[5月4日09:48.天候:晴 栃木県那須塩原市 JR那須塩原駅→東北新幹線270B列車8号車]
那須塩原駅構内で買い物を済ませた私達。
愛原:「よし。こんな所だな。皆も買い忘れとか無いか?」
リサ:「大丈夫」
絵恋:「オッケーです」
高橋:「問題ナシっス!」
愛原:「よし。それじゃ、ホームに行こう」
私達はすぐ横にある新幹線改札口を通った。
〔1番線に停車中の電車は、9時53分発、“なすの”270号、東京行きです。この電車は、各駅に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から7号車です。尚、全車両禁煙です〕
高架ホームに上がると、往路で乗ったのと同じE5系列車が停車していた。
仕業によっては“はやぶさ”として最高速度320キロで爆走することもある車両が、今は中距離用の各駅停車としての運用に入っている。
愛原:「はい、撮るよー」
往路と同じように、行き先表示器の下にリサと絵恋さんを立たせ、写真を撮る。
東海道新幹線などの西や南へ向かう新幹線車両といい、最近の新幹線車両は行き先表示の大きくなったものが流行っているようだ。
しかも列車名だけでなく、号数や途中停車駅まで表示できるようになっている。
200系時代には考えられない事だな。
写真を撮り終わってから、車内に入る。
この列車唯一の普通車指定席車両だ。
空いているのなら自由席でも良いのではと思うかもしれないが、少しでも修学旅行気分を味わってもらう為だ。
往路と同じように、2人席を前後して確保してある。
リサと絵恋さんは隣同士で座った。
高橋:「先生、お荷物上げます」
愛原:「ああ、頼むよ」
荷棚に荷物を上げるのは、高橋に任せる。
〔「ご案内致します。この列車は9時53分発、“なすの”270号、東京行きです。停車駅は宇都宮、小山、大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から7号車です。尚、この列車では車内販売の営業はございません。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕
私が善場主任と斉藤社長に新幹線に乗車したことを伝えるメールを送っていると、ホームから発車ベルが聞こえて来た。
在来線ホームだと発車メロディだろうが、新幹線ではベルである。
〔1番線から、“なすの”270号、東京行きが発車致します。次は、宇都宮に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
愛原:「よしっと」
メール送信が終わる頃、ホームから甲高い客終合図のブザーが聞こえて来て、ドアが閉まる音がした。
そして、列車はスーッと走り出した。
下り副線の更に側線ホームに停車していたので、上り本線に出るまでの間、徐行速度でポイントを何度か渡る。
徐行と言っても狭軌の在来線ではないし、カーブ半径も緩やかに取られていることもあって、首都圏の通勤電車くらいの速度である。
そこを通過し終えると、ようやくグングンと速度を上げ始めた。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“なすの”号、東京行きです。次は、宇都宮に止まります。……〕
愛原:「色々あったなぁ……」
高橋:「温泉以外は慰安にならなかったっスねぇ……」
愛原:「うん……って!タイラントのせいで、那須湯本温泉に入り損ねた」
高橋:「先生。元はと言えば、後ろにいるBOWのガキのせいですよ?1発撃っておきましょうか?」
愛原:「やめなさい!」
すると後ろの席に座っていた絵恋さんが私の所に顔を出した。
絵恋:「先生。父からで、『那須湯本温泉風の入浴剤を差し入れに送る』そうです」
愛原:「何で社長知ってるんだよ……」
高橋:「何でも作ってやがりますね。斉藤社長の会社」
愛原:「アンブレラも温泉の素作ってりゃ良かったんだよ」
世界中の製薬会社で、温泉の素を売っているのは日本だけであろうか。
高橋:「先生の仰る通りです」
愛原:「おっ、斉藤社長から返信が来た。『報告書は明日までにお願いします』か。帰ったら、事務所に寄るか」
高橋:「了解です」
リサ:「先生、お昼ご飯はー?」
愛原:「帰ってからだな。この列車の東京駅到着は11時8分だ。それからバスに乗って帰るから、菊川に着くのはちょうど昼くらいだろ?それからだよ」
リサ:「なるほど」
リサは納得した。
一応、まだ手持ちのポッキーなどのお菓子はあるから、空腹に襲われることはないということだな。
