[1月19日15:28.天候:晴 千葉県銚子市 JR銚子駅]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は慰安旅行で、犬吠埼へ向かっているところだ。
私達を乗せた特急“しおさい”5号は、定刻通りに運行している。
総武本線をひたすら進む電車で、東京駅を出発後、千葉駅までの複々線区間では黄色い各駅停車を何本も追い越し、千葉駅からは複線区間となり、それでもまだベッドタウンといった風景の中を進む。この複線区間は佐倉駅まで続く。
佐倉駅から先は単線となるが、見た目には隣にもう一本線路が並行しているので、まだ複線が続くという錯覚になってしまうが、これは分岐する成田線の線路。成田空港へ向かう“成田エクスプレス”は、そちらを通るというわけだ。
一方、私達の方はローカルチックな雰囲気の中、別方向に向かう。
尚、終点の銚子駅の1つ手前の松岸という駅で別の線路が合流して来るが、これは成田線の線路。
ん?何かおかしいかな?
成田線という路線は微妙に複雑な構造らしくてね、成田空港へ向かう方が支線で、こっちの再び総武本線に合流して来る方が本線なんだって。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、銚子です。お出口は、左側です。銚子電鉄線は、お乗り換えです。……〕
愛原:「因みに松岸駅の周辺には、日蓮正宗の末寺さんがあります」
高橋:「え、何ですか?」
愛原:「いや、何でもない。そろそろ降りる準備をしないとな」
高野:「どうせ終点なんだから、慌てなくても……」
愛原:「随分、ゴミを出したなぁ。片付けるの大変だぞ」
高野:「取りあえずまとめて、駅のゴミ箱にでも捨てておきましょう」
愛原:「そうだな」
高野:「あなた達も降りる準備しなさい」
リサ:「はーい」
斉藤:「はーい」
〔「……お乗り換えのご案内です。銚子電鉄線をご利用のお客様は、階段を上りまして、銚子電鉄線乗り場から発車致します。今度の各駅停車、外川行きは15時54分の発車です。……」〕
愛原:「乗り換え、超余裕」
高野:「さすがはローカル線ですね」
こうして特急“しおさい”5号は定刻通りに銚子駅に到着した。
特急列車らしく、1番改札口に近い1番線に到着したのだが、銚子電鉄に乗り換えたい客はちょっと不便だ。
何故なら……。
清掃員:「ご乗車ありがとうございましたー。ゴミはこちらへどうぞー」
愛原:「あ、そうか!」
新幹線でもそうだが、特急でも終点で折り返す電車では清掃員が待機していて、それまで乗って来た客のゴミをドアの横で受け取るようなことをしているのだ。
そこはラクで助かったのだが……。
愛原:「銚子電鉄はどこだ?」
高橋:「反対側のホームに向かった先らしいです」
愛原:「なっにー!?」
乗り換えに余裕はあるのだが、こういう罠もあるわけか。
1番線は特急と一部の普通列車が発着し、反対側の2番線は総武本線普通の大半、そしてその隣の3番線は成田線普通の大半が発着する。
要は1面2線の駅ってことだ。
で、銚子電鉄はというと……。
愛原:「ん?あれか?」
私が跨線橋を渡っている時、そこから見えた小屋っぽいもの。
で、その先にある切り欠きホーム。
高橋:「そのようですね」
なるほど。
あそこでJRのキップは回収され、改めて銚子電鉄線のキップを買えということか。
尚、連れのJC2人は元気良くさっさと先に行ってしまう。
因みにリサはショートパンツから先の生足が目立つ。
斉藤さんがスカートながら、下にレギンスを穿いているのとは大違いだ。
BOW(Bio Organic Weapon)はこのくらいの寒さは「寒さ」に該当しないらしい。
愛原:「まださすがに電車は来てないか」
高橋:「そうですね。俺が呼びに行きましょうか?」
愛原:「ああ、そうだな。……って、おい!」
高橋:「え?何ですか?」
愛原:「何で電車を呼びに行くんだよ!?」
高橋:「何ですか?」
愛原:「タクシーを呼ぶのと違うんだよ!どうせ折り返しの電車が来るだろう!」
高橋:「はあ……」
しかし、小屋みたいなものは待合室だった。
改札口みたいなものもあったが、そこに駅員はいなかったし、だいいち券売機の類すら無い。
一体、どうなっているのやら……。
斉藤:「海の匂いがする」
愛原:「はは、そりゃもうこの時点で海は近いからね。これからもっと海に近づく為に、電車を乗り換えるってわけさ」
私は斉藤さんにそう答えた後で続けた。
愛原:「実家が埼玉じゃ、なかなか海に行く機会は無いでしょう?」
斉藤:「いや、そんなことないですよ。この前の夏休み……まだリサさんが転校してくる前は、ニュージーランドまで行って来ましたから」
