報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサ達の正体」

2019-02-24 19:27:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月21日13:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 全日本製薬株式会社・本社応接室]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は銚子で調査した旧・日本アンブレラ社の秘密研究所のことについて、斉藤社長に報告しに行った。
 さすが大企業本社の応接室は、私の事務所と比べても豪勢な造りである。
 そこに通じる社長室も、さぞかし豪勢な造りなのだろうと推測する。

 斉藤秀樹:「やあ、どうも。お待たせしました」
 愛原:「御多忙の所、恐れ入ります。御依頼のありました千葉県銚子市の旧アンブレラ秘密研究所について調査して参りましたので、こちらその報告書と証拠品になります」
 斉藤:「やはり噂は本当でしたか」
 愛原:「そのようです」

 斉藤社長は早速私の報告書に目を通した。

 斉藤:「やはり、お決まりの自爆装置でしたか」
 愛原:「そうなんですよ。でもこの通り、爆破前の所内の写真と見取り図は持ち帰って参りましたので」
 斉藤:「さすがは愛原さんです。……これが報告書にありました、『非人道的な実験の映像』ですか」
 愛原:「そうなんです。いくら実験体とはいえ、幼気な少女に集団で性的暴行を加える映像です」
 斉藤:「それはえげつない。まあ、後で確認させて頂きます。ここで堂々と解析するようなものではないようですから」
 愛原:「そうですね。少なくとも、御嬢様には見せられない映像です」
 斉藤:「そうそう。旅行中、娘の面倒を看て頂いてありがとうございました」
 愛原:「いえいえ。リサも初めてできた『人間の』友達と旅行できて嬉しかったようです」
 斉藤:「愛原さんに面倒を看てもらっている個体が1番幸せみたいですね」
 愛原:「社長も何か御存知でしたか」
 斉藤:「こちらもこちらで、色々と調査していますのでね。何しろ、製薬業界の名を地に貶めた連中です。今後とも糾弾していかなければなりません」

 今現在、新生アンブレラが誕生している。
 ただこれは製薬企業としてではなく、民間軍事会社として。
 旧アンブレラの生き残りやOBが中心に結成したもので、旧アンブレラの贖罪が目的だという。
 BSAAが大規模なバイオテロを鎮静するのが目的なのに対し、新アンブレラはそのBSAAの後方支援やBSAAの手を煩わせることもない小規模なバイオテロの鎮静を主な業務とする……らしい。
 元々、旧アンブレラは独自の民間軍事部門(USSやUBCS)を持っていたので、ノウハウ自体はあったようだ。

 斉藤:「例え今は過去の過ちを自省し、自ら蒔いた種を回収しているとはいえ、です」
 愛原:「リサ・トレヴァーもそんな『蒔いた種』の1つでしょうに、何もアクションが無いんですね」
 斉藤:「その辺は私共も関係者だった者に問い合わせてみました。『担当では無かったので知らない』とか、『そんなものは今初めて知った』とか、そんなのばかりです」
 高橋:「俺が締め上げて吐かせましょうか?」
 斉藤:「いや、それには及びません。一応、『本当に知っている者はこの世から消えてしまった』という前提で私達は話を進める方針です」
 愛原:「すると、今うちで面倒を看ているリサは……」
 斉藤:「それは政府に任せておいた方が良いでしょう。将来は政府で面倒を看るつもりのようですし、愛原さんも政府とはそのような契約を結んでおられるのでしょう?」
 愛原:「まあ、そうです」

 そこで私は1つ、斉藤社長に質問することにした。

 愛原:「社長は日本版リサ・トレヴァーが元は普通の人間の少女だったことを御存知ですね?」
 斉藤:「ええ、一応は」
 愛原:「彼女らも人間だった頃は、家族と一緒に過ごしていたはずです。それがいきなりアンブレラに連れ去られて、どうして家族は騒がなかったんだと思いますか?」
 斉藤:「それこそ愛原さんの出番ですよ。愛原さんの推理力の出番です」
 愛原:「推理力と言われましてもねぇ……」
 斉藤:「今の愛原さんの言葉、その逆転の発想をしてみては如何ですか?」
 愛原:「逆転の発想?」
 高橋:「社長。もしもっスよ?もしも、社長の御嬢さんがアンブレラの実験体として連れ去られたらどうしますか?」
 斉藤:「持てる限りの力を使って、何としてでも取り戻します。普通、親としてそうでしょう」
 愛原:「親として連れ去られた子供を、何故か取り戻そうとしなかった……」
 斉藤:「世の中には、親からの愛情を受けられずに育った可哀想な子供もいますからね」
 愛原:「あっ……!」

