[6月26日19:30.天候:曇 埼玉県川口市 稲生家]
イオンモールからタクシーで帰って来た稲生家の面々。
稲生宗一郎:「勇太、荷物降ろすの手伝え」
稲生勇太:「はいはい」
タクシーのハッチから荷物を降ろす。
マリア:「勇太、何だか申し訳ない」
勇太:「いいんですよ!」
マリアがそう言うのには訳があった。
稲生家の旧宅には来客用の折り畳みベッドとエアベッドがあったのだが、爆発解体時に壊れてしまった。
新築時にはそれはまだ購入されておらず、マリアが泊まりに来た時にはフローリングの床に布団を敷いて寝る形となっていた。
そこで宗一郎が、イオンモールのニトリで購入したというわけである。
折り畳みベッドでも良かったのだが、それだとさすがに持ち帰れない為、エアベッドにした。
マリア:「あなた達も手伝って」
ミカエラ:「かしこまりました」
クラリス:「御意」
人形形態だったミクとハクが人間形態になると、タクシーに積んでいた他の荷物を持ち出し始めた。
宗一郎:「マリアさんの魔法、便利だねぇ」
勇太:「う、うん。(もはや魔道士の存在と魔法に驚かない両親)」
これは早くから、威吹の妖術を見て来たことによる。
妖術が魔法に換わっただけだ。
威吹は妖術を惜しげも無く使っていた為(稲生家の人々に対するマウント取りもあったそうだ)、稲生家の人々は早くから妖術には慣れてしまっていた。
なのでマリアが魔道士で魔法を使うことについても、もはや突っ込むことは無かった。
佳子:「さあ、中へどうぞ」
先に降りていた母親の佳子が玄関のドアを開錠していた。
マリアが恐縮しているのは、他にもある。
死んだはずのマリアの母親が悪い魔道士として現れ、魔法で稲生家を全壊させたからである。
毒親もいいところである。
最後にはダンテに捕まり、今は魔界で仕置きを受けているはずだ。
勇太:「じゃあ、3階に運ぶよ」
マリア:「分かった」
ホームエレベーターに乗り込む。
エレベーターの広さはトイレくらい。
定員は3名である。
〔上へ参ります〕
3階はたまに帰って来る勇太の部屋と、事実上のマリアの部屋である洋室の客間が1つある。
マリア:「うちの屋敷にも、エレベーター設置したいな」
勇太:「そういえば、地下1階、地上3階建てなのにエレベーターが無いね」
厨房用のエレベーターはある。
学校の給食室によくある、あのエレベーターだ。
但し、食事は基本的に1Fの大食堂で取るので、あまり使われていない。
〔3階です〕
エレベーターを降りて、客室の方に向かう。
勇太:「ここでいいかな?」
エアベッドを取り出して、床に置く。
そして、コンセントを繋いで早速膨らませた。
マリア:「そうそう。前使ってたのも、こんな感じだったな」
勇太:「そうだね。シングルだと狭くない?」
マリア:「いや、大丈夫。これくらいがちょうどいい」
勇太:「それならいいけど……」
ミカエラ:「マスター、お布団をお借りして参りました」
クラリス:「早速メイキング致します」
マリア:「ありがとう。勇太、後でシャワー使わせてね」
勇太:「分かったよ」
3階にあるのは他にシャワールームとトイレ。
勇太:「じゃあ、ごゆっくり」
マリア:「ありがとう」
勇太が再び1階に下り、リビングに行くと、宗一郎がどこかへ電話していた。
宗一郎:「……そうですか。夜分に申し訳ありませんでした」
電話を切るのを見計らって話し掛ける。
勇太:「父さん、どうしたの?」
宗一郎:「早速、親戚に電話して聞いているんじゃないか」
勇太:「えっ、もう!?」
宗一郎:「まだそんなに夜遅い時間帯じゃないし、いいかなと思ってな」
勇太:「それで、どうだったの?」
宗一郎:「1軒目の安城の家はダメだった。そもそも、仙台とは縁もゆかりも無い」
勇太:「あらま」
宗一郎:「次は日高市だ」
勇太:「北海道じゃないヨ」
佳子:「勇太、カメラ目線でメタ発言はやめなさい。というか、最初から宮城の家に電話したら?」
勇太:「悟朗さんの実家?」
佳子:「そこは蔵が無かったでしょ?お祖父さんのお兄さんの家よ。勇太も小さい時に、行ったことがあるでしょ?」
勇太:「あー、何かあったような無かったような……。東北本線で田んぼだらけの所を走って、小さな駅で降りた記憶が……」
佳子:「そこよ、そこ」
勇太:「あの頃の719系は、もう無いんだろうな」
大体が701系かE721系に置き換わっている。
佳子:「何の話をしてるのよ……」
で、どうなったかというと……。
