[1月28日09:10.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 けんちゃんバス上落合公園前停留所→けんちゃんバス車内]
稲生:「久しぶりに乗ろうとしたら、減便されたか……」
マリア:「?」
雨が降る中、傘を差してバスを待つ魔道士2人。
そこへ小型の路線バスがやってくる。
コミュニティバスではお馴染みの車種だ。
運転手:「発車します。ご注意ください」
バスに乗り込み、1番後ろの席に座るとすぐに出発した。
〔ピンポーン♪ 次は児童センター入口、児童センター入口でございます。天理教本駿河台分教会へおいでの方は、三橋3丁目でお降りください〕
恐らく天理教とは名乗っているが、分派教会かもしれない(日蓮正宗に対して正信会のようなもの。日蓮正宗とは名乗っているが、別物であることから)。
天啓を伝える者がいなくなった為に、数多くの分派ができたそうである。
やはり、血脈相承は大事だ。
マリア:「うん……」
稲生:「どうしました?」
マリア:「何だろう……?体がむず痒い」
稲生:「大丈夫ですか?」
マリア:「うん……大丈夫」
因みにマリアは傘は差していなかった。
魔女は基本的に傘を差さない。
着ているローブがレインコートの代わりになるし、そこに付いているフードも十分雨を防いでくれるからである。
稲生はあまりローブを着たがらない(正式なイベントに出る時や、明らかに戦いが始まるといった時くらいにしか着ない)為、傘を差すことが多い。
その為、事実上の相合傘となるわけである。
マリア:「この先、何かあるのかもしれない」
稲生:「不吉なことですか?」
マリア:「かもしれない」
稲生:「高速バスのキップを買いに、バスタ新宿まで行こうとしたけど、やめといた方がいいってことですか?」
マリア:「その方が無難かも。でも、大丈夫。何とかなる」
稲生:「そうですか」
マリア:「今、教会って聞いたから、それで反応しただけかも」
稲生:「天理教は日本の神道系なので、キリスト教とは関係無いですよ」
マリア:「分かってる。だから多分、大丈夫」
稲生:「……取りあえず行ってみて、もしダメなようなら、帰りましょう」
マリア:「ええ」
[同日09:30.天候:雨 JR大宮駅西口]
バスはワイパーを規則正しく動かしながら大宮駅に向かった。
バス停には屋根が無いので、すぐに傘を差さなくてはならなかったし、マリアはフードを被った。
運賃箱に整理券2枚を放り込んで、それからバスを降りた。
コミュニティバスあるあるで、ICカードが使えないのである。
稲生:「朝のラッシュも終わったので、そろそろ電車は空き始める頃だとは思いますけどね」
マリア:「そうだといいね」
稲生:「具合はどうですか?」
マリア:「うーん……まだどこか違和感がある。(強いて言うなら、『多い日』に起きる症状の1つに近い。だけど、周期的には違うはずだし……)」
生理中に極端に魔力が落ちる魔女だが、少なくとも今のマリアにはそういう現象は起きていない。
また、ダンテ一門においては基本的には悪魔と契約し、そこから魔力の供給を受けているので、自身の魔力がガタ落ちしても、基本的には魔法の行使に影響は無い。
スマホやタブレットで言えば、パケット通信制限が掛かっても、Wi-Fi通信なら影響が無いのと同じ。
マリア:「師匠に相談してみようか……」
稲生:「あ、それがいいかもですね」
マリア:「いや、きっと寝てるな……」
稲生:「魔法は使える状態ですか?」
マリア:「うちの人形達が元気に動いているみたいだから、私の魔力が落ちてるわけじゃない。体調が悪いと落ちるからね」
稲生:「一体、どういう症状なんですか?」
マリア:「男に、女の体の現象のことを言ってもなぁ……。あ、そうだ。アレだ」
マリアはポンと手を叩いた。
マリア:「勇太は貧血になったことある?」
勇太:「ああ、ありますよ。小学生や中学生の時、よく全校集会とか体育の時とか、それで倒れてたものです」
マリア:「倒れる直前の症状について覚えてる?」
勇太:「倒れる直前ですか?」
マリア:「何かさ、全体的にむず痒くなる感じにならない?」
勇太:「あー……だったかなぁ……。って、マリアさん、倒れる直前!?」
マリア:「それが大丈夫なんだよ。だって、バスに乗ってから何分経ったと思って?もし貧血だったら、とっくに倒れてるさ」
勇太:「そ、それもそうですね」
マリア:「だから不気味なんだよ。貧血で倒れる直前のようなむず痒さはあるんだけど、でもそれだけ。後は何でもない」
勇太:「今までそういったことは?」
マリア:「いや……無いね」
勇太:「この雨のせいですかね。低気圧のせいで、体調に異変が出ることもありますし……」
マリア:「そういう単純な話ならいいんだけど……」
[同日09:41.天候:雨 JR大宮駅・埼京線ホーム→埼京線948K電車10号車内]
埼京線の電車に乗り込む2人。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。22番線に停車中の電車は、9時41分発、各駅停車、新宿行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
