報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「研究所の地下は異界」

2016-05-27 20:48:47 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月16日01:15.天候:不明 DC inc.アーカンソー研究所地下4階〜地下5階]

「全くもう!動きにくいったらありゃしない!」
 シンディは苛立ちを隠せずにいた。
 エミリーとシンディのコスチュームは、ノースリーブに深いスリットの入ったロングスカートタイプのワンピースであるため、水の中に入ると、このロングスカートが水の抵抗を増して動きを鈍くしてしまっているのである。
 そんな中、水没した床をすいすいと泳いで襲って来る肉食魚類型ロボットにも対応しなければならなかった。
 幸いにも、そんなロボット達は水中に適応させる為か、そんなに装甲が厚くない為、エミリーのショットガンやシンディのライフルまたはマグナム1〜2発で破壊することができた。
 シンディ達は再び水かさが足首くらいの所まで浅くなった所で立ち止まると、濡れたロングスカートを捲り上げて裾を結び上げた。
 この服はケブラー材を多量に使っている為、防弾・防刃に優れている。
 スカートを捲り上げて結び上げたものだから、その下のビキニショーツが丸見えになっているが、本来これも下着ではなく、装甲板の1つとして着用しているだけである。
 上の下着として着用しているビキニブラジャーも、下のショーツもまた上に着ている服と同じ、ケブラー繊維を多量に使って作られたものである。
 こうすることで彼女達は、更に軽量化することができた。
 前期型のボディにおいては、エミリーがビスチェ型の装甲板でしかもスチール製、シンディもスチール製のビキニと、正にファンタジー世界における“ビキニアーマーの女戦士”のような感じだったのである。
「これで少しは動きやすくなったかしら?」
「うむ。急ごう」

 地下5階への階段を見つけて降りると、腰までの深さどころか、もはや水深2mくらいまで水没している箇所があり、所々泳いで行かなくてはならなかった。
 もちろん、このフロアにも魚型のモンスターは存在する。
 それどころか……。
「見ィ〜つけたぁ〜……♪」
「! シンディ、何か・言ったか?」
「え?いや、何も」
 水没した部分を泳いでいると、どこからか、若い女の声がした。
 シンディ達は浅くなっている部分に移動すると、周囲をスキャンしたが、何も検出されない。
「気のせいじゃない?」
「……?」
 エミリーは難しい顔をして首を傾げた。
「とにかく、先を急ぎましょう」

 クエント:「こちら、クエントです。所内のデータについて、補足説明を致します」

「クエント!?」

 クエント:「恐らくお二方の所内データには、B5Fにポンプ室の記述が無いと思われます」

「あっ!」
「本当ね!」

 クエント:「でも実際、そのフロアにポンプの設備があるのは確かです」

「それってどこにあるの?」

 クエント:「大水槽制御室という部屋がありますね?」

「イエス」
「確かに」

 クエント:「研究所の地下では、地下水を利用して、水中に適応したロボットの研究・開発が行われていたことは、ミズ鳥柴の説明の通りです。そのロボット達を保管する為に、B5Fには大きな水槽が設置されているとのことです」

「それで?」

 クエント:「しかしその水槽の水も交換する必要があることから、排水と注水を制御する設備も同時に存在します。その設備こそが、研究所の水道関係も制御するポンプ設備というわけです」

「分かりました。それでは・大水槽制御室に・向かえば・よろしいですね?」

 クエント:「気をつけてください。小さな魚ロボットは、事件のドサグサに紛れて脱走したみたいですが、まだ大水槽にはロボットが残されている可能性があります」

「友好的だといいけど、それまでの魚達の態度を見ると、期待はできなさそうね」
 エミリーとシンディは大水槽制御室の前に到着した。
 幸いそこは水かさの浅い所にあり、また入口にあっても更に1段高い位置にある為、そこは水没していなかった。
 鍵が掛かっていたが、これは普通の鍵で開けるもので、防災センターから持ち出したマスターキーで開けることができた。
「制御室はここね」
 中に入ると、その制御室は水族館のようだった。
「地下4階まで繋がってるの!?」
「先ほど見た・水没エリアとは・この・水槽のこと・だった・みたいだな」
「で、ポンプ設備はどこ!?」
「待て」
 エミリーは制御盤を見つけた。
「どうやら・排水作業中に・事故が・あったらしい。中途半端な・所で・止めたから・水道管が・破裂して・水没したと・推測されます」

