ああ。ちょっとね。アリスはここにいていいよ。雪降ってるし」
「なーに言ってるの。まだアタシ、この町のことよく知らないんだから、一緒に行くよ」
「……まあ、勝手にするさ」
[同日 10:00.JR仙台駅仙山線ホーム 敷島、アリス、エミリー]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。8番線に停車中の列車は、10時5分発、普通、愛子(あやし)行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
小雪が舞う中、首都圏のJR駅でも流れる言い回しの放送がホームに響く中、3人は電車に乗り込んだ。
空いているボックスシートに座った。
「どこまで行くの?」
「葛岡だよ、葛岡」
「うーん……。仙台市内から出るほど遠いわけではないようね……」
「エミリーをGPS代わりにしない」
アリスはエミリーの左耳に端子を接続し、手持ちのタブレットPCに差し込んだ。
「東北福祉大学……ではなさそうね。アタシのジャンルと違う」
「だったら、東北福祉大前で降りればいいだろ」
電車は時刻通りに発車した。
〔今日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は仙山線、普通、愛子行きです。(中略)次は、東照宮です〕
首都圏の中距離電車と同じ声優、言い回しの自動放送が車内に流れる。
「一体、何の基地なの?軍事施設とか?」
「は???」
敷島はアリスの質問に素っ頓狂な声を上げた。
「財団が何かの秘密研究をしているラボのある基地とか……?」
「何の話???」
「いや、だってホラ、Google mapに基地って書いてあるよ?」
アリスはタブレットPCを見せた。そこには葛岡駅周辺の地図が出ている。アリスが指さした所には……。
「基地じゃない!墓地だ!」
「Oh!……漢字って難しいね」
「無理せず、英語版使えばいいだろ。英語版なら間違いない」
「もう使ってるよ。このタブレットのサイズ……」
「A5版とは言ってねぇ!」
[同日10:23.JR葛岡駅 敷島、アリス、エミリー]
〔まもなく葛岡、葛岡。お出口は、左側です〕
線路脇に雪がうず高く積もっている。
電車は一面一線だけのホームに停車した。
仙台市内でも屈指の大規模霊園ということもあって、お盆やお彼岸は多くの墓参客で賑わうが、そうでない日は閑散としている。
ここで電車を降りると、階段を下った。高架駅ではないが、元々この区間は高台を走行するので、駅舎が台地の下にある。
「誰かの墓参りなの?」
「そうだよ」
敷島は何を言ってるんだという顔をした。
[同日11:00.仙台市葛岡霊園 敷島、アリス、エミリー]
その墓は何の変哲も無い佇まいだった。ただ、その墓には『敷島家之墓』と書かれていた。
「ドクター南里の墓参りでは無かったのね」
「所長の墓はここには無いし、今日が命日じゃないし」
「敷島さんの・ご家族の・お墓です」
エミリーが代わりに言った。
「ふーん……。グランパかグランマの?」
「違う違う」
敷島は首を横に振った。
「敷島さんの・ご両親と・ご兄弟です」
「What’s!?」
「エミリー、余計なことは言わなくていいよ」
「なに?シキシマって……その……」
「今から10年前ね」
「10年前……ってことは、東日本大震災では無いのか」
「まあね。まあ、死因については秘密ってことで」
「フツーは事故か何かって思うけど?」
「まあ、そう思ってくれればいい」
と、その時だった。
「あれ?敷島さん、やはりおいででしたか」
そこへ現れたのは平賀と七海だった。
「平賀先生!どうしてここへ?」
「財団副理事として、ですよ」
「別に、結構ですのに……」
「いいからいいから。もう10年になるんですね」
「まあ、早いというか何というか……」
「何の話なの?」
アリスが不思議そうな顔をした。
「さすがですね、敷島さん。当事者を連れてくるとは。アリス、ちゃんと墓前で謝ったか?」
「だから何の話よ?」
アリスは訝しい顔をした。
「いや、いいんですよ、平賀先生。多分、アリスは知らないでしょうから」
