報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「タイラントから逃げろ」

2019-02-17 19:12:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月20日12:00.天候:曇 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠・旧館1F→B1F]

 2個目のメダルを台座に嵌め込むと、今度は鉄格子が開いた。
 その先には扉があるが、鍵が掛かっている。
 しかも鍵穴も閂も無い。
 どうやら3個目のメダルを嵌めて、やっと扉が開く仕掛けのようだ。

 高橋:「先生!」

 エレベーターのドアをこじ開けて、そいつは姿を現した。

 タイラント:「…………」

 身長はざっと2mはある。
 顔はまるで石膏像のように白く、眉毛などは生えていない。
 ただ、灰色の瞳をこちらに向けるだけ。
 表情も全く変えず、無表情のまま。
 そして、一言も喋らない。
 ドスッドスッと足音を立てて、私達の所へ歩いて来る。

 愛原:「逃げるぞ高橋!」
 高橋:「はい!」

 私達はタイラントから逃げた。
 奴は走って追い掛けて来ることは無かった。
 ただ大股に歩いて向かって来る。
 大柄な体と革靴から発せられる足音が不気味だ。
 ゾンビと違うのは、奴らはドアをブチ破ることしかできないが、タイラントは鍵の掛かっていないドアは普通に開けて出入りできる知能は持ち合わせているということだ。

 高橋:「先生、電気室はどこですか!?」
 愛原:「さっきのトイレのもっと奥の階段だ!」

 私は途中にある防火戸を閉めた。
 トイレを探索する前、隙間風で何かの呻き声に聞こえたあの防火扉だ。

 タイラント:「…………」

 重厚な防火戸ではあったが、鍵は付いていない。
 タイラントにとってはただの衝立程度のもので、片手で簡単に開けてきた。
 だから、ほんの一瞬の足止めにしかならなかったわけだ。

 愛原:「あっちだ」
 高橋:「はい!」

 大浴場に行く途中に非常階段があり、私達はその階段室に飛び込んだ。
 普段使いはしていなかったのか、階段室側から内鍵を掛けられるようになっていた。
 私達はその内鍵を閉めた。
 そして、地下1階への階段を駆け下りた。

 ガチャガチャ!……ドン!ドンドンドン!!

 愛原:「ヤバい!タイラントがドアをブチ破ろうとしてる!」
 高橋:「急いで電気室に!」

 私達は電気室までやってきた。
 しかし、ここも鍵が掛かっていた。
 これもフロントで手に入れたマスターキーで解錠した。
 そして中に入ると、また鍵を掛けた。

 愛原:「よし、これでしばらくは大丈夫だろう」

 タイラントは私達がここに入った所を見ていない。

 高橋:「何で俺達を追うんですかね?」
 愛原:「タイラントにとっては、俺達は侵入者だからな。それも、旧アンブレラの秘密施設を探そうって賊だ。そういう奴らがいたら殺せと命令されているんだろう。リサの方が上位種みたいだから、リサがいれば言う事聞かせられるんだがな」
 高橋:「今更無理ですよ」
 愛原:「まあな。とにかく、早いとこメダルを探そう」
 高橋:「はい」

 見取り図によると、メダルのある場所は……。

 愛原:「自家発電機の上らしいな」

 と、その時だった。
 ドンドンドンと階段を駆け下りて来る足音が聞こえて来た。

 高橋:「先生!」
 愛原:「シッ!」

 私は静かにドアの所へ移動した。
 そして電気室内の電気を消す。
 非常階段の僅かな非常灯の明かりだけが、うっすらとドアの隙間から差し込んでくるだけだ。

 ガチャガチャガチャ!

 愛原:「!!!」
 高橋:「!!!」

 ドンドンドン!!

 愛原:「…………」

 慌てるな。
 ヤツにはここに入ったことを見られていない。
 恐らく下から順に探すつもりなのだろう。
 リサが前に言っていた。
 タイラントは人の気配を敏感に感じ取って、その対象者をいつまでも追い掛けるのだと。
 ということは、気配を消して、それを感じ取られなければ大丈夫だ。
 すると、しばらくして階段を登る音が聞こえて来た。
 どうやら助かったようだ。
 私は再び室内の照明を点灯した。

 愛原:「よし、上手いこと撒いたようだ」
 高橋:「さすが先生です」
 愛原:「“クロックタワー”シリーズの主人公になった気分だな。えーと……自家発電機はどこだ?」
 高橋:「あれです、先生」
 愛原:「おおっ」