 平賀:「そういうことか。よし、作業の続きだ。恐らく制御室内にマニュアルがあるだろうから、それを見て作業を行ってくれ」

「イエス。プロフェッサー平賀」
 大水槽を見るが、特に取り残された魚型のロボットはいないようだ。
「この・水槽の・水を・排水させる・ことが・地下フロア全体の・水を・排水させることに・繋がるようだ」
「要は水を入れ過ぎて溢れている状態だってこと?」
「そのようだ」
 実際に制御盤を見ると、注水がONのままにされている。
 しかもオートではなく、マニュアル操作で行われていた。
 つまり、注水されたままで作業が中断されたため、水槽から水が溢れ、地下フロアを水浸しにしていたのである。
 エミリーはまずキーボードを叩いて、注水をOFFにした。
 これで水の注入は止まったと思われるが、制御室からだと何も変わったようには見えない。
 そして、今度は排水をONにする。
 が、エラーが出た。

『油圧が低下しています。手動操作に切り替えてください。もしくは管理者にお問い合わせください。手動操作で、油圧を回復させてください』

 エミリーはヘルプ画面を出して、手動操作の方法を確認した。
「姉さん?」
「シンディ。この部屋に・油圧バルブが・ある。探して」
「OK」
 それはすぐに見つかった。
 水没した廊下のドアから入ってすぐ右横にあった。
「あったわよ!3つある!」
「まず・Cのレバーを・戻して」
「Cね。あいよ」
 ガチャン!
「次は・Aのレバーを・戻して」
「Aね」
 ガチャン!
「……次はDのバルブを回す」
「バルブ!?」
「この部屋の・別の場所に・あるそうだ」
「ちょっと待って!」
 シンディはエミリーの背後を通り過ぎて、レバー式のバルブがあった配管とは反対側に回ってみた。
「あった!」
 それは大きな赤いハンドル型のバルブ。
 小型自動車のハンドルくらいの大きさはあるだろうか。
「ん?」
 するとシンディは、そのバルブの根元に何か落ちているのを見つけた。
「これは……?」
 拾ってみると、それは電撃グレネードであった。
 水中で使用するもので、先ほどウザかった魚型ロボットが群れを成して襲って来ても、これ1発でバラバラにしてやることができる。
 それがここに落ちているということは、最悪それらが暴走した時の保険用だったのだろうか。
「シンディ・何を・している?早く・バルブを」
「あっ、はいはい!」
 シンディは電撃グレネードを、サブ・ウェポンとしてもらうことにした。
 すぐに両手でハンドルを回す。
「回したよ!次は!?」
「さっきの・所に・戻って。今度は・Bの・レバーを・開放する」
「OK!」
 シンディは急いでさっきの所に戻ると、今度はBのレバーを上げた。
「これで・エラーは・解除・できた。非常予備電源は・生きているから・それで・排水ポンプを・作動させることが・できる・はずだ」
「頼むよ、姉さん」
 シンディがキーボードを操作し、最後にその制御盤の横にあるレバーをエミリーが操作した。

『排水を開始します。しばらくお待ちください』

「よし。上手く・行ったぞ」
「うん!」
 と、その時だった。
「見ィつけたぁ……」
 さっきまで何もいなかったはずの大水槽に、何かがいた。
 制御室との間のガラスに張り付くそれは……。

 平賀:「人魚!?」
 敷島:「ローレライ!?」
 アリス:「藤崎マーケットなわけないでしょ!」
 敷島:「ラララライとは言ってねぇっ!!」

「あたしのォ……獲物ぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
 まだ排水が終わっていない大水槽。
 しかも、制御室との間のガラスはとても分厚く、強化されているはずである。
 それに張り付くだけでヒビが入り……。
「シンディ!逃げるぞ!危険だ!」
 エミリーがシンディの腕を引っ張って制御室のドアを開けるのと、大水槽のガラスが割れるのは同時だった。
「くっ!」
 鉄砲水の如く押し寄せてくる水と、それに乗って向かってくる人魚のようなもの。
 エミリーとシンディは制御室の外に出ると、すぐにドアを閉めた。
「一体、何なのよ、あいつ!?」
「恐らく・あれが・ミズ鳥柴の・仰っていた・『水中に適応したガイノイド』だ」
「全然、アタシ達と友好的じゃなさそうだね!」
「まともに・相手にする・時間的余裕は・無い」
「それもそうだね!」
 幸いにして廊下の水没は収まっており、泳いで通過しなくてはならなかった場所も、足くらいの深さにまで浅くなっていた。
「急いで・電気室に・行こう!」
「うん!」
 だが、
「逃がさなぁぁぁぁぁい……!!」
 そうは問屋が卸さないようである。
コメント
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