報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「卯酉東海道」

2015-11-02 14:00:37 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月24日10:00.埼玉県内にある総合病院の精神科病棟 鷲田警視、村中課長、ケンショーイエロー]

『やはり顕正会の根本改革は、浅井先生の死を待つしかないのでしょうか?』(厳虎独白“ズブノシロウト”より、大沢克日子氏のコメントを一部抜粋)

「なあ、アサイさん、そろそろ話してもらえませんかね?」
 村中はベッドに座る太った老人に向かって話し掛けた。
「あなた方、ケンショーレンジャーをサイボーグ化することを持ち掛けたのは十条伝助博士と、KR団のエリオット・フォン・スミスじゃないんですか?」
「この写真の男に見覚えは?」
「お前はバカだのう!ほんと、バカだ!」
「あなたは自分の寿命がまもなく尽きることを予感していた。若返りは今さら無理だとしても、サイボーグ化すれば永遠の命が得られるとエリオット達に持ち掛けられた。そうすれば、顕正会もまた永遠に不滅でいられると。それであんた達は話に乗ったんだろ?」
「いいですかー?私は細井管長の訓諭を2回も訂正せしめたんですね。これ偏に諸天の守護であります!」
「……警視、こりゃダメですよ、この爺さん」
「うーむ……。埼玉県警が会員を5人ほど逮捕したというので、いい切り口になると思ったのだが」
「しかし、押収した記憶媒体には、しっかり入ってましたからね。KR団と、このアサイ会長のやり取り」
「うむ」
「あとは、行方不明のケンショーセピアを捜して事情を聞く他は無いですね」
「そうだな」
「さあ!男子部諸君!今こそ、広宣流布の時は近い!来年までに男子1万人のを結集を実現したいと思いまするが、どうか!?」
 軽く拍手をする鷲田。
「是非やってくれ。公共の福祉に反した時点で、俺達も別の意味で参加することになるがな」
 鷲田と村中はイエローの病室をあとにした。
「警視、あれは精神病というか、普通に認知症のような気がしますが?」
「認知症は加齢によるものだが、それとは別に色々とあるらしい。俺達も医者じゃないから分からんが、ホトケさんになるまでこの病院を出ることは無いんじゃないか?」
「哀れですね」
「新興宗教の教祖なんてそんなもんさ」
「ところで、敷島社長らの動きはどうします?」
「泳がせておけ。奴らも警察のやることは分かっているし、少なくともそれなりの正義感は持ち合わせてるからな」
「はい」
「永遠の命を手に入れる為に人間の体を捨て、機械化する。まるで、昔のSFみたいだな」
「人が長生きをしたいというのは人情ですが、さすがに永遠の命までは欲しくないですねぇ……。少なからずその半面、自殺をしたがる人間もいるわけですから」
「うむ」

[9月26日07:30.JR大宮駅・宇都宮線ホーム 敷島孝夫&3号機のシンディ]

〔まもなく4番線に、普通、小田原行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。この列車は4つドア、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 敷島とシンディは地元の駅にいた。
 週末は家に帰るのだが、帰った後で今日はこれから“出張”だ。
 ようやくよちよち歩きとなった息子に別れを告げ、ホームで電車を待っている。
「二海のヤツ、ようやく子守りが板に付いたみたいだね」
「そうか?前から上手くやってくれていると思うが……」
「ううん。先月なんか、ミルクをあげるのに、『お茶が美味しい温度』設定になっていたしね」
「おぉい!」
 赤ん坊に哺乳瓶であげるミルクの温度は一肌、つまり35度前後だったと思うが……。
 独り身・子無しの作者でも分かるのに、ロイドにやらせるとちょっと危険らしい。
「まあ、アタシがすぐ温度設定変えといたけど」
「35度だな」
「ええ。……」

 パァァァン!(E231系の電子警笛)

