[5月6日13:00.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・図書室]
リサ:「フムフム。新聞部による『学校の七不思議特集』は毎年夏休み前に行われていて、新聞部に怪談話を知っている7名が集められ、1人ずつ話をしていく形式で取材が進められる……か」
リサが読んでいて面白いと思ったのは、担任の坂上がまだこの学校の生徒だった頃に行われた回。
ここで初めて“トイレの花子さん”が登場した。
それと、2008年の回。
だが、さすがにネタ切れを起こしているのか、毎年開催が隔年開催となり、そして今では不定期となっている。
新聞部員:「おや?もしかして、あなたもこの特集に興味が?」
リサ:「あ、はい」
その時、リサの背後に現れたのは左腕に『新聞部』の腕章を着けた男子新聞部員であった。
新聞部員:「ちょうど良かった。実は今年、久しぶりに新聞部で『七不思議の特集』をやることになったんです。興味を持ってくれて嬉しいですが、何か怖い話を知っていたりしますか?できれば、この学園限定で」
リサ:「知ってる」
新聞部員:「本当ですか!?できれば是非、集まりに参加して頂きたいです!」
リサ:「分かった」
新聞部員:「ありがとうございます!よろしければ、お名前と学年を伺っても!?」
リサ:「1年5組、愛原リサ」
新聞部員:「まだ1年生なのに、もうこの学園の怖い話を知っているとはさすがです!霊感が強かったりするんですか?」
リサ:「霊感……は、そんなに強くないと思う」
新聞部員:「どんな話を御存知なんですか?」
リサ:「旧校舎の“花子さん”の話とか?」
新聞部員:「あれは有名ですね。是非お願いしますね」
リサ:「分かった」
1995年版を見ると、その時既に“花子さん”の正体がイジメの被害で自殺した女子生徒の幽霊であることは分かっていたようだ。
リサ:(1995年は“トイレの花子さん”、1996年は白井伝三郎の話で盛り上がっている。実は一見して別々に見える話が、実は1つに繋がっていたとは……)
と、その時だった。
〔ヒュンヒュン♪ 地震が来ます。ヒュンヒュン♪ 地震が来ます。ヒュンヒュン♪ 地震が来ます。10秒前〕
校内スピーカーからそのようなサイレンと自動放送が鳴り響き、司書室の中にあるオレンジ色の端末から黄色い光がフラッシュのように点滅した。
それだけでなく、各自のスマホからも緊急地震速報が鳴った。
リサ:「! ちょっと大きい!」
本棚が揺れるが、本が落ちるほどではない。
もちろん本棚も、金具やベルトで固定されている為、倒れて来ることは……。
ブチッ!
新聞部員:「わぁっ!?」
その時、有り得ないことが起きた。
リサと新聞部員の前にある本棚が大きく揺れたかと思うと、転倒防止のベルトが切れたのだ!
支えを失った本棚は、容赦なくリサ達の所へ倒れて来た。
リサ:「危ない!」
新聞部員:「うわっ!!」
リサは新聞部員を突き飛ばした。
そのおかげで新聞部員は巻き込まれずに済んだのだが……。
女子生徒:「キャーッ!!」
男子生徒:「女子が下敷きになったぞーっ!!」
〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「こちらは、警備本部です。ただいま、東京湾を震源とする強い地震が発生しました。震源地、震度、津波の有無につきましては、現在、気象庁の発表待ちです。尚、現在、教職員並びに警備員が緊急校内巡回点検を行っております。被害の発生した所におきましては、ただちに職員室または警備本部、巡回中の教職員または警備員までお知らせください。繰り返し、お伝えします。東京湾を震源とする強い地震が……」〕
男子生徒:「先生!先生!」
坂上:「どうした!?」
男子生徒:「1年生の女子が本棚の下敷きになりました!」
坂上:「なに!?本棚は転倒防止を施しているはず……」
男子生徒:「本当なんです!こっちです!」
坂上が駆け付けると、確かに1つだけ本棚が倒れていた。
坂上:「おい!誰か手を貸せ!早く助けるぞ!」
だが、高さ3メートル近くある本棚が独りでに起き上がり出した。
その下にいるリサが、自分で持ち上げたのだ。
リサ:「いたたた……。あー、ビックリしたー」
坂上:「オマエかい!……い、いや、早く起こせ!」
坂上は周囲の男子生徒達に手を貸させた。
