[8月20日01:00.廃ホテル地下研究所・最深部 敷島、アリス、キール、エミリー]
「ここがウィリーの研究室か!?」
しかし、そのドアは固く閉ざされていた。
見ると、横には指紋認証の端末がある。
「アリス。もしかしたら、お前なら……」
「ええ。やってみる」
アリスは自分の右手人差し指をモニタに当てた。
ピーン!(←認証OK)
ガァァァァ……。(ドアが開いた)
「やっぱり、アリスに渡すつもりだったのか???」
「どうだかね」
入ってすぐ奥の壁には、40インチくらいのモニタがあった。
「! あれは……」
敷島達の入室に反応したかのように、モニタが何かを映し出した。
それは……。
「南里所長!」
5年前に憤死した南里志郎が映っていた。
この映像が、どこで撮影されたものなのかは検討がつかなかった。
南里:「自らの欲望を求めることに関しては一分の無駄無く、合理的で隙が無い。いかにも米国人の考えそうなやり方だな」
ウィリー:「褒め言葉と受け取っておこう。だが、志郎よ。お前は大きな間違いを犯しているぞ」
南里:「何だと?」
ウィリー:「解決の先送りは事態の悪化を招く。キミは一時の人道主義に溺れ、また後悔に苛まされることになるだろう」
南里:「それは詭弁だな。その事態の悪化というはほんの一時であり、解決方法が全て無くなるまで放置するというものではない。それに……一瞬でも事態が悪化したら、困るのはキミの方ではないのかね?」
「……なあ?何の話をしてるんだ?」
「さあ……」
敷島の問いにアリスは肩を竦めた。
「狂科学者同士の会話か。凡人には理解できないぜ。蒙昧な大衆が求めているのは、その大衆がちゃんと理解できる内容だよ」
ウィリー:「とにかく、この場は私の勝ちだ。キミはキミで、自らの敗因を求めたまえ。チェック・メイト」
南里:「貴様ぁっ!謀ったな!」
カメラが下の方を向いた。
2人が向かい合うテーブルの上に乗っていたのは……。
「チェスかよ!!」
「ったく、このジジィどもは……」
「シッ!お静かに!」
キールが夫婦のツッコミを黙らせた。
「んんっ!?」
すると、チェス盤がテーブルの下に引っ込み、代わりに何かが出てくる。
「あれは・セキュリティ・トークンです」
エミリーが答えた。
「セキュリティ・トークン?何だそれ?」
ウィリー:「約束だ。これはもらっていくぞ」
南里:「お前のことだ。どんなテロに使うことか……!」
ウィリー:「訂正してもらおうか。『どんな正義』にでも使わせてもらおう」
ウィリーが部屋から出て行く。
残った南里は悔しそうな顔をしながら、
「あの新型ウィルスは世界中の電子頭脳を破壊し、暴走させる。ワクチンはまだ無い。電子に依存しているこの世界で、あれがバラ撒かれたら世界の終わりだ……」
と、頭を抱えた。
「どういうことだ?」
敷島はピンと来なかったため、隣にいた妻に聞いた。
「上手く扱えば、核保有国の端末に侵入して、核兵器を誤射させることができるってこと」
「何だ、そんなことか……って、おい!」
「ドクター……南里……」
「あっ、南里博士が!」
画面を見ると、今度は南里がカメラの方を向いた。
〔「これを見ている正義の味方よ。どうか、ウィリーからウィルスを取り戻してくれ。エミリー、そのような正義の味方が現れたら、全力でサポートするのだ。頼んだぞ」〕
「イエス……」
(ってか、チェスの勝負で世界を滅ぼすウィルスの保有を決めてたのかよ!)