「だったら、尚更知ってもらう必要があるんじゃないですか?」
「いえ、ですから、いいんですって」
「エミリー、一体どういうことなの?」
「ドクター・アリスは・バージョン2.0が・日本国内で・暴走した事件を・ご存じですか?」
「……?」
アリスは首を傾げて肩を竦めた。
「バージョン2.0が・国内で暴走して・巻き添えに・なった人達に・多数の死傷者が・出ました」
「ああ、そうだったの。シキシマの家族は、バージョン2.0に……。ごめんなさいね。10年前って言ったら、じー様がアタシと一緒に日本を発つ頃だったから、置き土産に残したって話は聞いてた。アタシは放置プレイしていくものだと思ってたけど、そう……。暴走して、あんな事件を……」
「まあ、当の本人はもう死んでるからね、アリスも知らなかったんだから、しょうがないさ。バージョン2.0の詳細を知ったのも、南里研究所に出向してからしばらくの間だったし」
「じー様も抜けている所があったからね。廃棄処分にしたはずのバージョン2.0が動き出して、暴れ出すとは思わなかったらしいよ」
「全く。死んでからも迷惑な爺さんだ」
平賀は憤慨した様子で言った。
「その恨みの矛先が、シンディに殺されたんだ。アリスの前で言うのも何だけど、自業自得だ。それで十分ですよ」
「敷島さんは人間ができてますなぁ……。自分なんか、南里先生を殺害したシンディ……つまり、それを命令したウィリーが憎くてしょうがないですよ」
「だから、アリスにその責任を取らせるのもどうかと思うんです。アリスはそのことを知らなかったんですから」
「シンディが裏で汚れ役をやっているんだろうというのは、何となく分かった。だけど、まさかドクター南里まで殺すとは思ってなかったよ」
[同日12:30.仙台市内のファミレス 敷島、アリス、エミリー、平賀、七海]
「まあまあ、昼食にしましょう」
敷島達は平賀の車に便乗して、街中まで戻ってきた。
「アタシも大きくなるにつれて、じー様のテロリズムはおかしいとは思ってたの。だけど養護施設から拾ってくれて、大学まで行かせてくれた恩があるから、とても言えなくて……」
「普通なら、『言い訳がましいこと言うな』と反論する所だけども、一応はそうだな」
平賀は頷いた。
「一応、キミが復讐の為に敷島さんを狙っていた時、少なくとも1人の死者も出していない」
「アタシの場合は正直、個人的な恨みだったからね。その為に死者を出してもいいってんじゃ、じー様のテロリズムと同じだと思ったから」
「随分と計算ずくの行動だったな」
「もちろん。じー様の為に色んな勉強をしてきて博士号まで取ったけど、それでもじー様には近づけないと思ったね」
「どういう所が?」
「アタシが子供の頃、過ごしていた養護施設はキリスト教会がやっていた所でね、一応はアタシも洗礼は受けているのよ」
「まあ、アメリカの国教みたいなものだからね」
しかしアリスは熱心な信者というわけではないようだ。食事前にお祈りをすることもなければ、別に教会のミサに行くわけでもない。
「『宗教テロを無くす為には、神をも抹殺する科学の発達が必要だ』って言ってたから」
「なるほど。変わった御仁だ」
「それを信仰している人間の方に問題があるのにね」
「すると、アリスにはミドルネームがあったんだ」
「そうね。もう忘れたけど」
「10年前のことだから、敷島さんは25歳でしたか」
「ちょうど会社の……大日本電機の研修で海外に行ってて、難を逃れました。見たこともないロボットが大暴れして大変なことになったとニュースで知りましたが、それがまさかうちの実家だったとは……」
「1ヶ所に固めると居場所が知られるからって、じー様は全国に散らしたの。たまたまこの町に散らばった個体が、暴走したってことね。じー様も首を捻ってたわ」
「自分が魔改造したからだろ。どうせ」
「これは学会でも話題になってるんですが、バージョン2.0というのはそんなにバリエーションが無いそうです。そうだな、アリス?」
「うん。バージョン3.0を作る為の“繋ぎ”みたいなものだったから。本当は2.0で完成体にしたかったらしいんだけど、色々と欠陥が見つかってね。結局、じー様の中じゃ失敗作扱いよ」
