[8月10日07:30.天候:晴 東京都江東区有明 東京ビックサイト]
私の名前は愛原学。
都内で探偵事務所を経営している。
今日は高橋に付き合って、何故かコミックマーケットに来ている。
というのは、高橋の元仲間で、マンガを描くのが得意な者がいたという。
それが今や同人誌を刊行するまでになったらしく、その売り子と列整理の手伝いを頼まれてしまったのだ。
何のジャンルだかは、あえて伏せておこう。
何もコミケに参加するのは、ヲタクだけではないということだ。
もちろん、サークルを運営するまでになったお仲間さんも、マンガが好きではあったようなのだが……。
リサ:「うはぁ〜!何これ、スゴーイ!?」
愛原:「噂には聞いていたが、凄い待機列だな」
リサ:「待機列?」
愛原:「今日この日にしか手に入らない本やゲームを手に入れる為に昨夜……ゲフンゲフン、朝早くから並んでるんだよ」
リサ:「はー……」
私も若かりし頃は警備員のバイトで来たことはある(作者の警備会社ではない)が、サークル参加は初めてだ。
高橋:「先生!今日はありがとうございます!」
サークルメンバー一同:「あざーっす!」
愛原:「や、やめてくれよ。俺はただ、高橋君の為を思って……」
高橋:「先生……!この御恩、一生忘れません……!」
高橋は涙を浮かべた。
愛原:「大げさだな、おい。しかし、あれだな。壁サークルとは……実は大手なんだ?」
壁サークルとは、会場内の壁際というベストな位置を確保しているサークルのことである。
大人気または大規模のサークルが割り当てられることが多い。
愛原:「リサは連れて来ない方が良かったんじゃないか?子供には見せられない本ばっかりなんだろう?」
高橋:「大丈夫です。今回は趣向を変えて、同人ゲームを販売することになりました。18禁は……この通り、パッケージに描いてないので大丈夫です」
愛原:「そりゃそうだろう。で、俺達は何をすればいいんだ?」
高橋:「ガードマンの経験がおありの先生には列整理を、リサには売り子をお願いします」
リサ:「売り子?」
愛原:「ここに座って、やってきたお客さんにこのゲームと……ゲームじゃないディスクもあるのか?」
メンバーA:「あ、それはサントラCDです。前にゲームを出したら、何か音楽の方がウケてしまって、『サントラ出してくれ』という依頼が殺到しまして……」
愛原:「東方Projectみたいだな」
もちろんシューティングゲームとしての評判は上々だが、BGMのレベルも高く、作者はその音楽が好きだという。
愛原:「ま、とにかくこのゲームとCDを売るんだ」
リサ:「わっかりましたー!」
そこで私はピンと来た。
リサの見た目は12〜13歳といったところだが、実年齢は私と歳が近いことになっている。
ややもすれば、リサの方が年上かもしれない。
なので実年齢的には18禁どんとこいなのだが、やはり見た目がアウトだろう。
愛原:「もしかして今回、うちのリサを呼んだのは……」
メンバーB:「幼女先輩が売り子をやってくれると、お客さんわんさかっス」
愛原:「アイカツをやる歳でもないと思うが……」
やはり、ロリ目的か。
高橋:「値段はCDが500円、ゲームが1000円です」
愛原:「意外と安いな」
高橋:「CDの方は所詮前作のBGMを入れただけですから、新作だった頃と比べて半額にしてあります」
愛原:「なるほどな」
高橋の元仲間にはバンドユニットに転向した者達もいたらしく、彼らに作曲を任せたのだという。
そしたら、意外と評判が良かったらしい。
今でもYouTubeで、このゲームのBGMのボーカルアレンジで歌ってみているらしい……って、ますます某東方だな。
高橋:「じゃあ先生、これお願いします」
高橋は私に『最後尾』と書かれたプラカードを渡した。
愛原:「本格的だな」
[同日10:00.天候:晴 東京ビックサイト]
〔「……只今より、コミックマーケット94、1日目を開催致します。……」〕
このアナウンスを合図に拍手をするのが参加者の習わし。
アナウンスは女声であるのだが、顕正会員だったら思わず伏せ拝をしてしまうかも。
コミケスタッフ:「走らないでください。走らないでください。走らないでください」
おっ、来た来た。
参加者が全員、競歩でやってくる。
そう、走りさえしなければ良いのだ!
