[1月3日07:00.天候:晴 静岡県富士宮市 富嶽温泉花の湯・客室]
枕元に置いたスマホが朝7時を告げる。
愛原:「うーん……」
私は手を伸ばしてアラームを止めた。
もう朝か……。
閉めたカーテンの隙間からは朝日が差し込んでいる。
愛原:「……あれ?」
私は首を傾げた。
もう7時だ。
いつもの起きる時間。
えっと……。
愛原:「おい、高橋、起きろ」
私は隣のベッドに寝ている高橋を起こした。
さすがに言い付けを守って、私のベッドの中に入って来ることは無かったようだ。
私は異変を感じていた。
異変というか、違和感だな。
しかし、高橋は起きない。
そこで私は……。
愛原:「総員、起床!」
高橋:「!!!」
私が少年刑務所の刑務官のモノマネをやると、高橋がバッと飛び起きた。
愛原:「番号!」
高橋:「いーち!!」
愛原:「異常なーし!」
こりゃ本当にガチで高橋のヤツ、少年刑務所への収監歴アリだな。
高橋:「あれ、先生?」
愛原:「やっと起きたか。もう7時だぞ」
高橋:「サーセン。……7時!?」
愛原:「そうなんだ」
そうなんだ。
東北の旅行は一体何だったのかと思うくらい、昨夜は何も無かった。
いや、これが普通ではあるのだが……。
高橋:「ガチで何も無かったと?」
愛原:「そのようだ。また、ハンターだの餓鬼だのタイラントだのと戦うくらい覚悟していたんだが……」
その為、高橋のベッドの枕元には彼愛用のマグナムが置かれている。
一応、私もベッドの下にショットガンを隠していた。
襖の向こうの和室で寝ている高野君も、ライフルを横に置いて寝たはずだ。
高橋:「外で異変が起きてるのかもしれませんよ?顕正号に乗り込んだ時も、最初に異変に気付いたのは客室の外でしたから」
愛原:「そうなのか」
それにしても、相変わらず私は顕正号に乗り込んだ記憶しか無い。
日本の船会社が所有・運航していた豪華客船、顕正号。
姉妹船、正信号と共に船内でバイオハザードが発生し、顕正号は海の藻屑と化したという。
私は乗り込んだ時の記憶まではあるのだが、そこから先の記憶が全くないのだ。
せめてフラッシュバックでもいいから、何か思い出せないかとは思うのだが……。
愛原:「ちょっと窓の外を見てみるぞ?」
高橋:「はい」
私はカーテンの隙間から、窓の外を覗いた。
愛原:「何も無いな」
外を見てもゾンビが歩いていたり、ハンターが歩いていたりすることはなかった。
普通の地元民らしき人が歩いていて、普通に車が走っていた。
高橋:「廊下とかは?」
私はそっとドアを開けて、廊下を見てみた。
廊下は静かなもので、歩いている人は見かけなかったが、廊下には琴の音色のBGМが流れており、正月であることを示唆している。
とてもバイオハザードが発生しているとは思えない。
もしそうなら、こういう感じであっても、それらしい気配はするものだ。
例えばクリーチャーはよく呻き声とか、叫び声を上げたりするのだが、もし異変が発生しているのなら、その声が聞こえてきたりすることが多い。
それが全く無かった。
愛原:「……大丈夫だな」
高野:「どうしました、先生?」
愛原:「おっと!」
そこへ高野君が話し掛けてきた。
愛原:「昨夜は何も無かったか?」
高野:「無かったですね。良かったですよ」
愛原:「そ、そうだな。考え過ぎか」
高橋:「はい……」
愛原:「リサ達は?」
高野:「まだ寝てますよ」
愛原:「そろそろ起こそう」
高野:「朝風呂はどうします?」
愛原:「昨日、2回も入ったからいいや」
それに、起き掛けで体内の血液がドロドロの状態で入浴するのは、本来ダメらしい。
愛原:「顔だけ洗ってくるよ」
高橋:「お供します!」
高野:「それじゃ、私はリサちゃん達を起こして来ますね」
愛原:「ああ、頼むよ」
[同日08:00.天候:晴 同施設内・レストラン]
宿泊者向けに朝食バイキングのサービスがある。
高橋:「先生、御飯と焼き鮭です」
愛原:「ありがとう」
高野:「朝は和食なんですか?」
愛原:「気分次第だな。今日は和食の気分だ」
