[5月16日03:00.天候:晴 アーカンソー研究所屋上]
シンディは間合いを取って、ライフルをルディに撃ち込もうとした。
ルディもまた間合いを取って、レーザービームをシンディに食らわせようとする。
「うちのアルエットといい、最新型はレーザービームが流行ってるんだな」
屋上出入口の物陰に隠れ、敷島達はシンディとルディの戦いを見ていた。
地上ではエミリーとジャニスが取っ組み合いの肉弾戦を繰り広げているのとは対照的に、こちらは間合いを取って戦っているので、どことなく静かだ。
「くそっ!この隙にリンとレンを連れ戻したいのに……!」
「ミスター敷島、今ハ危険デスヨ。今出タラ、狙イ撃チニサレマス」
クエントが片言の日本語で敷島を制した。
「分かってるよ!それにしても、俺だったらルディに任せてヘリで先に脱出するのに、どうして……って、ああ!そうか!でかした、シンディ!」
シンディが機先を制してパイロットを銃撃したからである。
これは本来、ロボット三原則に反する行為であるが、
「アリス、シンディのパイロット銃撃は処分の対象になるか?」
敷島が手持ちのトランシーバーで、アリスに問うた。
アリスの答えは、
{「オーナー権限で許す!」}
であった。
「よし!」
(こ、この人達って……)
クエントは敷島夫妻のロボット三原則の大いなる曲解に呆れた。
「鳥柴さん、あのヘリコプター、DSSからガメた奴じゃなくて、元々デイライトさん本社のヘリのような気がするんですが……」
敷島はヘリのペイントに気づいた。
「ええ。あれは……本社重役のヘリコプターです」
「は!?」
「それ何!?重役が絡んでるってこと!?」
「その通り」
「!!!」
いつの間にかアルバート・ブラックロードが屋上出入口の屋根の上に登っていた。
手にはハンドガンを持っている。
「日本人のキミ達がまさかここまで来るとは思わなかったが、知り始めた。それだけで十分な過失だ」
鳥柴が、
「アルバート・ブラックロード常務!」
「常務!?」
敷島は右手を頭にやって、
「ブラックロード常務、うちのボーカロイドは非売品なんですがねぇ……?」
「だからこそ、だ。キミ達は余計なことを知って、肝心なことは知らないようだ」
「は?」
「考えてもみたまえ。キミ達が潰したKR団。彼らがアンドロイドの台頭を嫌っているとしていながら、ボーカロイドを執拗に狙った理由は何だ?」
「アイドル事業にロボットは必要無い、とか何とか言っていましたが……」
敷島がそう答えると、
「ふふ……ふふふふふふ、ふはははははははははは!」
アルバート・ブラックロードは大きく笑った。
「何がおかしい!?」
「フン。『マルチタイプを世界一使いこなす男』も、所詮はこんなものか」
「何だと!?」
「それでは、もう1つの謎と行こう。そのボーカロイドの特技は何だ?」
「特技?特技ってそりゃ、歌って踊れる……どころか、リンとレンはミュージカルにも出て演技力もあるぞ!」
「それだけか?」
「えっ?」
「ボーカロイドの特技はそれだけかと聞いているのだ」
「……!」
アリスが何かに気づいた。
「電気信号をメロディ化して歌える……!」
「なにっ?」
「タカオ。アタシと出会う前、ドクター十条とそんな話をしてたって言ってたでしょ!?」
「あー……えーっと……」
「でも、それが何だって言うの?」
「やはり、日本人は平和ボケだ。そして、キミも」
「そういえばアタシ、あまりボーカロイドは調べていなかった……」
「キミ達に明確な答えを言うのは勿体ない。だが、これだけは言っておこう。ボーカロイドの隠された特技、これを最大限引き出せばそこにいるマルチタイプなど、ザコロボット同然だ」
「はあ!?」
「ボーカロイド専門の芸能プロダクションとやらより、デイライト・コーポレーションで扱った方が……」
と、その時だった。
マルチタイプ達は戦闘を中断し、アルバート常務の話を聞いていたのだが、その背後から一発の銃声が飛んできた。