敷島はその言葉を喉元まで出して飲み込んだ。
南里の発言は続いており、それはエミリーに向けてのもので、実質的な遺言のようなその内容に、エミリーはポロポロと涙を流していたからだ。
「エミリー、泣くのは後にしなさい。南里から奪ったウィルスは、この部屋にあるはずよ」
「さっきのメモリー媒体だな。……あれが怪しいぞ」
敷島が指さしたのは壁に埋め込まれた金庫。
またもや指紋認証を必要とするものだった。
もちろん、アリスの指紋でOKだ。
「ん?」
その金庫の中に、果たして映像の中にあったフラッシュメモリーがあった。
「これが世界を滅亡に導くウィルスかよ……」
敷島は俄かには信じられなかった。
「でも、間違いないわ」
金庫の中にはノートが入っていた。
アリスはパラパラをノートを捲る。
「これがじー様の遺した研究ノートだけど、間違いない」
「さすが、天才を自称するだけのことはあるな。ほんの一瞬目を通しただけで、もう内容が分かったのか」
「だいたいね」
「あとは“ワクチン”だ。それが無いとルカが直らない」
「それなら大丈夫。病原体のウィルスじゃないんだから、このウィルスを解析すれば、ルカが感染したものは直せるわ。そうでなくとも、このノートに“ワクチン”の作り方も書いてあったし」
「それを早く言えよ。てことは、もうここの捜索は十分ってことじゃないか」
「そうね」
「よし。あとはこんな化け物ホテルに用は無い。早く脱出を……」
バンッ!(ドアがこじ開けられた音)
「!?」
「そうはさせねーぜ!ああっ!?」
「私の分析によりますと、あなた達はイエロー達の仇の為に死んで頂くのですね」
倒したはずのケンショーブルーとケンショーグリーンだった。
「またか、こいつら!」
「ケンショーのしつこさをナメんじゃねぇぜ、ああっ!?じゃ、頼んます」
だが、エミリーとキールの集中攻撃が待っていた。
「い、いてぇよぉ……クスン……」
ブルー、あっという間に瞬殺される。
しかし、グリーンは……。
「クフフフフフ!」
「くっ、弾が当たらない!」
「ロック・オン、できない!」
見た目とは裏腹の素早い動きで、アンドロイド達の弾をかわすグリーン。
「しまった!」
敷島が掴もうとしても抜けられてしまった。
ムニムニッ!ナデナデ……。(←アリスの巨乳を揉み回し、尻を撫で回すグリーン)
「嗚呼……やはりこの生モノの感触は素晴らしい……」
「こ……このっ!ヘンタイ!アブノーマル!!」
バキィッ!(グリーンの顔面にアリスのパンチ。眼鏡が吹っ飛ぶ)
ゲシッ!ガッシャーン!(グリーンにアリスのハイキックが炸裂。操作システムの上まで吹っ飛ぶ)
「すげぇ、アリス!」
「フンっ!」
「私が次期会長ぉぉ……」
グリーン、操作パネルの上に崩れ落ちる。
が、右手がその際、警戒色のラインに囲まれた赤いボタンに当たった。
ポチッ……!(←いかにもな赤いボタンを押してしまうグリーン)
ビーッ!ビーッ!ビーッ!(室内……いや、館内に響くアラーム)
「な、何だ何だ!?」
敷島がアラームだけでなく、それまで消灯していた赤いパトランプが点灯した室内を見回した。
その時、スピーカーからエミリーのような声の女性の自動放送が流れた。
しかし悲しいかな、英語のため、敷島には理解できない。
「自爆装置プログラムが作動したって!早くここから逃げましょう!」
「何だって!?キャンセルしてくれ!」
「できないって言ってる!」
「マジかよ!」
敷島達は急いで、来た道を引き返した。
その時だった。
{「こちら平賀、こちら平賀!誰か応答してください!」}
インカムに平賀からの無線が入ってきた。
どういうわけだか、館内の通信システムが復旧したらしい。
「平賀先生!敷島です!」
{「敷島さん!無事ですか!?他の皆は!?」}
「全員無事です。ミッションも成功しました!ただ、自爆装置プログラムが作動したみたいで、今、脱出を……」
{「分かりました。実は今、ヘリで現地に向かっています。敷島さん達との交信が途絶えたので、救助をと思いまして」}
「おおっ!」
{「ホテル“シークルーズ”のデータについては、入手済みです。屋上へ向かってください。屋上にヘリポートがあります。そこで合流しましょう」}
「どうやって行くんですか!?」
{「ホールに展望台に行くエレベーターがあります。その展望台から、屋上に出られるはずです」}
「よ、よし!分かりました!」
ここで一旦、交信を切る。
「聞いたな?取りあえず、ホールに向かうぞ」
「はい!」
敷島達は研究所からまずは脱出する為に、カジノに戻るエレベーターに向かった。
時折、誘爆というか小爆発が起きている。
「大丈夫か?まさか、エレベーターが爆発したりはしないよな???」
「余計な心配をしてる場合じゃないわ。爆発するのは研究所だけで、ホテルはそうでないかもしれないし」
「そ、そうだな」
ドォーン!
