報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原家の引っ越し」 2

2018-08-08 18:48:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月3日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。
 今日は新しいマンションへ引っ越す為の荷造りをしていた。
 明日の午前中には、引っ越し業者が来ることになっている。
 その為、今日の夕食は宅配ピザに缶ビールを頼んだ。

 愛原:「プハーッ!あーっ、美味い!」

 私はピザ片手に缶ビールを口に運んだ。

 高橋:「先生、お疲れ様でした」
 愛原:「うん!2人もご苦労さんね!明日は午前中に引っ越し屋さんが来るから」
 高橋:「はい!」
 リサ:「分かった!」

 引っ越しの前祝いってヤツだな。
 夕食を済ませた私は、早めに風呂に入ることにした。
 このマンション最後の風呂だ。

 愛原:「お風呂〜、お風呂〜。ん?」

 その時、私は洗濯機の上に置いたはずの自分の着替えとタオルが無くなっているのに気づいた。

 愛原:「2人とも、俺の着替えとタオル知らないか?」
 リサ:「えっ?」
 高橋:「安心してください!俺がちゃんとしまっておきました!」
 愛原:「え?」
 高橋:「え?」

 ダンボールの山を見て呆然とする私達。

 愛原:「着替えとタオルの箱……どれだ?」
 高橋:「えーっと……。サーセン……」

 するとリサが目を閉じて、右手をダンボールの山に突き出した。

 リサ:「……この箱。この箱の中に先生の服が入ってる」
 高橋:「なにっ!?」
 愛原:「そんなことが分かるのか?」
 リサ:「うん。何となくだけど、そんな感じがする」
 高橋:「オマエ、そんな不確定なこと……」
 リサ:「まあまあ、高橋君。モノは試しと言うじゃないか」

 私は早速、リサの指し示すダンボール箱を開けてみた。
 すると……。

 愛原:「あった!俺の着替えとタオル!」
 リサ:「やっぱり」
 高橋:「凄ェ能力だ……」

 恐らく、これで隠れた敵を探し出すんだろうな。
 やはり、敵に回してはいけないと思う。

[8月4日09:00.天候:曇 同マンション→同じ地区内の新マンション]

 引っ越し屋:「おはようございまーす!報恩引っ越しセンターです!」
 愛原:「はい。よろしくお願いします」

 まとめた荷物やそうでない大型家電を次々と運び出す引っ越し業者。
 ここから新しいマンションまでは、そう遠くない。
 せいぜい、車で5分といったところである。
 私達はタクシーで新マンションへ向かった。
 事務所のビルと同じ5階建てで、そこの4階が私達の部屋だ。
 エレベーターがあるので、これを使って新しい部屋へ次々と荷物を入れる業者。

 高橋:「内見の時は広々とした部屋でしたが、いざ荷物を入れるとそうでもないですね」
 愛原:「それでも前のマンションより一部屋多いんだ。ま、こんなもんさ」
 高橋:「はい」
 愛原:「それじゃ、部屋の使い道を決めよう。ここが俺の部屋、そこが高橋君の部屋、そしてここが……リサの部屋」
 リサ:「私の部屋ですか!?」
 愛原:「ああ。自由に使うといいよ。ベッドとか机とかも必要かな。どこかで安く手に入らないかな……」
 高橋:「俺の仲間に、要らなくなったのがあったら寄越すように伝えてみますか」
 愛原:「あー、そうだな……。か、もしくは安く手に入る所があったらお願いするとか……」
 高橋:「でしたら……」

 高橋がポンと手を叩いた。

 高橋:「俺の知り合いに、リサイクルショップやってる奴がいるんです。そいつに聞いてみますよ」
 愛原:「いい人脈持ってるな。よろしく頼むよ」
 高橋:「はい!」

 高橋は早速自分のスマホを取り出し、リサイクルショップに連絡を取った。
 布団は予備用のヤツをそのまま使ってもらえばいいだろう。
 それとも、また新しく買うか?