 私はかつて、子供の虐待の証拠を押さえる仕事の依頼を受けたことがある。
 まだ、高橋が弟子入りする前の話だ。

 愛原:「虐待されている子供を旧アンブレラが目ざとく見つけ出して、それを連れ去った?」
 斉藤:「実際、1998年9月に大規模なバイオハザードの起こったアメリカのラクーンシティでは、1つの孤児院……つまり、今の児童養護施設ですね。そこに収容されていた子供が、旧アンブレラの実験の素体として連れ去られていたという話です。その施設自体がそういう目的で作られたという噂もあります。今は町自体が更地になってしまっているので、何の証拠もありませんが」
 愛原:「うーむ……」

 虐待されていた子供ねぇ……。
 リサ・トレヴァーは名前の通り少女だったから、その中でも少女を狙ったというわけか。
 アメリカ本体では独自の保安警察(アメリカでは私企業であっても、手続きさえ踏めば警備員よりも権限の強い保安官を雇うことができる)を持っていた旧アンブレラだったから、日本でもやろうと思えばできる。
 確か日本では法律上、独自の保安警察は持てないが、代わりに直営の警備会社を作ってやっていたそうだ。
 目ざとく虐待されている子供を見つけて、しかも連れ去っても家族が騒がない少女を見つけるくらいはやってのけてそうだ。

 斉藤:「この辺を調査してみると、リサさんの素性が分かるかもしれませんね」
 愛原:「なるほど。分かりました」

 もっとも、誰かからの依頼ではないのですぐにはできそうにないが。
 一応、善場さんに確認しておいた方がいいかな。
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“私立探偵 愛原学” 「慰安旅行その後」

2019-02-24 10:07:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月21日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。

 愛原:「おはよう」
 高橋:「あっ、先生!おはようございます!」

 私が起きると、キッチンで高橋が朝食の準備をしていた。
 彼は家事全般のスキルがとても高い。
 荒れた10代を過ごしたということで、悪さが過ぎてブチ込まれた少年院だの少年刑務所だので培ったスキルだとか言ってるが、本当かなぁ……。

 高橋:「もうすぐできますので」
 愛原:「ああ。俺は顔洗って来る」

 私が洗面所に行くと、浴室からシャワーの音が聞こえて来た。
 どうやらリサがシャワーを浴びているらしい。
 リサもそうするようになったか。
 BOWというのは、往々にして衛生観念に欠ける所が多々ある。
 ゲームや映画なんかでも、不潔感を醸し出している個体が見受けられるのはこのせいだ。
 だが、全般的に日本版のリサ・トレヴァーは例外のようである。
 もっとも、アメリカのオリジナル版とは明らかにタイプが異なっており、派生版だとか完全版だとか言われている。
 そもそも、正式名称が不明なのである。
 どこかに、それが書かれた資料が放置されている秘密施設でも見つければいいんだろうがな。
 少なくとも、銚子にはそれが無かった……ように思う。
 私が髭を剃り、歯を磨いていると……。

 リサ:「ああ、愛原さん、おはよ〜」
 愛原:「ブッ!」

 リサが全裸でフツーに出て来た。

 愛原:「早く体拭いて服着て!俺は出るから!」
 リサ:「別にいいよ?」

 1つだけ普通の人間と違うのは、羞恥心に欠けるというところか。
 普通、10代に入ると羞恥心も出て来るだろうに、リサにはそれが全く無いのだ。

 愛原:「あと触手!」
 リサ:「あっ……!」

 リサの背中から『ネメシスの触手』が一本出ていた。
 黒くて長くて太い触手だ。
 今のリサは一本だけ出しているが、個体によっては何本も出し、それを駆使して敵を絞め殺したり、鞭のように叩いて攻撃するのだという。
 シュルシュルと掃除機のコードみたいに背中に収納される触手。
 確かにBOWの中には全裸状態の物もそれなりにいる。
 その場合、大抵は完全に化け物の姿をしているのだが、アメリカのトールオークスとかいう町に現れたBOWは、人間の姿をある程度保ったまま全裸だったらしい。

 愛原:「アメリカ人が見たらビックリするだろうなぁ……」
 高橋:「何がです?」
 愛原:「BOWとフツーに暮らしている俺達を見て」
 高橋:「ああ。まあ、リサが先生の言う事を聞いているからでしょう」
 愛原:「学校に通っているというだけでも、ノーベル賞ものだぞ」
 高橋:「BOWという時点で、イグノーベル賞すらくれないと思います」

