報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「帰省の準備」

2021-12-17 20:32:59 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月5日10:00.天候:曇 長野県北安曇郡白馬村 JR白馬駅]

 駅前ロータリーにトールワゴンタイプのタクシーが止まる。
 ……しかしそれはカムフラージュ。
 そのタクシーみたいな車には、屋根に行灯が載っているわけではなく、しかも種別表示器も無い。
 そして何より、車のナンバー。
 タクシーでは当たり前の緑ナンバーではなく、白ナンバーである。

 稲生勇太:「ありがとう。それじゃ、キップ買ってくるから待ってて」
 マリア:「私も行こう」

 リアシートから勇太とマリアが降りて来た。
 2人とも魔道士のローブを羽織っている。
 12月に入り、長野県北部でも雪が舞うようになった。
 魔道士のローブは夏は防暑着になり、冬は防寒着になるので便利である。

 勇太:「もうネットで予約してあるから、あとは窓口で発行してもらうだけだ」
 マリア:「なるほど」

 先月、両親達の送り迎えをした駅構内に入る。
 “みどりの窓口”の閉鎖の代わりに導入された最新の指定席券売機を使い、それで予約済みのキップを発券する。
 従来の指定席券売機と違うのは、希望すればオペレーターと連絡でき、そことやり取りしながらキップを発券してもらえるというものである。
 しかし、鉄ヲタの勇太にその機能は不要だった。
 尚、運賃・料金に関してはクレジットカードで既に決済している。
 勇太名義のカードであるが、あくまで立替で、後ほどイリーナから払ってもらえる。

 マリア:「やはり、師匠はビジネスクラスか」
 勇太:「そりゃそうだよ。偉い先生だもん」

 チケットを受け取り、それをローブのポケットにしまう勇太。

 マリア:「ビジネスクラスなんだな?」
 勇太:「ん?」
 マリア:「ファーストクラスじゃないな?」
 勇太:「違うよ。JRのグリーン車ってのは、セカンドクラス。つまり、ビジネスクラスだよ。『ロ』だからね」
 マリア:「Ro?」
 勇太:「JR在来線車両には、必ず形式番号とカタカナの記号が付いている。その記号には、その車両の等級を表す物も付与されているんだ。普通車、つまり3等車が『ハ』、グリーン車は『ロ』、そして一等車は『イ』なんだよ」
 マリア:「ふーん……。悪いね。ルーシーなら目を輝かせて、しっかり興味を持つんだろうけどね」
 勇太:「あ、いや、その……」
 マリア:「別にいいよ。鉄ヲタの勇太がそう言うんだから、間違い無いのだろう」

 これは『いろは歌』から等級を当てていったからである。
 1等車『イ』、2等車(グリーン車)『ロ』、3等車(普通車)『ハ』といった感じ。

 勇太:「とにかく、JRのグリーン車はビジネスクラスだと思って間違い無いよ」
 マリア:「分かった」
 勇太:「そんなにイリーナ先生、ファーストクラスが嫌いなの?」
 マリア:「というより、1番高い席は大師匠様がお掛けになるという考え方だから。あの1期生達は」
 勇太:「『本当のVIPはファーストクラスには乗らない。自家用機(専用機)に乗るんだ』って、何かの映画のセリフで聞いた気がするけど……」
 マリア:「大師匠様は専用の邸宅はどこかに持っていらっしゃるみたいだけど、プライベートジェットまでお持ちだとは聞いたことがない」
 勇太:「だって瞬間移動魔法、使い放題だもんね」
 マリア:「ただ、あの魔法のエネルギーは結構デカい。MPの消費量半端ない。あれって距離に関係あるのかと思いきや、本当に行きたい場所に寸分違わず行こうとすればするほどMPの消費量が高いんだって、後で気づいたよ」
 勇太:「そう。だから、近場の方がMPの消費量が却って大きいっていうね……。中距離くらいの方が却って少ない」
 マリア:「そうそう。例えば師匠の故郷、ロシアのサンクトペテルブルクに行こうとするじゃない?その町の街区まで指定しようとすると、いきなりMPの消費量が跳ね上がる」
 勇太:「サンクトペテルブルクがどんな町なのかは知らないけど、適当に指定して、トンデモ危険地帯に着いちゃったら泣きを見るからね」
 マリア:「そうそう」