 しかし大きな発電機だ。
 高さはタイラントくらい……いや、それより少し高いくらいだ。

 愛原:「さて、どうやって上に上がる?」
 高橋:「脚立がありました」

 高橋が脚立を持って来た。

 愛原:「やっぱり用意されていたか」

 私は脚立を登って、自家発電機の上を見た。

 愛原:「ああ、あった」

 埃被っていたが、間違い無く今まで入手したメダルと同じものであった。

 愛原:「よし。これであの隠し通路の仕掛けが解けるぞ!早いとこ戻ろう!」
 高橋:「はい!」

 高橋は電気室のドアをそっと開けて、外の様子を伺った。

 高橋:「先生、大丈夫です。ヤツはいません」
 愛原:「よし。まだ近くにいるかもしれないから、別のルートを通って行こう」
 高橋:「別のルート?」
 愛原:「2階から行くんだ」

 私達は非常階段を2階に向かって昇った。
 途中、無残に壊された1階の階段室扉が踊り場に転がっていた。
 一応試しに、その階段室から1階の廊下を覗いてみる。

 愛原:「!!!」

 そして、すぐに顔を引っ込めた。

 高橋:「どうしました!?」
 愛原:「タイラントの後ろ姿だよ」
 高橋:「マジっスか!」

 やはりタイラントは1階にいたようだ。
 どうやら私の『2階から行った方が良い作戦』は利口のようだな。
 どうして2階から行こうとしたのかというと、あのエントランスホールには2階に上がる吹き抜け階段があったからだ。
 つまり、2階から行ってあの吹き抜け階段を下りても良いということだな。
 私達は2階に出ると、そこからエントランスホールに向かった。
 2階は1階や5階よりも荒れていて、あちこちガラスが割れ、その破片が散乱していた。
 こっちは靴を履いているから、それを踏んだくらいでケガすることは無いのだが、踏むとどうしてもガラスがパリッと割れ、それをタイラントが聞きつけて追い掛け来そうな恐怖感があった。

 愛原:「あっ!」

 そしてエントランスホールまで来た時、私は絶望した。

 高橋:「マジかよ……」

 何があったと思う?

 1:タイラントが待ち構えていた。
 2:ゾンビが5〜6匹ほど徘徊していた。
 3:別のクリーチャーが待ち構えていた。
 4:彫像が倒れていた。
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“私立探偵 愛原学” 「タイラント」

2019-02-17 10:21:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月20日12:00.天候:曇 千葉県銚子市 ニューグランドホテル犬吠・旧館1F]

 フロントの中に入って、今度はホテル旧館の見取り図を手に入れた。
 但し、地下階以下については書かれていない。
 私がわざわざこれを手に入れた理由は、この見取り図に色々と書き込まれていたからだ。
 誰が書き込んだかは分からない。
 驚くべきことに、裏面は白紙なのだが、そこにも手書きの見取り図が書かれていたのだ。
 私が興味を持ったのは、むしろそこ。
 明らかにエントランスロビーに鎮座する銅像の仕掛けのことが書いてある。
 あの隠し通路から先のことが手書きの図解入りで書かれていたのだ。
 どうやら下に降りる階段があり、その先にエレベーターがあって、更に下に降りるようだ。
 しかしその先の空間については『?』と書かれており、これを書いた人はその先に何があるのかまでは分からなかったようだ。
 そしてその先にまた階段があり、そこから矢印で外に出るようなことが書かれており、最後には『Way out』(脱出路)と書かれていた。
 書いたのはホテル従業員だろうか?
 もし旧アンブレラ・ジャパンが秘密施設を作っていたのなら、ホテル従業員も知らないかもしれない。

 高橋:「このホテルで何かあったのかもしれませんね」
 愛原:「かもな」

 それを新館のホテルスタッフに聞くのは困難だろう。
 今、新館を運営している会社は、この旧館や新館がリニューアルされる前の本館時代とは別会社だからだ。
 旧・運営会社の社員は倒産と同時に解雇されており、新会社が運営を再開するまでの間、数年間のブランクがある。
 昔から働いていた旧社員を再雇用はしていないそうで、今新館で働いている従業員達もリニューアル後に採用された人達ばかりだから全く知らないと思われる。

 愛原:「とにかくメダルの在り処は、ここに書かれているんだ。これで行こう」
 高橋:「はい」

 幸い、電気は止まっていない。
 フロントの奥にある事務所にエレベーター監視盤があり、これでエレベーターを起動させた。
 だが、ここでは隠し通路の先にあるというエレベーターの監視盤らしきものは見当たらなかった。
 一応、起動スイッチに使う小さな鍵はあったので、これを持って行くことにした。
 あとは客室のドアを開けるマスターキー。
 ゲームではこんなものはヒントから探す必要があるが、現実にはある所にはあるものだ。