男子生徒:「いやこれ、くっそ重いっスよ!?」
女子生徒:「これを今、1人で持ち上げたの?!」
坂上:「こんなこと言っちゃ何だが、下敷きになったのがオマエで良かった。他のヤツだったら、『流血の惨を見る事、必至』だったぞ!」
リサ:「頑丈だけが取り得でして」
坂上:「と、とにかく、午後の授業は出なくていい。一応、保健室に行って来い」
リサ:「いや、大丈夫ですよ。私、頑丈ですから~」
だが、坂上はリサに耳打ち。
坂上:「バカ!頑丈過ぎて、却って怪しまれてるぞ!ここはいいから、怪我人のフリして保健室行ってこい。幸い、5時限目の授業は俺だし、6時限目は倉田先生だ。俺が何とか誤魔化しておく」
リサ:「わ、分かりました」
坂上がリサの事情を知る人物の1人で幸いであった。
坂上:「あー、俺はこのコを保健室に連れて行く。皆は本棚に近づかないように」
〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「こちらは、警備本部です。先ほど、東京湾を震源とする強い地震がありました。気象庁の発表によりますと、最大震度は震度5強。台東区は震度5弱です。この地震による津波の心配はありません。今後も強い余震の発生の恐れがあります。十分、ご注意ください。尚、校内で被害の発生した箇所につきましては……」〕
リサは坂上に連れられて保健室に向かった。
坂上:「何かあったのか?あの本棚だけが倒れるなんておかしいぞ?」
リサ:「そ、そう言われればそうですね。でも、何の心当たりも無いです」
坂上:「俺が現役生だった頃は、ああいう不可思議現象を何度も見聞きして来た。俺は何があっても信じるぞ」
リサ:「先生だと、怪奇現象は全く信じないはずなんですけど……」
坂上:「そう言って痛い目どころか、命まで落とした教職員を俺は見聞きしている。だからだぞ」
リサ:「はい」
リサは返事しかできなかった。
やろうと思えば、自分がそんな人達を屠れる立場にあるからだ。
リサ:(なるほど。私達のようなヤツのこと、否定する連中を何がしかの痛い目に遭わせてやる方が楽だ。こういう、むしろ色々と知っていて、私達のようなヤツの存在も信じる人相手は少し面倒かも……)
こうしてリサは1階の保健室に連れて行かれた。
案外、震度5クラスの地震でも怪我人はそんなに出なかったようだ。
今、手当てを受けている生徒達も、地震でケガしたのか、そうでないのか分からないくらい。
養護教諭:「はい、次の方、どうしました?……あら、坂上先生」
坂上:「ど、どうも。実はさっきの地震で、私の担任のクラスのコが本棚の転倒に巻き込まれてしまいまして……」
養護教諭:「まあ。本棚は転倒防止の固定具が全て取り付けられているはずでは?」
坂上:「それが、どうも固定の甘かったのがあったらしく、倒れて来た本棚に腰をぶつけたようで……」
リサ:「あー、ちょっと腰痛いんですよー」
リサはあからさまに痛がる素振りをした。
BOWの強みの1つで、確かに本棚の下敷きになった直後は、それなりにケガはしたのだろう。
だが、人外的な自己治癒力のおかげで、今は完全に治癒してしまっていた。
確かに腰を打って最初は痛かったのだが、今は【お察しください】。
養護教諭:「じゃあ、ちょっと腰を見せて」
リサ:「はい」
リサは着ていたニットのベストを脱いだ。
養護教諭:「あとは私にお任せください」
坂上:「よろしくお願いします」
坂上が出て行くと、リサは白いブラウスを捲り上げて腰を見せた。
養護教諭:「うーん……。特に腫れている感じは無いわねぇ……」
リサ:(多分最初は腫れていたどころか、完全に骨イッてたと思います)
という言葉を飲み込んだリサ。
養護教諭:「一応、湿布貼っておきましょうか」
リサ:「はい」
湿布を貼ってもらうリサ。
リサ:「冷たっ!」
養護教諭:「すぐに慣れるからね。それじゃ、痛みが引くまで、そこのベッドで休んでて」
リサ:「はい」
というわけで、5時限目の授業は保健室休養となったリサだった。
ベストは脱いだままハンガーに掛け、ベッドに横になる。
リサ:(それにしても、本棚を支える方の選択肢を選ばなくて良かった。多分、あの本棚を私1人で支えていたら、化け物扱いされるところだった)
1人で持ち上げただけでも驚かれたのに……。
しかしあの程度なら、『火事場の馬鹿力』で済むだろうか。
