[8月11日07:30.天候:晴 東京都江東区有明 東京ビッグサイト]
ビッグサイトに向かう1台のタクシー。
その車内にはエレーナが乗っていた。
会場周辺に差し掛かると、一般参加者達の長蛇の列が否が応にも目に入る。
エレーナ:「うはー……!テレビやネットでは見たことあるけど、凄い圧巻だな」
運転手:「年に2回の風物詩ですよ。それじゃ、会議棟のタクシー乗り場の所でいいんですね?」
エレーナ:「ええ、そこでお願いします」
エレーナはバッグの中から手紙を取り出した。
それは鈴木からのだった。
簡単に内容を説明すれば、謝礼はするからサークル運営を手伝って欲しいとのことだった。
最初は断るつもりでいたエレーナだったが、後で情報収集の為ならと思って承諾した。
取りあえず鈴木からは、片道分のタクシーチケットとサークルチケットが送られて来た。
運転手:「はい、お疲れ様でした」
エレーナ:「どうも。チケットで払います」
他にもタクシーで乗り付ける関係者は多いらしく、トランクの中から荷物を降ろす光景が目に付いた。
運転手:「ありがとうございましたー」
エレーナ:「どうも」
エレーナは領収証を受け取ってタクシーを降りた。
エレーナ:「どこに行けばいいんだ?『サークル参加者入口』の所に来ればいいってことだけど……」
だがまあ、それはすぐに分かった。
入口でコミケスタッフがチケット確認をしている。
その先に鈴木がいた。
鈴木:「やあ、エレーナ!」
エレーナ:「鈴木、来てやったぞ。光栄に思え」
鈴木:「大変助かります!」
エレーナ:「謝礼はちゃんとしてくれるんだろうな?」
鈴木:「もちろんでやんす!」
エレーナ:「助っ人は私だけか?」
鈴木:「稲生先輩とマリアさんにも声を掛けたんだけど、けんもほろろに断られちゃって……」
エレーナ:「そりゃ、長野の山奥からここまで来るの大変だろうよ。だけど私だけで大丈夫なのか?私は初参加だぞ?」
鈴木:「もちろん、他にも頼んでるよ。残りは慣れてるから、先にキミを案内するよ」
鈴木は嬉々としてエレーナを自分のブースに案内した。
エレーナ:「“サークル顕正堂”?何を売るつもりだ?」
鈴木:「俺が作った同人ゲームさ。既に搬入は済んでるんだけど、売り子とかが足りなくてさぁ……。エレーナならホテルのフロント係として働いてるわけだから接客はお手の物だろう?」
エレーナ:「まあ、仕事としてはな。そういうことなら、バイトのつもりでやってやるか」
と、そこへ……。
特盛:「鈴木〜、おはざーっす」
エリ:「コミケなんて久しぶりね」
鈴木:「いやあ、本当に来てくれるなんてありがたい!」
エリ:「アンタには顕正会時代、50万円をくれた借りがあるからね。ったく、あの時はつい特盛の金かと思ったよ」
特盛:「鈴木ぃ、このキレイな外人さん、誰?」
エリ:「もう既に魔法使いのコスプレしてやがる。鈴木の知り合いのレイヤー?」
鈴木:「違う違う。彼女とは同じ法華講支部の先輩の彼女さんを通して知り合ったんだ。ウクライナ人のエレーナ・マーロンさんだよ」
エレーナ:「エレーナです。表向きは江東区のビジネスホテルで働いてます」
特盛:「大手弁当チェーン店で正社員で働いている徳森重雄です。皆からは『特盛』と呼ばれてます。よろしくです」
特盛は名刺を差し出した。
エレーナ:「あ、こりゃどうも。私も……」
エレーナも差し出したが、そこにはロシア語と英語が併記された名刺だった。
エレーナ:「あ、失礼。これは裏の仕事用で……」
特盛:「裏の仕事!?」
エレーナ:「こっちが表の仕事用です」
今度は日本語と英語が併記されたもの。
こちらには『東京都江東区森下 ワンスターホテル フロント係 エレーナ・M・マーロン』と書かれていた。
特盛:「随分と国際化してるねぇ……。あ、こっちが沢尻エリちゃん。僕の奥さん」
エリ:「沢尻エリです。今は都内で普通に会社員やってます」
エレーナ:「どうも、初めまして」
エリ:「よろしく。コミケ自体が国際化してるからね、日本語ペラペラの外人さんは大歓迎だよ。……で、私達は何をすればいいの?」
鈴木:「特盛は弁当屋の店長の経験を生かして、売り子をよろしく」
特盛:「任しといてよ」
鈴木:「エリちゃんとエレーナは列整理をお願いね」
エレーナ:「私、売り子じゃないの?」
エリ:「魔法使いのコスプレで、お客を呼び込むってわけか。鈴木もやるねぇ」
エレーナ:「あの、私、本物の魔法使いですけど……」
だが、エリちゃんは聞いていない。
エリ:「特盛、見事完売させるよ!」
特盛:「やる気が止まらなぁーい!」
エレーナ:(本当に大丈夫かなぁ……?)
