[1月19日17:00.天候:晴 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠2F・大浴場]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
……というくだりは、もうそろそろいいかな。
私は今、高橋君と露天風呂に入っている。
読者の皆さんは女湯の様子を見たかったかもしれないが、“私立探偵 愛原学”シリーズは私の一人称視点で進む物語なのである。
もしどうしてもという方は、リサの視点で進む“愛原リサの日常”に期待して頂くしか無い。
期待したい方はコメント欄へ。
愛原:「おーっ、太平洋が一望だな」
高橋:「そうですね。でも確かにこれじゃ、震災の津波もガチ受けですよ」
愛原:「高さもあるから、意外と大丈夫なんじゃない?海面から10メートルくらいあるだろ」
高橋:「どうですかねぇ……。あ、もし良かったら先生、お背中流しましょう」
愛原:「そうか?じゃあ、頼むかな」
高橋:「はい!じゃあ、そこに横になってください!」
愛原:「何で背中流すのに横になるんだよ!」
高橋:「いえ、それが俺のやり方でして……」
愛原:「ウソつけ!洗い場に行って、フツーに座ってやれ!」
高橋:「えーっ!」
愛原:「えー、じゃない!」
こいつには油断も隙も無いな。
とにかく、私は温泉を堪能した。
愛原:「飯、何時って言ってたっけ?」
高橋:「18時からです」
愛原:「マジか。女性陣はゆっくり入ってそうだし、このまま夕食会場へ直行コースっぽいな」
高橋:「ですね」
脱衣場で浴衣を着る。
私より背の高い高橋は『大』サイズだが、中肉中背の私は『中』サイズだ。
脱衣場外の湯上りに行くと、まだ女性陣は出ていなかった。
愛原:「よし、ここで待とう。ちょっと俺、電話してくるから」
高橋:「はい」
私は自分のスマホを手に、斉藤社長の所へ掛けた。
斉藤秀樹:「はい、もしもし。斉藤です」
愛原:「お疲れ様です。探偵の愛原ですが……」
秀樹:「おお、愛原さん。娘がお世話になっております」
愛原:「いえいえ、こちらこそ、いいお部屋を紹介して頂いて……」
秀樹:「どうですか?ホテルの方は」
愛原:「リニューアルしたばかりということもあって、きれいなホテルですね」
でも、それだけだ。
それ以外は、特に目新しいものはない。
だいたいどこ行ってもこんな感じじゃね?といった感じだ。
秀樹:「そうですか。それより私の言伝はフロントから聞きましたか?」
愛原:「そこです。それなんです。あまりにもシンプルな内容なもので、他に意味があるのではないかと疑ってしまい、こうしてお電話させて頂いた次第です。むしろ何かあるんですか?」
秀樹:「あるんですよ、それが。私がこのホテルを買い取った運営会社に出資する際、色々と調べたことは言うまでないと思います」
愛原:「ま、そりゃそうでしょうね」
ロクに調べもせず出資するバカもいまい。
秀樹:「面白いことが分かったんですよ。そのホテルの旧館部分なんですけどね、何でも日本アンブレラが保養所に指定していた所らしいんですよ」
愛原:「えっ?」
秀樹:「しかも、アメリカ本体からの幹部を接待する場所とかにも使われたりとかですね」
愛原:「そんな曰く付きですか」
秀樹:「しかも前のホテル運営会社の経営状態が悪かったこともあって、アンブレラが買い取ろうとしていた時期もあったそうです。これが何を意味していると思いますか?」
愛原:「秘密の研究施設を造る……ですね?」
秀樹:「私はそう睨んでいます。どうでしょう?愛原さん、調査してみるつもりはありませんか?」
愛原:「斉藤社長、最初からそれが目的でしたか」
秀樹:「いや、バレてしまいましたか。実は愛原さんもお気づきかもしれませんか、本館部分を改築しただけでは、どうも代わり映えしないホテルになっておりましてね。このままでは、また元の木阿弥で大赤字になってしまいます。思い切って大幅リニューアルする為には、あの旧館部分もリニューアルする必要があるのです。しかし、既にアンブレラの関係者が出入りしていたホテルでもある。そこで……」