愛原:「……東北ニュージーランド村?」
斉藤:「と、東北!?いえ、ニュージーランドですよ?」
彼女は大製薬会社の代表取締役の御嬢様であった。
格の差というか、貧富の差を見せつけられる。
[同日15:54.天候:晴 千葉県銚子市 銚子駅・銚子電鉄線ホーム→銚子電鉄2000形電車先頭車内]
発車の10分前には折り返しの電車がやってきた。
全身緑色に塗られていたので私は東急電鉄の車両をイメージしてしまったが、そうではなく、元々は京王電鉄の車両だったらしい。
それが四国の伊予鉄道に譲渡され、そして銚子電鉄に引き取られて今に至るとのこと。
フロント部分にはワンマンの表示がしてあったが、どうもそうではなく、車掌が乗るようだ。
で、発車する時にはちゃんとホームに発車ベルが流れる。
車掌は女性で、何故か前部運転台に運転士の横に立って、そこからホームを監視してドア扱いをしていた。
ドアチャイムのピンポンピンポンの音色は確かに京王っぽい。
〔発車します。ご注意ください〕
すぐ横に運転士がいるというのに、車掌はわざわざ発車合図のブザーを押している。
こんなといったら失礼だが、ローカル鉄道でもちゃんと運転取扱規則を厳守している所は日本で感じだ。
〔お待たせ致しました。この電車は下り、外川行き、ワンマン電車です。……〕
車掌:「乗車券をお持ちでない方、いらっしゃいますかー?」
すぐに車掌が改札にやってくる。
なるほど。
運転要員というよりは、特別改札要員としての役割の方が大きいのかな。
私達はすぐに申し出た。
〔……次は仲ノ町、仲ノ町。『パールショップともえ』仲ノ町でございます。降り口は、左側です。この駅には駅係員がおります。ヤマサ醤油へは、こちらでお降りください。ホームが段差となっておりますので、お降りの際はお気をつけください。次は仲ノ町、『パールショップともえ』仲ノ町に停車致します〕
車掌:「ありがとうございました」
愛原:「どうも……」
車掌から乗車券を買うと、それは車内補充券と呼ばれる。
最近のはレシートみたいな紙質なのだが、これは昔ながらのヤツだ。
斉藤:「初めて見るキップね……。Suicaは使えないの?」
愛原:「一気に昭和にタイムスリップだな」
これでますます旅情が高まった。
乗り換えはちょっと大変だったが、その甲斐はあったようだ。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は慰安旅行で、犬吠埼へ向かっているところだ。
私達を乗せた特急“しおさい”5号は、定刻通りに運行している。
総武本線をひたすら進む電車で、東京駅を出発後、千葉駅までの複々線区間では黄色い各駅停車を何本も追い越し、千葉駅からは複線区間となり、それでもまだベッドタウンといった風景の中を進む。この複線区間は佐倉駅まで続く。
佐倉駅から先は単線となるが、見た目には隣にもう一本線路が並行しているので、まだ複線が続くという錯覚になってしまうが、これは分岐する成田線の線路。成田空港へ向かう“成田エクスプレス”は、そちらを通るというわけだ。
一方、私達の方はローカルチックな雰囲気の中、別方向に向かう。
尚、終点の銚子駅の1つ手前の松岸という駅で別の線路が合流して来るが、これは成田線の線路。
ん?何かおかしいかな?
成田線という路線は微妙に複雑な構造らしくてね、成田空港へ向かう方が支線で、こっちの再び総武本線に合流して来る方が本線なんだって。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、銚子です。お出口は、左側です。銚子電鉄線は、お乗り換えです。……〕
愛原:「因みに松岸駅の周辺には、日蓮正宗の末寺さんがあります」
高橋:「え、何ですか?」
愛原:「いや、何でもない。そろそろ降りる準備をしないとな」
高野:「どうせ終点なんだから、慌てなくても……」
愛原:「随分、ゴミを出したなぁ。片付けるの大変だぞ」
高野:「取りあえずまとめて、駅のゴミ箱にでも捨てておきましょう」
愛原:「そうだな」
高野:「あなた達も降りる準備しなさい」
リサ:「はーい」
斉藤:「はーい」
〔「……お乗り換えのご案内です。銚子電鉄線をご利用のお客様は、階段を上りまして、銚子電鉄線乗り場から発車致します。今度の各駅停車、外川行きは15時54分の発車です。……」〕
愛原:「乗り換え、超余裕」
高野:「さすがはローカル線ですね」
こうして特急“しおさい”5号は定刻通りに銚子駅に到着した。
特急列車らしく、1番改札口に近い1番線に到着したのだが、銚子電鉄に乗り換えたい客はちょっと不便だ。