「……だけど」
「あ?何か言ったか?」
「別に」
 シンディはニッと笑った。
 2人は5号車に乗り込んだ。
 ロイドを連れて行こうとすると大きな荷物(キャリーバッグ1個分)になるのは、ロイドが使用する機器が入っている為。
「アタシ、デッキにいる?」
「いや、俺の隣に座ってくれ」
 敷島はそう言って、Suicaを座席上の読取機に翳した。
 ランプが緑から赤へ変わる。
 平屋部分に乗り、そこには網棚があるので、シンディは重いパーツが入っているはずのバッグをヒョイと持ち上げて網棚に乗せた。
 そうしているうちに電車が走り出す。

〔この電車は宇都宮線、東海道線直通、普通、小田原行きです。【中略】次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

「どうせ姉さん達は新幹線で来るんだから、そのまま大宮から乗っちゃえば良かったんじゃない?」
「平賀先生達の乗ってくる“はやぶさ”は全車指定で、大宮〜東京間の指定席は売らないから、乗れないんだよ。しょうがないから、俺達は在来線で向かう。分かったか?」
「はいはい。でもこっちのグリーン車も、そこそこ乗ってるね。アタシは立って、席を空けた方がいいんじゃない?」
「お前は俺の護衛役でもあるんだから、隣に座っといてくれよ。でないと、後で行動履歴チェックしたアリスに、ぶっ飛ばされる」
「そうかしら?」
「アリスに俺をぶっ飛ばせって命令されたら聞くだろ?」
「もちろん!」
「躊躇無く頷くな!」
「オーナーの命令は絶対、ユーザーの命令は相対」
 つまり、オーナーの出す命令とユーザーの出す命令に相違があった場合、ロイドはオーナーの命令を優先するというシステムだ。
「全く……」

[同日08:03.天候:晴 JR東京駅 敷島孝夫、シンディ、平賀太一、1号機のエミリー]

〔まもなく東京、東京。お出口は、左側です。新幹線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです〕
〔「到着ホームは9番線、お出口は同じく左側です。この電車は東海道本線、普通列車、小田原行きとなります。新橋、品川、川崎、横浜の順に終点小田原まで、各駅に止まります。……」〕

 上野東京ラインも、だいぶ利用者に浸透してきただろうか。
 東海道線の利用者からは、東京駅始発が少なくなって、着座帰宅ができなくなったと嘆いているらしいが。
 ドアが開いて、そこから多くの乗客が吐き出されるのを見ると、とてもそのようには見えないのだが……。
 秋葉原を通過しているのは大きいと思う。
「待ち合わせ場所は、東海道新幹線の改札内だな。平賀先生達、東北新幹線から乗り換え改札を通って、そのまま東海道新幹線のコンコースに行くみたいだから」
「了解」
「平賀先生達の“はやぶさ”は8時7分着だから、移動している最中に会えそうなものだ」

 しかし、その前に遭遇した者達がいた。
「あっ、たかお……社長、おはようございます!」
 売れっ子故に帽子と眼鏡で変装した初音ミクとMEIKO、巡音ルカだった。
「よう。……そうか。今日は関西でのイベントだったな」
「今日中に行って帰って来るから大変よ」
 MEIKOが肩を竦めた。
「新曲CDの発売週は、そんなもんだよ。いいじゃないか。確かイベント会場は大阪の理系大学だろ?平賀先生が紹介してくれた仕事なんだから、悪いようにはならないはずだが……」
「向こうの学長と自分は南里先生を通しての知り合いなので、向こうの学生会……大学祭実行委員会とも話が付いてますからね。整備も心配無いですよ」
「おっ、平賀先生!」
「おはようございます!」
 ボーカロイド達は一斉に挨拶した。
 平賀がいる時は、よく平賀が整備するからだろう。
「さすがに皆が集まっていると、賑やかですね」
「急がないと・新幹線に・乗り遅れる・では・ないか?」
 エミリーがボカロ達に指摘した。
「あっ、そうだった!」
「それじゃ社長、行ってきます!」
「ああ、気をつけて」
 バタバタと“のぞみ”の発車するホームに向かうボカロ3機。
「私達は“こだま”ですね」
「それしか止まらない駅ですか」
「そうなんです。ま、私らはもう少し余裕があるので。私は弁当でも買って行きますよ」
「じゃあ、自分は喫煙所で煙草でも吸ってきます」

