報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 東京駅

2021-06-23 19:59:51 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月21日16:18.天候:雨 東京都千代田区丸の内 東京メトロ東京駅→JR東京駅]

 東京駅で電車を降りた稲生達は、JRの方へ移動した。
 丸ノ内線からJR横須賀線・総武快速線の乗り場は至近距離にあるが、新幹線は少し歩く必要がある(が、京葉線よりはかなりマシである)。

 稲生:「この丸ノ内線、魔界のアルカディアシティで言えば、魔界高速電鉄の1号線になるんだな」
 マリア:「ああ。デビル・ピーターズ・バーグから1番街方面ね」
 稲生:「そうそう。丸ノ内線っぽいのに、何故か開業当時の銀座線の車両とかが走ってるヤツ」
 マリア:「アルカディアは大丈夫なんだろうか……」
 稲生:「ミッドガードとの戦争か……」
 マリア:「私達は『渡航禁止』の指示が出て来るからね。行こうにも行けない」
 稲生:「威吹は無事だといいけど……」
 マリア:「そう簡単には死なないだろう、あいつも」
 稲生:「まあね。今となれば、一緒に暮らしてた頃が懐かしいなぁ……」
 マリア:「『浸れる思い出があるのは素晴らしい』」
 稲生:「え?」
 マリア:「師匠の言葉さ。1000年も生きてると、浸れる思い出も無くなってくるんだって」
 稲生:「そうなの!?」
 マリア:「『200年で生きるのに飽きて来る。だから体を交換するんだ』ってね」
 稲生:「肉体の衰えのせいじゃなくて?」
 マリア:「それもあるんだろうけどね。……なあ、師匠、少し老けたと思わないか?」
 稲生:「えっ!?そ、そうかなぁ……?」
 マリア:「多分、勇太が初めて私の屋敷に来た時と比べれば、老けたと思わない?」
 稲生:「う、うーん……そう言われれば……」

 30代の女性が40歳を迎えたといった感じだろうか。
 しかし、その年代だとそんなに変わらない気がする。

 マリア:「にも関わらず、私の体は小さいままだよ。おかげさまで、school girlの服がまだ着れる」
 稲生:「いいことじゃない!僕は好きだよ」
 マリア:「称賛どうも。でも、私もそろそろ大人の服が着たいな」
 稲生:「イリーナ先生みたいな?」
 マリア:「将来的にはそうかな。アナスタシア先生のような黒いワンピースも捨てがたい」
 稲生:「それも似合いそうだねぇ……」
 マリア:「勇太は相変わらず、スーツか」
 稲生:「着慣れた服が1番だよ。もっとも、スーツの上にローブは似合わない。というか、まるで裁判官みたい」
 マリア:「コートに加工してもらうといいかもね。あ、でも、それだと夏は着れないか」
 稲生:「色々考える余地がありそうだね」

 JR東京駅に移動する。
 丸ノ内線というからには、当然東京駅は丸の内側からアクセスすることになる。
 こちらはJR東日本の管轄だが、もちろんJR東海の東海道新幹線のキップも買える。
 それも、券売機で。

 稲生:「どうせ新富士までだから、自由席でいいだろう」

 稲生は慣れた手付きで指定席券売機を操作した。
 指定席券売機と言っても、指定席も買えるという意味で、自由席が買えないわけではない。

 マリア:「カード使う?師匠から借りて来た」
 稲生:「ありがとう。……って、プラチナカード!?」
 マリア:「また別のクライアントから、報酬に新しいプラチナカードもらったらしいよ。世界全てのクレカ会社のプラチナカードをコンプリートする気だよ、あの大魔道師」
 稲生:「何だか凄いなぁ……。でも、あえてブラックカードには手を付けないんだ」
 マリア:「何故だかね。でも、プラチナカードだけでも凄いよ」
 稲生:「そうだね。うちの父さんでさえ、ゴールドカードがいい所なのに。で、このプラチナカード使っていいんだ?」
 マリア:「今月で使用期限切れるんだって。で、新しいカードを送って寄越さないから、この政治家には同時に政治生命を断たせるらしいよ」
 稲生:「怖っ!」
 マリア:「『金の切れ目が縁の切れ目』っていう諺、日本にもあるでしょ?」
 稲生:「あるけどねぇ」