「ぅおっと!」
敷島の近くで小爆発が起こる。
「早くしないと命が持たない!」
「ええ!急ぎましょう!」
果たして、敷島達は無事に研究施設・ホテルから脱出できるだろうか。
「ここがウィリーの研究室か!?」
しかし、そのドアは固く閉ざされていた。
見ると、横には指紋認証の端末がある。
「アリス。もしかしたら、お前なら……」
「ええ。やってみる」
アリスは自分の右手人差し指をモニタに当てた。
ピーン!(←認証OK)
ガァァァァ……。(ドアが開いた)
「やっぱり、アリスに渡すつもりだったのか???」
「どうだかね」
入ってすぐ奥の壁には、40インチくらいのモニタがあった。
「! あれは……」
敷島達の入室に反応したかのように、モニタが何かを映し出した。
それは……。
「南里所長!」
5年前に憤死した南里志郎が映っていた。
この映像が、どこで撮影されたものなのかは検討がつかなかった。
南里:「自らの欲望を求めることに関しては一分の無駄無く、合理的で隙が無い。いかにも米国人の考えそうなやり方だな」
ウィリー:「褒め言葉と受け取っておこう。だが、志郎よ。お前は大きな間違いを犯しているぞ」
南里:「何だと?」
ウィリー:「解決の先送りは事態の悪化を招く。キミは一時の人道主義に溺れ、また後悔に苛まされることになるだろう」
南里:「それは詭弁だな。その事態の悪化というはほんの一時であり、解決方法が全て無くなるまで放置するというものではない。それに……一瞬でも事態が悪化したら、困るのはキミの方ではないのかね?」
「……なあ?何の話をしてるんだ?」
「さあ……」
敷島の問いにアリスは肩を竦めた。
「狂科学者同士の会話か。凡人には理解できないぜ。蒙昧な大衆が求めているのは、その大衆がちゃんと理解できる内容だよ」
ウィリー:「とにかく、この場は私の勝ちだ。キミはキミで、自らの敗因を求めたまえ。チェック・メイト」
南里:「貴様ぁっ!謀ったな!」
カメラが下の方を向いた。
2人が向かい合うテーブルの上に乗っていたのは……。
「チェスかよ!!」
「ったく、このジジィどもは……」
「シッ!お静かに!」
キールが夫婦のツッコミを黙らせた。
「んんっ!?」
すると、チェス盤がテーブルの下に引っ込み、代わりに何かが出てくる。
「あれは・セキュリティ・トークンです」
エミリーが答えた。
「セキュリティ・トークン?何だそれ?」
ウィリー:「約束だ。これはもらっていくぞ」
南里:「お前のことだ。どんなテロに使うことか……!」
ウィリー:「訂正してもらおうか。『どんな正義』にでも使わせてもらおう」
ウィリーが部屋から出て行く。
残った南里は悔しそうな顔をしながら、
「あの新型ウィルスは世界中の電子頭脳を破壊し、暴走させる。ワクチンはまだ無い。電子に依存しているこの世界で、あれがバラ撒かれたら世界の終わりだ……」
と、頭を抱えた。
「どういうことだ?」
敷島はピンと来なかったため、隣にいた妻に聞いた。
「上手く扱えば、核保有国の端末に侵入して、核兵器を誤射させることができるってこと」
「何だ、そんなことか……って、おい!」
「ドクター……南里……」
「あっ、南里博士が!」
画面を見ると、今度は南里がカメラの方を向いた。
〔「これを見ている正義の味方よ。どうか、ウィリーからウィルスを取り戻してくれ。エミリー、そのような正義の味方が現れたら、全力でサポートするのだ。頼んだぞ」〕
「イエス……」
(ってか、チェスの勝負で世界を滅ぼすウィルスの保有を決めてたのかよ!)
