[1月21日13:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 全日本製薬株式会社・本社応接室]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は銚子で調査した旧・日本アンブレラ社の秘密研究所のことについて、斉藤社長に報告しに行った。
さすが大企業本社の応接室は、私の事務所と比べても豪勢な造りである。
そこに通じる社長室も、さぞかし豪勢な造りなのだろうと推測する。
斉藤秀樹:「やあ、どうも。お待たせしました」
愛原:「御多忙の所、恐れ入ります。御依頼のありました千葉県銚子市の旧アンブレラ秘密研究所について調査して参りましたので、こちらその報告書と証拠品になります」
斉藤:「やはり噂は本当でしたか」
愛原:「そのようです」
斉藤社長は早速私の報告書に目を通した。
斉藤:「やはり、お決まりの自爆装置でしたか」
愛原:「そうなんですよ。でもこの通り、爆破前の所内の写真と見取り図は持ち帰って参りましたので」
斉藤:「さすがは愛原さんです。……これが報告書にありました、『非人道的な実験の映像』ですか」
愛原:「そうなんです。いくら実験体とはいえ、幼気な少女に集団で性的暴行を加える映像です」
斉藤:「それはえげつない。まあ、後で確認させて頂きます。ここで堂々と解析するようなものではないようですから」
愛原:「そうですね。少なくとも、御嬢様には見せられない映像です」
斉藤:「そうそう。旅行中、娘の面倒を看て頂いてありがとうございました」
愛原:「いえいえ。リサも初めてできた『人間の』友達と旅行できて嬉しかったようです」
斉藤:「愛原さんに面倒を看てもらっている個体が1番幸せみたいですね」
愛原:「社長も何か御存知でしたか」
斉藤:「こちらもこちらで、色々と調査していますのでね。何しろ、製薬業界の名を地に貶めた連中です。今後とも糾弾していかなければなりません」
今現在、新生アンブレラが誕生している。
ただこれは製薬企業としてではなく、民間軍事会社として。
旧アンブレラの生き残りやOBが中心に結成したもので、旧アンブレラの贖罪が目的だという。
BSAAが大規模なバイオテロを鎮静するのが目的なのに対し、新アンブレラはそのBSAAの後方支援やBSAAの手を煩わせることもない小規模なバイオテロの鎮静を主な業務とする……らしい。
元々、旧アンブレラは独自の民間軍事部門(USSやUBCS)を持っていたので、ノウハウ自体はあったようだ。
斉藤:「例え今は過去の過ちを自省し、自ら蒔いた種を回収しているとはいえ、です」
愛原:「リサ・トレヴァーもそんな『蒔いた種』の1つでしょうに、何もアクションが無いんですね」
斉藤:「その辺は私共も関係者だった者に問い合わせてみました。『担当では無かったので知らない』とか、『そんなものは今初めて知った』とか、そんなのばかりです」
高橋:「俺が締め上げて吐かせましょうか?」
斉藤:「いや、それには及びません。一応、『本当に知っている者はこの世から消えてしまった』という前提で私達は話を進める方針です」
愛原:「すると、今うちで面倒を看ているリサは……」
斉藤:「それは政府に任せておいた方が良いでしょう。将来は政府で面倒を看るつもりのようですし、愛原さんも政府とはそのような契約を結んでおられるのでしょう?」
愛原:「まあ、そうです」
そこで私は1つ、斉藤社長に質問することにした。
愛原:「社長は日本版リサ・トレヴァーが元は普通の人間の少女だったことを御存知ですね?」
斉藤:「ええ、一応は」
愛原:「彼女らも人間だった頃は、家族と一緒に過ごしていたはずです。それがいきなりアンブレラに連れ去られて、どうして家族は騒がなかったんだと思いますか?」
斉藤:「それこそ愛原さんの出番ですよ。愛原さんの推理力の出番です」
愛原:「推理力と言われましてもねぇ……」