 そんな魔道士あるある話をしながら、2人は車には戻らず、駅前の足湯に向かった。

 マリア:「先月入ってから、これが気に入った。温まっていい」
 勇太:「この近くにも温泉があるみたいだよ。入る?」
 マリア:「……いや、また今度にしよう。師匠には『キップと日用品の買い出し』としか言ってないから」
 勇太:「そうなんだ」

 足湯は寄り道にならないのかというと、駅舎のすぐ隣に設置されており、ギリギリ駅前ロータリーに接していなくもない。
 その為、これも駅の設備と見做せば、寄り道には当たらないというのがマリアの言い訳だった。

 マリア:「あー……これはいい。師匠も連れて来てあげよう」
 勇太:「帰省の時、この駅を利用するから、その時に入る?」
 マリア:「それはいいかもしれないね」

 しばらく入って、温まったところで足を拭くマリア。

 勇太:「……!」

 マリアはグレーのプリーツスカートを穿いていた。
 女子高生が制服のスカートとして穿くものと、何ら変わらない。
 マリアが足湯から出る時に足を上げると、中がチラッと見えた。
 幸い、他に客はいなかったものの……。

 勇太:(黒か……)
 マリア:「どうした?さすがに長居すると、師匠に怪しまれるぞ?」
 勇太:「あ、うん!すぐ出る!」

 足を拭いてから靴下と靴を履き、足湯から出る。
 ロータリーの前には件のタクシーと同じ車種の車が止まっており、それに乗り込んだ。

 マリア:「今度はSupermarketまで行って」
 運転手:「かしこまりました」

 スーパーといっても、食料品だけでなく、日用品も売っている。
 食料品はマリアのメイド人形達が買い込んで来るが、自分達が使う日用品は自分で見繕うのがイリーナ組だ。

 勇太:「百均もあるから、そこでもちょっと探してみよう」
 マリア:「なるほど。それはいい」

 それで結局何だかんだ買っちゃって、予算オーバーになるのが百均の罠w
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“私立探偵 愛原学” 「帰京の探偵達」

2021-12-17 16:09:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月3日17:32.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 私達を乗せた“はやぶさ”は、順調に都内を走行している。
 時速320キロの速さに、リサ達は……疲れて寝ていた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央快速線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 車内に自動放送が流れると、それでリサは目を覚ました。

 リサ:「うーん……」
 愛原:「おはよう。いつの間にか寝ちゃったな?」
 リサ:「うん……寝ちゃった……。もう東京?」
 愛原:「もう東京。上野駅を出て、まだ地下トンネル内だがな」
 リサ:「地下はやだな……」
 愛原:「今、地上に向かって登っている。それより、絵恋さんを起こすんだ」
 リサ:「サイトー、もうすぐ着くよ。起きて」
 絵恋:「でへへへ……。リサさぁん……」
 リサ:「こいつ、何の夢見てる?」
 愛原:「まあ、楽しい夢だろうな。違う意味で」
 リサ:「起きろ、サイトー」

 リサは絵恋さんのおっぱいを揉んだ。

 絵恋:「ひゃあぅっ!」
 リサ:「私よりデカくなりやがって……!」
 愛原:「そうなの?」
 リサ:「だって私のブラ、Bだよ?」

 それでもBカップまでは成長できたか。

 愛原:「絵恋さんは?」
 絵恋:「私は……って、なに聞いてるんですか!」

 あ、ヤベ。
 セクハラだった。
 だが、リサは……。

 リサ:「サイトー。先生の言う事は絶対。質問も絶対。何カップか答えて」
 絵恋:「そ、そんなぁ……」
 愛原:「あ、いや、無理にとは……」
 リサ:「愛原先生に気を使わせた。サイトー、明日学校で体育の授業中、大【ぴー】お漏らしの刑」
 絵恋:「ひいっ!そ、それだけは!し、Cカップです」
 愛原:「オマエ、またイジメやってるのか?」
 リサ:「し、してないよ……」
 絵恋:「先生、誤解です。リサさんは、逆にムカつくヤツを懲らしめているだけです」
 愛原:「リサにとって、だろ?」
 絵恋:「違いますよ。この前なんか、学校でカツ上げしてたヤツがいて、それをリサさんが寄生虫を送り込んで、授業中にお漏らしさせてやりました」
 リサ:「むふー。正義の味方」
 絵恋:「リサさん、正義のヒーロー!」
 リサ:「もっと褒めて」
 愛原:「いや、リサ、それは……」
 リサ:「『血で血を洗う』の正義」
 愛原:「いや、それはどうかな……」
 リサ:「『流血の惨を見る事、必至であります』」
 愛原:「それもちょっと……」

