[11月20日00:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
ホテルのフロントに座るエレーナ。
宿泊客が来ると席を立って接客する。
宿泊客:「はぁー、やっと着いた……」
エレーナ:「いらっしゃいませ。本日は御到着、真にお疲れさまでございます」
稲生達に接する時とはまるで別人のように、恭しく宿泊客を出迎える。
宿泊客:「おや、外人さんが……」
エレーナ:「はい。でもこの通り、日本語は分かりますので」
宿泊客:「なるほど。今日から2泊する予約を入れていた者です」
エレーナ:「かしこまりました。それではこちらにご記入を……」
その時、エレベーターのドアが開いた。
そこから降りて来たのはリリアンヌ。
何かエレーナに用があって来たのは分かるが、エレーナはそれを目で制した。
今は接客中だから、少し待てと。
エレーナ:「はい。ありがとうございます。それでは宿泊料金は前金で頂いております。お支払い方法は如何なさいますか?」
宿泊客:「カードで」
エレーナ:「かしこまりました。それでは、こちらに暗証番号を……」
リリアンヌはスススッとロビーのソファに移動した。
今はTシャツにショートパンツと、とても見習魔女には見えない恰好をしている。
エレーナ:「ありがとうございます。それではお部屋の方が、3階の301号室をお取りしてございます。あちらのエレベーターをご利用下さいませ」
宿泊客:「ありがとう」
エレーナ:「ごゆっくりお過ごし下さいませ」
宿泊客がエレベーターの方を振り向く際、ロビーのソファを見ることになる。
そこに幽霊みたいに座っているリリアンヌを見てびっくりするのだった。
宿泊客:「! いつの間に……!?」
リリアンヌ:「……あ、はい。さっきからいましたけど……」
エレーナは素で日本語を話すが、リリアンヌは話せないので、自動通訳魔法具を使うことになる。
宿泊客:「あ、いや、これは失礼……」
そう言ってエレベーターに乗っていった。
エレーナ:「リリィ、ダメじゃねーか。お客をびっくりさせちゃ」
リリアンヌ:「フヒッ!ご、ごめんなさい……!」
エレーナ:「で、何の用だぜ?」
リリアンヌ:「魔界から帰って来たんですが、先輩の部屋の鍵が開いていなかったので……」
エレーナ:「ああ、そういや鍵掛けたままだったな。ほら、鍵」
リリアンヌ:「あ、ありがとうございます。お先に休ませて頂きます……」
エレーナ:「ちょっと待て」
リリアンヌ:「フヒッ!?な、なな、何でしょう?」
エレーナ:「オマエ、まだ学校あんだろ?こんなド平日に帰って来てどうするんだ?」
ダンテ一門の最近作られた門規の中に、『高等教育以上の教育を受けた者以外は中等教育を修了させるものとする。但し、この門規が設定された時点においてマスター(一人前)と認められている者を除く』というものがある。
リリアンヌは入門時、初等教育すら修了していなかった。
それを修了してから見習として入門したのである。
中等教育は魔界の寄宿制の学校に通っている。
別に魔法学校というわけでもなく、魔界の子弟が通う普通の中学校だ。
但し、寄宿制でもある。
基本的には金帰月来という形を取っている。
即ち、金曜日に学校を終えたら土日は家に帰り、再び月曜日からまた寮に戻って学校に通うというものだ。
リリアンヌ:「ポーリン先生が、『今日からイリーナ組が東京に滞在する。奴らの計画に不備が無いかどうか確認せよ』とのことです」
エレーナ:「私じゃなくてリリアンヌにやれって?」
リリアンヌ:「エレーナ先輩はホテルの仕事が忙しいから無理だろうとのことです……」
エレーナ:「いや、そりゃまあ確かにヒマじゃねーけどさ!」
リリアンヌ:「イリーナ先生方はお泊りですか?」
エレーナ:「そこはうちの先生の仰る通りだぜ」
リリアンヌ:「イリーナ先生方はいつ頃出発されると?」