[同日10:00.天候:晴 同場所]
〔「……只今より、コミックマーケット94、2日目を開催致します。……」〕
ドドドドと激しい振動がエレーナに伝わって来る。
エレーナ:「な、何だ?」
エレーナは緑色の瞳を大きく見開いた。
コミケスタッフ:「走らないでください。走らないでください。走らないでください」
一般参加者達が競歩の如く、目当てのサークルに急いで向かっていた。
エレーナ:「すっげぇ……!」
エリ:「相変わらずだな」
鈴木達のサークルにも、早速購入希望者がやってくる。
一般参加者A:「新作2つください」
鈴木:「2000円です。ありがとうございます」
一般参加者B:「新作と前作ください」
特盛:「1500円です。ありがとうございまーす!」
さすがは鈴木と特盛。
次々と新作と前作の同人ゲームを売って行く。
表向きには巨益が出ないように、かつ赤字を出さないようにしているはずだが……。
エレーナ:(売れば売るほど、謝礼も大きくなるというわけか……)
エレーナはニヤリと笑った。
エレーナ:(それにしても……)
エレーナ、他のサークルを見渡してみる。
中には魔女っ娘を【あれや】【これや】している作品を出している所もある。
エレーナ:(いくら社会勉強の為とはいえ、リリィは連れて来なくて正解だったようだな)
こうして本物の魔道師も参加したコミケが始まった。
ビッグサイトに向かう1台のタクシー。
その車内にはエレーナが乗っていた。
会場周辺に差し掛かると、一般参加者達の長蛇の列が否が応にも目に入る。
エレーナ:「うはー……!テレビやネットでは見たことあるけど、凄い圧巻だな」
運転手:「年に2回の風物詩ですよ。それじゃ、会議棟のタクシー乗り場の所でいいんですね?」
エレーナ:「ええ、そこでお願いします」
エレーナはバッグの中から手紙を取り出した。
それは鈴木からのだった。
簡単に内容を説明すれば、謝礼はするからサークル運営を手伝って欲しいとのことだった。
最初は断るつもりでいたエレーナだったが、後で情報収集の為ならと思って承諾した。
取りあえず鈴木からは、片道分のタクシーチケットとサークルチケットが送られて来た。
運転手:「はい、お疲れ様でした」
エレーナ:「どうも。チケットで払います」
他にもタクシーで乗り付ける関係者は多いらしく、トランクの中から荷物を降ろす光景が目に付いた。
運転手:「ありがとうございましたー」
エレーナ:「どうも」
エレーナは領収証を受け取ってタクシーを降りた。
エレーナ:「どこに行けばいいんだ?『サークル参加者入口』の所に来ればいいってことだけど……」
だがまあ、それはすぐに分かった。
入口でコミケスタッフがチケット確認をしている。
その先に鈴木がいた。
鈴木:「やあ、エレーナ!」
エレーナ:「鈴木、来てやったぞ。光栄に思え」
鈴木:「大変助かります!」
エレーナ:「謝礼はちゃんとしてくれるんだろうな?」
鈴木:「もちろんでやんす!」
エレーナ:「助っ人は私だけか?」
鈴木:「稲生先輩とマリアさんにも声を掛けたんだけど、けんもほろろに断られちゃって……」
エレーナ:「そりゃ、長野の山奥からここまで来るの大変だろうよ。だけど私だけで大丈夫なのか?私は初参加だぞ?」
鈴木:「もちろん、他にも頼んでるよ。残りは慣れてるから、先にキミを案内するよ」
鈴木は嬉々としてエレーナを自分のブースに案内した。
エレーナ:「“サークル顕正堂”?何を売るつもりだ?」
鈴木:「俺が作った同人ゲームさ。既に搬入は済んでるんだけど、売り子とかが足りなくてさぁ……。エレーナならホテルのフロント係として働いてるわけだから接客はお手の物だろう?」
