[8月10日21:23.天候:晴 東京都墨田区菊川]
〔ピンポーン♪ 次は菊川駅前、菊川駅前。都営地下鉄新宿線をご利用のお客様は、お乗り換えでございます〕
私とリサを乗せた都営バスの最終便は、下車停留所に接近した。
窓側に座っているリサに降車ボタンを押してもらう。
〔次、止まります。……〕
バスは三ツ目通りの上に設置されたバス停に停車した。
降りるとムワッとした湿気が私達を包み込んだ。
いかに車内が冷房のよく効いた状態であったか、分かるというもの。
バス停からマンションまでは徒歩数分である。
愛原:「あ、そうだ。高橋君、朝帰りだって言ってたな。てことは、明日の朝食は自分達で用意しなきゃいけないってことだ」
リサ:「食べに行くの?」
愛原:「それでもいいんだが、高橋君の分も用意してあげよう。私も若い頃はよくやっていたんだが、次の日休みの朝帰りは、昼まで寝てることが多いからな」
リサ:「それで、どうするの?」
愛原:「コンビニに寄って行って、見繕ってくるさ」
私は駅前のコンビニに立ち寄った。
ここは単身世帯のマンションも多いせいか、商品もそれに見合ったものが多い。
私は食パンやマーガリンなどを購入した。
オーブントースターくらい、家にあるからな。
朝は軽めにパンと……あと、サラダでいいか。
同じくレンジでチンすれば、それなりに温かく食べられるお惣菜なんかも売っているから……。
うん、こんなものでいいだろう。
私達は明日の朝食を購入して、それからやっと帰宅した。
[8月11日07:30.天候:曇 同区内 愛原のマンション]
〔「……はい、こちら東京ビッグサイト前です。御覧ください。ここには既に数万人規模のオタクの皆さんで一杯であります!」〕
私はいつもの時間に起きた。
やはり高橋君は寝ているらしい。
玄関を見ると、ちゃんと靴があったので、一応帰ってきたことは分かる。
テレビを点けて、早速オーブントースターでパンを焼いた。
リサ:「先生、おはよう……」
愛原:「おう、おはよう」
リサの髪は普段、ロングのストレートなのだが、寝ぐせはヒドくなりやすいらしい。
愛原:「今、朝飯用意してるから。ちょっと待っててくれ」
リサ:「うん。顔洗って来る……」
リサはそう言って、洗面所に行った。
高橋:「せ、先生……」
愛原:「うわっ、びっくりした!」
そこへ高橋がゾンビのようにやってくる。
思わず、手を腰にやってしまった。
いやいや、銃なんて持ってないって!
高橋:「サーセン……。ちょっと昨日、思いの外盛り上がってしまって……お食事を用意できなくて……」
愛原:「いや、いいんだよ。キミも若いんだから、朝帰りしたくなることもあるだろう。今日は休んでていいから、ゆっくり寝てて」
高橋:「サーセン……」
愛原:「ああ、後でちょっと事務所に行ってくるから、留守番しててくれ。といっても、ほとんど居留守になるだろうがな」
高橋:「了解です……」
高橋は頭を抱えて自分の部屋に戻って行った。
酒の飲み過ぎなのは分かるが、私が心配なのは、ナンパしてカラオケボックスに連れ込んだJK2人をちゃんと無事に帰したのかどうかにある。
ま、この時点で警察が来ないところを見ると、恐らく大丈夫なんだろうとは思う。
[同日09:00.天候:晴 愛原学探偵事務所]
朝食を終えて一息吐いた後、私は事務所に向かった。
リサもついてきた。
ま、高橋君的には静かな所で寝ている方がいいか。
高野:「おはようございます。先生も御出勤ですか?」
エレベーターを降りて事務所に入ると、既に高野君がいた。
愛原:「おはよう。まあ、ちょっとね。高野君は?」
高野:「私は昨日、やり残した事務作業があったんです。ま、午前中には終わりますけど」
愛原:「そうか」
高野:「珍しいですね。今日は高橋君がいないなんて」
愛原:「昨日のコミケで大成功したもんだから、その打ち上げで盛り上がって、朝帰りしたんだよ」
高野:「どんだけ顔広いんですか、あのコは……。暴走族からオタクまで……」
愛原:「まあな。だけど、サークルのメンバーを見る限り、オタクってわけでもないみたいだぞ」
高野:「そうなんですか」
愛原:「ま、たまたま絵とか音楽とか、そういう才能を持ち合わせた高橋の知り合いが趣味でやっているって感じだったな」
高野:「ふーん……。でもやっぱり顔は広いですね」
愛原:「ま、どうあがいてもそれは事実か」
高野:「そうですね」
私と高野君がそんな話をしていると、リサが高野君に話し掛けた。
リサ:「お姉ちゃん」
高野:「なぁに?」
リサ:「あのね……」
リサはボソボソと高野君に何か耳打ちした。
高野:「それホント!?」
リサ:「うん」
高野:「あー……分かったわ。それじゃ、ちょっと一緒に来て」
リサ:「うん」
愛原:「何だ?何かあったのか?」
高野:「いえ、ちょっとトイレに行くだけです」
愛原:「女子トイレに何かあるのか?」
高野:「違いますよ。この歳の女の子によくあることです」
愛原:「それって……」
高野:「じゃ、ちょっと行ってきます」
愛原:「あ、ああ」
な、何だって?