これで手持ちの食料を尽かしていたら、【お察しください】。
絵恋:「私もお昼、御一緒していいですか?」
愛原:「いいけど、パールさんが迎えに来ないの?」
絵恋:「パールは実家の方にいます。他のメイドが休んだので、そのヘルプです」
高橋:「コロナじゃねぇだろうな?」
絵恋:「違うよ。パールと違って、一応帰る実家のあるメイドもいて、帰省しているからよ」
愛原:「絵恋さんは帰らなくていいの?」
絵恋:「どちらでも構いませんよ。どうせ、毎週末には帰ってますから。今週もまた帰るので」
愛原:「そうか」
絵恋:「できれば、リサさんと一緒にいる時間の方が大事です」
愛原:「そこは御両親と一緒にいる時間を大事にしような?」
[同日11:08.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
列車は何事も無く東京駅に接近した。
リサと絵恋さんにとって、今回の旅行のスタート地点である上野駅を出発すると、長いトンネルを抜ける。
抜けた先は秋葉原付近であり、進行方向左手にヨドバシカメラが見えたら、着いたも同然だ。
ビル群の間を抜けて列車は減速し、弓なりに曲がっているホームに入線する。
曲がっているのは、少ない用地で長い編成の新幹線列車を収める為の策である。
〔ドアが開きます〕
ホームに停車してドアが開く。
〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物の無いよう、お降りください。23番線に到着の電車は、回送となります。ご乗車にはなれませんので、ご注意ください」〕
愛原:「いや~、ようやく帰ってきたな」
高橋:「そうっスね」
リサ:「また写真撮るの?」
愛原:「よし。今度は東京駅の看板の下で撮ろう」
ホームの天井から吊り下げられている駅名看板。
その下にリサと絵恋さんを立たせ、撮影する。
取りあえず、写真はこんなところでいいか。
高橋:「先生。バスの時間が11時24分です」
愛原:「なに?ちょうどいい時間だな。よし、バス乗り場に行くぞ」
私達は急いで改札口へ向かった。
リサの血縁者といい、何だか色々と真相に迫ることができた旅行だった。
この旅行を膳立てしたのは斉藤社長。
これは偶然とは思えない。
報告書を出す時に、質問してみることにしよう。
那須塩原駅構内で買い物を済ませた私達。
愛原:「よし。こんな所だな。皆も買い忘れとか無いか?」
リサ:「大丈夫」
絵恋:「オッケーです」
高橋:「問題ナシっス!」
愛原:「よし。それじゃ、ホームに行こう」
私達はすぐ横にある新幹線改札口を通った。
〔1番線に停車中の電車は、9時53分発、“なすの”270号、東京行きです。この電車は、各駅に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から7号車です。尚、全車両禁煙です〕
高架ホームに上がると、往路で乗ったのと同じE5系列車が停車していた。
仕業によっては“はやぶさ”として最高速度320キロで爆走することもある車両が、今は中距離用の各駅停車としての運用に入っている。
愛原:「はい、撮るよー」
往路と同じように、行き先表示器の下にリサと絵恋さんを立たせ、写真を撮る。
東海道新幹線などの西や南へ向かう新幹線車両といい、最近の新幹線車両は行き先表示の大きくなったものが流行っているようだ。
しかも列車名だけでなく、号数や途中停車駅まで表示できるようになっている。
200系時代には考えられない事だな。
写真を撮り終わってから、車内に入る。
この列車唯一の普通車指定席車両だ。
空いているのなら自由席でも良いのではと思うかもしれないが、少しでも修学旅行気分を味わってもらう為だ。
往路と同じように、2人席を前後して確保してある。
リサと絵恋さんは隣同士で座った。
高橋:「先生、お荷物上げます」
愛原:「ああ、頼むよ」
荷棚に荷物を上げるのは、高橋に任せる。
〔「ご案内致します。この列車は9時53分発、“なすの”270号、東京行きです。停車駅は宇都宮、小山、大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から7号車です。尚、この列車では車内販売の営業はございません。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕
私が善場主任と斉藤社長に新幹線に乗車したことを伝えるメールを送っていると、ホームから発車ベルが聞こえて来た。