愛原:「正式な仕事の依頼ということでしたらお受けしますよ?」
秀樹:「お願いします。報酬は愛原さんの言い値で構いませんので」
愛原:「明日、ホテルを引き払ってからでいいですか?」
秀樹:「構いませんよ。こちらとしても、精一杯のサポートはさせて頂きますので」
これで決まった。
上手く行けば、宿泊代もタダだな。
高橋:「どうしたんですか、先生?」
愛原:「ホテルをチェックアウトしたら、早速仕事に掛かるぞ」
高橋:「マジっスか?」
愛原:「このホテルの旧館部分を調査だ」
高橋:「なるほど……」
私達は湯上りを出ると、先に1階に下りた。
そして、旧館と繋がっていた渡り廊下に向かおうとしたが……。
愛原:「ま、だろうな」
新館側から防火シャッターが下ろされていた。
それだけでなく、工事用のバリケードなども置かれていて、あまり見た目は良くない。
一応更に、『この先、リニューアル工事中につき立入禁止』という看板と、『この先は別館になっておりますが、建物の老朽化と東日本大震災の影響にて大変危険な状態となっております。従いまして、別館は閉鎖させて頂いております』という看板の2つが立てられていた。
高橋:「取りあえず、俺達だけでも立入り許可してもらいませんと、仕事にならないですよ」
愛原:「明日、斉藤社長がどういう話を付けてくれるかどうかだな」
絵恋:「お父さんがどうかしたんですか?」
愛原:「おわっ!?」
いつの間にか背後に斉藤社長の御令息の絵恋さんがいた。
大製薬企業の御令嬢の割には、名前がキラキラ……ゲフンゲフン!
高野:「遅くなってごめんなさーい!斉藤さんがのぼせちゃって……」
斉藤:「も、もう大丈夫です!ごめんなさい!だからお父さんには言わないでください!」
高野:「別にそんなことしないよ」
リサ:「サイトー、自爆」
愛原:「……何があったのか知りたいような、知りたくないような……」
高橋:「多分、知るだけ無駄だと思いますよ」
とにかく私達は、夕食会場へ向かうことにした。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
……というくだりは、もうそろそろいいかな。
私は今、高橋君と露天風呂に入っている。
読者の皆さんは女湯の様子を見たかったかもしれないが、“私立探偵 愛原学”シリーズは私の一人称視点で進む物語なのである。
もしどうしてもという方は、リサの視点で進む“愛原リサの日常”に期待して頂くしか無い。
期待したい方はコメント欄へ。
愛原:「おーっ、太平洋が一望だな」
高橋:「そうですね。でも確かにこれじゃ、震災の津波もガチ受けですよ」
愛原:「高さもあるから、意外と大丈夫なんじゃない?海面から10メートルくらいあるだろ」
高橋:「どうですかねぇ……。あ、もし良かったら先生、お背中流しましょう」
愛原:「そうか?じゃあ、頼むかな」
高橋:「はい!じゃあ、そこに横になってください!」
愛原:「何で背中流すのに横になるんだよ!」
高橋:「いえ、それが俺のやり方でして……」
愛原:「ウソつけ!洗い場に行って、フツーに座ってやれ!」
高橋:「えーっ!」
愛原:「えー、じゃない!」
こいつには油断も隙も無いな。
とにかく、私は温泉を堪能した。
愛原:「飯、何時って言ってたっけ?」
高橋:「18時からです」
愛原:「マジか。女性陣はゆっくり入ってそうだし、このまま夕食会場へ直行コースっぽいな」
高橋:「ですね」
脱衣場で浴衣を着る。
私より背の高い高橋は『大』サイズだが、中肉中背の私は『中』サイズだ。
脱衣場外の湯上りに行くと、まだ女性陣は出ていなかった。
愛原:「よし、ここで待とう。ちょっと俺、電話してくるから」
高橋:「はい」
私は自分のスマホを手に、斉藤社長の所へ掛けた。
斉藤秀樹:「はい、もしもし。斉藤です」
愛原:「お疲れ様です。探偵の愛原ですが……」
秀樹:「おお、愛原さん。娘がお世話になっております」