「だからって日本に捨てて行かれても困るな。おかげで、多数の死傷者を出したんだから」
「3.0でも満足できず、やっと4.0で完成体か」
「まだまだ。5.0よ。でも、マリオとルイージのことじゃないの」
「えっ?」
「じー様が作りたかったのは、実は試作機の方だったのね」
「ああ。そういえばそっちの方が、よっぽどテロ用ロボットだったな」
「マリオとルイージは、アタシのオリジナル。多分、じー様が見たらズッコケるわよ」
「正式名が“Bersion 5.0 Alice Original Version.”だもんね」
「学会ではバージョン5.5とか呼んでる学者もいる」
「旧式も旧式の2.0で、あんなテロができるんだから凄いよ」
「まあホント、じー様が申し訳ないことしたね。孫娘として謝らないとね」
「もういいから。それよりアリスは、どうしてその2.0が暴走したか分からないかい?」
「作った本人のじー様が首傾げてたくらいだからねぇ……。その暴走したヤツは、この世に無いんでしょう?」
「自衛隊が出動して、やっと破壊したくらいだからね。今は保存もされていないはずだ」
「残ってたら、調べてやれるんだけど……」
「一応、財団に問い合わせてみよう」
「そうしてくれる?このままじゃ、アタシも収まりつかないから。せめて、暴走した原因くらいは突き止めてあげるわ」
その後、とんでもない事実が発覚することになろうとは、この時は思いもしなかったのである。
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アリスが「基地」と「墓地」でボケをかましているが、実は作者の私も、小学生の時はよく勘違いしていた。アリスと敷島のやり取りは、実は20年以上前の私と両親のやり取りが元ネタである。
当時は漢字関係で、国語の成績はそんなに良くなかったものだ。
それと敷島家の墓が葛岡霊園だということに対して、特にモデルは無い。アリスが便宜上とはいえクリスチャンということした為、市営の共同墓地にしただけである。
続編では平賀も敷島も、日蓮正宗信徒という設定は無い。
「What’s?シキシマ、どこか出掛けるの?」
「ああ。ちょっとね。アリスはここにいていいよ。雪降ってるし」
「なーに言ってるの。まだアタシ、この町のことよく知らないんだから、一緒に行くよ」
「……まあ、勝手にするさ」
[同日 10:00.JR仙台駅仙山線ホーム 敷島、アリス、エミリー]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。8番線に停車中の列車は、10時5分発、普通、愛子(あやし)行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
小雪が舞う中、首都圏のJR駅でも流れる言い回しの放送がホームに響く中、3人は電車に乗り込んだ。
空いているボックスシートに座った。
「どこまで行くの?」
「葛岡だよ、葛岡」
「うーん……。仙台市内から出るほど遠いわけではないようね……」
「エミリーをGPS代わりにしない」
アリスはエミリーの左耳に端子を接続し、手持ちのタブレットPCに差し込んだ。
「東北福祉大学……ではなさそうね。アタシのジャンルと違う」
「だったら、東北福祉大前で降りればいいだろ」
電車は時刻通りに発車した。
〔今日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は仙山線、普通、愛子行きです。(中略)次は、東照宮です〕
首都圏の中距離電車と同じ声優、言い回しの自動放送が車内に流れる。
「一体、何の基地なの?軍事施設とか?」
「は???」
敷島はアリスの質問に素っ頓狂な声を上げた。
「財団が何かの秘密研究をしているラボのある基地とか……?」
「何の話???」
「いや、だってホラ、Google mapに基地って書いてあるよ?」
アリスはタブレットPCを見せた。そこには葛岡駅周辺の地図が出ている。アリスが指さした所には……。
「基地じゃない!墓地だ!」
「Oh!……漢字って難しいね」
「無理せず、英語版使えばいいだろ。英語版なら間違いない」
「もう使ってるよ。このタブレットのサイズ……」