何故なら……。
清掃員:「ご乗車ありがとうございましたー。ゴミはこちらへどうぞー」
愛原:「あ、そうか!」
新幹線でもそうだが、特急でも終点で折り返す電車では清掃員が待機していて、それまで乗って来た客のゴミをドアの横で受け取るようなことをしているのだ。
そこはラクで助かったのだが……。
愛原:「銚子電鉄はどこだ?」
高橋:「反対側のホームに向かった先らしいです」
愛原:「なっにー!?」
乗り換えに余裕はあるのだが、こういう罠もあるわけか。
1番線は特急と一部の普通列車が発着し、反対側の2番線は総武本線普通の大半、そしてその隣の3番線は成田線普通の大半が発着する。
要は1面2線の駅ってことだ。
で、銚子電鉄はというと……。
愛原:「ん?あれか?」
私が跨線橋を渡っている時、そこから見えた小屋っぽいもの。
で、その先にある切り欠きホーム。
高橋:「そのようですね」
なるほど。
あそこでJRのキップは回収され、改めて銚子電鉄線のキップを買えということか。
尚、連れのJC2人は元気良くさっさと先に行ってしまう。
因みにリサはショートパンツから先の生足が目立つ。
斉藤さんがスカートながら、下にレギンスを穿いているのとは大違いだ。
BOW(Bio Organic Weapon)はこのくらいの寒さは「寒さ」に該当しないらしい。
愛原:「まださすがに電車は来てないか」
高橋:「そうですね。俺が呼びに行きましょうか?」
愛原:「ああ、そうだな。……って、おい!」
高橋:「え?何ですか?」
愛原:「何で電車を呼びに行くんだよ!?」
高橋:「何ですか?」
愛原:「タクシーを呼ぶのと違うんだよ!どうせ折り返しの電車が来るだろう!」
高橋:「はあ……」
しかし、小屋みたいなものは待合室だった。
改札口みたいなものもあったが、そこに駅員はいなかったし、だいいち券売機の類すら無い。
一体、どうなっているのやら……。
斉藤:「海の匂いがする」
愛原:「はは、そりゃもうこの時点で海は近いからね。これからもっと海に近づく為に、電車を乗り換えるってわけさ」
私は斉藤さんにそう答えた後で続けた。
愛原:「実家が埼玉じゃ、なかなか海に行く機会は無いでしょう?」
斉藤:「いや、そんなことないですよ。この前の夏休み……まだリサさんが転校してくる前は、ニュージーランドまで行って来ましたから」
愛原:「……東北ニュージーランド村?」
斉藤:「と、東北!?いえ、ニュージーランドですよ?」
彼女は大製薬会社の代表取締役の御嬢様であった。
格の差というか、貧富の差を見せつけられる。
[同日15:54.天候:晴 千葉県銚子市 銚子駅・銚子電鉄線ホーム→銚子電鉄2000形電車先頭車内]
発車の10分前には折り返しの電車がやってきた。
全身緑色に塗られていたので私は東急電鉄の車両をイメージしてしまったが、そうではなく、元々は京王電鉄の車両だったらしい。
それが四国の伊予鉄道に譲渡され、そして銚子電鉄に引き取られて今に至るとのこと。
フロント部分にはワンマンの表示がしてあったが、どうもそうではなく、車掌が乗るようだ。
で、発車する時にはちゃんとホームに発車ベルが流れる。
車掌は女性で、何故か前部運転台に運転士の横に立って、そこからホームを監視してドア扱いをしていた。
ドアチャイムのピンポンピンポンの音色は確かに京王っぽい。
〔発車します。ご注意ください〕
すぐ横に運転士がいるというのに、車掌はわざわざ発車合図のブザーを押している。
こんなといったら失礼だが、ローカル鉄道でもちゃんと運転取扱規則を厳守している所は日本で感じだ。
〔お待たせ致しました。この電車は下り、外川行き、ワンマン電車です。……〕
車掌:「乗車券をお持ちでない方、いらっしゃいますかー?」
すぐに車掌が改札にやってくる。
なるほど。
運転要員というよりは、特別改札要員としての役割の方が大きいのかな。
私達はすぐに申し出た。
〔……次は仲ノ町、仲ノ町。『パールショップともえ』仲ノ町でございます。降り口は、左側です。この駅には駅係員がおります。ヤマサ醤油へは、こちらでお降りください。ホームが段差となっておりますので、お降りの際はお気をつけください。次は仲ノ町、『パールショップともえ』仲ノ町に停車致します〕
車掌:「ありがとうございました」
愛原:「どうも……」
車掌から乗車券を買うと、それは車内補充券と呼ばれる。
最近のはレシートみたいな紙質なのだが、これは昔ながらのヤツだ。
斉藤:「初めて見るキップね……。Suicaは使えないの?」
愛原:「一気に昭和にタイムスリップだな」
これでますます旅情が高まった。
乗り換えはちょっと大変だったが、その甲斐はあったようだ。