リサ:「凄い凄い!つい、薙ぎ払いたくなっちゃう!」
高橋:「するんじゃねぇぞ、あ?」
リサ:「はーい」
当然ながら、高橋の元仲間のサークルにも参加者達がやってくる。
一般参加者A:「新作2つください」
高橋:「2000円です。毎度」
一般参加者B:「新作と前作CDください」
リサ:「あ、はい。1500円です」
私は私で……。
愛原:「最後尾はこちらでーす!……すいません、もう一歩詰めてもらえますかー?」
昔取った杵柄を遺憾なく発揮していた。
やはり、こういうのは経験がモノを言う。
[同日12:00.天候:晴 東京ビックサイト トラックヤード]
私とリサは休憩時間をもらい、会場内を歩いていた。
リサ:「ねぇ、先生。あれはなーに?」
リサが指さした先にはコスプレ参加者(通称、レイヤー)がいた。
愛原:「コスプレ参加者だな」
リサ:「こすぷれ?」
愛原:「自分の好きな作品のキャラに成り切って楽しむ参加者のことさ」
リサ:「ふーん……。じゃあ、あれは……」
リサが指さした所には、何とBOWがいた。
愛原:「うぉっと!……びっくりしたー。“バイオハザード”シリーズのBOWのコスプレだな、きっと……」
リサ:「そうなの?あれ、本物だけど……」
愛原:「は!?」
リサ:「うん。あれ、本物のBOWだよ」
愛原:「本物そっくりに化けてるんだろ?」
リサ:「ううん、違うよ。ちょっと行って来るね」
愛原:「お、おい!」
リサは私が止めるのも聞かずに、BOW達のいる所に行ってしまった。
リサ:「あのー、もしかしてBOWの方達ですか?」
ジュアヴォ:「おや?もしかして、あなたも?」
リサ:「あ、はい。あの、ここで何をしてるんですか?」
レイチェルウーズ:「羽根を伸ばしに来ています」
アフリクデッド:「普段は研究所の片隅で暮らしていますが、たまにこうやって正体を曝け出して、ストレス解消に来てるんだぜ」
リサ:「ふーん……」
ジュアヴォ:「せっかくの機会なのですし、あなたも是非正体を曝け出してみては?」
リサ:「あー……それは無理です。私、『リサ・トレヴァー』なんで」
レイチェルウーズ:「リサ・トレヴァー!?」
リサ:「はい」
ジュアヴォ:「あのクソ化け物の!?」
リサ:「はい?」
アフリクデッド:「俺らなんて、ペット扱いの!?」
リサ:「は?」
BOW一同:「逃げろーっ!餌にされるぞーっ!!」
一目散に逃げ出すBOW達。
コミケスタッフ:「走らないでくださーい!」
恐れられ過ぎた為、逆にorzの体勢になってしまうリサ。
愛原:「相当な評判だな、オリジナルのリサ・トレヴァーは……」
霧生市の研究所で聞いた話ではマグナムですら数秒間失神させるだけのオモチャであり、突入した当時の地元警察の特殊部隊を翻弄したというが……。
リサ:「ち、違うんです、先生……」
愛原:「え?」
リサ:「BOWだって生き物である以上、お腹が空いたら狩りをしてるだけで!所詮、BOWの世界も弱肉強食というか……」
愛原:「否定じゃなくて、補足説明だね」
本当にこのリサを暴走させたら、東京が壊滅してしまう。
そんな気がした。
私の名前は愛原学。
都内で探偵事務所を経営している。
今日は高橋に付き合って、何故かコミックマーケットに来ている。
というのは、高橋の元仲間で、マンガを描くのが得意な者がいたという。
それが今や同人誌を刊行するまでになったらしく、その売り子と列整理の手伝いを頼まれてしまったのだ。
何のジャンルだかは、あえて伏せておこう。
何もコミケに参加するのは、ヲタクだけではないということだ。
もちろん、サークルを運営するまでになったお仲間さんも、マンガが好きではあったようなのだが……。