モスグリーンの塗装が特徴のJRの車両である。
夏の時は同じ色のスカートをはくことが多い為、座席に座ると、まるで下半身が座席に同調したかのようだが、今はグレーのスカートである。
緑色の服は上着のブレザーである。
で、その上に黒のローブを羽織っている。
〔この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Shinjuku.〕
発車の時間になって、地下ホームに明るい調子の発車メロディが鳴った。
〔22番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ドアチャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
エアーの抜ける音がして、電車が走り出した。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです。次は北与野、北与野。お出口は、右側です〕
稲生:「?」
その時、稲生のスマホが震えた。
ポケットから取り出して見てみると、鈴木からのメールだった。
鈴木:『マリアさんを捜しに怪しい男が来日しているので、注意してください』
という本文があり、添付されていた写真には、ホテルの防犯カメラの映像から転載されたものがあった。
稲生:「マリアさん、これ……。知り合いですか?」
マリア:「知らない。全然知らない。何か、アナスタシア組にいそうな感じもするけど……」
稲生:「僕にはマフィアにしか見えないですけどね。……探偵の人?」
鈴木:『エレーナが報奨金の金貨に目が眩んで、先輩の家を教えてしまいました。恐らく今、そちらに向かっていると思います。どうか気をつけて』
エレーナ:「エレーナの野郎……!」
稲生:「……だろうなぁ。ってことは、逆に今、帰らない方がいいのか。あ、でも、家には先生が……」
マリア:「もしただの探偵だったら、上手いことあしらってくれるだろうけど、もしも探偵のフリした教会関係者だったとしたら……」
稲生:「いや、それは無いと思いますよ」
マリア:「どうして?」
稲生:「エレーナが無事でいるからです。もし教会関係者が魔女狩りに来たんだとしたら、まずエレーナが襲われてますよ?」
マリア:「そ、それもそうか。えー……いや、知らないなぁ……」
稲生:「ちょっと待ってください。今、鈴木君ともう少し詳しいやり取りをしますから」
マリア:「うん、お願い」
電車が新宿に着くまでの間、稲生と鈴木のメールによるやり取りが続いた。
稲生:「久しぶりに乗ろうとしたら、減便されたか……」
マリア:「?」
雨が降る中、傘を差してバスを待つ魔道士2人。
そこへ小型の路線バスがやってくる。
コミュニティバスではお馴染みの車種だ。
運転手:「発車します。ご注意ください」
バスに乗り込み、1番後ろの席に座るとすぐに出発した。
〔ピンポーン♪ 次は児童センター入口、児童センター入口でございます。天理教本駿河台分教会へおいでの方は、三橋3丁目でお降りください〕
恐らく天理教とは名乗っているが、分派教会かもしれない(日蓮正宗に対して正信会のようなもの。日蓮正宗とは名乗っているが、別物であることから)。
天啓を伝える者がいなくなった為に、数多くの分派ができたそうである。
やはり、血脈相承は大事だ。
マリア:「うん……」
稲生:「どうしました?」
マリア:「何だろう……?体がむず痒い」
稲生:「大丈夫ですか?」
マリア:「うん……大丈夫」
因みにマリアは傘は差していなかった。
魔女は基本的に傘を差さない。
着ているローブがレインコートの代わりになるし、そこに付いているフードも十分雨を防いでくれるからである。
稲生はあまりローブを着たがらない(正式なイベントに出る時や、明らかに戦いが始まるといった時くらいにしか着ない)為、傘を差すことが多い。
その為、事実上の相合傘となるわけである。
マリア:「この先、何かあるのかもしれない」
稲生:「不吉なことですか?」
マリア:「かもしれない」
稲生:「高速バスのキップを買いに、バスタ新宿まで行こうとしたけど、やめといた方がいいってことですか?」
マリア:「その方が無難かも。でも、大丈夫。何とかなる」
稲生:「そうですか」
マリア:「今、教会って聞いたから、それで反応しただけかも」
稲生:「天理教は日本の神道系なので、キリスト教とは関係無いですよ」
マリア:「分かってる。だから多分、大丈夫」
稲生:「……取りあえず行ってみて、もしダメなようなら、帰りましょう」
マリア:「ええ」
[同日09:30.天候:雨 JR大宮駅西口]
バスはワイパーを規則正しく動かしながら大宮駅に向かった。
バス停には屋根が無いので、すぐに傘を差さなくてはならなかったし、マリアはフードを被った。
運賃箱に整理券2枚を放り込んで、それからバスを降りた。
コミュニティバスあるあるで、ICカードが使えないのである。
稲生:「朝のラッシュも終わったので、そろそろ電車は空き始める頃だとは思いますけどね」
