報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵の慰安旅行」 4

2019-02-10 19:10:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月19日17:00.天候:晴 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠2F・大浴場]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ……というくだりは、もうそろそろいいかな。
 私は今、高橋君と露天風呂に入っている。
 読者の皆さんは女湯の様子を見たかったかもしれないが、“私立探偵 愛原学”シリーズは私の一人称視点で進む物語なのである。
 もしどうしてもという方は、リサの視点で進む“愛原リサの日常”に期待して頂くしか無い。
 期待したい方はコメント欄へ。

 愛原:「おーっ、太平洋が一望だな」
 高橋:「そうですね。でも確かにこれじゃ、震災の津波もガチ受けですよ」
 愛原:「高さもあるから、意外と大丈夫なんじゃない?海面から10メートルくらいあるだろ」
 高橋:「どうですかねぇ……。あ、もし良かったら先生、お背中流しましょう」
 愛原:「そうか?じゃあ、頼むかな」
 高橋:「はい!じゃあ、そこに横になってください!」
 愛原:「何で背中流すのに横になるんだよ!」
 高橋:「いえ、それが俺のやり方でして……」
 愛原:「ウソつけ!洗い場に行って、フツーに座ってやれ!」
 高橋:「えーっ!」
 愛原:「えー、じゃない!」

 こいつには油断も隙も無いな。
 とにかく、私は温泉を堪能した。

 愛原:「飯、何時って言ってたっけ?」
 高橋:「18時からです」
 愛原:「マジか。女性陣はゆっくり入ってそうだし、このまま夕食会場へ直行コースっぽいな」
 高橋:「ですね」

 脱衣場で浴衣を着る。
 私より背の高い高橋は『大』サイズだが、中肉中背の私は『中』サイズだ。
 脱衣場外の湯上りに行くと、まだ女性陣は出ていなかった。

 愛原:「よし、ここで待とう。ちょっと俺、電話してくるから」
 高橋:「はい」

 私は自分のスマホを手に、斉藤社長の所へ掛けた。

 斉藤秀樹:「はい、もしもし。斉藤です」
 愛原:「お疲れ様です。探偵の愛原ですが……」
 秀樹:「おお、愛原さん。娘がお世話になっております」
 愛原:「いえいえ、こちらこそ、いいお部屋を紹介して頂いて……」
 秀樹:「どうですか?ホテルの方は」
 愛原:「リニューアルしたばかりということもあって、きれいなホテルですね」

 でも、それだけだ。
 それ以外は、特に目新しいものはない。
 だいたいどこ行ってもこんな感じじゃね?といった感じだ。

 秀樹:「そうですか。それより私の言伝はフロントから聞きましたか?」
 愛原:「そこです。それなんです。あまりにもシンプルな内容なもので、他に意味があるのではないかと疑ってしまい、こうしてお電話させて頂いた次第です。むしろ何かあるんですか?」
 秀樹:「あるんですよ、それが。私がこのホテルを買い取った運営会社に出資する際、色々と調べたことは言うまでないと思います」
 愛原:「ま、そりゃそうでしょうね」

 ロクに調べもせず出資するバカもいまい。

 秀樹:「面白いことが分かったんですよ。そのホテルの旧館部分なんですけどね、何でも日本アンブレラが保養所に指定していた所らしいんですよ」
 愛原:「えっ?」
 秀樹:「しかも、アメリカ本体からの幹部を接待する場所とかにも使われたりとかですね」
 愛原:「そんな曰く付きですか」
 秀樹:「しかも前のホテル運営会社の経営状態が悪かったこともあって、アンブレラが買い取ろうとしていた時期もあったそうです。これが何を意味していると思いますか?」
 愛原:「秘密の研究施設を造る……ですね?」
 秀樹:「私はそう睨んでいます。どうでしょう?愛原さん、調査してみるつもりはありませんか?」
 愛原:「斉藤社長、最初からそれが目的でしたか」
 秀樹:「いや、バレてしまいましたか。実は愛原さんもお気づきかもしれませんか、本館部分を改築しただけでは、どうも代わり映えしないホテルになっておりましてね。このままでは、また元の木阿弥で大赤字になってしまいます。思い切って大幅リニューアルする為には、あの旧館部分もリニューアルする必要があるのです。しかし、既にアンブレラの関係者が出入りしていたホテルでもある。そこで……」
 愛原:「正式な仕事の依頼ということでしたらお受けしますよ?」
 秀樹:「お願いします。報酬は愛原さんの言い値で構いませんので」
 愛原:「明日、ホテルを引き払ってからでいいですか?」
 秀樹:「構いませんよ。こちらとしても、精一杯のサポートはさせて頂きますので」