 稲生はプラチナカードを差し込むと、暗証番号を打ち込んだ。
 これで新幹線のキップは購入できた。

 稲生:「はい、これ」
 マリア:「ありがとう」

 乗車券と新幹線特急券が同じ区間のせいか、それらが1枚に纏められて出て来た。
 なので、券売機からは2枚出て来たことになる。
 稲生はそのうちの1枚をマリアに渡した。
 まずはそれで、在来線の改札口に入る。

 稲生:「東海道新幹線は向こうだ」

 多くの人が行き交うコンコースを、新幹線改札口に向かって進む。
 JR東日本の改札機がコーポレートカラーの緑をモチーフにしているのに対し、東海道新幹線の改札機は新幹線の色である青をモチーフにしている(コーポレートカラーのオレンジではない)。
 そこから晴れて、東海道新幹線の乗客となるのである。
 もっとも、そこが本当にJR東海のエリアなのかどうかは分からない。
 営業エリア的にはそうでも、防災区画においては、そこはまだJR東日本の管轄かもしれないのだ。
 どうしてそんなちぐはぐなことになっているのかというと、東京駅が旧国鉄時代から存在しているからである。
 しかもそこを無理に分割した為に、そういう所にしわ寄せが来ているのである(ので、テロを起こしたければ、そういうちぐはぐエリアで起こすと良い。が、果たしてそこのテロリストのあなた、その場所が分かりますかな?
 JRになってから新幹線乗り場が造られた隣の品川駅ではそのようなことはない。

 稲生:「ちょっと早いけど、駅弁買って行く?」
 マリア:「あー、そうねぇ……。まあ、いいか」

 新幹線の改札内コンコースにも売店はある。
 そこで駅弁を物色した。

 稲生:「おっ、牛タン弁当がある。これにしよう」
 マリア:「ハンバーグか。私これ」
 稲生:「いいねぇ。じゃあ、これにしよう」

 あとはお茶をセットで買った。

 稲生:「Suicaで」
 店員:「はい、タッチお願いします」

 ピピッ♪

 店員:「ありがとうございましたー」

 駅弁とお茶の入ったビニール袋を提げながら、ホームに向かう。

 稲生:「今気づいたんだけど……」
 マリア:「なに?」
 稲生:「僕達、旅を始めてから1度しか現金を使ってない」

 その1回だけ現金を使ったのは、白馬八方バスターミナルの自動販売機だけである。

 マリア:「Ah...なるほどね」

 高速バスの途中休憩箇所でも、自販機や売店はICカードが使えたので。

 稲生:「でも、おかげで、Suicaの減りが早い早い」
 マリア:「2万円までしかチャージできないんだっけ?まあ、また無くなったらチャージすればいいよ。このプラチナカードでもチャージできる?」
 稲生:「券売機にもよるけど、できるよ」
 マリア:「それなら心配ない」
 稲生:「そうだね。(JR東海エリアで、そういう券売機がどれだけあるのか不明だけど……。まず、西富士宮駅とかは無いだろうなぁ……。それと……)でも、富士宮市内では少し現金を用意しておいた方がいいかもしれない」
 マリア:「どうして?」
 稲生:「向こうでカードの使えるタクシーは限られてるし、大石寺境内の売店(仲見世商店街)もキャッシュレスには対応していなかったはず」
 マリア:「そうなのか。でも、ATMはどうしよう?」
 稲生:「確か、新富士駅の中にある。それを使おう」

 銀行のキャッシュカードではなく、イリーナから渡されたプラチナカードで現金を引き出す作戦だ。
 この場合、クレジット会社から借り入れる形となる。

 マリア:「なるほど。そこは勇太に任せるよ」
 稲生:「任せてください!」

 ホームに上がると、稲生達は1号車に向かった。
 もちろん稲生の趣味である。
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“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 池袋~東京

2021-06-23 16:50:58 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月21日13:30.天候:曇 東京都豊島区池袋界隈 日蓮正宗正証寺]