 愛原:「よし、行こう」
 高橋:「はい」

 まずは客室上階にあるメダルを探すことにした。
 しかし、何でそんなものが客室にあるのだろう。
 ほぼ旧アンブレラ・ジャパンが専有していたような旧館であったとはいえ、随分好き勝手なことをしたものだ(もっとも、テナントビルを丸ごと一棟専有する企業というのは、その特権を利用して色々と飾るのがセオリーだが)。
 エレベーターは新館にあるものと違って古い。
 何て言えばいいかな……。
 地方の古いショッピングセンター辺りで、リニューアルされていない昭和時代の古いエレベーターを見たことは無いだろうか?
 あんな感じと言えばいいかな。
 新館のエレベーターは外が見えないタイプのものだったが、こっちは意外なことに外が見えるタイプのエレベーターだった。
 もっとも、外側のガラスが割れていたり、ガラス自体か汚れていたりと、全く見栄えは良くない。
 また、外側のガラスが割れているということは、ヘタすりゃ海水が中に入り込むということだから、こうして稼働していること自体が不思議なのかもしれない。
 いつ壊れて動かなくなるか分からないので、そう何度も乗っていられないな。

 高橋:「着きました」
 愛原:「うん」

 旧館最上階の5階に着くと、エレベーターのドアがガタガタ言いながら開いた。
 やっぱり、そう何度も乗れる状態じゃないか。
 隠し通路から先にあるヤツは大丈夫なんだろうな?
 あの見取り図だと、エレベーターしか無いような書き方になっているが……。
 5階は思ったほど荒れてはおらず、割れた窓ガラスなどは無かった。
 こういうのは上の階に行くほど安全なのだろうか?
 火災の時は上の階ほど危険なんだけどな。
 さすがに火災は発生しなかったようで、今まで探索した箇所で焦げ跡のようなものは無かった。

 高橋:「場所は?」
 愛原:「501号室だ。すぐそこだな」

 行ってみると、明らかに鍵が掛かっていた。
 事務室から持って来たマスターキーで解錠した。
 入ってみると、そこはスイートルームのようだった。
 
 愛原:「見取り図によると、あそこに額縁があって……」

 だが、さすがにそれは壁から外れて落ちていた。
 どうやら、絵画の中に紛れ込んでいたらしい。
 落ちた額縁は壊れていたが、その下にメダルがあった。

 愛原:「よし、これで2個目」
 高橋:「さすがです。あと1個は?」
 愛原:「地下階だな。さっきの機械室とは別に、電気室があるらしいぞ」

 そこが無事だったので、停電せずに済んでいたのだろう。

 愛原:「よし、もう1度下に降りるぞ」
 高橋:「はい」

 私達は部屋から出ると、もう1度エレベーターに向かった。
 どういうわけだか、エレベーターは下に降りてしまっていた。
 ボタンを押すと、さっき乗って来たのとはもう片側の方がスーッと昇って来る。
 そろそろ来るとなった時、背後でガラスの割れる音が聞こえた。

 愛原:「!?」
 高橋:「!」

 廊下の窓ガラスでは無い。
 少し遠くから聞こえて来た感じなので、どこか部屋の窓ガラスが割れたのかもしれない。
 しかし、どうしてだ?

 高橋:「エレベーター来ました」
 愛原:「ああ」

 エレベーターに乗り込み、1階のボタンを押す。
 そして、閉めるボタンを押そうとした時だった。

 愛原:「!!!」

 奥の部屋のドアがバァンとこじ開けられて、中から誰かが出て来た。
 私は咄嗟に閉めるボタンを押した。
 さっき乗った方のと同様、こちらもガタゴト言いながらドアが閉まったが、閉まる直前、こっちに向かって来るヤツと私は目があった。

 愛原:「た、高橋、今の見たか?」
 高橋:「ゾンビですかね?」
 愛原:「違う!とんでもないヤツに見つかったかもしれないぞ!」

 それは黒い中折れ帽を被って、黒いロングコートを羽織っていた。
 確か、あれは……。

 愛原:「タイラント!タイラントだ!」
 高橋:「タイラント!?しかし、霧生市でリサが連れていたヤツとは違うようでしたが……」
 愛原:「タイラントにも色々なタイプがあるんだ。早いとこ隠し通路を開放しないとマズいことになりそうだ」

 その通りだった。
 エレベーターで1階に向かっている間、何だか上からドンドンと強く叩く音が聞こえて来たのだ。
 あれは恐らくエレベーターのドアをこじ開けるか、ブチ破ろうとしている音。
 そして1階に着くと同時に、今度は天井から衝撃が伝わって来た。

 高橋:「先生!」
 愛原:「先にこのメダルを置いてから電気室に行くぞ!早く!」
 高橋:「はい!」

 ゾンビや他のクリーチャーはいなかったが、タイラントはいた!?
 リサを連れて来れば良かったかなぁ!?
コメント (12)
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