 高橋:「ビンゴですよ、先生。ベッドと机、両方ありましたよ。押さえてもらいましたんで、早速行きましょう」
 愛原:「さすがは高橋君だな。ただ、車を用意しなきゃいけない」
 高橋:「分かってますよ」
 愛原:「あれだぞ?走り屋さん用の車じゃダメだぞ?」
 高橋:「安心してください」

 高橋は大きく頷いた。

 確かに高橋の知り合いがワンボックスで来てくれたのは良かったが、その外観が【お察しください】。
 まあ、その……何だ。
 煽り運転上等といったものであるとだけ言っておこう。

[同日11:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原の新マンション]

 安く手に入ったベッドは、黒いパイプベッドだった。
 机や袖箱に関しても、会社の事務机といった感じである。
 女の子の部屋に使うにしては随分と味気ないものであるが、まあ、あくまで暫定使用だ。
 そのうちいい物が手に入ったら、ということにしよう。
 ベッドにあっては解体されている状態だったので、簡単に車に積めた。
 どうも高橋は、私のことを仲間内に誇張して触れ回っているようで、私がタイラントだのネメシスだのを倒したことになっている。
 タイラントは研究所の自爆装置に巻き込まれて死んだだけであり、そもそもネメシスは日本の研究所にはいなかったようだぞ。

 高橋の友人:「霧生市の英雄さんに協力できて、マジ号泣っス!」
 愛原:「いや、あのね……」

 私の背後にガチのラスボスがニコニコしながら立っていることは、黙ってておくとしよう。
 高橋が器用にベッドを組み立てる。

 高橋:「この上に布団を敷けば完了です」
 愛原:「ありがとう」
 リサ:「ありがとう!お兄ちゃん!」
 高橋:「フン……」

 机と椅子が完全に事務用だな。
 まあ、しょうがないか。
 かなり安く手に入れた手前、贅沢は言えない。

 愛原:「思ったより早く終わったので、午後には事務所に顔を出せるだろう」
 高橋:「そうですね」
 愛原:「仕事の依頼があるだろう、事務所からの呼び出しもあるだろうと思って期待していたんだけど、全く高野君から連絡が無い……」
 高橋:「そのうち仕事の依頼がありますよ」

 私達は荷解きを行い、それから事務所へ向かうことにした。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「愛原家の引っ越し」

2018-08-08 10:45:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月3日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 とある不動産屋]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。
 今日は不動産屋を回り、新しいマンションを探すことにした。
 リサという同居人が1人増える為、BSAAと日本政府の間を取り持つエージェントに相談したら、費用は出してくれるという。
 今まで私と高橋の2人暮らしだったので2LDKでも良かったのだが、今回は3LDKを希望している。

 不動産屋:「え?もうお引越しですか?何か問題でも?」
 愛原:「いや、そういうわけじゃないんですよ。ただ、同居人が1人増えることになって、もう1部屋あるといいかな……なんて」
 不動産屋:「なるほど。そうでしたか」
 愛原:「はい。なるべくこの近くでお願いします」

 というわけで、私達はいくつかの物件を回って歩いた。

 不動産屋:「いかがでしょうか?」
 愛原:「うーん……」

 正直、どれもあんまり大差無いなぁ……。
 家賃については高橋は自分の分を出してくれてるし、リサの分はそのエージェントが出してくれるというし……。
 あとは私が自分の分を出せば良い。

 不動産屋:「因みにこの物件は、屋上が共有スペースになっていますよ」
 愛原:「ほお……」

 私達は屋上に上がらせてもらった。

 愛原:「ほお……。意外と広いな」
 高橋:「イザとなりゃヘリの離着陸もできますね、先生?」
 愛原:「何を想像しているのかなぁ……?」

 バイオハザードの時、ヘリで脱出することを考えていたのだろうか。

 リサ:「空が広いね」
 愛原:「ふむ……」

 リサが嬉しそうに空を仰いでいるのが見えた。
 今まで地下などの研究施設に押し込められていたのだから、当たり前なのかもしれない。
 引き籠り気質ってわけでもないだろうからな。

 不動産屋:「いかがでしょうか?」
 愛原:「じゃあ、ここでお願いします」

[同日13:00.天候:晴 愛原のマンション]

 さっさと契約を済ませた私は件のエージェントに連絡し、それから元のマンションに戻った。
 今度は引っ越し屋を手配しなければならない。
 それもエージェント側から出してくれるとのことだった。
 全く。至れり尽くせりだ。
 それほどまでにリサのことを気に掛けているということなのだろうが、その割には何故自分達では保護しないのだろう。
 表向きにはリサをエージェントとして欲しがる日本政府とBSAAの取り合いにならないよう、リサが成長して自分で判断できるようになるまでは第三者の庇護下にあった方が良いということなんだな。
 そうなると、私達をバックアップしてくれているエージェントが何者なのかは気になる。
 1度だけ私と会ったが、どちらかというと日本政府側といった感じだ。
 ただ、それもしょうがないか。
 リサは日本人、そしてここは日本。
 いくら中立とはいえ、やはりどうしても日本政府側に傾くのは致し方無いことだろう。
 もっと言えば、リサに手厚い待遇をすれば、それだけそちらに靡きやすいという下衆な考えもあるのだろうか。