 昼食を終えた稲生達は、その足で正証寺へと向かった。
 談話室に、今回の話を持ち掛けた信徒の親戚が待っているという。

 藤谷:「あれだよ。赤いゼットの田部井だよ」
 稲生:「ああ、田部井さんですか!」

 赤い日産・フェアレディZに乗っている信徒である。
 それを車が故障した当時の住職に貸したところ、“フェイク”の記者に見つかり、『堕落した日顕宗!信徒のカネを食い物に!!』『赤いスポーツカーを乗り回す腐敗堕落の坊主たち!!』と、書かれてしまった。

 稲生:「まずは御本尊様に御挨拶を」
 藤谷:「おう。あとは御住職様にも御挨拶しとけよ」
 稲生:「はーい。あとは御供養ですね」
 藤谷:「あっ、マリアさんはこっち」
 マリア:「?」
 藤谷:「うちの支部、あと1人で誓願達成なんよ。この紙(入信願書)にサインしてくれるだけでいいから」
 稲生:「班長!!」
 マリア:「メェ・ラ!」

 ボッ!(マリアの火魔法で、入信願書が燃え上がる)

 藤谷:「あぢぢぢぢっ!!あぢあぢっ!!」
 マリア:「その契約書については、サインできませんわ?」

 マリアは怒筋を立てつつ、笑顔で答えた。

 藤谷:「さ、サーセン!」
 稲生:「顕正会みたいなことを……。と、とにかく、本堂に行ってきますから!勝手なことしないでくださいね!」
 藤谷:「分かった!分かったから!」

 稲生が行ってしまう。

 藤谷:「マリアさん、危うくお寺が火事になるところだったぜ!」
 マリア:「私にとって、宗教施設という場所は何の意味も持たない。仏教寺院について言えば、せいぜい『魔女狩り』共からの退避所に過ぎない」
 藤谷:「その大事な待避所を燃やさないでくださいよ」
 マリア:「知りません」
 藤谷:「でも、その魔女狩り達から安心して逃れる方法がありますぜ?」
 マリア:「なに?」

 藤谷、もう1枚入信願書を出す。

 藤谷:「日蓮正宗の信徒になれば、キリスト教の魔女狩り共も近づいて来ませんぜ!」
 マリア:「メェ・ラ!

 ボッ!(マリアの火魔法で、【以下略】)

 藤谷:「あぢゃぢゃぢゃ!」

 懲りない藤谷であった。
 稲生が戻って来たのは、それから30分後のことだった。

 稲生:「ゴメンゴメン。御住職様とお話ししててさ……」
 マリア:「勇太、このお寺、火炎魔法で燃えると思う?」
 稲生:「木造なら割と早く……って、ええっ!?……で、藤谷班長は?」
 マリア:「両手火傷で病院に行ったよ」
 稲生:「はい!?」
 田部井:「お待たせしました。僕が田部井です」
 稲生:「ああ、田部井さん」

 40歳くらいの柔和な顔つきの壮年信徒であった。

 田部井:「うちの親戚の蔵で見つかった謎の人形について鑑定してくれるそうで、ありがとうございます」
 稲生:「あ、はい。ちょっとそのことについて、詳しい話を聞きたくて……」
 田部井:「はい。親戚については、僕の方から話しておきます」

 談話室に入る。

 田部井:「藤谷班長が火傷をされたみたいですが……」
 稲生:「何なんでしょうね?」
 マリア:「罰を与えるのは、神や仏だけではないってことですよ」
 田部井:「ええっ!?」
 マリア:「私がこれから人形を鑑定させて頂く、マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレットです。詳しいお話を聞きましょうか」
 田部井:「あ、はい。あれは先週、親戚の家に行った時のことなんですが……」

[同日16:00.天候:雨 東京都豊島区南池袋三丁目 東京メトロ池袋駅→丸ノ内線1627電車先頭車内]

 田部井から話を聞いた稲生は、その後で15時から行われる御経の時間に参加した。
 それから大石寺において御開扉を受ける為の添書を発行してもらい、それを手に正証寺をあとにした。
 キリスト教魔女狩り隊に、この寺が『魔女の退避所』だとバレて以来、街宣車による嫌がらせ活動を受けたりしたが、正証寺支部にいる数少ないガチ勢による反撃や、妙観講員達による『突撃!アポ無し折伏隊!』により鎮静化したという(もっとも、“慧妙”を読む限り、最近はアポ有りで折伏をしているもよう)。