リサに昨夜何か無かったか聞いたが、リサも何も無かったと答えるだけだった。
逆に昼間に事件があったので、夜間何も無かったのか?いやいや……。
高野:「先生。今日はどこに行きます?」
愛原:「そうだな……。休暇村にでも……ん?」
その時、私のスマホに着信があった。
相手は善場氏からだ。
彼女らは正月休み返上なのだろうか。
愛原:「はい、もしもし?」
善場:「愛原所長、おはようございます」
愛原:「おはようございます」
善場:「今日は何かご予定がありますか?」
愛原:「いえ、今のところこれとは……」
善場:「それなら、もし宜しかったら、私達の調査に同行してみませんか?」
愛原:「調査に同行って、いいんですか?」
善場:「ええ。むしろ霧生市のバイオハザードの生存者の方に来て頂いた方が、こちらとしても好都合ですので」
愛原:「別にいいですよ。私達で良かったら、協力します」
善場:「ありがとうございます。今宿泊している所は、本日チェックアウトされますか?」
愛原:「ええ。それで今日中に東京へ帰る予定です」
善場:「分かりました。そのホテルのチェックアウトの時間が10時のようですので、その時にお迎えに上がります」
愛原:「分かりました。では、その時に……。昨日の駐車場に行けばいいですか?……わかりました。それでは」
私は電話を切った。
愛原:「次の行き先が決まったぞ。といっても、現時点ではまだどこかとは言われてないけど」
私は今の電話の内容を皆に話した。
高野:「未だに霧生市のバイオハザードの調査は続けられてるんですね」
愛原:「日本で唯一、それで廃墟になった町だからな」
高橋:「俺達にしかできない頼み事って何なんスかね?」
愛原:「分からんが、ゾンビを倒せとかではないだろうな」
もしかしたら、私達をダシにして、リサに用事があるのかもしれない。
……と思ったが、善場氏ならそんな面倒なことはしないだろう。
リサに用があるのなら、そうだとハッキリ言うはずだ。
とにかく10時に合流したら、その時に分かるだろう。
枕元に置いたスマホが朝7時を告げる。
愛原:「うーん……」
私は手を伸ばしてアラームを止めた。
もう朝か……。
閉めたカーテンの隙間からは朝日が差し込んでいる。
愛原:「……あれ?」
私は首を傾げた。
もう7時だ。
いつもの起きる時間。
えっと……。
愛原:「おい、高橋、起きろ」
私は隣のベッドに寝ている高橋を起こした。
さすがに言い付けを守って、私のベッドの中に入って来ることは無かったようだ。
私は異変を感じていた。
異変というか、違和感だな。
しかし、高橋は起きない。
そこで私は……。
愛原:「総員、起床!」
高橋:「!!!」
私が少年刑務所の刑務官のモノマネをやると、高橋がバッと飛び起きた。
愛原:「番号!」
高橋:「いーち!!」
愛原:「異常なーし!」
こりゃ本当にガチで高橋のヤツ、少年刑務所への収監歴アリだな。
高橋:「あれ、先生?」
愛原:「やっと起きたか。もう7時だぞ」
高橋:「サーセン。……7時!?」
愛原:「そうなんだ」
そうなんだ。
東北の旅行は一体何だったのかと思うくらい、昨夜は何も無かった。
いや、これが普通ではあるのだが……。
高橋:「ガチで何も無かったと?」
愛原:「そのようだ。また、ハンターだの餓鬼だのタイラントだのと戦うくらい覚悟していたんだが……」
その為、高橋のベッドの枕元には彼愛用のマグナムが置かれている。
一応、私もベッドの下にショットガンを隠していた。
襖の向こうの和室で寝ている高野君も、ライフルを横に置いて寝たはずだ。
高橋:「外で異変が起きてるのかもしれませんよ?顕正号に乗り込んだ時も、最初に異変に気付いたのは客室の外でしたから」
愛原:「そうなのか」
それにしても、相変わらず私は顕正号に乗り込んだ記憶しか無い。
日本の船会社が所有・運航していた豪華客船、顕正号。
姉妹船、正信号と共に船内でバイオハザードが発生し、顕正号は海の藻屑と化したという。