 愛原:「それじゃ、引っ越しの準備を始めるよ。まずは掃除からな」
 高橋:「はい!」
 リサ:「はーい!」

 高橋は家事も得意だからな、この辺は任せて安心か。
 本人曰く、全て少年院と少年刑務所で付けたスキルとのことだが……。
 そんな彼が、どうして部屋代と称して私に札束を渡してきたのかが不思議だ。
 本人は頑なに、絶対に汚い金ではないと言い張ったが……。

 愛原:「リサは掃除とか大丈夫?」
 リサ:「うん!研究所にいた時、よく暴走したクリーチャーのお掃除をしてたよー。ハンターとかケルベロスとか……」
 愛原:「何の掃除かな?ここでは普通に掃き掃除とか拭き掃除をしてくれるだけでいいからね」
 リサ:「うん、分かった!」

 私は掃除機を持って来た。
 リサはまだ少女だからな、高い所の掃除とかは高身長の高橋君に任せて……。

 リサ:「お掃除♪お掃除♪埃を叩いてブッ潰せ〜♪」
 愛原:「…………」

 掃除機片手に戻ってきた私が見たのは、右腕を天井に軽々と届く長さに変形させて照明器具を拭くリサの姿だった!

 愛原:「リサ!そこまでしなくていい!」
 リサ:「えっ?」
 愛原:「人間形態のままでできる掃除をしなさい!」
 リサ:「はーい」

 シュルシュルと右腕を元の人間形態に戻すリサ。
 全く、びっくりさせるなぁ……。
 でも本当に自分の意思で変化させることができるなんて、確かに貴重かもしれないな。
 それまでのボスキャラとしてのクリーチャーは形状、自我、理性のどれもが欠けていたからな。
 人間としての形状、自我、理性は保たれていて、しかも知性や知能もそのまま。
 更にクリーチャー形態への変化も自由自在とあらば、これこそが旧アンブレラを始めとする各研究機関が追い求めていた生体兵器の完成形といったところか。
 問題は、それが何故少女形態なのかということだ。
 生身の人間の少女を素体としたその人道無視も問題だし。
 『まさか、こんないたいな少女がボスキャラも張れるほどの超強力クリーチャーなはずがない』と思わせるのが目的とはいえ……。

 とにかく、掃除は終わった。

 愛原:「じゃあ、次は荷造りね。……つっても、7割以上は俺の私物だな。ゴメン、手伝わせちゃって」
 高橋:「いいんですよ!俺は先生の直弟子ですから、何でも申し付けてください!」
 リサ:「私も頑張るー」
 愛原:「そうか。じゃ、頼むよ」

 私は早速自分の荷物をまとめ始めた。
 高橋は自分の部屋として使っている所だけを片付ければ良いので早い。
 必然的に、後で私の荷物まとめも手伝ってくれることになる。
 リサはまだ来たばかりなので、殆どまとめる荷物など無い。

 リサ:「お兄ちゃーん」
 高橋:「お前は先生の荷造りの手伝いでもしてろ」
 リサ:「先生はお兄ちゃんの荷物まとめの手伝いをしろだって」
 高橋:「なに?」
 リサ:「あ、これ。お兄ちゃんの写真?どれどれー?」
 高橋:「バカッ!勝手に見るんじゃねぇ!オメェは向こうに行けっ!!」

 追い出されたリサが、泣く泣く私の所へやってきた。

 愛原:「さっき大声が聞こえたと思ったら、それか?全く、高橋のヤツ……」
 リサ:「グスングスン……」(´Д⊂
 愛原:「分かった。じゃあ、俺の方を手伝ってもらおうか」
 リサ:「何をすればいいの?」

 やっとリサが泣き止む。
 心なしか、リサの体の形状が一瞬変わっていたような……?
 元は人間の生体兵器の場合、感情が昂ると暴走しやすいという話を聞いたことがある。
 リサが今現在の所で完璧な生体兵器とはいえ、まだ不安定な所があるということか。
 とにかく、十分気をつけなければ……。
 泣き止んで落ち着いたリサの姿は元に戻っていた。
 暴走させたら、私はBSAAからも蜂の巣にされるという話だからな……。
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