「ぐわあああっ!?」
その銃声は常務の胸に命中し、常務は屋上出入口の屋根の上から屋上のコンクリートの床に倒れ落ちた。
常務を銃撃したのは……。
「キサマ!!」
アルバート所長だった。
ルディはアルバートに殴りかかろうとしたが、
「アンタの相手はアタシだよ!!」
シンディがライフル弾をルディの背中に撃ち込んだ。
「がぁ……ッ!」
「えっ?」
マルチタイプは人間そっくりの姿をしていながら、その耐久力は凄まじいものがある。
シンディは牽制のつもりで発砲したのだが、ルディは背中を撃たれた後、そこから火花を吹いた。
「……どうしても背中のバッテリー部分が強化できなかった。だから彼らは、絶対に信用のおけない者達に対しては背中を向けないのだ」
アルバート所長は悔しそうに答えた。
「アタシのスペックをモデルにしたのに?」
新型マルチタイプが、何故か旧型に劣るということが露呈してしまった。
もっとも、鉄道車両も新型車の方が旧型車より脆いということがあるが。
「おい、待て!死ぬのはまだだ!」
敷島がうつ伏せに倒れた常務を仰向けにする。
「アルバート所長、これはどういうことか説明してもらいましょうか!?」
敷島がアルバートに向かって大声で糾弾した。
「説明は後だ。とにかく、常務があなた達の命を狙っていた。だから、咄嗟に撃っただけだ」
「咄嗟に?その距離から、よく狙えたものですなぁ?」
アルバートはどうやら排気塔を通って、屋上に出たらしい。
そこから常務のいた所までは、50メートルくらいあった。
「自動照準器付きの銃で……」
「そんなもの無いわよ?」
いつの間にかシンディがその銃を拾い上げていた。
「正体を見せな!!」
シンディはアルバート所長の頭部を撃ち抜いた。
衝撃でアルバート所長の頭部が吹き飛ぶが、千切れた首からは配線やオイル管が剥き出しになっていた。
「ロボットだ!?」
「コピーロボットですよ」
と、クエントが英語で言った。
「前に、何かジョークで、『コピーロボットなんか作れたらいいな』なんて話をしていたんですよ。まさか、本当にやるとは……」
「じゃあ、本物はどこだ!?」
「! ま、まさか、アリス達の所!?」
「急ぎましょう!」
敷島達は再び屋上から所内に戻った。
背中から火花を散らしていたルディ。
しかし彼は起き上がった。
そして、背中に手を伸ばして、火花を散らしているモノを取る。
「はははは……ハハハハハハハハハハっ!姉さん、バカだねぇ!僕達、新型の動力は燃料電池で、バッテリーはただの予備。それが衝撃を受けたくらいじゃ壊れないのに!」
そして、ルディは排気塔に向かって言った。
「博士、今のうちですよ」
「よーし。よくやった」
排気塔から出て来たのは、本物のアルバート所長。
「キミ達に監禁されているフリをするのも疲れたよ。キミ達は演技力も上手い。私が独立したら、是非ともハリウッドに売り込んでやろう」
「大変光栄です。でも、博士の足元にも及びませんよ」
「急いでヘリを出すぞ!パイロットが操縦できる状態だといいが……!」
「いざとなったら、ジャニスに操縦させます」
「うむ」
だが、操縦席には既に人影がいた。
パイロットだろうか。
「おい、大丈夫か?早いとこヘリを出せ!」
「ゴメーン!キャデラックしか乗れないんだ」
そこにいたのはクエント。
手持ちの自在スパナでアルバート所長を殴り付けた。
「がっ!!」
アルバートはヘリから落ちる。
「キサマ!!」
ルディが右手からレーザービームを出そうとしたが、
「!!!」
屋上出入口に隠れていたシンディに、ライフルで頭部を撃ち抜かれた。
ルディもまたヘリから落ちると、今度こそ動かなくなった。
「リンとレンは……!」
ヘリの中に連れ込まれたリンとレンは、シャットダウンこそされていたものの、見た目に外傷は無かった。
「姉さんなら……大丈夫かな」
