[6月27日07:00.天候:晴 埼玉県川口市 稲生家3F・稲生勇太の部屋]
稲生勇太:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
朝の勤行を終えると、勇太は部屋の外に出た。
勇太:「おっと!?」
ミク人形:「No!」
ハク人形:「Keep out!」
シャワールームからシャワーを使う音がする。
どうやら、勇太が朝の勤行中に起き出し、使用しているようだ。
一応、シャワーブースの入口は、勇太の部屋からは見えないようになっている。
脱衣カゴの前では、ミク人形とハク人形が見張っていた。
勇太:「だ、大丈夫だよ。覗いたりしないよ」
言いながら勇太はシャワールームの隣にあるトイレに入った。
シャワールームとトイレの間には洗面台がある。
用を足した後で水を流した時、勇太はふと気が付いた。
トイレの水を使用したことで、シャワーブースの水に影響が出やしないかと。
幸いにして水道管が違うらしく、そのような影響は無かったということだ。
トイレの水にお湯は使わないからだろう。
[同日07:30.天候:晴 稲生家1F・ダイニング]
稲生宗一郎:「おっ、勇太。宮城の稲生さんに電話しておいたぞ」
勇太:「ありがとう。で、何だって?」
宗一郎:「まずは驚いてたな。だけど、いいってさ。鍵を開けてくれるなら、ついでに蔵の整理をしたいってことだ」
勇太:「それは良かった」
蔵の整理を手伝いがてら、人形の捜索ができるし、逆にその家の住人に人形探しを手伝ってもらうことも可能だろう。
宗一郎:「ただ、今日はダメだ」
勇太:「えっ?」
宗一郎:「いきなり今日、『今から行きます』じゃ、慌ただし過ぎるだろう」
勇太:「じゃあ、どうしたらいい?」
宗一郎:「明日にしなさい」
勇太:「僕達はいいけど、明日は月曜日だよ?いいの?」
宗一郎:「お祖父さんのお兄さんの息子さんは、もう定年退職して農家を継いでるんだ。平日・休日関係無いよ」
勇太:「そ、そうか……。じゃあ、明日行くよ」
宗一郎:「そうするといい」
勇太:「でも、なるべく近くまでは行った方がいいかもね」
宗一郎:「前泊するのか?」
勇太:「うん。だって、遠いでしょ?」
宗一郎:「そうだな。新幹線で行って、そこからバスに乗り換えることになる」
勇太:「それなら、早い方がいいでしょ?」
宗一郎:「別に朝一の新幹線で行っても間に合うと思うよ?お前なら、そんなのすぐに検索できるだろう?」
勇太:「そりゃそうだけど……」
マリア:「勇太、思わぬ形での帰省だ。御両親は、ゆっくりして欲しいんだよ」
勇太:「そ、そうなんだ」
マリア:「私としては一刻でも早く助け出したいという気持ちはあるけれど、焦りは禁物だと思う」
勇太:「分かったよ。朝一の新幹線で行こう」
勇太はそうと決まると、早速、家のPCを拝借した。
勇太:「最寄り駅はどこ?」
宗一郎:「くりこま高原駅だ。そこからバスに乗って……で、最寄りのバス停が……」
勇太:「フムフム」
宗一郎:「幸いバス停からは歩いて行ける距離だ」
勇太:「“ベタな田舎のバスの法則”通り、本数が数えるほどしかない」
宗一郎:「そりゃそうだろう」
マリア:「勇太、いざとなったら帰りはルゥ・ラを使う」
勇太:「大丈夫なの?」
マリア:「何とかする」
勇太:「そうか。なるべく、そんなこと無いようにしたいね」
勇太がキーボードを叩いて、バスの路線図を出していると、マリアがふと何かに気づいた。
マリア:「ん?このバス会社……」
勇太:「なに?栗原市民バスがどうしたの?」
マリア:「前に一度乗らなかった?ほら、冥鉄に乗った時、たった一両の電車で、着いた所が廃線の駅で……」
勇太:「ああ!栗原電鉄の廃線か!確かに、それで終点まで乗せられてしまって、帰りは廃止代替バスに乗ったんだっけ。よく覚えてるね」
マリア:「私はね。師匠はとっくに忘れてるだろう」
勇太:「先生は、悠久の時を生きる方だから……」
マリア:「その道を私達も行くんだからね?」
勇太:「あ……」
[同日09:00.天候:晴 埼玉県蕨市 JR蕨駅]