敷島はその言葉を喉元まで出して飲み込んだ。
南里の発言は続いており、それはエミリーに向けてのもので、実質的な遺言のようなその内容に、エミリーはポロポロと涙を流していたからだ。
「エミリー、泣くのは後にしなさい。南里から奪ったウィルスは、この部屋にあるはずよ」
「さっきのメモリー媒体だな。……あれが怪しいぞ」
敷島が指さしたのは壁に埋め込まれた金庫。
またもや指紋認証を必要とするものだった。
もちろん、アリスの指紋でOKだ。
「ん?」
その金庫の中に、果たして映像の中にあったフラッシュメモリーがあった。
「これが世界を滅亡に導くウィルスかよ……」
敷島は俄かには信じられなかった。
「でも、間違いないわ」
金庫の中にはノートが入っていた。
アリスはパラパラをノートを捲る。
「これがじー様の遺した研究ノートだけど、間違いない」
「さすが、天才を自称するだけのことはあるな。ほんの一瞬目を通しただけで、もう内容が分かったのか」
「だいたいね」
「あとは“ワクチン”だ。それが無いとルカが直らない」
「それなら大丈夫。病原体のウィルスじゃないんだから、このウィルスを解析すれば、ルカが感染したものは直せるわ。そうでなくとも、このノートに“ワクチン”の作り方も書いてあったし」
「それを早く言えよ。てことは、もうここの捜索は十分ってことじゃないか」
「そうね」
「よし。あとはこんな化け物ホテルに用は無い。早く脱出を……」
バンッ!(ドアがこじ開けられた音)
「!?」
「そうはさせねーぜ!ああっ!?」
「私の分析によりますと、あなた達はイエロー達の仇の為に死んで頂くのですね」
倒したはずのケンショーブルーとケンショーグリーンだった。
「またか、こいつら!」
「ケンショーのしつこさをナメんじゃねぇぜ、ああっ!?じゃ、頼んます」
だが、エミリーとキールの集中攻撃が待っていた。
「い、いてぇよぉ……クスン……」
ブルー、あっという間に瞬殺される。
しかし、グリーンは……。
「クフフフフフ!」
「くっ、弾が当たらない!」
「ロック・オン、できない!」
見た目とは裏腹の素早い動きで、アンドロイド達の弾をかわすグリーン。
「しまった!」
敷島が掴もうとしても抜けられてしまった。
ムニムニッ!ナデナデ……。(←アリスの巨乳を揉み回し、尻を撫で回すグリーン)
「嗚呼……やはりこの生モノの感触は素晴らしい……」
「こ……このっ!ヘンタイ!アブノーマル!!」
バキィッ!(グリーンの顔面にアリスのパンチ。眼鏡が吹っ飛ぶ)
ゲシッ!ガッシャーン!(グリーンにアリスのハイキックが炸裂。操作システムの上まで吹っ飛ぶ)
「すげぇ、アリス!」
「フンっ!」
「私が次期会長ぉぉ……」
グリーン、操作パネルの上に崩れ落ちる。
が、右手がその際、警戒色のラインに囲まれた赤いボタンに当たった。
ポチッ……!(←いかにもな赤いボタンを押してしまうグリーン)
ビーッ!ビーッ!ビーッ!(室内……いや、館内に響くアラーム)
「な、何だ何だ!?」
敷島がアラームだけでなく、それまで消灯していた赤いパトランプが点灯した室内を見回した。
その時、スピーカーからエミリーのような声の女性の自動放送が流れた。
しかし悲しいかな、英語のため、敷島には理解できない。
「自爆装置プログラムが作動したって!早くここから逃げましょう!」
「何だって!?キャンセルしてくれ!」
「できないって言ってる!」
「マジかよ!」
敷島達は急いで、来た道を引き返した。
その時だった。
{「こちら平賀、こちら平賀!誰か応答してください!」}
インカムに平賀からの無線が入ってきた。
どういうわけだか、館内の通信システムが復旧したらしい。
「平賀先生!敷島です!」
{「敷島さん!無事ですか!?他の皆は!?」}
「全員無事です。ミッションも成功しました!ただ、自爆装置プログラムが作動したみたいで、今、脱出を……」
{「分かりました。実は今、ヘリで現地に向かっています。敷島さん達との交信が途絶えたので、救助をと思いまして」}
「おおっ!」
{「ホテル“シークルーズ”のデータについては、入手済みです。屋上へ向かってください。屋上にヘリポートがあります。そこで合流しましょう」}
「どうやって行くんですか!?」
{「ホールに展望台に行くエレベーターがあります。その展望台から、屋上に出られるはずです」}
「よ、よし!分かりました!」
ここで一旦、交信を切る。
「聞いたな?取りあえず、ホールに向かうぞ」
「はい!」
敷島達は研究所からまずは脱出する為に、カジノに戻るエレベーターに向かった。
時折、誘爆というか小爆発が起きている。
「大丈夫か?まさか、エレベーターが爆発したりはしないよな???」
「余計な心配をしてる場合じゃないわ。爆発するのは研究所だけで、ホテルはそうでないかもしれないし」
「そ、そうだな」
ドォーン!
「ぅおっと!」
敷島の近くで小爆発が起こる。
「早くしないと命が持たない!」
「ええ!急ぎましょう!」
果たして、敷島達は無事に研究施設・ホテルから脱出できるだろうか。