エレーナ:「そこは聞いてねぇ。別にモーニングコール頼まれたわけじゃないし」
リリアンヌ:「あう……」
エレーナ:「いいから私に任せとけって。なぁ?ま、もう夜も遅いし、今夜だけは泊まらせてやるぜ。私から先生には言っておくから、明日はちゃんと学校に行くんだぜ?低学歴魔女エレーナ先輩からの忠告だ」
リリアンヌ:「ありがとうございます……」
リリアンヌはそう言うと、エレーナからもらった鍵を手に地下室へ向かって行った。
エレーナ:(いくらイリーナ先生のことが嫌いだからって、ちょっと気にし過ぎだと思うな。明日になったら、私から連絡しておくか)
その時、奥の事務室からオーナーが出て来た。
オーナー:「エレーナ、仮眠の時間だよ」
エレーナ:「ありがとうございます。本日のお客様は全てチェックインされました」
オーナー:「そうかい」
エレーナ:「あと急きょ、私の部屋に後輩が一泊しますので、よろしくお願いします」
オーナー:「そうなのか。分かったよ。ちゃんと面倒看てあげるんだよ」
エレーナ:「もちろんです。それじゃ、仮眠入ります」
オーナー:「うん」
エレーナはオーナーに業務を引き継いでもらうと、自分もまたエレベーターで地下に降りた。
使用後はエレベーター鍵を抜いておく。
そうすることで宿泊客が間違って地下階に下りないようにしているのである。
エレーナ:「リリィ」
エレーナが部屋に入ると、ぱっと見、リリアンヌはいなかった。
しかしシャワールームから水の音がするところを見ると、どうやらシャワーを使っているようだ。
エレーナ:「しゃあねぇ。明日の準備しておくか」
仮眠後の着替えなどを用意し、稲生達の明日の行動を占って、結構遅めに出発することが分かった。
エレーナ:「私の夜勤明けの直前みたいだな。これなら夜勤明けでも追い掛けられるだろう」
それからシャワールームからバスタオル1枚だけ巻いた状態で、リリアンヌがでてきた。
エレーナは後輩に早く服を着るよう命じると、自分もシャワールームを使うことにした。
ホテルのフロントに座るエレーナ。
宿泊客が来ると席を立って接客する。
宿泊客:「はぁー、やっと着いた……」
エレーナ:「いらっしゃいませ。本日は御到着、真にお疲れさまでございます」
稲生達に接する時とはまるで別人のように、恭しく宿泊客を出迎える。
宿泊客:「おや、外人さんが……」
エレーナ:「はい。でもこの通り、日本語は分かりますので」
宿泊客:「なるほど。今日から2泊する予約を入れていた者です」
エレーナ:「かしこまりました。それではこちらにご記入を……」
その時、エレベーターのドアが開いた。
そこから降りて来たのはリリアンヌ。
何かエレーナに用があって来たのは分かるが、エレーナはそれを目で制した。
今は接客中だから、少し待てと。
エレーナ:「はい。ありがとうございます。それでは宿泊料金は前金で頂いております。お支払い方法は如何なさいますか?」
宿泊客:「カードで」
エレーナ:「かしこまりました。それでは、こちらに暗証番号を……」
リリアンヌはスススッとロビーのソファに移動した。
今はTシャツにショートパンツと、とても見習魔女には見えない恰好をしている。
エレーナ:「ありがとうございます。それではお部屋の方が、3階の301号室をお取りしてございます。あちらのエレベーターをご利用下さいませ」
宿泊客:「ありがとう」
エレーナ:「ごゆっくりお過ごし下さいませ」
宿泊客がエレベーターの方を振り向く際、ロビーのソファを見ることになる。
そこに幽霊みたいに座っているリリアンヌを見てびっくりするのだった。
宿泊客:「! いつの間に……!?」
リリアンヌ:「……あ、はい。さっきからいましたけど……」
エレーナは素で日本語を話すが、リリアンヌは話せないので、自動通訳魔法具を使うことになる。
宿泊客:「あ、いや、これは失礼……」
そう言ってエレベーターに乗っていった。
