報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「青い目の人形」 仙台市内

2021-07-16 19:59:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[6月29日17:00.天候:晴 宮城県仙台市泉区泉中央 仙台市地下鉄泉中央駅→列番不明電車先頭車内]

 泉中央駅で稲生理恵と別れた稲生勇太とマリアは、駅構内に入った。
 そろそろ夕方ラッシュが始まる時間帯に差し掛かっており、駅構内も賑わいつつある。

〔お知らせ致します。この電車は、富沢行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕

 17時ちょうど発の電車に乗り込み、発車を待つ。
 マリアのバッグは人形が2体から3体に増えたので、かなり膨れ上がっていた。
 今のところ、まだマリアンナ人形には『魔法の糸』を通していない為、ミク人形やハク人形にように自由に動き回ることはない。

〔「お待たせ致しました。17時ちょうど発、富沢行き、まもなく発車致します」〕

 仙台市地下鉄はワンマン運転。
 肉声放送は運転士が行う。
 ワンマン運転ならば、運転席に座ったままドアスイッチが操作できるわけだが、この駅では運転士が立って、車掌のように直接ホーム監視をする。
 17時になり、駅構内に時報である“荒城の月”のオルゴールが鳴り始める頃、自動放送が響き渡った。

〔1番線から、富沢行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 短い発車サイン音が鳴り、それからドアが閉まる。
 先に車両のドアが閉まり切ってから、ホームドアが閉まり切るところはJR東日本と同じ。
 噂では、西日本では先にホームドアの方が閉まるのだとか……?
 尚、仙台市地下鉄のホームドアのチャイム音は札幌市地下鉄のそれと同じ。
 恐らく、メーカーが同じなのだろう。

〔この先、揺れますので、ご注意ください。次は八乙女、八乙女です。バスご利用の方は、バスプール方面出口をご利用ください〕
〔The next stop is Yaotome station.〕
〔日蓮正宗妙遍寺へは、次でお降りください。また、日蓮正宗日浄寺へは北仙台で。日蓮正宗佛眼寺へは、愛宕橋でお降りください。尚、冨士大石寺顕正会仙台会館は終点、富沢でお降りください〕

 何気に宮城野区の善修寺以外は、南北線沿線に存在する仙台市内の日蓮正宗寺院。
 え?終点の富沢には何があるって?【お察しください】。
 創価学会の会館は地下鉄でのアクセスが不便な場所に存在するのだが、あまりこんなこと書くと、んっ?さんに怒られるからなぁ……。

 マリア:「何か聞こえる」

 電車はホーム停車時には地下にいたのだが、駅を出発すると地上に出る。
 コロナ禍の影響で、窓が少し開いている状態で走行しているものだから、外からの音が聞こえて来る。

 マリア:「何か、メロディのような……」
 稲生:「17時だから、防災無線が流れてるんだよ。さいたま市でも夕方に流れてたでしょ?ああいうのが仙台市でも流れてるんだよ」

 尚、本来、防災無線で音楽を流すことは禁止されている。
 但し、『試験放送』としての時報は例外となっている。
 元々は禁止事項であるものを例外としているわけだから、自治体ごとに流す曲が違って面白い。
 さいたま市のように季節ごとに曲を変える所もあるし、一曲一辺倒という所もある。

 マリア:「Greensleeves...」
 稲生:「うん、“グリーンスリーブス”だね」
 マリア:「日本でも聴くとは思わなかったな」
 稲生:「日本でも有名で、電話の保留音にも使われてるくらいだよ」
 マリア:「そうなんだ」

 “グリーンスリーブス”はイングランド民謡である為、イングランドに住んでいたマリアもよく耳にはしていたらしい。
 但し、日本のアレンジ版ではなく、本当の原曲。

 稲生:「他にも“蛍の光”とか……」
 マリア:「それはスコットランド。『昼はアメリカ、夜はスコットランド。なーんだ?』」
 稲生:「『ヨドバシカメラ』。昼の営業中は『ヨドバシカメラの歌(アメリカ行軍曲リパブリック賛歌原曲)』が流れ、夜の閉店時には『蛍の光(スコットランド民謡原曲)』が流れるから。……って、これ、登用試験に出るかなぁ?」
 マリア:「大丈夫!絶対に出るよ!日本での修行時代の事が出題されるから!」

 実は今回のクエスト達成後、ついに勇太に対して登用試験が行われることになった。
 ただ単に魔法がどれくらい使えるかだけ見られるのではなく、日本でどのように修行してきたかが問われる。

 稲生:「それを言うなら、『春と秋が両方堪能できる駅はどこ?』という問題が出されて、『JR大井町駅。発車メロディがビバルディの“春”と“秋”だから』ってことになるけど……」
 マリア:「それも出るね。勇太、筆記試験は合格同然だよ」
 稲生:「まだラテン語がよく分からないんだよなぁ……」
 マリア:「大丈夫。何とかなるって」

[同日17:16.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 仙台地下鉄仙台駅]

〔仙台、仙台。出入り口付近の方は、ドアの開閉にご注意ください。出口は、右側です〕

 電車が市街地区間に入ると、車内が混み始めた。
 そして、仙台市地下鉄の中で、最も乗降客の多い仙台駅に到着した。

〔仙台、仙台。東西線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 仙台空港アクセス線だけ別に案内されるのは、JRではないからである。
 但し、JR東北本線と相互乗り入れしているので、仙台側での乗り場はJRのホームと同じ。
 車両もJRの物と同じなので、ちょっと実感が湧かないかもしれない。
 乗務員も境界駅で交替するのではなく、そのまま相手側の路線まで乗り通す。

 稲生:「降りよう」
 マリア:「先にどっちに行く?」
 稲生:「ホテルにチェックインして、それから買い物に行こう」
 マリア:「分かった」

 買い物というのは、洋服の生地など。
 マリアンナ人形に、新しい服を作ってあげる為の生地だ。
 マリアが使役している人形達の服は、全てマリアの手作りである。
 魔法技工士(魔法具を作る魔法使い。師匠クラスだと魔法技巧師となる)と並んで、手先が器用な魔法使いに分類されている。

 マリア:「ホテルは近いの?」
 勇太:「駅の近くだよ。その方が便利でしょ」
 マリア:「歩き回るよりはいいかな」
 勇太:「そうそう。で、荷物置いて、それからついでに夕食食べればいいよ」
 マリア:「そうだな」
 勇太:「あとは明日の新幹線のキップも買わないと……」
 マリア:「意外とやることあるね」
 勇太:「まあ、クエストは達成したし、あとはねぇ……」
 マリア:「師匠曰く、『屋敷に帰り着くまでがクエストだからね』だそうだ」
 勇太:「そうなんだ」
 マリア:「面倒な事に巻き込まれる前に、さっさと帰った方がいいかもね」
 勇太:「でも、マリアンナ人形の服は作りたいんでしょ?」
 マリア:「そう。だから、ミシンとか買わないと……」
 勇太:「実家にミシンならあるよ。僕から母さんに頼んでみるよ」
 マリア:「それは助かる!」
コメント
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