在来線ホームだと発車メロディだろうが、新幹線ではベルである。
〔1番線から、“なすの”270号、東京行きが発車致します。次は、宇都宮に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
愛原:「よしっと」
メール送信が終わる頃、ホームから甲高い客終合図のブザーが聞こえて来て、ドアが閉まる音がした。
そして、列車はスーッと走り出した。
下り副線の更に側線ホームに停車していたので、上り本線に出るまでの間、徐行速度でポイントを何度か渡る。
徐行と言っても狭軌の在来線ではないし、カーブ半径も緩やかに取られていることもあって、首都圏の通勤電車くらいの速度である。
そこを通過し終えると、ようやくグングンと速度を上げ始めた。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“なすの”号、東京行きです。次は、宇都宮に止まります。……〕
愛原:「色々あったなぁ……」
高橋:「温泉以外は慰安にならなかったっスねぇ……」
愛原:「うん……って!タイラントのせいで、那須湯本温泉に入り損ねた」
高橋:「先生。元はと言えば、後ろにいるBOWのガキのせいですよ?1発撃っておきましょうか?」
愛原:「やめなさい!」
すると後ろの席に座っていた絵恋さんが私の所に顔を出した。
絵恋:「先生。父からで、『那須湯本温泉風の入浴剤を差し入れに送る』そうです」
愛原:「何で社長知ってるんだよ……」
高橋:「何でも作ってやがりますね。斉藤社長の会社」
愛原:「アンブレラも温泉の素作ってりゃ良かったんだよ」
世界中の製薬会社で、温泉の素を売っているのは日本だけであろうか。
高橋:「先生の仰る通りです」
愛原:「おっ、斉藤社長から返信が来た。『報告書は明日までにお願いします』か。帰ったら、事務所に寄るか」
高橋:「了解です」
リサ:「先生、お昼ご飯はー?」
愛原:「帰ってからだな。この列車の東京駅到着は11時8分だ。それからバスに乗って帰るから、菊川に着くのはちょうど昼くらいだろ?それからだよ」
リサ:「なるほど」
リサは納得した。
一応、まだ手持ちのポッキーなどのお菓子はあるから、空腹に襲われることはないということだな。
これで手持ちの食料を尽かしていたら、【お察しください】。
絵恋:「私もお昼、御一緒していいですか?」
愛原:「いいけど、パールさんが迎えに来ないの?」
絵恋:「パールは実家の方にいます。他のメイドが休んだので、そのヘルプです」
高橋:「コロナじゃねぇだろうな?」
絵恋:「違うよ。パールと違って、一応帰る実家のあるメイドもいて、帰省しているからよ」
愛原:「絵恋さんは帰らなくていいの?」
絵恋:「どちらでも構いませんよ。どうせ、毎週末には帰ってますから。今週もまた帰るので」
愛原:「そうか」
絵恋:「できれば、リサさんと一緒にいる時間の方が大事です」
愛原:「そこは御両親と一緒にいる時間を大事にしような?」
[同日11:08.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
列車は何事も無く東京駅に接近した。
リサと絵恋さんにとって、今回の旅行のスタート地点である上野駅を出発すると、長いトンネルを抜ける。
抜けた先は秋葉原付近であり、進行方向左手にヨドバシカメラが見えたら、着いたも同然だ。
ビル群の間を抜けて列車は減速し、弓なりに曲がっているホームに入線する。
曲がっているのは、少ない用地で長い編成の新幹線列車を収める為の策である。
〔ドアが開きます〕
ホームに停車してドアが開く。
〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物の無いよう、お降りください。23番線に到着の電車は、回送となります。ご乗車にはなれませんので、ご注意ください」〕
愛原:「いや~、ようやく帰ってきたな」
高橋:「そうっスね」
リサ:「また写真撮るの?」
愛原:「よし。今度は東京駅の看板の下で撮ろう」
ホームの天井から吊り下げられている駅名看板。
その下にリサと絵恋さんを立たせ、撮影する。
取りあえず、写真はこんなところでいいか。
高橋:「先生。バスの時間が11時24分です」
愛原:「なに?ちょうどいい時間だな。よし、バス乗り場に行くぞ」
私達は急いで改札口へ向かった。
リサの血縁者といい、何だか色々と真相に迫ることができた旅行だった。
この旅行を膳立てしたのは斉藤社長。
これは偶然とは思えない。
報告書を出す時に、質問してみることにしよう。