リサはそんなことを考えながら、浅い眠りに就いた。
リサ:「フムフム。新聞部による『学校の七不思議特集』は毎年夏休み前に行われていて、新聞部に怪談話を知っている7名が集められ、1人ずつ話をしていく形式で取材が進められる……か」
リサが読んでいて面白いと思ったのは、担任の坂上がまだこの学校の生徒だった頃に行われた回。
ここで初めて“トイレの花子さん”が登場した。
それと、2008年の回。
だが、さすがにネタ切れを起こしているのか、毎年開催が隔年開催となり、そして今では不定期となっている。
新聞部員:「おや?もしかして、あなたもこの特集に興味が?」
リサ:「あ、はい」
その時、リサの背後に現れたのは左腕に『新聞部』の腕章を着けた男子新聞部員であった。
新聞部員:「ちょうど良かった。実は今年、久しぶりに新聞部で『七不思議の特集』をやることになったんです。興味を持ってくれて嬉しいですが、何か怖い話を知っていたりしますか?できれば、この学園限定で」
リサ:「知ってる」
新聞部員:「本当ですか!?できれば是非、集まりに参加して頂きたいです!」
リサ:「分かった」
新聞部員:「ありがとうございます!よろしければ、お名前と学年を伺っても!?」
リサ:「1年5組、愛原リサ」
新聞部員:「まだ1年生なのに、もうこの学園の怖い話を知っているとはさすがです!霊感が強かったりするんですか?」
リサ:「霊感……は、そんなに強くないと思う」
新聞部員:「どんな話を御存知なんですか?」
リサ:「旧校舎の“花子さん”の話とか?」
新聞部員:「あれは有名ですね。是非お願いしますね」
リサ:「分かった」
1995年版を見ると、その時既に“花子さん”の正体がイジメの被害で自殺した女子生徒の幽霊であることは分かっていたようだ。
リサ:(1995年は“トイレの花子さん”、1996年は白井伝三郎の話で盛り上がっている。実は一見して別々に見える話が、実は1つに繋がっていたとは……)
と、その時だった。
〔ヒュンヒュン♪ 地震が来ます。ヒュンヒュン♪ 地震が来ます。ヒュンヒュン♪ 地震が来ます。10秒前〕
校内スピーカーからそのようなサイレンと自動放送が鳴り響き、司書室の中にあるオレンジ色の端末から黄色い光がフラッシュのように点滅した。
それだけでなく、各自のスマホからも緊急地震速報が鳴った。
リサ:「! ちょっと大きい!」
本棚が揺れるが、本が落ちるほどではない。
もちろん本棚も、金具やベルトで固定されている為、倒れて来ることは……。
ブチッ!
新聞部員:「わぁっ!?」
その時、有り得ないことが起きた。
リサと新聞部員の前にある本棚が大きく揺れたかと思うと、転倒防止のベルトが切れたのだ!
支えを失った本棚は、容赦なくリサ達の所へ倒れて来た。
リサ:「危ない!」
新聞部員:「うわっ!!」
リサは新聞部員を突き飛ばした。
そのおかげで新聞部員は巻き込まれずに済んだのだが……。
女子生徒:「キャーッ!!」
男子生徒:「女子が下敷きになったぞーっ!!」
〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「こちらは、警備本部です。ただいま、東京湾を震源とする強い地震が発生しました。震源地、震度、津波の有無につきましては、現在、気象庁の発表待ちです。尚、現在、教職員並びに警備員が緊急校内巡回点検を行っております。被害の発生した所におきましては、ただちに職員室または警備本部、巡回中の教職員または警備員までお知らせください。繰り返し、お伝えします。東京湾を震源とする強い地震が……」〕
男子生徒:「先生!先生!」
坂上:「どうした!?」
男子生徒:「1年生の女子が本棚の下敷きになりました!」
坂上:「なに!?本棚は転倒防止を施しているはず……」
男子生徒:「本当なんです!こっちです!」
坂上が駆け付けると、確かに1つだけ本棚が倒れていた。
坂上:「おい!誰か手を貸せ!早く助けるぞ!」
だが、高さ3メートル近くある本棚が独りでに起き上がり出した。
その下にいるリサが、自分で持ち上げたのだ。
リサ:「いたたた……。あー、ビックリしたー」
坂上:「オマエかい!……い、いや、早く起こせ!」
坂上は周囲の男子生徒達に手を貸させた。
男子生徒:「いやこれ、くっそ重いっスよ!?」