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、東京、東京です。到着ホームは21番線、お出口は右側です。……」〕

 愛原:「おっ、もう着くぞ。荷物を下ろせ」
 リサ:「はーい」
 絵恋:「私がやります」

 リサよりも身長が伸びた絵恋さんが、リサの荷物を下ろした。

 愛原:「土産物、いっぱい買っちゃったな」
 リサ:「うん、買っちゃった」
 愛原:「荷物も多いから、タクシーに乗るか」
 リサ:「おー!」

 列車が東京駅に到着する。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください。21番線に到着の電車は、折り返し、回送となります。お客様のご乗車はできませんので、ご注意ください」〕

 私達は列車を降りた。

 愛原:「何だか久しぶりに帰ってきた気がするなぁ!」
 高橋:「作者が遅筆だから当然ですね」
 愛原:「ん?何か言ったか?」
 高橋:「いえ、何でも……」
 リサ:「今度は社会科見学と冬の修学旅行代行が楽しみ」
 愛原:「修学旅行あるの?」
 リサ:「中等部の修学旅行が中止だったから、私達の学年限定で」
 愛原:「そうなのか!」

 リサ達が中等部の時、コロナ禍の緊急事態宣言真っ只中だった為、修学旅行は中止となっていた。
 緊急事態宣言が解除された今、冬も大丈夫なら、その埋め合わせを行なおうという計画があるらしい。

 絵恋:「冬休み、少し潰れちゃうけどね」
 愛原:「冬に行くってことは……スキーツアーか何か?」
 リサ:「正解。中等部でもスキー合宿やってたけど、あれに便乗するんだって」

 確か、リサ達が中等部だった頃は、新幹線でガーラ湯沢に行っていたが、またそこなのだろうか?
 確かに新幹線一本で行けるという便利さはあるが……。

 絵恋:「リサさん、運動神経バツグンだから、スキーも上手いのよね!」
 リサ:「むふー」
 高橋:「運動神経が人外なだけだろー。それを言うなら、善場の姉ちゃんもだよ」
 愛原:「現役BOWはもちろん、元BOWも似たようなものか……」

 新幹線改札口を出て、在来線改札口も出る。
 私達の家へは、八重洲側のタクシー乗り場から乗ると良い。
 普通のタクシーは5人も乗れないので、ここで別れることになる。

 絵恋:「それじゃリサさん、また明日、学校でね」
 リサ:「ん。それじゃ」

 先にリサとパールを乗せる。
 2人を乗せた黄色いセダンタクシーの後で、私達は黒塗りのトールワゴンタクシーに乗り込んだ。

 愛原:「墨田区菊川1丁目までお願いします」

 私は行き先を運転手に告げた。
 そして、タクシーが出発する。
 基本的には、同じ地区に住んでいる絵恋さん達の後を追う形になるだろう。

 リサ:「先生、夕食は?」
 愛原:「もう夕食の話かい!」
 リサ:「当たり前。もう夕方」
 愛原:「今から高橋、作るの大変だから、出前でも取るよ」
 リサ:「おー!Lサイズのミートピザ!」
 愛原:「ピザがいいのか?えーと……」

 私はスマホを取り出した。
 今からピザ屋に予約注文しておけば、希望の時間に配達してくれる。

 高橋:「あと先生、明日の朝飯の材料買っておきたいんスけど……」
 愛原:「スーパーに行くのか?」
 高橋:「それは明日でもいいと思うんスよ。取りあえず、明日の朝の分だけ……。パンとか卵とか……」
 愛原:「じゃあ、コンビニでいいか。運転手さん、新大橋通りのコンビニの前で降ろしてもらえますか?」
 運転手:「かしこまりました」

 どうやら、今回も何とか日常に戻れそうだ。
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