斉藤:「今の愛原さんの言葉、その逆転の発想をしてみては如何ですか?」
愛原:「逆転の発想?」
高橋:「社長。もしもっスよ?もしも、社長の御嬢さんがアンブレラの実験体として連れ去られたらどうしますか?」
斉藤:「持てる限りの力を使って、何としてでも取り戻します。普通、親としてそうでしょう」
愛原:「親として連れ去られた子供を、何故か取り戻そうとしなかった……」
斉藤:「世の中には、親からの愛情を受けられずに育った可哀想な子供もいますからね」
愛原:「あっ……!」
私はかつて、子供の虐待の証拠を押さえる仕事の依頼を受けたことがある。
まだ、高橋が弟子入りする前の話だ。
愛原:「虐待されている子供を旧アンブレラが目ざとく見つけ出して、それを連れ去った?」
斉藤:「実際、1998年9月に大規模なバイオハザードの起こったアメリカのラクーンシティでは、1つの孤児院……つまり、今の児童養護施設ですね。そこに収容されていた子供が、旧アンブレラの実験の素体として連れ去られていたという話です。その施設自体がそういう目的で作られたという噂もあります。今は町自体が更地になってしまっているので、何の証拠もありませんが」
愛原:「うーむ……」
虐待されていた子供ねぇ……。
リサ・トレヴァーは名前の通り少女だったから、その中でも少女を狙ったというわけか。
アメリカ本体では独自の保安警察(アメリカでは私企業であっても、手続きさえ踏めば警備員よりも権限の強い保安官を雇うことができる)を持っていた旧アンブレラだったから、日本でもやろうと思えばできる。
確か日本では法律上、独自の保安警察は持てないが、代わりに直営の警備会社を作ってやっていたそうだ。
目ざとく虐待されている子供を見つけて、しかも連れ去っても家族が騒がない少女を見つけるくらいはやってのけてそうだ。
斉藤:「この辺を調査してみると、リサさんの素性が分かるかもしれませんね」
愛原:「なるほど。分かりました」
もっとも、誰かからの依頼ではないのですぐにはできそうにないが。
一応、善場さんに確認しておいた方がいいかな。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は銚子で調査した旧・日本アンブレラ社の秘密研究所のことについて、斉藤社長に報告しに行った。
さすが大企業本社の応接室は、私の事務所と比べても豪勢な造りである。
そこに通じる社長室も、さぞかし豪勢な造りなのだろうと推測する。
斉藤秀樹:「やあ、どうも。お待たせしました」
愛原:「御多忙の所、恐れ入ります。御依頼のありました千葉県銚子市の旧アンブレラ秘密研究所について調査して参りましたので、こちらその報告書と証拠品になります」
斉藤:「やはり噂は本当でしたか」
愛原:「そのようです」
斉藤社長は早速私の報告書に目を通した。
斉藤:「やはり、お決まりの自爆装置でしたか」
愛原:「そうなんですよ。でもこの通り、爆破前の所内の写真と見取り図は持ち帰って参りましたので」
斉藤:「さすがは愛原さんです。……これが報告書にありました、『非人道的な実験の映像』ですか」
愛原:「そうなんです。いくら実験体とはいえ、幼気な少女に集団で性的暴行を加える映像です」
斉藤:「それはえげつない。まあ、後で確認させて頂きます。ここで堂々と解析するようなものではないようですから」
愛原:「そうですね。少なくとも、御嬢様には見せられない映像です」
斉藤:「そうそう。旅行中、娘の面倒を看て頂いてありがとうございました」
愛原:「いえいえ。リサも初めてできた『人間の』友達と旅行できて嬉しかったようです」
斉藤:「愛原さんに面倒を看てもらっている個体が1番幸せみたいですね」
愛原:「社長も何か御存知でしたか」
斉藤:「こちらもこちらで、色々と調査していますのでね。何しろ、製薬業界の名を地に貶めた連中です。今後とも糾弾していかなければなりません」
今現在、新生アンブレラが誕生している。