シンディはヘリの中で待つことにした。
シンディは間合いを取って、ライフルをルディに撃ち込もうとした。
ルディもまた間合いを取って、レーザービームをシンディに食らわせようとする。
「うちのアルエットといい、最新型はレーザービームが流行ってるんだな」
屋上出入口の物陰に隠れ、敷島達はシンディとルディの戦いを見ていた。
地上ではエミリーとジャニスが取っ組み合いの肉弾戦を繰り広げているのとは対照的に、こちらは間合いを取って戦っているので、どことなく静かだ。
「くそっ!この隙にリンとレンを連れ戻したいのに……!」
「ミスター敷島、今ハ危険デスヨ。今出タラ、狙イ撃チニサレマス」
クエントが片言の日本語で敷島を制した。
「分かってるよ!それにしても、俺だったらルディに任せてヘリで先に脱出するのに、どうして……って、ああ!そうか!でかした、シンディ!」
シンディが機先を制してパイロットを銃撃したからである。
これは本来、ロボット三原則に反する行為であるが、
「アリス、シンディのパイロット銃撃は処分の対象になるか?」
敷島が手持ちのトランシーバーで、アリスに問うた。
アリスの答えは、
{「オーナー権限で許す!」}
であった。
「よし!」
(こ、この人達って……)
クエントは敷島夫妻のロボット三原則の大いなる曲解に呆れた。
「鳥柴さん、あのヘリコプター、DSSからガメた奴じゃなくて、元々デイライトさん本社のヘリのような気がするんですが……」
敷島はヘリのペイントに気づいた。
「ええ。あれは……本社重役のヘリコプターです」
「は!?」
「それ何!?重役が絡んでるってこと!?」
「その通り」
「!!!」
いつの間にかアルバート・ブラックロードが屋上出入口の屋根の上に登っていた。
手にはハンドガンを持っている。
「日本人のキミ達がまさかここまで来るとは思わなかったが、知り始めた。それだけで十分な過失だ」
鳥柴が、
「アルバート・ブラックロード常務!」
「常務!?」
敷島は右手を頭にやって、
「ブラックロード常務、うちのボーカロイドは非売品なんですがねぇ……?」
「だからこそ、だ。キミ達は余計なことを知って、肝心なことは知らないようだ」
「は?」
「考えてもみたまえ。キミ達が潰したKR団。彼らがアンドロイドの台頭を嫌っているとしていながら、ボーカロイドを執拗に狙った理由は何だ?」
「アイドル事業にロボットは必要無い、とか何とか言っていましたが……」
敷島がそう答えると、
「ふふ……ふふふふふふ、ふはははははははははは!」
アルバート・ブラックロードは大きく笑った。
「何がおかしい!?」
「フン。『マルチタイプを世界一使いこなす男』も、所詮はこんなものか」
「何だと!?」
「それでは、もう1つの謎と行こう。そのボーカロイドの特技は何だ?」
「特技?特技ってそりゃ、歌って踊れる……どころか、リンとレンはミュージカルにも出て演技力もあるぞ!」
「それだけか?」
「えっ?」
「ボーカロイドの特技はそれだけかと聞いているのだ」
「……!」
アリスが何かに気づいた。
「電気信号をメロディ化して歌える……!」
「なにっ?」
「タカオ。アタシと出会う前、ドクター十条とそんな話をしてたって言ってたでしょ!?」
「あー……えーっと……」
「でも、それが何だって言うの?」
「やはり、日本人は平和ボケだ。そして、キミも」
「そういえばアタシ、あまりボーカロイドは調べていなかった……」
「キミ達に明確な答えを言うのは勿体ない。だが、これだけは言っておこう。ボーカロイドの隠された特技、これを最大限引き出せばそこにいるマルチタイプなど、ザコロボット同然だ」
「はあ!?」
「ボーカロイド専門の芸能プロダクションとやらより、デイライト・コーポレーションで扱った方が……」
と、その時だった。
マルチタイプ達は戦闘を中断し、アルバート常務の話を聞いていたのだが、その背後から一発の銃声が飛んできた。