〔ご案内致します。この電車は、荻窪行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 東京駅に移動する際、山手線ではなく、丸ノ内線にした。
 JR池袋駅で新幹線のキップを買えば、山手線の運賃込みの乗車券も購入できるのだが、稲生はあえて丸ノ内線にした。
 これは山手線だと遠回りになる上(丸ノ内線は山手線の内側を進むので、東京駅に行くにはこちらの方が早い)、丸ノ内線の方が始発駅という稲生ならではのこだわりがあるのだろう。
 まだ夕方ラッシュが本格的に始まる時間帯ではないが、それでも2~3分おきに発車する路線なだけに、始発駅たる池袋駅の時点で、もう座席が埋まるほどであった。
 どちらかというと、学生の姿の方が多い。

〔「お待たせ致しました。16時1分発、丸ノ内線、荻窪行き、発車致します」〕

 ワンマン運転を行っている関係で、車内放送は車掌ではなく運転士が行う。
 また、車掌が扱っていた発車ブザーが無くなり、代わりに発車メロディが流れるようになった。
 東京メトロのそれは、それぞれに曲名が付いている。

〔ドアが閉まります。ご注意ください。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 稲生達の電車が止まっていた1番線に流れるメロディは、“フランソワ”という。
 こちらにはホームドアがあり、それが閉まり切ってから発車する。

〔この先、揺れますので、ご注意ください。次は、新大塚です。この電車は、荻窪行きです〕
〔The next stop is Shin-otsika(M24).This train is bound for Ogikubo.〕

 稲生:「藤谷班長からお詫びのメッセージが来たんだけど……何かあった?」
 マリア:「あまり、魔道士をナメないようにという警告……かな」
 稲生:「ええ?」
 マリア:「Hum.」

 ちょっとだけドヤ顔をするマリアだった。
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“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 新宿~池袋

2021-06-23 11:21:37 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月21日12:13.天候:曇 東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目 バスタ新宿→新宿区新宿三丁目 JR新宿駅→埼京線1225K電車10号車内]

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、バスタ新宿、バスタ新宿に到着です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意願います」〕

 長野県などの中部地方では雨だったが、首都圏に入ってからは雨が上がり、しかし空は曇っていた。

 マリア:「日本の夏はジメジメしていて、これがどうにも慣れない」
 稲生:「そうか。ヨーロッパの夏は往々にして乾燥してるもんね」

 バスはバスタ新宿の到着場、3階に到着した。

 運転手:「ありがとうございました」
 稲生:「お世話様でした」
 マリア:「Thank you.」

 バスを降りると、係員がバスの荷物室のハッチを開けて、乗客達の荷物を降ろしている。
 しかし魔道士達は、大きな荷物は無い。
 せいぜい、マリアには人形を入れているハンドバッグや、稲生が肩から掛けている小さな肩掛け鞄くらいしか無い。
 あとは、羽織っているローブのポケットの中に全て入るのである。

 稲生:「久しぶりの東京だ」
 マリア:「お腹空いたなぁ……」
 稲生:「池袋に行けば、藤谷班長がお昼を御馳走してくれますよ」
 マリア:「そうか。まあ、藤谷さんの事だから、日本食になるかな」
 稲生:「行きつけの定食屋かそば屋だったりして」
 マリア:「イブキがきつねソバ食べてた所?」
 稲生:「そうそう」
 マリア:「エキゾチック過ぎる……」
 稲生:「はは、マリアも来ることは分かってるから、そういう所は無いと思う」

 バスタ新宿からJR新宿駅に移動する。
 新宿駅の賑わいぶりは作者も閉口するほどの上級コースぶりだが、全ての場所がそうだというわけでもない。
 バスタ新宿~新南口付近はそこまでルートも複雑ではなく、しかもそこまで人が多いというわけでもないので、新宿駅の中では比較的初級コースに近い場所だと言える(多分、上級ぶりを醸し出しているのは多くの私鉄が乗り入れる西口付近だろう)。

 稲生:「池袋まで直行するのは、やっぱり埼京線かな」
 マリア:「あのモスグリーンの電車か」
 稲生:「そう」

 マリアが同じ色のスカートを穿いている為、座席に座ると、まるでシートの色とスカートの色が同化してしまうかのように見えるのだ。
 マリアが緑色の物を必ず見つけるのは、好きな色だからではなく、契約悪魔ベルフェゴールのシンボルカラーが緑である為である。
 尚、稲生が一人前になったら契約が内定しているアスモデウスはピンク色だと言われているが……。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。3番線に停車中の電車は、12時27分発、各駅停車、武蔵浦和行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、池袋に止まります〕