リサはBOWだから、そんなの関係無いと思っていたのだが……。
と、そこへ電話が掛かって来た。
愛原:「おはようございます。愛原学探偵事務所です」
ボス:「私だ」
愛原:「あ、ボス。おはようございます」
ボス:「おはよう。うむ。キミが直接取ってくれると、変なこと言われずに済む」
愛原:「す、すいません。それで、何の御用でしょうか?」
ボス:「リサ・トレヴァーのことなんだが、今のところは暴走せずに済んでいるようだね」
愛原:「おかげさまで」
ボス:「いやいや、さすがは愛原君だ。これがもし他の人間だったら、最悪既に暴走させていただろう」
愛原:「そうなんですか?彼女は素直でいいコですよ?」
ボス:「それに付け込む悪い大人もいるということさ。それよりキミ、昨年、リサ・トレヴァーについて正体を突き止めたそうだね」
愛原:「は?」
ボス:「その時の書類は保管済みであるという。その書類を確認したいのだが……」
愛原:「え?え?え?何のことです?」
ボス:「キミぃ!リサ・トレヴァーの人間だった頃の経歴を突き止めたと言っていたではないか!彼女の人間だった頃の名前とか……」
愛原:「ええーっ!?覚えてませんよ!?」
ボス:「くそっ!……そういう所も記憶喪失の範囲だったのか?」
愛原:「す、すいません。何しろ、昨年末からの記憶が……」
ボス:「霧生市のバイオハザードから生還後、キミはリサ・トレヴァーについて調査していたじゃないか。そしてその結果を報告書にまとめて、保管してあると私に報告していたぞ?」
愛原:「えー……」
ボス:「探してくれ。まだどこにも渡していないのなら、キミの事務所に保管されているはずだ」
愛原:「わ、分かりました!大至急探します!」
私は電話を切った。
探すにしても、どこを探したら良いのか分からない。
高野君が戻って来たら聞いてみることにしよう。
〔ピンポーン♪ 次は菊川駅前、菊川駅前。都営地下鉄新宿線をご利用のお客様は、お乗り換えでございます〕
私とリサを乗せた都営バスの最終便は、下車停留所に接近した。
窓側に座っているリサに降車ボタンを押してもらう。
〔次、止まります。……〕
バスは三ツ目通りの上に設置されたバス停に停車した。
降りるとムワッとした湿気が私達を包み込んだ。
いかに車内が冷房のよく効いた状態であったか、分かるというもの。
バス停からマンションまでは徒歩数分である。
愛原:「あ、そうだ。高橋君、朝帰りだって言ってたな。てことは、明日の朝食は自分達で用意しなきゃいけないってことだ」
リサ:「食べに行くの?」
愛原:「それでもいいんだが、高橋君の分も用意してあげよう。私も若い頃はよくやっていたんだが、次の日休みの朝帰りは、昼まで寝てることが多いからな」
リサ:「それで、どうするの?」
愛原:「コンビニに寄って行って、見繕ってくるさ」
私は駅前のコンビニに立ち寄った。
ここは単身世帯のマンションも多いせいか、商品もそれに見合ったものが多い。
私は食パンやマーガリンなどを購入した。
オーブントースターくらい、家にあるからな。
朝は軽めにパンと……あと、サラダでいいか。
同じくレンジでチンすれば、それなりに温かく食べられるお惣菜なんかも売っているから……。
うん、こんなものでいいだろう。
私達は明日の朝食を購入して、それからやっと帰宅した。
[8月11日07:30.天候:曇 同区内 愛原のマンション]
〔「……はい、こちら東京ビッグサイト前です。御覧ください。ここには既に数万人規模のオタクの皆さんで一杯であります!」〕
私はいつもの時間に起きた。
やはり高橋君は寝ているらしい。
玄関を見ると、ちゃんと靴があったので、一応帰ってきたことは分かる。
テレビを点けて、早速オーブントースターでパンを焼いた。
リサ:「先生、おはよう……」
愛原:「おう、おはよう」
リサの髪は普段、ロングのストレートなのだが、寝ぐせはヒドくなりやすいらしい。
愛原:「今、朝飯用意してるから。ちょっと待っててくれ」
リサ:「うん。顔洗って来る……」
リサはそう言って、洗面所に行った。
高橋:「せ、先生……」
愛原:「うわっ、びっくりした!」
そこへ高橋がゾンビのようにやってくる。
思わず、手を腰にやってしまった。
いやいや、銃なんて持ってないって!
