報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「暴走アンドロイド」

2016-05-28 20:37:57 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月16日01:45.天候:不明 デイライト・コーポレーション・インターナショナル アーカンソー研究所地下階]

 地下5階の大水槽から現れたのは、明らかにマーメイドの姿をしたガイノイドだった。
 但し、シンディ達に対しては、あんまり友好的な感じではなさそう。
 というか、無い。
 シンディが髪を下ろして泳いでいるかのようだが、そのせいで両目は髪に隠れてしまっている。
 しかも、何の制御もされていないらしく、シンディ達を見つけると、まるで幽霊のようなうわ言を吐いて襲って来た。
「うわっ!?」
 人魚型ガイノイドは、ダクトの中から現れた。
 しかもそのダクト、どこから来たのか、思いっ切り水が噴き出している。
 別のダクトからも、まるでどこからか排水されているかのように水が噴き出し、見る見るうちに地下5Fが水没せんかのような勢いであった。

〔「きゃはははははは!またトラップに引っ掛かっちゃってwww お姉さん達、おもしろーい!」〕

 モニタではなく、スピーカーからジャニスの声が聞こえた。
「ジャニス!きさま!!」

〔「排水ポンプを起動させたら、その水が地下5階に流れ込むように細工しておいたの!ついでにマーティも放っておくから、一緒に遊んであげてね?Good rack!」〕

 どうやらこの暴走人魚ロイド、マーティという名前らしい。
 人魚らしく、右手に三叉型の銛を手に水没しつつある廊下を自由に泳ぎ回って、シンディ達に襲い掛かってきた。
「こ、このっ……!」
 シンディは水面に出てマーティを銃撃しようとしたが、暴走していても、それは分かるのか、狙われると水中に潜ってしまう。
 当然、銃火器は水中では使えない。
「姉さん!」
 エミリーはあえて潜り、マーティを捕まえようとしたが、水中に適用したタイプと、汎用タイプでは差が出てしまう。
 マーティは銛を手に、エミリーに突進して来た。
 それは間一髪で避ける。
「トチ狂いやがって、魚女!」
 その時、シンディはあるものを持っていることを思い出した。
「姉さん、奴から離れて!」
「?」
 エミリーがシンディに言われて、間合いを取った。
「!!!」
 シンディが腰に括り付けた電撃グレネードを用意している間、マーティは三叉銛の先から銃弾を撃って来た。
 超小型の魚雷である。
「痛っ!?」
「なかなか・手ごわいぞ!気を・つけろ!」
 それはシンディとエミリーに被弾したが、幸い防弾処理がされている服の上に当たっただけだった。
 が、痛覚センサーがある部分だと衝撃で痛い。
 シンディは電撃グレネードのスイッチをONにして、また銛を突き出しながら突進してきたマーティに投げつけた。
 大きな破裂音と共に、マーティに直撃。
「キャアアアアッ!!」
 衝撃でマーティは壁に叩き付けられた。
「痛よぉぉぉぉぉぉッ!!」
「姉さん、今のうちに!」
「うむ!」
 シンディ達は水面から顔を出した。
 既に水は、天井近くまで浸水していた。
 幸い、顔を出した真上にエアダクトの吸気口があり、シンディはその金網をマルチタイプ持ち前の腕力で無理やり引っぺがした。
「早く中に!」
 シンディとエミリーは、エアダクトの中に逃げ込んだ。
「ヤツは!?マーティは・追って・来ない!?」
「そのようね。どうやら、『水中に適応したガイノイド』というより、『水中にしか適応できない』タイプらしいわ」
「間一髪・だったな」
「まだ安心はできないわ。急いで電気室に行かないと!」
「うむ!」