リサ:「うはぁ〜!何これ、スゴーイ!?」
愛原:「噂には聞いていたが、凄い待機列だな」
リサ:「待機列?」
愛原:「今日この日にしか手に入らない本やゲームを手に入れる為に昨夜……ゲフンゲフン、朝早くから並んでるんだよ」
リサ:「はー……」
私も若かりし頃は警備員のバイトで来たことはある(作者の警備会社ではない)が、サークル参加は初めてだ。
高橋:「先生!今日はありがとうございます!」
サークルメンバー一同:「あざーっす!」
愛原:「や、やめてくれよ。俺はただ、高橋君の為を思って……」
高橋:「先生……!この御恩、一生忘れません……!」
高橋は涙を浮かべた。
愛原:「大げさだな、おい。しかし、あれだな。壁サークルとは……実は大手なんだ?」
壁サークルとは、会場内の壁際というベストな位置を確保しているサークルのことである。
大人気または大規模のサークルが割り当てられることが多い。
愛原:「リサは連れて来ない方が良かったんじゃないか?子供には見せられない本ばっかりなんだろう?」
高橋:「大丈夫です。今回は趣向を変えて、同人ゲームを販売することになりました。18禁は……この通り、パッケージに描いてないので大丈夫です」
愛原:「そりゃそうだろう。で、俺達は何をすればいいんだ?」
高橋:「ガードマンの経験がおありの先生には列整理を、リサには売り子をお願いします」
リサ:「売り子?」
愛原:「ここに座って、やってきたお客さんにこのゲームと……ゲームじゃないディスクもあるのか?」
メンバーA:「あ、それはサントラCDです。前にゲームを出したら、何か音楽の方がウケてしまって、『サントラ出してくれ』という依頼が殺到しまして……」
愛原:「東方Projectみたいだな」
もちろんシューティングゲームとしての評判は上々だが、BGMのレベルも高く、作者はその音楽が好きだという。
愛原:「ま、とにかくこのゲームとCDを売るんだ」
リサ:「わっかりましたー!」
そこで私はピンと来た。
リサの見た目は12〜13歳といったところだが、実年齢は私と歳が近いことになっている。
ややもすれば、リサの方が年上かもしれない。
なので実年齢的には18禁どんとこいなのだが、やはり見た目がアウトだろう。
愛原:「もしかして今回、うちのリサを呼んだのは……」
メンバーB:「幼女先輩が売り子をやってくれると、お客さんわんさかっス」
愛原:「アイカツをやる歳でもないと思うが……」
やはり、ロリ目的か。
高橋:「値段はCDが500円、ゲームが1000円です」
愛原:「意外と安いな」
高橋:「CDの方は所詮前作のBGMを入れただけですから、新作だった頃と比べて半額にしてあります」
愛原:「なるほどな」
高橋の元仲間にはバンドユニットに転向した者達もいたらしく、彼らに作曲を任せたのだという。
そしたら、意外と評判が良かったらしい。
今でもYouTubeで、このゲームのBGMのボーカルアレンジで歌ってみているらしい……って、ますます某東方だな。
高橋:「じゃあ先生、これお願いします」
高橋は私に『最後尾』と書かれたプラカードを渡した。
愛原:「本格的だな」
[同日10:00.天候:晴 東京ビックサイト]
〔「……只今より、コミックマーケット94、1日目を開催致します。……」〕
このアナウンスを合図に拍手をするのが参加者の習わし。
アナウンスは女声であるのだが、顕正会員だったら思わず伏せ拝をしてしまうかも。
コミケスタッフ:「走らないでください。走らないでください。走らないでください」
おっ、来た来た。
参加者が全員、競歩でやってくる。
そう、走りさえしなければ良いのだ!