マリア:「そうだといいね」
稲生:「具合はどうですか?」
マリア:「うーん……まだどこか違和感がある。(強いて言うなら、『多い日』に起きる症状の1つに近い。だけど、周期的には違うはずだし……)」
生理中に極端に魔力が落ちる魔女だが、少なくとも今のマリアにはそういう現象は起きていない。
また、ダンテ一門においては基本的には悪魔と契約し、そこから魔力の供給を受けているので、自身の魔力がガタ落ちしても、基本的には魔法の行使に影響は無い。
スマホやタブレットで言えば、パケット通信制限が掛かっても、Wi-Fi通信なら影響が無いのと同じ。
マリア:「師匠に相談してみようか……」
稲生:「あ、それがいいかもですね」
マリア:「いや、きっと寝てるな……」
稲生:「魔法は使える状態ですか?」
マリア:「うちの人形達が元気に動いているみたいだから、私の魔力が落ちてるわけじゃない。体調が悪いと落ちるからね」
稲生:「一体、どういう症状なんですか?」
マリア:「男に、女の体の現象のことを言ってもなぁ……。あ、そうだ。アレだ」
マリアはポンと手を叩いた。
マリア:「勇太は貧血になったことある?」
勇太:「ああ、ありますよ。小学生や中学生の時、よく全校集会とか体育の時とか、それで倒れてたものです」
マリア:「倒れる直前の症状について覚えてる?」
勇太:「倒れる直前ですか?」
マリア:「何かさ、全体的にむず痒くなる感じにならない?」
勇太:「あー……だったかなぁ……。って、マリアさん、倒れる直前!?」
マリア:「それが大丈夫なんだよ。だって、バスに乗ってから何分経ったと思って?もし貧血だったら、とっくに倒れてるさ」
勇太:「そ、それもそうですね」
マリア:「だから不気味なんだよ。貧血で倒れる直前のようなむず痒さはあるんだけど、でもそれだけ。後は何でもない」
勇太:「今までそういったことは?」
マリア:「いや……無いね」
勇太:「この雨のせいですかね。低気圧のせいで、体調に異変が出ることもありますし……」
マリア:「そういう単純な話ならいいんだけど……」
[同日09:41.天候:雨 JR大宮駅・埼京線ホーム→埼京線948K電車10号車内]
埼京線の電車に乗り込む2人。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。22番線に停車中の電車は、9時41分発、各駅停車、新宿行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
モスグリーンの塗装が特徴のJRの車両である。
夏の時は同じ色のスカートをはくことが多い為、座席に座ると、まるで下半身が座席に同調したかのようだが、今はグレーのスカートである。
緑色の服は上着のブレザーである。
で、その上に黒のローブを羽織っている。
〔この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Shinjuku.〕
発車の時間になって、地下ホームに明るい調子の発車メロディが鳴った。
〔22番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
ドアチャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
エアーの抜ける音がして、電車が走り出した。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです。次は北与野、北与野。お出口は、右側です〕
稲生:「?」
その時、稲生のスマホが震えた。
ポケットから取り出して見てみると、鈴木からのメールだった。
鈴木:『マリアさんを捜しに怪しい男が来日しているので、注意してください』
という本文があり、添付されていた写真には、ホテルの防犯カメラの映像から転載されたものがあった。
稲生:「マリアさん、これ……。知り合いですか?」
マリア:「知らない。全然知らない。何か、アナスタシア組にいそうな感じもするけど……」
稲生:「僕にはマフィアにしか見えないですけどね。……探偵の人?」
鈴木:『エレーナが報奨金の金貨に目が眩んで、先輩の家を教えてしまいました。恐らく今、そちらに向かっていると思います。どうか気をつけて』
エレーナ:「エレーナの野郎……!」
稲生:「……だろうなぁ。ってことは、逆に今、帰らない方がいいのか。あ、でも、家には先生が……」
マリア:「もしただの探偵だったら、上手いことあしらってくれるだろうけど、もしも探偵のフリした教会関係者だったとしたら……」
稲生:「いや、それは無いと思いますよ」
マリア:「どうして?」
稲生:「エレーナが無事でいるからです。もし教会関係者が魔女狩りに来たんだとしたら、まずエレーナが襲われてますよ?」
マリア:「そ、それもそうか。えー……いや、知らないなぁ……」
稲生:「ちょっと待ってください。今、鈴木君ともう少し詳しいやり取りをしますから」
マリア:「うん、お願い」
電車が新宿に着くまでの間、稲生と鈴木のメールによるやり取りが続いた。