 週末の旅行客で賑わう新幹線乗り場。
 さて、敷島達の目的地とは何処に?
コメント (9)
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“新アンドロイドマスター” 「南里の身内?」

2015-11-02 10:22:33 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月21日21:00.天候:晴 宮城県宮城郡利府町→宮城県仙台市青葉区 敷島エージェンシーの面々と平賀太一、1号機のエミリー]

 セキスイハイムスーパーアリーナでの秋季ライブを終えたボーカロイド達は、レンタカーに乗り込み、帰宅の途に就いた。
 宮城県と秋田県の県境付近にいた平賀達も合流したが、シンディはエミリーからチョークスリーパーというお仕置きを受けたそうである。
「体の形が変わるかと思った……」
 ボーカロイド達を乗せたワンボックスを運転する敷島の隣、助手席に座るシンディは溜め息をついた。
「文句・あるなら・もう1回・やる」
 直後に座るエミリーが無表情で言った。
「な、無いです!」
「まさか、お前が情報握ってたとはな……。とんでもない話だよ」
 エミリーの隣に座る平賀が腕を組み、足を組んで言った。
「いや、まさか有用な情報だとは思わなかったんで……」
「有用じゃないと判断したら、即座に消去するのがロイドだ。少しはあると思ったんじゃないのか?」
「め、滅相も無い……」
「吉塚広美さんですか。うーん……。何だかんだ言って、年寄りの参列者とか結構いたからなぁ……」
 身寄りの無い南里であったが、科学者としては権威があったため、そちら関係の参列者が多かった。
「外国人も結構いたでしょ?逆に日本人の方が少ない」
「いや、そうでもないですが……。ただ、科学者の参列者の中で、一般人もいたのは確かに覚えてますね。まあ、自治会長の田村の婆さんが香典の一部を『滞納中の自治会費に少し寄越せ』と言ってきた対応をした記憶は、まるで昨日のように……」
「相変わらずだ。七海を10万円で売ってくれと言われた時にはびっくりしましたが」
「本当にいい物を買い叩く婆さんだ。七海は10億円くらいの価値があるでしょ?」
「いや、試作みたいなものだから、そんなに高値は付かないと思いますがね」
 もっとも、七海は非売品である。
「シンディのメモリーによれば、KR団所属の研究員と思われる吉塚氏は東海地方に在住している。後で確かめてみよう」
「自分も行きます。行く時には教えてください」
「なるべく早く行こうと思います。サツの手が回る前に」
「そうですね」

[同日22:30.ホテル法華クラブ仙台 敷島孝夫&シンディ]

 仙台駅で最終の新幹線にボーカロイド達を乗せ、そこで別れた敷島とシンディは市内で1泊していた。
 明日退院の井辺を連れて帰京するのが目的だ。
 一応、入院の際に保証人が敷島となっている以上、置いて帰るわけにはいかなかった。
 大きなケガは無かったが、やはり一晩中広い洋館内を走り回ったり、変な催眠ガスを吸わされたりして、相当体に負担が掛かっていたようである。
「静岡県からわざわざ来たのか。やはり、ただの関係者ではないな」
 敷島はシンディのメモリーを引っ張り出した。
 もちろん、外国からの参列者もそれなりにいたので、敷島の言葉は適切ではないかもしれない。
 吉塚の住所をGoogleで打ち込むと、地図で追うことができる。
 その地図の中に、気になるものが出て来た。
「これは……?」
 更にネットで調べを進めて行くうちに、いつしか忘れられていたある物が浮かび上がって来た。
 十条達夫の遺品の1つである。
 シンディとの戦いにより、鉄屑と化した7号機のレイチェルが執拗に狙っていた、アレ。
「なあ、シンディ?」
「なに?」
「レイチェルはどうして、あの掛け軸……何て言ったっけ?あれを狙っていたんだ?」
「御本尊ってヤツ?十条伝助博士の命令だって言ってたよ?ま、そんなものよ。アタシ達が動くのは」
「そうか。俺は、骨董品とかには興味無いからな。しょうがない」
「まあね」
「どれ、そろそろ寝るとするか。お前も充電しとけよ」
「分かってるよ」