「A5版とは言ってねぇ!」
[同日10:23.JR葛岡駅 敷島、アリス、エミリー]
〔まもなく葛岡、葛岡。お出口は、左側です〕
線路脇に雪がうず高く積もっている。
電車は一面一線だけのホームに停車した。
仙台市内でも屈指の大規模霊園ということもあって、お盆やお彼岸は多くの墓参客で賑わうが、そうでない日は閑散としている。
ここで電車を降りると、階段を下った。高架駅ではないが、元々この区間は高台を走行するので、駅舎が台地の下にある。
「誰かの墓参りなの?」
「そうだよ」
敷島は何を言ってるんだという顔をした。
[同日11:00.仙台市葛岡霊園 敷島、アリス、エミリー]
その墓は何の変哲も無い佇まいだった。ただ、その墓には『敷島家之墓』と書かれていた。
「ドクター南里の墓参りでは無かったのね」
「所長の墓はここには無いし、今日が命日じゃないし」
「敷島さんの・ご家族の・お墓です」
エミリーが代わりに言った。
「ふーん……。グランパかグランマの?」
「違う違う」
敷島は首を横に振った。
「敷島さんの・ご両親と・ご兄弟です」
「What’s!?」
「エミリー、余計なことは言わなくていいよ」
「なに?シキシマって……その……」
「今から10年前ね」
「10年前……ってことは、東日本大震災では無いのか」
「まあね。まあ、死因については秘密ってことで」
「フツーは事故か何かって思うけど?」
「まあ、そう思ってくれればいい」
と、その時だった。
「あれ?敷島さん、やはりおいででしたか」
そこへ現れたのは平賀と七海だった。
「平賀先生!どうしてここへ?」
「財団副理事として、ですよ」
「別に、結構ですのに……」
「いいからいいから。もう10年になるんですね」
「まあ、早いというか何というか……」
「何の話なの?」
アリスが不思議そうな顔をした。
「さすがですね、敷島さん。当事者を連れてくるとは。アリス、ちゃんと墓前で謝ったか?」
「だから何の話よ?」
アリスは訝しい顔をした。
「いや、いいんですよ、平賀先生。多分、アリスは知らないでしょうから」
「だったら、尚更知ってもらう必要があるんじゃないですか?」
「いえ、ですから、いいんですって」
「エミリー、一体どういうことなの?」
「ドクター・アリスは・バージョン2.0が・日本国内で・暴走した事件を・ご存じですか?」
「……?」
アリスは首を傾げて肩を竦めた。
「バージョン2.0が・国内で暴走して・巻き添えに・なった人達に・多数の死傷者が・出ました」
「ああ、そうだったの。シキシマの家族は、バージョン2.0に……。ごめんなさいね。10年前って言ったら、じー様がアタシと一緒に日本を発つ頃だったから、置き土産に残したって話は聞いてた。アタシは放置プレイしていくものだと思ってたけど、そう……。暴走して、あんな事件を……」
「まあ、当の本人はもう死んでるからね、アリスも知らなかったんだから、しょうがないさ。バージョン2.0の詳細を知ったのも、南里研究所に出向してからしばらくの間だったし」
「じー様も抜けている所があったからね。廃棄処分にしたはずのバージョン2.0が動き出して、暴れ出すとは思わなかったらしいよ」
「全く。死んでからも迷惑な爺さんだ」
平賀は憤慨した様子で言った。
「その恨みの矛先が、シンディに殺されたんだ。アリスの前で言うのも何だけど、自業自得だ。それで十分ですよ」
「敷島さんは人間ができてますなぁ……。自分なんか、南里先生を殺害したシンディ……つまり、それを命令したウィリーが憎くてしょうがないですよ」
「だから、アリスにその責任を取らせるのもどうかと思うんです。アリスはそのことを知らなかったんですから」
「シンディが裏で汚れ役をやっているんだろうというのは、何となく分かった。だけど、まさかドクター南里まで殺すとは思ってなかったよ」
[同日12:30.仙台市内のファミレス 敷島、アリス、エミリー、平賀、七海]
「まあまあ、昼食にしましょう」
敷島達は平賀の車に便乗して、街中まで戻ってきた。
「アタシも大きくなるにつれて、じー様のテロリズムはおかしいとは思ってたの。だけど養護施設から拾ってくれて、大学まで行かせてくれた恩があるから、とても言えなくて……」