私は乗り込んだ時の記憶まではあるのだが、そこから先の記憶が全くないのだ。
せめてフラッシュバックでもいいから、何か思い出せないかとは思うのだが……。
愛原:「ちょっと窓の外を見てみるぞ?」
高橋:「はい」
私はカーテンの隙間から、窓の外を覗いた。
愛原:「何も無いな」
外を見てもゾンビが歩いていたり、ハンターが歩いていたりすることはなかった。
普通の地元民らしき人が歩いていて、普通に車が走っていた。
高橋:「廊下とかは?」
私はそっとドアを開けて、廊下を見てみた。
廊下は静かなもので、歩いている人は見かけなかったが、廊下には琴の音色のBGМが流れており、正月であることを示唆している。
とてもバイオハザードが発生しているとは思えない。
もしそうなら、こういう感じであっても、それらしい気配はするものだ。
例えばクリーチャーはよく呻き声とか、叫び声を上げたりするのだが、もし異変が発生しているのなら、その声が聞こえてきたりすることが多い。
それが全く無かった。
愛原:「……大丈夫だな」
高野:「どうしました、先生?」
愛原:「おっと!」
そこへ高野君が話し掛けてきた。
愛原:「昨夜は何も無かったか?」
高野:「無かったですね。良かったですよ」
愛原:「そ、そうだな。考え過ぎか」
高橋:「はい……」
愛原:「リサ達は?」
高野:「まだ寝てますよ」
愛原:「そろそろ起こそう」
高野:「朝風呂はどうします?」
愛原:「昨日、2回も入ったからいいや」
それに、起き掛けで体内の血液がドロドロの状態で入浴するのは、本来ダメらしい。
愛原:「顔だけ洗ってくるよ」
高橋:「お供します!」
高野:「それじゃ、私はリサちゃん達を起こして来ますね」
愛原:「ああ、頼むよ」
[同日08:00.天候:晴 同施設内・レストラン]
宿泊者向けに朝食バイキングのサービスがある。
高橋:「先生、御飯と焼き鮭です」
愛原:「ありがとう」
高野:「朝は和食なんですか?」
愛原:「気分次第だな。今日は和食の気分だ」
リサに昨夜何か無かったか聞いたが、リサも何も無かったと答えるだけだった。
逆に昼間に事件があったので、夜間何も無かったのか?いやいや……。
高野:「先生。今日はどこに行きます?」
愛原:「そうだな……。休暇村にでも……ん?」
その時、私のスマホに着信があった。
相手は善場氏からだ。
彼女らは正月休み返上なのだろうか。
愛原:「はい、もしもし?」
善場:「愛原所長、おはようございます」
愛原:「おはようございます」
善場:「今日は何かご予定がありますか?」
愛原:「いえ、今のところこれとは……」
善場:「それなら、もし宜しかったら、私達の調査に同行してみませんか?」
愛原:「調査に同行って、いいんですか?」
善場:「ええ。むしろ霧生市のバイオハザードの生存者の方に来て頂いた方が、こちらとしても好都合ですので」
愛原:「別にいいですよ。私達で良かったら、協力します」
善場:「ありがとうございます。今宿泊している所は、本日チェックアウトされますか?」
愛原:「ええ。それで今日中に東京へ帰る予定です」
善場:「分かりました。そのホテルのチェックアウトの時間が10時のようですので、その時にお迎えに上がります」
愛原:「分かりました。では、その時に……。昨日の駐車場に行けばいいですか?……わかりました。それでは」
私は電話を切った。
愛原:「次の行き先が決まったぞ。といっても、現時点ではまだどこかとは言われてないけど」
私は今の電話の内容を皆に話した。
高野:「未だに霧生市のバイオハザードの調査は続けられてるんですね」
愛原:「日本で唯一、それで廃墟になった町だからな」
高橋:「俺達にしかできない頼み事って何なんスかね?」
愛原:「分からんが、ゾンビを倒せとかではないだろうな」
もしかしたら、私達をダシにして、リサに用事があるのかもしれない。
……と思ったが、善場氏ならそんな面倒なことはしないだろう。
リサに用があるのなら、そうだとハッキリ言うはずだ。
とにかく10時に合流したら、その時に分かるだろう。