宗一郎:「宮城の家が可能性大だぞ」
勇太:「ほんと!?」
宗一郎:「お祖父さんのお兄さんの奥さんは、その近所に住む幼馴染だったそうだが、学生時代、つまり女学校時代は仙台の中央学園に通っていたらしい。で、戦時中はその女学校の寮で暮らしていたそうだ」
勇太:「ということは!?」
宗一郎:「終戦後、奥さんは女学校が廃校になってしまった為、卒業できずに地元に帰り、そこでお祖父さんのお兄さんと結婚したそうなんだな」
勇太:「編入しなかったんだね」
宗一郎:「戦後の混乱期だったから、皆が皆、他の女学校に編入したわけではないだろう。地元が仙台で、しかも裕福な家庭の娘さんだけだっただろうな」
勇太:「で、人形は?」
宗一郎:「人形のことは何も聞いていないそうだ。あ、もうそのお兄さんも奥さんも他界されてるんだけどな。話を聞いたのは、息子さんだ。つまり、私の従兄だよ。まあ、私よりもずっと年上の従兄だけどな」
勇太:「だろうね。じゃあ、まだ難しいか……」
宗一郎:「ただ戦時中、一時期、地元に疎開していたらしく、その時、何回かお兄さんの家に行っていたそうなんだ。だから、もしかしたらその時……っていう可能性は考えられる」
勇太:「それかもしれない!……何とか、蔵を探すことはできないかな?」
宗一郎:「蔵の鍵が無くて、開けられないそうなんだ」
勇太:「それなら大丈夫。マリアの魔法で開けられるから」
宗一郎:「便利だなぁ、魔道士って……」
勇太:「だから、何とか僕達が蔵を探させてもらえるようにできないかな?」
宗一郎:「分かった。話してみる。こんな話をしていたら、もう時間切れだ。明日、また話してやるよ」
勇太:「ありがとう!」
佳子:「その『青い目の人形』って、それぞれ名前が付いてるんでしょう?宮城の家の人形は何て言うのかしら?」
勇太:「……マリアンナ、だってさ」
佳子:「ええっ!?それって……」
勇太:「そう。マリアさんの名前だよ。偶然、マリアさんと同じ名前の人形が未だに蔵に閉じ込められてるんだ。だからこそ、マリアさんは何としてでも助け出したいと思ってるんじゃないかな?」
宗一郎:「そういうことか。分かった。そういうことなら明日、また電話してあげよう。農家だから、逆に連絡は朝早い方がいいかもしれんな」
イオンモールからタクシーで帰って来た稲生家の面々。
稲生宗一郎:「勇太、荷物降ろすの手伝え」
稲生勇太:「はいはい」
タクシーのハッチから荷物を降ろす。
マリア:「勇太、何だか申し訳ない」
勇太:「いいんですよ!」
マリアがそう言うのには訳があった。
稲生家の旧宅には来客用の折り畳みベッドとエアベッドがあったのだが、爆発解体時に壊れてしまった。
新築時にはそれはまだ購入されておらず、マリアが泊まりに来た時にはフローリングの床に布団を敷いて寝る形となっていた。
そこで宗一郎が、イオンモールのニトリで購入したというわけである。
折り畳みベッドでも良かったのだが、それだとさすがに持ち帰れない為、エアベッドにした。
マリア:「あなた達も手伝って」
ミカエラ:「かしこまりました」
クラリス:「御意」
人形形態だったミクとハクが人間形態になると、タクシーに積んでいた他の荷物を持ち出し始めた。
宗一郎:「マリアさんの魔法、便利だねぇ」
勇太:「う、うん。(もはや魔道士の存在と魔法に驚かない両親)」
これは早くから、威吹の妖術を見て来たことによる。
妖術が魔法に換わっただけだ。
威吹は妖術を惜しげも無く使っていた為(稲生家の人々に対するマウント取りもあったそうだ)、稲生家の人々は早くから妖術には慣れてしまっていた。
なのでマリアが魔道士で魔法を使うことについても、もはや突っ込むことは無かった。
佳子:「さあ、中へどうぞ」
先に降りていた母親の佳子が玄関のドアを開錠していた。
マリアが恐縮しているのは、他にもある。
死んだはずのマリアの母親が悪い魔道士として現れ、魔法で稲生家を全壊させたからである。
毒親もいいところである。
最後にはダンテに捕まり、今は魔界で仕置きを受けているはずだ。
勇太:「じゃあ、3階に運ぶよ」
マリア:「分かった」
ホームエレベーターに乗り込む。
エレベーターの広さはトイレくらい。
定員は3名である。
〔上へ参ります〕
3階はたまに帰って来る勇太の部屋と、
マリア:「うちの屋敷にも、エレベーター設置したいな」
勇太:「そういえば、地下1階、地上3階建てなのにエレベーターが無いね」