女子生徒:「これを今、1人で持ち上げたの?!」
坂上:「こんなこと言っちゃ何だが、下敷きになったのがオマエで良かった。他のヤツだったら、『流血の惨を見る事、必至』だったぞ!」
リサ:「頑丈だけが取り得でして」
坂上:「と、とにかく、午後の授業は出なくていい。一応、保健室に行って来い」
リサ:「いや、大丈夫ですよ。私、頑丈ですから~」
だが、坂上はリサに耳打ち。
坂上:「バカ!頑丈過ぎて、却って怪しまれてるぞ!ここはいいから、怪我人のフリして保健室行ってこい。幸い、5時限目の授業は俺だし、6時限目は倉田先生だ。俺が何とか誤魔化しておく」
リサ:「わ、分かりました」
坂上がリサの事情を知る人物の1人で幸いであった。
坂上:「あー、俺はこのコを保健室に連れて行く。皆は本棚に近づかないように」
〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「こちらは、警備本部です。先ほど、東京湾を震源とする強い地震がありました。気象庁の発表によりますと、最大震度は震度5強。台東区は震度5弱です。この地震による津波の心配はありません。今後も強い余震の発生の恐れがあります。十分、ご注意ください。尚、校内で被害の発生した箇所につきましては……」〕
リサは坂上に連れられて保健室に向かった。
坂上:「何かあったのか?あの本棚だけが倒れるなんておかしいぞ?」
リサ:「そ、そう言われればそうですね。でも、何の心当たりも無いです」
坂上:「俺が現役生だった頃は、ああいう不可思議現象を何度も見聞きして来た。俺は何があっても信じるぞ」
リサ:「先生だと、怪奇現象は全く信じないはずなんですけど……」
坂上:「そう言って痛い目どころか、命まで落とした教職員を俺は見聞きしている。だからだぞ」
リサ:「はい」
リサは返事しかできなかった。
やろうと思えば、自分がそんな人達を屠れる立場にあるからだ。
リサ:(なるほど。私達のようなヤツのこと、否定する連中を何がしかの痛い目に遭わせてやる方が楽だ。こういう、むしろ色々と知っていて、私達のようなヤツの存在も信じる人相手は少し面倒かも……)
こうしてリサは1階の保健室に連れて行かれた。
案外、震度5クラスの地震でも怪我人はそんなに出なかったようだ。
今、手当てを受けている生徒達も、地震でケガしたのか、そうでないのか分からないくらい。
養護教諭:「はい、次の方、どうしました?……あら、坂上先生」
坂上:「ど、どうも。実はさっきの地震で、私の担任のクラスのコが本棚の転倒に巻き込まれてしまいまして……」
養護教諭:「まあ。本棚は転倒防止の固定具が全て取り付けられているはずでは?」
坂上:「それが、どうも固定の甘かったのがあったらしく、倒れて来た本棚に腰をぶつけたようで……」
リサ:「あー、ちょっと腰痛いんですよー」
リサはあからさまに痛がる素振りをした。
BOWの強みの1つで、確かに本棚の下敷きになった直後は、それなりにケガはしたのだろう。
だが、人外的な自己治癒力のおかげで、今は完全に治癒してしまっていた。
確かに腰を打って最初は痛かったのだが、今は【お察しください】。
養護教諭:「じゃあ、ちょっと腰を見せて」
リサ:「はい」
リサは着ていたニットのベストを脱いだ。
養護教諭:「あとは私にお任せください」
坂上:「よろしくお願いします」
坂上が出て行くと、リサは白いブラウスを捲り上げて腰を見せた。
養護教諭:「うーん……。特に腫れている感じは無いわねぇ……」
リサ:(多分最初は腫れていたどころか、完全に骨イッてたと思います)
という言葉を飲み込んだリサ。
養護教諭:「一応、湿布貼っておきましょうか」
リサ:「はい」
湿布を貼ってもらうリサ。
リサ:「冷たっ!」
養護教諭:「すぐに慣れるからね。それじゃ、痛みが引くまで、そこのベッドで休んでて」
リサ:「はい」
というわけで、5時限目の授業は保健室休養となったリサだった。
ベストは脱いだままハンガーに掛け、ベッドに横になる。
リサ:(それにしても、本棚を支える方の選択肢を選ばなくて良かった。多分、あの本棚を私1人で支えていたら、化け物扱いされるところだった)
1人で持ち上げただけでも驚かれたのに……。
しかしあの程度なら、『火事場の馬鹿力』で済むだろうか。
リサはそんなことを考えながら、浅い眠りに就いた。