愛原:「いえいえ、こちらこそ、いいお部屋を紹介して頂いて……」
秀樹:「どうですか?ホテルの方は」
愛原:「リニューアルしたばかりということもあって、きれいなホテルですね」
でも、それだけだ。
それ以外は、特に目新しいものはない。
だいたいどこ行ってもこんな感じじゃね?といった感じだ。
秀樹:「そうですか。それより私の言伝はフロントから聞きましたか?」
愛原:「そこです。それなんです。あまりにもシンプルな内容なもので、他に意味があるのではないかと疑ってしまい、こうしてお電話させて頂いた次第です。むしろ何かあるんですか?」
秀樹:「あるんですよ、それが。私がこのホテルを買い取った運営会社に出資する際、色々と調べたことは言うまでないと思います」
愛原:「ま、そりゃそうでしょうね」
ロクに調べもせず出資するバカもいまい。
秀樹:「面白いことが分かったんですよ。そのホテルの旧館部分なんですけどね、何でも日本アンブレラが保養所に指定していた所らしいんですよ」
愛原:「えっ?」
秀樹:「しかも、アメリカ本体からの幹部を接待する場所とかにも使われたりとかですね」
愛原:「そんな曰く付きですか」
秀樹:「しかも前のホテル運営会社の経営状態が悪かったこともあって、アンブレラが買い取ろうとしていた時期もあったそうです。これが何を意味していると思いますか?」
愛原:「秘密の研究施設を造る……ですね?」
秀樹:「私はそう睨んでいます。どうでしょう?愛原さん、調査してみるつもりはありませんか?」
愛原:「斉藤社長、最初からそれが目的でしたか」
秀樹:「いや、バレてしまいましたか。実は愛原さんもお気づきかもしれませんか、本館部分を改築しただけでは、どうも代わり映えしないホテルになっておりましてね。このままでは、また元の木阿弥で大赤字になってしまいます。思い切って大幅リニューアルする為には、あの旧館部分もリニューアルする必要があるのです。しかし、既にアンブレラの関係者が出入りしていたホテルでもある。そこで……」
愛原:「正式な仕事の依頼ということでしたらお受けしますよ?」
秀樹:「お願いします。報酬は愛原さんの言い値で構いませんので」
愛原:「明日、ホテルを引き払ってからでいいですか?」
秀樹:「構いませんよ。こちらとしても、精一杯のサポートはさせて頂きますので」
これで決まった。
上手く行けば、宿泊代もタダだな。
高橋:「どうしたんですか、先生?」
愛原:「ホテルをチェックアウトしたら、早速仕事に掛かるぞ」
高橋:「マジっスか?」
愛原:「このホテルの旧館部分を調査だ」
高橋:「なるほど……」
私達は湯上りを出ると、先に1階に下りた。
そして、旧館と繋がっていた渡り廊下に向かおうとしたが……。
愛原:「ま、だろうな」
新館側から防火シャッターが下ろされていた。
それだけでなく、工事用のバリケードなども置かれていて、あまり見た目は良くない。
一応更に、『この先、リニューアル工事中につき立入禁止』という看板と、『この先は別館になっておりますが、建物の老朽化と東日本大震災の影響にて大変危険な状態となっております。従いまして、別館は閉鎖させて頂いております』という看板の2つが立てられていた。
高橋:「取りあえず、俺達だけでも立入り許可してもらいませんと、仕事にならないですよ」
愛原:「明日、斉藤社長がどういう話を付けてくれるかどうかだな」
絵恋:「お父さんがどうかしたんですか?」
愛原:「おわっ!?」
いつの間にか背後に斉藤社長の御令息の絵恋さんがいた。
大製薬企業の御令嬢の割には、名前がキラキラ……ゲフンゲフン!
高野:「遅くなってごめんなさーい!斉藤さんがのぼせちゃって……」
斉藤:「も、もう大丈夫です!ごめんなさい!だからお父さんには言わないでください!」
高野:「別にそんなことしないよ」
リサ:「サイトー、自爆」
愛原:「……何があったのか知りたいような、知りたくないような……」
高橋:「多分、知るだけ無駄だと思いますよ」
とにかく私達は、夕食会場へ向かうことにした。