「ぐわあああっ!?」
その銃声は常務の胸に命中し、常務は屋上出入口の屋根の上から屋上のコンクリートの床に倒れ落ちた。
常務を銃撃したのは……。
「キサマ!!」
アルバート所長だった。
ルディはアルバートに殴りかかろうとしたが、
「アンタの相手はアタシだよ!!」
シンディがライフル弾をルディの背中に撃ち込んだ。
「がぁ……ッ!」
「えっ?」
マルチタイプは人間そっくりの姿をしていながら、その耐久力は凄まじいものがある。
シンディは牽制のつもりで発砲したのだが、ルディは背中を撃たれた後、そこから火花を吹いた。
「……どうしても背中のバッテリー部分が強化できなかった。だから彼らは、絶対に信用のおけない者達に対しては背中を向けないのだ」
アルバート所長は悔しそうに答えた。
「アタシのスペックをモデルにしたのに?」
新型マルチタイプが、何故か旧型に劣るということが露呈してしまった。
もっとも、鉄道車両も新型車の方が旧型車より脆いということがあるが。
「おい、待て!死ぬのはまだだ!」
敷島がうつ伏せに倒れた常務を仰向けにする。
「アルバート所長、これはどういうことか説明してもらいましょうか!?」
敷島がアルバートに向かって大声で糾弾した。
「説明は後だ。とにかく、常務があなた達の命を狙っていた。だから、咄嗟に撃っただけだ」
「咄嗟に?その距離から、よく狙えたものですなぁ?」
アルバートはどうやら排気塔を通って、屋上に出たらしい。
そこから常務のいた所までは、50メートルくらいあった。
「自動照準器付きの銃で……」
「そんなもの無いわよ?」
いつの間にかシンディがその銃を拾い上げていた。
「正体を見せな!!」
シンディはアルバート所長の頭部を撃ち抜いた。
衝撃でアルバート所長の頭部が吹き飛ぶが、千切れた首からは配線やオイル管が剥き出しになっていた。
「ロボットだ!?」
「コピーロボットですよ」
と、クエントが英語で言った。
「前に、何かジョークで、『コピーロボットなんか作れたらいいな』なんて話をしていたんですよ。まさか、本当にやるとは……」
「じゃあ、本物はどこだ!?」
「! ま、まさか、アリス達の所!?」
「急ぎましょう!」
敷島達は再び屋上から所内に戻った。
背中から火花を散らしていたルディ。
しかし彼は起き上がった。
そして、背中に手を伸ばして、火花を散らしているモノを取る。
「はははは……ハハハハハハハハハハっ!姉さん、バカだねぇ!僕達、新型の動力は燃料電池で、バッテリーはただの予備。それが衝撃を受けたくらいじゃ壊れないのに!」
そして、ルディは排気塔に向かって言った。
「博士、今のうちですよ」
「よーし。よくやった」
排気塔から出て来たのは、本物のアルバート所長。
「キミ達に監禁されているフリをするのも疲れたよ。キミ達は演技力も上手い。私が独立したら、是非ともハリウッドに売り込んでやろう」
「大変光栄です。でも、博士の足元にも及びませんよ」
「急いでヘリを出すぞ!パイロットが操縦できる状態だといいが……!」
「いざとなったら、ジャニスに操縦させます」
「うむ」
だが、操縦席には既に人影がいた。
パイロットだろうか。
「おい、大丈夫か?早いとこヘリを出せ!」
「ゴメーン!キャデラックしか乗れないんだ」
そこにいたのはクエント。
手持ちの自在スパナでアルバート所長を殴り付けた。
「がっ!!」
アルバートはヘリから落ちる。
「キサマ!!」
ルディが右手からレーザービームを出そうとしたが、
「!!!」
屋上出入口に隠れていたシンディに、ライフルで頭部を撃ち抜かれた。
ルディもまたヘリから落ちると、今度こそ動かなくなった。
「リンとレンは……!」
ヘリの中に連れ込まれたリンとレンは、シャットダウンこそされていたものの、見た目に外傷は無かった。
「姉さんなら……大丈夫かな」
シンディはヘリの中で待つことにした。