「普通なら、『言い訳がましいこと言うな』と反論する所だけども、一応はそうだな」
平賀は頷いた。
「一応、キミが復讐の為に敷島さんを狙っていた時、少なくとも1人の死者も出していない」
「アタシの場合は正直、個人的な恨みだったからね。その為に死者を出してもいいってんじゃ、じー様のテロリズムと同じだと思ったから」
「随分と計算ずくの行動だったな」
「もちろん。じー様の為に色んな勉強をしてきて博士号まで取ったけど、それでもじー様には近づけないと思ったね」
「どういう所が?」
「アタシが子供の頃、過ごしていた養護施設はキリスト教会がやっていた所でね、一応はアタシも洗礼は受けているのよ」
「まあ、アメリカの国教みたいなものだからね」
しかしアリスは熱心な信者というわけではないようだ。食事前にお祈りをすることもなければ、別に教会のミサに行くわけでもない。
「『宗教テロを無くす為には、神をも抹殺する科学の発達が必要だ』って言ってたから」
「なるほど。変わった御仁だ」
「それを信仰している人間の方に問題があるのにね」
「すると、アリスにはミドルネームがあったんだ」
「そうね。もう忘れたけど」
「10年前のことだから、敷島さんは25歳でしたか」
「ちょうど会社の……大日本電機の研修で海外に行ってて、難を逃れました。見たこともないロボットが大暴れして大変なことになったとニュースで知りましたが、それがまさかうちの実家だったとは……」
「1ヶ所に固めると居場所が知られるからって、じー様は全国に散らしたの。たまたまこの町に散らばった個体が、暴走したってことね。じー様も首を捻ってたわ」
「自分が魔改造したからだろ。どうせ」
「これは学会でも話題になってるんですが、バージョン2.0というのはそんなにバリエーションが無いそうです。そうだな、アリス?」
「うん。バージョン3.0を作る為の“繋ぎ”みたいなものだったから。本当は2.0で完成体にしたかったらしいんだけど、色々と欠陥が見つかってね。結局、じー様の中じゃ失敗作扱いよ」
「だからって日本に捨てて行かれても困るな。おかげで、多数の死傷者を出したんだから」
「3.0でも満足できず、やっと4.0で完成体か」
「まだまだ。5.0よ。でも、マリオとルイージのことじゃないの」
「えっ?」
「じー様が作りたかったのは、実は試作機の方だったのね」
「ああ。そういえばそっちの方が、よっぽどテロ用ロボットだったな」
「マリオとルイージは、アタシのオリジナル。多分、じー様が見たらズッコケるわよ」
「正式名が“Bersion 5.0 Alice Original Version.”だもんね」
「学会ではバージョン5.5とか呼んでる学者もいる」
「旧式も旧式の2.0で、あんなテロができるんだから凄いよ」
「まあホント、じー様が申し訳ないことしたね。孫娘として謝らないとね」
「もういいから。それよりアリスは、どうしてその2.0が暴走したか分からないかい?」
「作った本人のじー様が首傾げてたくらいだからねぇ……。その暴走したヤツは、この世に無いんでしょう?」
「自衛隊が出動して、やっと破壊したくらいだからね。今は保存もされていないはずだ」
「残ってたら、調べてやれるんだけど……」
「一応、財団に問い合わせてみよう」
「そうしてくれる?このままじゃ、アタシも収まりつかないから。せめて、暴走した原因くらいは突き止めてあげるわ」
その後、とんでもない事実が発覚することになろうとは、この時は思いもしなかったのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アリスが「基地」と「墓地」でボケをかましているが、実は作者の私も、小学生の時はよく勘違いしていた。アリスと敷島のやり取りは、実は20年以上前の私と両親のやり取りが元ネタである。
当時は漢字関係で、国語の成績はそんなに良くなかったものだ。
それと敷島家の墓が葛岡霊園だということに対して、特にモデルは無い。アリスが便宜上とはいえクリスチャンということした為、市営の共同墓地にしただけである。
続編では平賀も敷島も、日蓮正宗信徒という設定は無い。