 埼京線のホームに行くと、JRの電車が発車を待っていた。
 10号車に行けば行くほど空いているが、新南口からだと、正にその後ろの車両に近い所に出る。
 始発の各駅停車で昼間ということもあり、車内は空いていた。
 モスグリーンの座席に腰かけると、発車の時刻が迫って来た。

〔「お待たせ致しました。12時27分発、埼京線各駅停車、武蔵浦和行き、まもなく発車致します」〕

 稲生:「そうだ。藤谷班長に連絡しよう」

 稲生はスマホを取り出した。
 藤谷宛てに文章を打ち込んでいると、ホームから発車メロディが流れて来る。

〔3番線の埼京線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 埼京線や湘南新宿ラインのホームには、まだホームドアは設置されていない。
 それは、このホームに停車する電車の規格がまちまちだからだろう。
 10両編成の通勤電車が来ることもあれば、15両編成のグリーン車付き中距離電車が来ることもあるし、6両編成の特急列車が来ることもある。
 これでは規格が統一化されていないと設置できないホームドアが設置できるわけがない。
 電車は定刻通りに発車した。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車、武蔵浦和行きです。次は、池袋です〕
〔This is the Saikyo line train for Musashi-Urawa(JA21).The next station is Ikebukuro(JA12).〕

 稲生:「藤谷班長から返信来た」
 マリア:「何て?」
 稲生:「『東口改札で待つ』だって」
 マリア:「それだけか」
 稲生:「うん。それだけ」
 ミク人形:「クー……スー……」
 ハク人形:「クー……スー……」

 マリアのバッグの中で寝ている使役人形2体。
 連結器横の車椅子スペースでは……。

 ベルフェゴール:「フフフ……。やっと緑色の電車に乗ってくれたねぇ……」
 アスモデウス:「ピンク色は無いのかしら?」
 ベルフェゴール:「フフフ……。残念ながら都内のJR電車に、ピンク色は存在しないのだ」
 アスモデウス:「ちっ」

 英国紳士風の恰好をしたベルフェゴールに、渋谷駅から乗ったのかと思うような白ギャルの姿をしたアスモデウスがいた。

[同日12:33.天候:曇 東京都豊島区南池袋一丁目 JR池袋駅]

〔まもなく池袋、池袋。お出口は、右側です。山手線、湘南新宿ライン、西武池袋線、東武東上線、地下鉄丸ノ内線、地下鉄有楽町線と地下鉄副都心線はお乗り換えです〕

 下車駅が近づいて来た。
 乗車時間およそ5分の鉄旅であるが、途中にある山手線の駅をいくつも飛ばして走るので、各駅停車ながら、まるで快速のようである。

 稲生:「池袋駅も人が多い駅だから、はぐれないように気をつけて」
 マリア:「分かった」

〔いけぶくろ~、池袋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、板橋に止まります〕

 ターミナル駅の1つでもある池袋駅の下車客は多い。
 ここで電車を降り、コンコースへの階段を下りる。
 改札内コンコースも人が多いが、改札外コンコースはもっと多い。
 ピピッ♪という音と共に自動改札口を抜けると、藤谷が待っていた。

 藤谷:「よぉ、お2人さん!」
 稲生:「藤谷班長、お久しぶりです」
 藤谷:「いや、全くだな!」

 藤谷は身長180cm以上、体重100キロの巨漢で強面であることから、彼に近づく者は殆どいない。
 ましてや上下黒スーツに、白いワイシャツはノーネクタイ、手にはセカンドバッグという出で立ちでは、まるでどこぞの組の幹部の方。

 藤谷:「長旅でさぞお疲れだろう!すぐ、飯にしよう!こっちだ!ついて来てくれ!」
 稲生:「さすがは班長、話が早い」
 藤谷:「はっはっは!こう見えても俺は、北海道ではキミ達のお師匠さんを担いで助けたクチだぞ!」

 藤谷の武勇伝の1つである。
 それが縁で、藤谷もイリーナの占いを受けられることになったわけである。
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