リサ:「凄い凄い!つい、薙ぎ払いたくなっちゃう!」
高橋:「するんじゃねぇぞ、あ?」
リサ:「はーい」
当然ながら、高橋の元仲間のサークルにも参加者達がやってくる。
一般参加者A:「新作2つください」
高橋:「2000円です。毎度」
一般参加者B:「新作と前作CDください」
リサ:「あ、はい。1500円です」
私は私で……。
愛原:「最後尾はこちらでーす!……すいません、もう一歩詰めてもらえますかー?」
昔取った杵柄を遺憾なく発揮していた。
やはり、こういうのは経験がモノを言う。
[同日12:00.天候:晴 東京ビックサイト トラックヤード]
私とリサは休憩時間をもらい、会場内を歩いていた。
リサ:「ねぇ、先生。あれはなーに?」
リサが指さした先にはコスプレ参加者(通称、レイヤー)がいた。
愛原:「コスプレ参加者だな」
リサ:「こすぷれ?」
愛原:「自分の好きな作品のキャラに成り切って楽しむ参加者のことさ」
リサ:「ふーん……。じゃあ、あれは……」
リサが指さした所には、何とBOWがいた。
愛原:「うぉっと!……びっくりしたー。“バイオハザード”シリーズのBOWのコスプレだな、きっと……」
リサ:「そうなの?あれ、本物だけど……」
愛原:「は!?」
リサ:「うん。あれ、本物のBOWだよ」
愛原:「本物そっくりに化けてるんだろ?」
リサ:「ううん、違うよ。ちょっと行って来るね」
愛原:「お、おい!」
リサは私が止めるのも聞かずに、BOW達のいる所に行ってしまった。
リサ:「あのー、もしかしてBOWの方達ですか?」
ジュアヴォ:「おや?もしかして、あなたも?」
リサ:「あ、はい。あの、ここで何をしてるんですか?」
レイチェルウーズ:「羽根を伸ばしに来ています」
アフリクデッド:「普段は研究所の片隅で暮らしていますが、たまにこうやって正体を曝け出して、ストレス解消に来てるんだぜ」
リサ:「ふーん……」
ジュアヴォ:「せっかくの機会なのですし、あなたも是非正体を曝け出してみては?」
リサ:「あー……それは無理です。私、『リサ・トレヴァー』なんで」
レイチェルウーズ:「リサ・トレヴァー!?」
リサ:「はい」
ジュアヴォ:「あのクソ化け物の!?」
リサ:「はい?」
アフリクデッド:「俺らなんて、ペット扱いの!?」
リサ:「は?」
BOW一同:「逃げろーっ!餌にされるぞーっ!!」
一目散に逃げ出すBOW達。
コミケスタッフ:「走らないでくださーい!」
恐れられ過ぎた為、逆にorzの体勢になってしまうリサ。
愛原:「相当な評判だな、オリジナルのリサ・トレヴァーは……」
霧生市の研究所で聞いた話ではマグナムですら数秒間失神させるだけのオモチャであり、突入した当時の地元警察の特殊部隊を翻弄したというが……。
リサ:「ち、違うんです、先生……」
愛原:「え?」
リサ:「BOWだって生き物である以上、お腹が空いたら狩りをしてるだけで!所詮、BOWの世界も弱肉強食というか……」
愛原:「否定じゃなくて、補足説明だね」
本当にこのリサを暴走させたら、東京が壊滅してしまう。
そんな気がした。