 幸い地下4階へはエアダクトから行くことができた。
 ダクト内を進んで行くと、上に出る蓋があり、それを開けてダクトから出る。
 そこは地下4階と5階の間だと思われ、水浸しになっていた。
 更にその近くにまた上に出る蓋があり、それを外すと地下4階に出ることができた。
「やったわ!電気室の近くよ!」
「よし」
 地下4階は排水ポンプが作動したおかげで水が引いていた。
 ここで排水された分も、地下5階に流れ込んだのだろうか。
 とにかく、地下4階までは安全だということだ。
 電気室に入ると、ここも水が引いていた。
 先ほどまで火花を散らしていたブレーカーのレバーも、今はおとなしくなっている。
「あれをONにすればいいのね!」
 シンディはレバーをONにした。
 すると、それまで非常灯しか点灯していなかった所内の蛍光灯が点灯した。
「よし。これで・復電・できた」
「やったね!」
「防災センターに・戻って・モニターを・チェックしよう」
「うん!」

 電気室を出て、再び地下1Fへ上がるエレベーターに乗り込む。
 行こうと思えば、このエレベーターでもポンプ室には行けたようだ。
 だが当然、今頃そこは水没していることだろう。
 エレベーターが動き出すと、床下から何やら呻き声のような声が聞こえたような気がした。
 その声はマーティに似ていたが、水の外では活動できまい。
 実際エレベーターが上に向かう度にその呻き声は小さくなっていき、地下1階に着いた時には全く聞こえなくなっていた。

 再び防災センターに戻る。
 センター内は蛍光灯が煌々と輝いて明るく、ほとんどのモニタが表示されていた。
「一体、どこにいるのかしら?」
「虱潰しに・探すしか・無い」
 モニタを見ると、未だに彷徨い歩くバージョンAの姿もちらほら散見された。
 どうやらバージョンAは行動パターンが決められているらしく、ある区画から別の区画へと移動する個体はいなかった。
「! そうだ」
 その時、エミリーが何かに気づいた。
「なに?」
「ここは・防災センターだ。だから……」
 エミリーは、センター内の端末を操作した。

 ピー!
『全てのロックを解除します』

「所内の・全ての・電子ロックを・解除した」
「おおっ、さすが姉さん!」
 更には遠隔で、バージョンAの全てを稼働停止に追い込むこともできた。
 バージョンAはアンドロイドではない。
 2足歩行のセキュリティ・ロボットである。
「いっそのこと、これでジャニスとルディもシャットダウンできないかしら?」
「さすがに・それは・無理そうだ」
「……だよね」
「財団時代・システムダウンで・ビル内の・セキュリティロボットが・全て・停止したことが・あった」
「あっ、なるほど。それで姉さん、知っていたのね。でもまあ、こんなんでアタシ達も制御されたら、確かにたまんないね」
「私を・制御できるのは・プロフェッサー平賀・並びに・敷島社長のみ」
「私だって。アリス博士と社長だけだから。……って、何でジャニス達はアルバート博士の言う事を聞かないんだろうね?」
「不明。お前も……」
「?」
「お前が・前期型の時・どうして・ドクター・ウィリーを・殺した?」
「そ、それは……分からない。分からないよ……」
「多分、ジャニス達も。ジャニス達も・分かっていない」
「アルバート博士は無事なのかしら?」
「安否不明。……あっ!」
 その時、エミリーが何かを見つけた。
「なに、どうしたの?」
「ジャニス!?……プロフェッサー平賀!プロフェッサー平賀!逃げて・ください!ジャニスが・そっちに!!」
「はあっ!?」
 エミリーが見ていたカメラは、研究所の外周部を映しているもの。
 そこを、ジャニスが研究所の外に向かって走っていく様が映っていた。
 その方向は、『走る司令室』のある所。
「ああっ!リン・レン!?」
 シンディはシンディで、屋上にいるリンとレンを見つけた。
 その横にはルディもいる。
「シンディ!あなたは・屋上に・向かって!私は・ジャニスを・追う!」
「分かった!」

 ついにジャニスとルディの居場所を突き止めたシンディ達。
 だが、現状況は明らかにこちら側が不利であった。
コメント (7)
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