交通手段を決めた稲生達は、その足で最寄り駅まで向かった。
川口市在住でありがら、最寄り駅が隣の市というのも不思議な話だが、東京圏ではそんなに珍しいことではない。
特に、日本一狭い市で有名な蕨市は、市内の鉄道駅が蕨駅しか無いほどである(近隣には他に鉄道路線も通っているのだが、蕨市の面積が狭い為にその鉄道路線に市域が掛かっていない)。
特に東口は、更にそこから100mくらい歩けば、もう川口市に入ってしまうのである。
マリア:「それにしても……」
勇太:「なに?」
マリア:「前に住んでいた町よりも、日本人じゃない住民が多いのは分かった」
勇太:「川口市・蕨市は外国人が多いことで有名だね」
マリア:「確かに日本語じゃない言語が聞こえて来る」
勇太:「うん、そうだね」
マリア:「私の英語が通じそうな者はいるか?」
勇太:「多分、いないと思いますw」
作者は英会話スクールの勧誘を断る時に、こう言った。
『だってこの町、英語喋る外国人がいないじゃん』と。
アジア系と中東系ばかりでは、そりゃそうだろう。
勇太:「そもそも白人がいないみたいなんで、この町」
マリア:「私にとってはここは外国だから、私が目立つのは分かるが、これだけ他国の人間がいて、私と同じ人種がいないというのは……」
勇太:「多分、白人はそもそも移民させる理由が無いのでしょう」
マリア:「エレーナはほぼ移民みたいなものだぞ、あれ」
勇太:「ウクライナかぁ……」
マリア:「『どうして日本は難民申請が厳しいんだぜ、あぁっ?!』ってキレてたらしい」
勇太:「ウクライナじゃ微妙だろうなぁ……」
マリア:「『素直にロシア人になったら?』と言ってやったが、『それだけは断固お断りだぜ』だって」
勇太:「そうなのか。あ、それで、『稲生氏、私と結婚しようぜ!?これで私も合法的に日本国籍取得だぜ!』って言ってたのか」
マリア:「あいつ、後で全力でぶっころ!!」
明日の新幹線は何とか予約できた。
現地の路線バスのダイヤに合わせて予約したのだが、それではとても始発の新幹線でというわけにはいかなかった。
稲生勇太:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
朝の勤行を終えると、勇太は部屋の外に出た。
勇太:「おっと!?」
ミク人形:「No!」
ハク人形:「Keep out!」
シャワールームからシャワーを使う音がする。
どうやら、勇太が朝の勤行中に起き出し、使用しているようだ。
一応、シャワーブースの入口は、勇太の部屋からは見えないようになっている。
脱衣カゴの前では、ミク人形とハク人形が見張っていた。
勇太:「だ、大丈夫だよ。覗いたりしないよ」
言いながら勇太はシャワールームの隣にあるトイレに入った。
シャワールームとトイレの間には洗面台がある。
用を足した後で水を流した時、勇太はふと気が付いた。
トイレの水を使用したことで、シャワーブースの水に影響が出やしないかと。
幸いにして水道管が違うらしく、そのような影響は無かったということだ。
トイレの水にお湯は使わないからだろう。
[同日07:30.天候:晴 稲生家1F・ダイニング]
稲生宗一郎:「おっ、勇太。宮城の稲生さんに電話しておいたぞ」
勇太:「ありがとう。で、何だって?」
宗一郎:「まずは驚いてたな。だけど、いいってさ。鍵を開けてくれるなら、ついでに蔵の整理をしたいってことだ」
勇太:「それは良かった」
蔵の整理を手伝いがてら、人形の捜索ができるし、逆にその家の住人に人形探しを手伝ってもらうことも可能だろう。
宗一郎:「ただ、今日はダメだ」
勇太:「えっ?」
宗一郎:「いきなり今日、『今から行きます』じゃ、慌ただし過ぎるだろう」
勇太:「じゃあ、どうしたらいい?」
宗一郎:「明日にしなさい」
勇太:「僕達はいいけど、明日は月曜日だよ?いいの?」
宗一郎:「お祖父さんのお兄さんの息子さんは、もう定年退職して農家を継いでるんだ。平日・休日関係無いよ」
勇太:「そ、そうか……。じゃあ、明日行くよ」
宗一郎:「そうするといい」