[同日同時刻 仙台市太白区・平賀家 平賀太一&1号機のエミリー]

 平賀はエミリーがKR団の研究所で録画した動画を再生していた。
 エミリーに限らず、ロイドは自分の目(カメラ)で見た動画をそのまま記憶する為、そこから画像の再生は可能である。
 途中でパイプオルガンの音色が流れて来た箇所があったが、結局何の仕掛けだったのだろうか。
 特に、それで何かの仕掛けを解くことは無かったが。
 その次にあるピアノを弾いて、表向きは防火戸になっている鉄扉を開く仕掛けはあったが。
 何やらピアノを弾いて何かの仕掛けを解くというのは何となく分かったが(平賀も敷島ほどではないが、井辺を超える経験者)、幸いピアノの得意なエミリーがいたので、何か弾いてもらった。
 敷島の話では、“バイオハザード1”では“月光”を弾くそうなので、エミリーにそれを弾かせたが何も起こらなかった。
 しょうがないので、“人形裁判 〜人の形弄び少女〜”を弾かせたら開いた。
「相変わらず、『何だ、これ!』って感じだな。……マルチタイプが何か関係のある施設だったのか?」
 と、疑問を呟いた後で、隣に控えるエミリーに振る。
「ロイドの気配は無かったんだよな?」
「イエス」
「あれ、試しに“千年幻想郷”とか弾いてたら何が起こってたんだろうな?」
「分かりません」
 エミリーは首を傾げた。
「それもそうだな」
 途中でまだ電源の落ちていない、何の制御も無い暴走したロボットが襲い掛かって来たりもしたが、エミリーの敵ではなかった。
 虫型のロボットを研究・開発するエリアでは、巨大な蜘蛛型のロボットが立ちはだかっていた。
 ガシャンガシャンガシャンとロボットが歩くような音を立てる以外は、生物の蜘蛛と大して変わらぬ動きであった。
 しかも生物の蜘蛛が毒液を持っているのと同じように、その蜘蛛型ロボットも何か酸性の液体を吹き掛けて来るなどした。
「多分、試作品だな、これ。こんな動きの悪いヤツ、さすがに売れないだろ」
 足の動きなどは蜘蛛そのものだが、歩く音が大きい上、本物の蜘蛛なら網の上を縦横無尽に素早く動けるところ、この蜘蛛ロボットは四方向にしか動けないらしく、虫型ロボット開発エリアの中ボスとしても弱い感じだった。
「もっと小型化、俊敏性・静粛性を増して、何かそんなに毒性の強くない薬液で防御できて、尚且つ人間の力でも破ることのできない強靭な網を張れたら、防犯機器として売れそうだけど……」
 そこは平和主義の平賀。
 アリスと違って、兵器として売るという発想は出てこない。
 侵入者を蜘蛛型ロボットの網で捕えるという発想らしい。
 一応、防御と威嚇の為に生物の蜘蛛と同じように体液を吐くくらいの勢いで。
「……おっと。もうこんな時間か。明日は仙台市科学館で出張実験だ。お前にも出てもらうからな、充電しておいてくれ。深夜電力なら、費用も安いからな」
「かしこまりました」
コメント (5)
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