 これで決まった。
 上手く行けば、宿泊代もタダだな。

 高橋:「どうしたんですか、先生?」
 愛原:「ホテルをチェックアウトしたら、早速仕事に掛かるぞ」
 高橋:「マジっスか?」
 愛原:「このホテルの旧館部分を調査だ」
 高橋:「なるほど……」

 私達は湯上りを出ると、先に1階に下りた。
 そして、旧館と繋がっていた渡り廊下に向かおうとしたが……。

 愛原:「ま、だろうな」

 新館側から防火シャッターが下ろされていた。
 それだけでなく、工事用のバリケードなども置かれていて、あまり見た目は良くない。
 一応更に、『この先、リニューアル工事中につき立入禁止』という看板と、『この先は別館になっておりますが、建物の老朽化と東日本大震災の影響にて大変危険な状態となっております。従いまして、別館は閉鎖させて頂いております』という看板の2つが立てられていた。

 高橋:「取りあえず、俺達だけでも立入り許可してもらいませんと、仕事にならないですよ」
 愛原:「明日、斉藤社長がどういう話を付けてくれるかどうかだな」
 絵恋:「お父さんがどうかしたんですか?」
 愛原:「おわっ!?」

 いつの間にか背後に斉藤社長の御令息の絵恋さんがいた。
 大製薬企業の御令嬢の割には、名前がキラキラ……ゲフンゲフン!

 高野:「遅くなってごめんなさーい!斉藤さんがのぼせちゃって……」
 斉藤:「も、もう大丈夫です!ごめんなさい!だからお父さんには言わないでください!」
 高野:「別にそんなことしないよ」
 リサ:「サイトー、自爆」
 愛原:「……何があったのか知りたいような、知りたくないような……」
 高橋:「多分、知るだけ無駄だと思いますよ」

 とにかく私達は、夕食会場へ向かうことにした。
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“私立探偵 愛原学” 「探偵の慰安旅行」 3

2019-02-10 09:45:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月19日16:03.天候:晴 千葉県銚子市 銚子電鉄線内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は事務所の皆やリサの親友を伴って、慰安旅行に銚子までやってきた。
 東京駅から総武本線の特急に揺られ、終点の銚子駅で銚子電鉄に乗り換えている。
 JRとは違い、ガタガタと大きく揺れ、且つゆっくり走る古い電車に揺られて犬吠埼を目指しているのだが……。

〔次は笠上黒生(かさがみくろはえ)、笠上黒生。『髪の毛黒生え』笠上黒生でございます。……〕

 愛原:「プーッwwwww!」
 高橋:「プ……プ……プ……w」
 高野:「プwww」
 沖修羅河童:「怨嫉謗法はダメですよ!それより功徳を書きましょうね!」

 多摩:「オマエ、これやりたかっただけだろ?」
 雲羽:「バレました?」

[同日16:11.同市内 犬吠駅]

〔ご乗車ありがとうございました。次は犬吠、犬吠。『ワンツースマイルOTS犬吠埼温泉』犬吠でございます。降り口は、左側です。犬吠崎灯台、地球の丸く見える丘展望館、満願寺、犬吠埼温泉郷へはこちらでお降りください。……〕

 まるで終点に到着するかのような放送だが、実際は終点の1つ手前。
 如何にこの駅での乗降客が多いということだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく犬吠、犬吠でございます。お出口は左側です。お手持ちの乗車券は、駅係員にお渡しください。本日も銚子電鉄をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 因みにこの路線の駅間距離に関して言えば、東京メトロ銀座線のそれと同じか、それよりも短いくらいである。
 海沿いをゆっくり走る小さな電車という意味では、江ノ電と同じか、駅間距離も。
 で、何故かこの駅の有効長は他の駅と比べても長い。
 如何に乗降客が多いとは言えど、この駅だけである。
 今の2000形電車(2両で1編成)が2台は止まれそうな長さだ。
 これは大晦日、関東東端の犬吠埼から初日の出を見る観光客が殺到する為、鉄道会社は特別ダイヤを組むのだそうだ。
 その大編成に対応する為の有効長なんだそうだが、普段はホームの真ん中に止まるだけだ。