エレーナ:「リリィ、ダメじゃねーか。お客をびっくりさせちゃ」
リリアンヌ:「フヒッ!ご、ごめんなさい……!」
エレーナ:「で、何の用だぜ?」
リリアンヌ:「魔界から帰って来たんですが、先輩の部屋の鍵が開いていなかったので……」
エレーナ:「ああ、そういや鍵掛けたままだったな。ほら、鍵」
リリアンヌ:「あ、ありがとうございます。お先に休ませて頂きます……」
エレーナ:「ちょっと待て」
リリアンヌ:「フヒッ!?な、なな、何でしょう?」
エレーナ:「オマエ、まだ学校あんだろ?こんなド平日に帰って来てどうするんだ?」
ダンテ一門の最近作られた門規の中に、『高等教育以上の教育を受けた者以外は中等教育を修了させるものとする。但し、この門規が設定された時点においてマスター(一人前)と認められている者を除く』というものがある。
リリアンヌは入門時、初等教育すら修了していなかった。
それを修了してから見習として入門したのである。
中等教育は魔界の寄宿制の学校に通っている。
別に魔法学校というわけでもなく、魔界の子弟が通う普通の中学校だ。
但し、寄宿制でもある。
基本的には金帰月来という形を取っている。
即ち、金曜日に学校を終えたら土日は家に帰り、再び月曜日からまた寮に戻って学校に通うというものだ。
リリアンヌ:「ポーリン先生が、『今日からイリーナ組が東京に滞在する。奴らの計画に不備が無いかどうか確認せよ』とのことです」
エレーナ:「私じゃなくてリリアンヌにやれって?」
リリアンヌ:「エレーナ先輩はホテルの仕事が忙しいから無理だろうとのことです……」
エレーナ:「いや、そりゃまあ確かにヒマじゃねーけどさ!」
リリアンヌ:「イリーナ先生方はお泊りですか?」
エレーナ:「そこはうちの先生の仰る通りだぜ」
リリアンヌ:「イリーナ先生方はいつ頃出発されると?」
エレーナ:「そこは聞いてねぇ。別にモーニングコール頼まれたわけじゃないし」
リリアンヌ:「あう……」
エレーナ:「いいから私に任せとけって。なぁ?ま、もう夜も遅いし、今夜だけは泊まらせてやるぜ。私から先生には言っておくから、明日はちゃんと学校に行くんだぜ?低学歴魔女エレーナ先輩からの忠告だ」
リリアンヌ:「ありがとうございます……」
リリアンヌはそう言うと、エレーナからもらった鍵を手に地下室へ向かって行った。
エレーナ:(いくらイリーナ先生のことが嫌いだからって、ちょっと気にし過ぎだと思うな。明日になったら、私から連絡しておくか)
その時、奥の事務室からオーナーが出て来た。
オーナー:「エレーナ、仮眠の時間だよ」
エレーナ:「ありがとうございます。本日のお客様は全てチェックインされました」
オーナー:「そうかい」
エレーナ:「あと急きょ、私の部屋に後輩が一泊しますので、よろしくお願いします」
オーナー:「そうなのか。分かったよ。ちゃんと面倒看てあげるんだよ」
エレーナ:「もちろんです。それじゃ、仮眠入ります」
オーナー:「うん」
エレーナはオーナーに業務を引き継いでもらうと、自分もまたエレベーターで地下に降りた。
使用後はエレベーター鍵を抜いておく。
そうすることで宿泊客が間違って地下階に下りないようにしているのである。
エレーナ:「リリィ」
エレーナが部屋に入ると、ぱっと見、リリアンヌはいなかった。
しかしシャワールームから水の音がするところを見ると、どうやらシャワーを使っているようだ。
エレーナ:「しゃあねぇ。明日の準備しておくか」
仮眠後の着替えなどを用意し、稲生達の明日の行動を占って、結構遅めに出発することが分かった。
エレーナ:「私の夜勤明けの直前みたいだな。これなら夜勤明けでも追い掛けられるだろう」
それからシャワールームからバスタオル1枚だけ巻いた状態で、リリアンヌがでてきた。
エレーナは後輩に早く服を着るよう命じると、自分もシャワールームを使うことにした。