高橋:「サーセン……。ちょっと昨日、思いの外盛り上がってしまって……お食事を用意できなくて……」
愛原:「いや、いいんだよ。キミも若いんだから、朝帰りしたくなることもあるだろう。今日は休んでていいから、ゆっくり寝てて」
高橋:「サーセン……」
愛原:「ああ、後でちょっと事務所に行ってくるから、留守番しててくれ。といっても、ほとんど居留守になるだろうがな」
高橋:「了解です……」
高橋は頭を抱えて自分の部屋に戻って行った。
酒の飲み過ぎなのは分かるが、私が心配なのは、ナンパしてカラオケボックスに連れ込んだJK2人をちゃんと無事に帰したのかどうかにある。
ま、この時点で警察が来ないところを見ると、恐らく大丈夫なんだろうとは思う。
[同日09:00.天候:晴 愛原学探偵事務所]
朝食を終えて一息吐いた後、私は事務所に向かった。
リサもついてきた。
ま、高橋君的には静かな所で寝ている方がいいか。
高野:「おはようございます。先生も御出勤ですか?」
エレベーターを降りて事務所に入ると、既に高野君がいた。
愛原:「おはよう。まあ、ちょっとね。高野君は?」
高野:「私は昨日、やり残した事務作業があったんです。ま、午前中には終わりますけど」
愛原:「そうか」
高野:「珍しいですね。今日は高橋君がいないなんて」
愛原:「昨日のコミケで大成功したもんだから、その打ち上げで盛り上がって、朝帰りしたんだよ」
高野:「どんだけ顔広いんですか、あのコは……。暴走族からオタクまで……」
愛原:「まあな。だけど、サークルのメンバーを見る限り、オタクってわけでもないみたいだぞ」
高野:「そうなんですか」
愛原:「ま、たまたま絵とか音楽とか、そういう才能を持ち合わせた高橋の知り合いが趣味でやっているって感じだったな」
高野:「ふーん……。でもやっぱり顔は広いですね」
愛原:「ま、どうあがいてもそれは事実か」
高野:「そうですね」
私と高野君がそんな話をしていると、リサが高野君に話し掛けた。
リサ:「お姉ちゃん」
高野:「なぁに?」
リサ:「あのね……」
リサはボソボソと高野君に何か耳打ちした。
高野:「それホント!?」
リサ:「うん」
高野:「あー……分かったわ。それじゃ、ちょっと一緒に来て」
リサ:「うん」
愛原:「何だ?何かあったのか?」
高野:「いえ、ちょっとトイレに行くだけです」
愛原:「女子トイレに何かあるのか?」
高野:「違いますよ。この歳の女の子によくあることです」
愛原:「それって……」
高野:「じゃ、ちょっと行ってきます」
愛原:「あ、ああ」
な、何だって?
リサはBOWだから、そんなの関係無いと思っていたのだが……。
と、そこへ電話が掛かって来た。
愛原:「おはようございます。愛原学探偵事務所です」
ボス:「私だ」
愛原:「あ、ボス。おはようございます」
ボス:「おはよう。うむ。キミが直接取ってくれると、変なこと言われずに済む」
愛原:「す、すいません。それで、何の御用でしょうか?」
ボス:「リサ・トレヴァーのことなんだが、今のところは暴走せずに済んでいるようだね」
愛原:「おかげさまで」
ボス:「いやいや、さすがは愛原君だ。これがもし他の人間だったら、最悪既に暴走させていただろう」
愛原:「そうなんですか?彼女は素直でいいコですよ?」
ボス:「それに付け込む悪い大人もいるということさ。それよりキミ、昨年、リサ・トレヴァーについて正体を突き止めたそうだね」
愛原:「は?」
ボス:「その時の書類は保管済みであるという。その書類を確認したいのだが……」
愛原:「え?え?え?何のことです?」
ボス:「キミぃ!リサ・トレヴァーの人間だった頃の経歴を突き止めたと言っていたではないか!彼女の人間だった頃の名前とか……」
愛原:「ええーっ!?覚えてませんよ!?」
ボス:「くそっ!……そういう所も記憶喪失の範囲だったのか?」
愛原:「す、すいません。何しろ、昨年末からの記憶が……」
ボス:「霧生市のバイオハザードから生還後、キミはリサ・トレヴァーについて調査していたじゃないか。そしてその結果を報告書にまとめて、保管してあると私に報告していたぞ?」
愛原:「えー……」
ボス:「探してくれ。まだどこにも渡していないのなら、キミの事務所に保管されているはずだ」
愛原:「わ、分かりました!大至急探します!」
私は電話を切った。
探すにしても、どこを探したら良いのか分からない。
高野君が戻って来たら聞いてみることにしよう。