 ようやくリサが学校の制服に着替えて来る。
 こうして私は、洗面の続きができるというわけだ。

 高橋:「先生、朝食ができましたよ」
 愛原:「おう、ありがとう」

 ベーコンエッグにサラダ、トーストという比較的軽めのもの。
 ま、朝食はこんなものでいい。

 高橋:「弁当はBLTサンドでいいですか?」
 愛原:「いいよ」

 ベーコンとパンとレタスが続くが、恐らく冷蔵庫の在庫一掃も兼ねているだろう。
 ベーコンとパンとレタスの賞味期限が迫っていると見た。

 リサ:「私もお兄ちゃんのお弁当食べたいなぁ」
 愛原:「リサの学校には給食があるからな」

 東京中央学園の中等部には給食がある。
 高等部になると給食が無くなる代わり、学食があって、それとは別に弁当持参の選択肢もある。

 愛原:「給食の無い遠足とか、高校に入ったら高橋に弁当作ってもらえばいいさ」

 東京中央学園は中高一貫校であるのだが、高等部から入学する生徒もいる。
 リサの場合、成績優秀であれば無試験で高校に上がれるから大丈夫だろう。

[同日09:00.天候:晴 同地区内 愛原学探偵事務所]

 事務所に着いた私は、クライアントの斉藤社長に提出する報告書の作成を始めた。

 高野:「先生。斉藤社長は午後13時にお会いされるそうです」
 愛原:「13時ね。了解」

 それまでに何としてでも、報告書を完成させなければ。
 せっかくパシャパシャ撮ったあの研究所の写真もあるのだから、それをふんだんに盛り込んで……。
 因みにやはりというべきか、あの研究所が自爆した後、やはり旧館も半壊したらしい。
 新館はそこまででは無かったが、電気設備だの水道管だのにダメージが発生して休業だそうだ。
 で、半壊した旧館の中から腐乱死体だの白骨死体だのが見つかって大騒ぎ。
 もちろんこれは、暴走した『5番』のリサ・トレヴァーとタイラントに殺された関係者達の死体だろう。

 愛原:「それにしても、と思うんだが……」
 高橋:「何でしょう?」
 愛原:「日本にリサ・トレヴァーは何人いるんだろうな?うちのリサが『2番』だろ?ということは、どこかに『1番』がいるはずだ」
 高橋:「『4番』は仙台でBSAAにブッ殺されましたよね?」
 愛原:「じゃあ、『3番』もまたどこかにいるってことだな?」
 高野:「或いはもうこの世にはいないかもしれませんしね」
 愛原:「で、銚子にいたのが『5番』だ。現時点で、最低でも5人の日本版リサ・トレヴァーがいたことになる」

 そのうち現認できるのは『2番』のみ。
 『1番』と『3番』の所在は知れず、『5番』は映像で確認できたが、やっぱりその後の動向は知れず。

 愛原:「で、更に気になるのはだな……。日本アンブレラはどうやって、リサ・トレヴァーの素体となった少女達を集めたんだ?普通、誘拐なり拉致なりしたら大騒ぎになるだろ?」
 高橋:「そうですねぇ……」

 確証は無いのだが、『2番』のリサの場合、一家全員殺害事件の被害者で、その唯一の生き残りであるかもしれない。
 何しろ、リサ本人の普通の人間だった頃の記憶が無い為、何とも言えないのだ。
 それに、仮にそうだったとしても、親族や当時の友人・知人が騒がないのは何故だ?
 アメリカ本体の旧アンブレラだったら、素体の確保の為に関係者全員を殺害することくらい厭わなかったらしいからな。
 素体が外国人(特に開発途上国)だったら、どこかで人身売買でもして手に入れたと考えられるが、少なくとも『2番』と『4番』と『5番』は日本人だ(実は在日だという可能性もある。リサ自身、どこか白人の血が入っていそうな顔立ちをしている部分がある)。

 高橋:「その証拠も俺達で集めてくれなんて依頼があったりして?」
 愛原:「さすがに限界があるよ。もしできるのなら、仙台や銚子でとっくに見つけてるさ。いや、霧生市の時点で見つけてるかもな」
 高橋:「それもそうですね」

 リサについての概要だけは説明された資料が、確かに霧生市の研究所にはあった。
 だが、あくまでも概要だけだ。
 詳細が説明された資料は無かった。
 探せばあったのかもしれないが、あの時はそれどころじゃなかったからな。

 愛原:「それより今は報告書の作成だ。斉藤社長も大企業の力を駆使して、色々と調べてるみたいだからな。そっちに期待しよう」
 高橋:「はい」
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