 愛原:「おー、着いた着いた」

 電車を降りると、銚子駅の時よりも更に潮の香りが鼻を突いた。

 駅員:「はい、ありがとうございました。……はい、ありがとうございました」

 有人駅なので、キップは駅員に渡す。
 駅舎は随分モダンな造りになっている。
 つい最近、リニューアルしたばかりのようだ。
 駅前広場には、引退した旧型電車と思われるものを流用したレストランがある。
 観光をする余裕があるなら、立ち寄れるかな。

 高橋:「先生、迎えの車来てますよー!」
 愛原:「おーう!」

 今日は取りあえず、さっさとホテルに行って温泉入るか。
 観光は明日だな。

 スタッフ:「愛原様ですか?ニューグランドホテル犬吠の者です。お迎えに上がりました」
 愛原:「あ、こりゃどうもわざわざ……」
 スタッフ:「それじゃ、ホテルまでご案内させて頂きます。どうぞ」

 シルバーのハイエースに乗り込む私達。
 車はすぐに出発した。

[同日16:25.天候:晴 同市内 ニューグランドホテル犬吠・フロント]

 どのホテルも海への眺望を売りにしているわけだが、このホテルもそうであるようだ。
 立地条件は良さそうなのに、1度廃業したそうだからな。
 リニューアルオープンしたばかりということもあって、外観も内装もきれいなものであった。
 私が代表者としてフロントでチェック・インをしていると……。

 フロント係:「愛原様、全日本製薬の斉藤様より言伝がございます」
 愛原:「言伝?」
 フロント係:「旧館エリアには立ち入らぬようにとのことでございますが……」
 愛原:「旧館エリア?そんなのあるの?」
 フロント係:「はい。確かにこのホテルは、全館を改装したわけではございません。別館に関しましては、リニューアルの対象外となりました。そこでリニューアル後は、立入禁止となった別館を『旧館』、このようにリニューアルなった本館部分を『新館』とご案内させて頂いております」
 愛原:「……宿泊客全員にだよね?」
 フロンド係:「さようでございます」
 愛原:「そんなことわざわざ斉藤社長、俺に言えって?」
 フロント係:「さようでございます」

 何かあるな……。
 後で電話してみよう。
 因みにその旧館は、実は外からでも見えた。
 どうやら出入口も分かれていたいたらしく、公道からこのホテルの私道に入って最初のポーチがこの新館のエントランスだったわけだが、道はもっと奥にまで続いていて、『駐車場』と案内されていたが、別館のポーチが終点だったのかもしれない。
 別館はどうしてリニューアルの対象外とされたのか。
 普通に考えれば東日本大震災の時のダメージが本館以上に酷く、廃棄せざるを得なかったとか考えられるが……。
 前の経営母体の時から既にそんなに経営状態が良かったわけではなかったそうなので、別館部分の土地と建物はその時の債権とか?
 やっぱりよく分からないので、後で斉藤社長に電話してみよう。
 私は鍵を受け取ると、早速客室に向かった。

[同日16:40.天候:晴 同ホテル7F 719号室]

 部屋に入ると、そこは和洋室になっていた。
 カーペット敷きの上にベッドが3つ並び、8畳間の和室が隣接している。
 和室と洋室部分は障子(和室側)とカーテン(洋室側)で仕切ることができた。

 高野:「スイートじゃないですよね?」
 愛原:「いや、さすがにそこまで豪華じゃない。部屋は広いけどね。ちょうどベッド3つだ。女性陣はベッドにして、俺と高橋はこっちで布団で寝るよ」
 高野:「了解」
 斉藤:「え……?私、リサさんと一緒の布団で寝たいんですけど……?」
 高橋:「何さらっとキモいこと言ってんだよ?俺は先生と一緒の寝たいんだ。ガキはベッドでおねんねしてな」
 愛原:「お前が言うな!」

 さっさと温泉入って、さっぱりしてくるか。
 斉藤社長へ電話は、その後でいいかな。
コメント (1)
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