勇太:「でも、なるべく近くまでは行った方がいいかもね」
宗一郎:「前泊するのか?」
勇太:「うん。だって、遠いでしょ?」
宗一郎:「そうだな。新幹線で行って、そこからバスに乗り換えることになる」
勇太:「それなら、早い方がいいでしょ?」
宗一郎:「別に朝一の新幹線で行っても間に合うと思うよ?お前なら、そんなのすぐに検索できるだろう?」
勇太:「そりゃそうだけど……」
マリア:「勇太、思わぬ形での帰省だ。御両親は、ゆっくりして欲しいんだよ」
勇太:「そ、そうなんだ」
マリア:「私としては一刻でも早く助け出したいという気持ちはあるけれど、焦りは禁物だと思う」
勇太:「分かったよ。朝一の新幹線で行こう」
勇太はそうと決まると、早速、家のPCを拝借した。
勇太:「最寄り駅はどこ?」
宗一郎:「くりこま高原駅だ。そこからバスに乗って……で、最寄りのバス停が……」
勇太:「フムフム」
宗一郎:「幸いバス停からは歩いて行ける距離だ」
勇太:「“ベタな田舎のバスの法則”通り、本数が数えるほどしかない」
宗一郎:「そりゃそうだろう」
マリア:「勇太、いざとなったら帰りはルゥ・ラを使う」
勇太:「大丈夫なの?」
マリア:「何とかする」
勇太:「そうか。なるべく、そんなこと無いようにしたいね」
勇太がキーボードを叩いて、バスの路線図を出していると、マリアがふと何かに気づいた。
マリア:「ん?このバス会社……」
勇太:「なに?栗原市民バスがどうしたの?」
マリア:「前に一度乗らなかった?ほら、冥鉄に乗った時、たった一両の電車で、着いた所が廃線の駅で……」
勇太:「ああ!栗原電鉄の廃線か!確かに、それで終点まで乗せられてしまって、帰りは廃止代替バスに乗ったんだっけ。よく覚えてるね」
マリア:「私はね。師匠はとっくに忘れてるだろう」
勇太:「先生は、悠久の時を生きる方だから……」
マリア:「その道を私達も行くんだからね?」
勇太:「あ……」
[同日09:00.天候:晴 埼玉県蕨市 JR蕨駅]
交通手段を決めた稲生達は、その足で最寄り駅まで向かった。
川口市在住でありがら、最寄り駅が隣の市というのも不思議な話だが、東京圏ではそんなに珍しいことではない。
特に、日本一狭い市で有名な蕨市は、市内の鉄道駅が蕨駅しか無いほどである(近隣には他に鉄道路線も通っているのだが、蕨市の面積が狭い為にその鉄道路線に市域が掛かっていない)。
特に東口は、更にそこから100mくらい歩けば、もう川口市に入ってしまうのである。
マリア:「それにしても……」
勇太:「なに?」
マリア:「前に住んでいた町よりも、日本人じゃない住民が多いのは分かった」
勇太:「川口市・蕨市は外国人が多いことで有名だね」
マリア:「確かに日本語じゃない言語が聞こえて来る」
勇太:「うん、そうだね」
マリア:「私の英語が通じそうな者はいるか?」
勇太:「多分、いないと思いますw」
作者は英会話スクールの勧誘を断る時に、こう言った。
『だってこの町、英語喋る外国人がいないじゃん』と。
アジア系と中東系ばかりでは、そりゃそうだろう。
勇太:「そもそも白人がいないみたいなんで、この町」
マリア:「私にとってはここは外国だから、私が目立つのは分かるが、これだけ他国の人間がいて、私と同じ人種がいないというのは……」
勇太:「多分、白人はそもそも移民させる理由が無いのでしょう」
マリア:「エレーナはほぼ移民みたいなものだぞ、あれ」
勇太:「ウクライナかぁ……」
マリア:「『どうして日本は難民申請が厳しいんだぜ、あぁっ?!』ってキレてたらしい」
勇太:「ウクライナじゃ微妙だろうなぁ……」
マリア:「『素直にロシア人になったら?』と言ってやったが、『それだけは断固お断りだぜ』だって」
勇太:「そうなのか。あ、それで、『稲生氏、私と結婚しようぜ!?これで私も合法的に日本国籍取得だぜ!』って言ってたのか」
マリア:「あいつ、後で全力でぶっころ!!」
明日の新幹線は何とか予約できた。
現地の路線バスのダイヤに合わせて予約したのだが、それではとても始発の新幹線でというわけにはいかなかった。