厨房用のエレベーターはある。
学校の給食室によくある、あのエレベーターだ。
但し、食事は基本的に1Fの大食堂で取るので、あまり使われていない。
〔3階です〕
エレベーターを降りて、客室の方に向かう。
勇太:「ここでいいかな?」
エアベッドを取り出して、床に置く。
そして、コンセントを繋いで早速膨らませた。
マリア:「そうそう。前使ってたのも、こんな感じだったな」
勇太:「そうだね。シングルだと狭くない?」
マリア:「いや、大丈夫。これくらいがちょうどいい」
勇太:「それならいいけど……」
ミカエラ:「マスター、お布団をお借りして参りました」
クラリス:「早速メイキング致します」
マリア:「ありがとう。勇太、後でシャワー使わせてね」
勇太:「分かったよ」
3階にあるのは他にシャワールームとトイレ。
勇太:「じゃあ、ごゆっくり」
マリア:「ありがとう」
勇太が再び1階に下り、リビングに行くと、宗一郎がどこかへ電話していた。
宗一郎:「……そうですか。夜分に申し訳ありませんでした」
電話を切るのを見計らって話し掛ける。
勇太:「父さん、どうしたの?」
宗一郎:「早速、親戚に電話して聞いているんじゃないか」
勇太:「えっ、もう!?」
宗一郎:「まだそんなに夜遅い時間帯じゃないし、いいかなと思ってな」
勇太:「それで、どうだったの?」
宗一郎:「1軒目の安城の家はダメだった。そもそも、仙台とは縁もゆかりも無い」
勇太:「あらま」
宗一郎:「次は日高市だ」
勇太:「北海道じゃないヨ」
佳子:「勇太、カメラ目線でメタ発言はやめなさい。というか、最初から宮城の家に電話したら?」
勇太:「悟朗さんの実家?」
佳子:「そこは蔵が無かったでしょ?お祖父さんのお兄さんの家よ。勇太も小さい時に、行ったことがあるでしょ?」
勇太:「あー、何かあったような無かったような……。東北本線で田んぼだらけの所を走って、小さな駅で降りた記憶が……」
佳子:「そこよ、そこ」
勇太:「あの頃の719系は、もう無いんだろうな」
大体が701系かE721系に置き換わっている。
佳子:「何の話をしてるのよ……」
で、どうなったかというと……。
宗一郎:「宮城の家が可能性大だぞ」
勇太:「ほんと!?」
宗一郎:「お祖父さんのお兄さんの奥さんは、その近所に住む幼馴染だったそうだが、学生時代、つまり女学校時代は仙台の中央学園に通っていたらしい。で、戦時中はその女学校の寮で暮らしていたそうだ」
勇太:「ということは!?」
宗一郎:「終戦後、奥さんは女学校が廃校になってしまった為、卒業できずに地元に帰り、そこでお祖父さんのお兄さんと結婚したそうなんだな」
勇太:「編入しなかったんだね」
宗一郎:「戦後の混乱期だったから、皆が皆、他の女学校に編入したわけではないだろう。地元が仙台で、しかも裕福な家庭の娘さんだけだっただろうな」
勇太:「で、人形は?」
宗一郎:「人形のことは何も聞いていないそうだ。あ、もうそのお兄さんも奥さんも他界されてるんだけどな。話を聞いたのは、息子さんだ。つまり、私の従兄だよ。まあ、私よりもずっと年上の従兄だけどな」
勇太:「だろうね。じゃあ、まだ難しいか……」
宗一郎:「ただ戦時中、一時期、地元に疎開していたらしく、その時、何回かお兄さんの家に行っていたそうなんだ。だから、もしかしたらその時……っていう可能性は考えられる」
勇太:「それかもしれない!……何とか、蔵を探すことはできないかな?」
宗一郎:「蔵の鍵が無くて、開けられないそうなんだ」
勇太:「それなら大丈夫。マリアの魔法で開けられるから」
宗一郎:「便利だなぁ、魔道士って……」
勇太:「だから、何とか僕達が蔵を探させてもらえるようにできないかな?」
宗一郎:「分かった。話してみる。こんな話をしていたら、もう時間切れだ。明日、また話してやるよ」
勇太:「ありがとう!」
佳子:「その『青い目の人形』って、それぞれ名前が付いてるんでしょう?宮城の家の人形は何て言うのかしら?」
勇太:「……マリアンナ、だってさ」
佳子:「ええっ!?それって……」
勇太:「そう。マリアさんの名前だよ。偶然、マリアさんと同じ名前の人形が未だに蔵に閉じ込められてるんだ。だからこそ、マリアさんは何としてでも助け出したいと思ってるんじゃないかな?」
宗一郎:「そういうことか。分かった。そういうことなら明日、また電話してあげよう。農家だから、逆に連絡は朝早い方がいいかもしれんな」