エレーナ:「まあ、仕事としてはな。そういうことなら、バイトのつもりでやってやるか」
と、そこへ……。
特盛:「鈴木〜、おはざーっす」
エリ:「コミケなんて久しぶりね」
鈴木:「いやあ、本当に来てくれるなんてありがたい!」
エリ:「アンタには顕正会時代、50万円をくれた借りがあるからね。ったく、あの時はつい特盛の金かと思ったよ」
特盛:「鈴木ぃ、このキレイな外人さん、誰?」
エリ:「もう既に魔法使いのコスプレしてやがる。鈴木の知り合いのレイヤー?」
鈴木:「違う違う。彼女とは同じ法華講支部の先輩の彼女さんを通して知り合ったんだ。ウクライナ人のエレーナ・マーロンさんだよ」
エレーナ:「エレーナです。表向きは江東区のビジネスホテルで働いてます」
特盛:「大手弁当チェーン店で正社員で働いている徳森重雄です。皆からは『特盛』と呼ばれてます。よろしくです」
特盛は名刺を差し出した。
エレーナ:「あ、こりゃどうも。私も……」
エレーナも差し出したが、そこにはロシア語と英語が併記された名刺だった。
エレーナ:「あ、失礼。これは裏の仕事用で……」
特盛:「裏の仕事!?」
エレーナ:「こっちが表の仕事用です」
今度は日本語と英語が併記されたもの。
こちらには『東京都江東区森下 ワンスターホテル フロント係 エレーナ・M・マーロン』と書かれていた。
特盛:「随分と国際化してるねぇ……。あ、こっちが沢尻エリちゃん。僕の奥さん」
エリ:「沢尻エリです。今は都内で普通に会社員やってます」
エレーナ:「どうも、初めまして」
エリ:「よろしく。コミケ自体が国際化してるからね、日本語ペラペラの外人さんは大歓迎だよ。……で、私達は何をすればいいの?」
鈴木:「特盛は弁当屋の店長の経験を生かして、売り子をよろしく」
特盛:「任しといてよ」
鈴木:「エリちゃんとエレーナは列整理をお願いね」
エレーナ:「私、売り子じゃないの?」
エリ:「魔法使いのコスプレで、お客を呼び込むってわけか。鈴木もやるねぇ」
エレーナ:「あの、私、本物の魔法使いですけど……」
だが、エリちゃんは聞いていない。
エリ:「特盛、見事完売させるよ!」
特盛:「やる気が止まらなぁーい!」
エレーナ:(本当に大丈夫かなぁ……?)
[同日10:00.天候:晴 同場所]
〔「……只今より、コミックマーケット94、2日目を開催致します。……」〕
ドドドドと激しい振動がエレーナに伝わって来る。
エレーナ:「な、何だ?」
エレーナは緑色の瞳を大きく見開いた。
コミケスタッフ:「走らないでください。走らないでください。走らないでください」
一般参加者達が競歩の如く、目当てのサークルに急いで向かっていた。
エレーナ:「すっげぇ……!」
エリ:「相変わらずだな」
鈴木達のサークルにも、早速購入希望者がやってくる。
一般参加者A:「新作2つください」
鈴木:「2000円です。ありがとうございます」
一般参加者B:「新作と前作ください」
特盛:「1500円です。ありがとうございまーす!」
さすがは鈴木と特盛。
次々と新作と前作の同人ゲームを売って行く。
表向きには巨益が出ないように、かつ赤字を出さないようにしているはずだが……。
エレーナ:(売れば売るほど、謝礼も大きくなるというわけか……)
エレーナはニヤリと笑った。
エレーナ:(それにしても……)
エレーナ、他のサークルを見渡してみる。
中には魔女っ娘を【あれや】【これや】している作品を出している所もある。
エレーナ:(いくら社会勉強の為とはいえ、リリィは連れて来なくて正解だったようだな)
こうして本物の魔道師も参加したコミケが始まった。