ただこれは製薬企業としてではなく、民間軍事会社として。
旧アンブレラの生き残りやOBが中心に結成したもので、旧アンブレラの贖罪が目的だという。
BSAAが大規模なバイオテロを鎮静するのが目的なのに対し、新アンブレラはそのBSAAの後方支援やBSAAの手を煩わせることもない小規模なバイオテロの鎮静を主な業務とする……らしい。
元々、旧アンブレラは独自の民間軍事部門(USSやUBCS)を持っていたので、ノウハウ自体はあったようだ。
斉藤:「例え今は過去の過ちを自省し、自ら蒔いた種を回収しているとはいえ、です」
愛原:「リサ・トレヴァーもそんな『蒔いた種』の1つでしょうに、何もアクションが無いんですね」
斉藤:「その辺は私共も関係者だった者に問い合わせてみました。『担当では無かったので知らない』とか、『そんなものは今初めて知った』とか、そんなのばかりです」
高橋:「俺が締め上げて吐かせましょうか?」
斉藤:「いや、それには及びません。一応、『本当に知っている者はこの世から消えてしまった』という前提で私達は話を進める方針です」
愛原:「すると、今うちで面倒を看ているリサは……」
斉藤:「それは政府に任せておいた方が良いでしょう。将来は政府で面倒を看るつもりのようですし、愛原さんも政府とはそのような契約を結んでおられるのでしょう?」
愛原:「まあ、そうです」
そこで私は1つ、斉藤社長に質問することにした。
愛原:「社長は日本版リサ・トレヴァーが元は普通の人間の少女だったことを御存知ですね?」
斉藤:「ええ、一応は」
愛原:「彼女らも人間だった頃は、家族と一緒に過ごしていたはずです。それがいきなりアンブレラに連れ去られて、どうして家族は騒がなかったんだと思いますか?」
斉藤:「それこそ愛原さんの出番ですよ。愛原さんの推理力の出番です」
愛原:「推理力と言われましてもねぇ……」
斉藤:「今の愛原さんの言葉、その逆転の発想をしてみては如何ですか?」
愛原:「逆転の発想?」
高橋:「社長。もしもっスよ?もしも、社長の御嬢さんがアンブレラの実験体として連れ去られたらどうしますか?」
斉藤:「持てる限りの力を使って、何としてでも取り戻します。普通、親としてそうでしょう」
愛原:「親として連れ去られた子供を、何故か取り戻そうとしなかった……」
斉藤:「世の中には、親からの愛情を受けられずに育った可哀想な子供もいますからね」
愛原:「あっ……!」
私はかつて、子供の虐待の証拠を押さえる仕事の依頼を受けたことがある。
まだ、高橋が弟子入りする前の話だ。
愛原:「虐待されている子供を旧アンブレラが目ざとく見つけ出して、それを連れ去った?」
斉藤:「実際、1998年9月に大規模なバイオハザードの起こったアメリカのラクーンシティでは、1つの孤児院……つまり、今の児童養護施設ですね。そこに収容されていた子供が、旧アンブレラの実験の素体として連れ去られていたという話です。その施設自体がそういう目的で作られたという噂もあります。今は町自体が更地になってしまっているので、何の証拠もありませんが」
愛原:「うーむ……」
虐待されていた子供ねぇ……。
リサ・トレヴァーは名前の通り少女だったから、その中でも少女を狙ったというわけか。
アメリカ本体では独自の保安警察(アメリカでは私企業であっても、手続きさえ踏めば警備員よりも権限の強い保安官を雇うことができる)を持っていた旧アンブレラだったから、日本でもやろうと思えばできる。
確か日本では法律上、独自の保安警察は持てないが、代わりに直営の警備会社を作ってやっていたそうだ。
目ざとく虐待されている子供を見つけて、しかも連れ去っても家族が騒がない少女を見つけるくらいはやってのけてそうだ。
斉藤:「この辺を調査してみると、リサさんの素性が分かるかもしれませんね」
愛原:「なるほど。分かりました」
もっとも、誰かからの依頼ではないのですぐにはできそうにないが。
一応、善場さんに確認しておいた方がいいかな。