[12月5日10:00.天候:曇 長野県北安曇郡白馬村 JR白馬駅]
駅前ロータリーにトールワゴンタイプのタクシーが止まる。
……しかしそれはカムフラージュ。
そのタクシーみたいな車には、屋根に行灯が載っているわけではなく、しかも種別表示器も無い。
そして何より、車のナンバー。
タクシーでは当たり前の緑ナンバーではなく、白ナンバーである。
稲生勇太:「ありがとう。それじゃ、キップ買ってくるから待ってて」
マリア:「私も行こう」
リアシートから勇太とマリアが降りて来た。
2人とも魔道士のローブを羽織っている。
12月に入り、長野県北部でも雪が舞うようになった。
魔道士のローブは夏は防暑着になり、冬は防寒着になるので便利である。
勇太:「もうネットで予約してあるから、あとは窓口で発行してもらうだけだ」
マリア:「なるほど」
先月、両親達の送り迎えをした駅構内に入る。
“みどりの窓口”の閉鎖の代わりに導入された最新の指定席券売機を使い、それで予約済みのキップを発券する。
従来の指定席券売機と違うのは、希望すればオペレーターと連絡でき、そことやり取りしながらキップを発券してもらえるというものである。
しかし、鉄ヲタの勇太にその機能は不要だった。
尚、運賃・料金に関してはクレジットカードで既に決済している。
勇太名義のカードであるが、あくまで立替で、後ほどイリーナから払ってもらえる。
マリア:「やはり、師匠はビジネスクラスか」
勇太:「そりゃそうだよ。偉い先生だもん」
チケットを受け取り、それをローブのポケットにしまう勇太。
マリア:「ビジネスクラスなんだな?」
勇太:「ん?」
マリア:「ファーストクラスじゃないな?」
勇太:「違うよ。JRのグリーン車ってのは、セカンドクラス。つまり、ビジネスクラスだよ。『ロ』だからね」
マリア:「Ro?」
勇太:「JR在来線車両には、必ず形式番号とカタカナの記号が付いている。その記号には、その車両の等級を表す物も付与されているんだ。普通車、つまり3等車が『ハ』、グリーン車は『ロ』、そして一等車は『イ』なんだよ」
マリア:「ふーん……。悪いね。ルーシーなら目を輝かせて、しっかり興味を持つんだろうけどね」
勇太:「あ、いや、その……」
マリア:「別にいいよ。鉄ヲタの勇太がそう言うんだから、間違い無いのだろう」
これは『いろは歌』から等級を当てていったからである。
1等車『イ』、2等車(グリーン車)『ロ』、3等車(普通車)『ハ』といった感じ。
勇太:「とにかく、JRのグリーン車はビジネスクラスだと思って間違い無いよ」
マリア:「分かった」
勇太:「そんなにイリーナ先生、ファーストクラスが嫌いなの?」
マリア:「というより、1番高い席は大師匠様がお掛けになるという考え方だから。あの1期生達は」
勇太:「『本当のVIPはファーストクラスには乗らない。自家用機(専用機)に乗るんだ』って、何かの映画のセリフで聞いた気がするけど……」
マリア:「大師匠様は専用の邸宅はどこかに持っていらっしゃるみたいだけど、プライベートジェットまでお持ちだとは聞いたことがない」
勇太:「だって瞬間移動魔法、使い放題だもんね」
マリア:「ただ、あの魔法のエネルギーは結構デカい。MPの消費量半端ない。あれって距離に関係あるのかと思いきや、本当に行きたい場所に寸分違わず行こうとすればするほどMPの消費量が高いんだって、後で気づいたよ」
勇太:「そう。だから、近場の方がMPの消費量が却って大きいっていうね……。中距離くらいの方が却って少ない」
マリア:「そうそう。例えば師匠の故郷、ロシアのサンクトペテルブルクに行こうとするじゃない?その町の街区まで指定しようとすると、いきなりMPの消費量が跳ね上がる」
勇太:「サンクトペテルブルクがどんな町なのかは知らないけど、適当に指定して、トンデモ危険地帯に着いちゃったら泣きを見るからね」
マリア:「そうそう」
そんな魔道士あるある話をしながら、2人は車には戻らず、駅前の足湯に向かった。
マリア:「先月入ってから、これが気に入った。温まっていい」
勇太:「この近くにも温泉があるみたいだよ。入る?」
マリア:「……いや、また今度にしよう。師匠には『キップと日用品の買い出し』としか言ってないから」
勇太:「そうなんだ」
足湯は寄り道にならないのかというと、駅舎のすぐ隣に設置されており、ギリギリ駅前ロータリーに接していなくもない。
その為、これも駅の設備と見做せば、寄り道には当たらないというのがマリアの言い訳だった。
マリア:「あー……これはいい。師匠も連れて来てあげよう」
勇太:「帰省の時、この駅を利用するから、その時に入る?」
マリア:「それはいいかもしれないね」
しばらく入って、温まったところで足を拭くマリア。
勇太:「……!」
マリアはグレーのプリーツスカートを穿いていた。
女子高生が制服のスカートとして穿くものと、何ら変わらない。
マリアが足湯から出る時に足を上げると、中がチラッと見えた。
幸い、他に客はいなかったものの……。
勇太:(黒か……)
マリア:「どうした?さすがに長居すると、師匠に怪しまれるぞ?」
勇太:「あ、うん!すぐ出る!」
足を拭いてから靴下と靴を履き、足湯から出る。
ロータリーの前には件のタクシーと同じ車種の車が止まっており、それに乗り込んだ。
マリア:「今度はSupermarketまで行って」
運転手:「かしこまりました」
スーパーといっても、食料品だけでなく、日用品も売っている。
食料品はマリアのメイド人形達が買い込んで来るが、自分達が使う日用品は自分で見繕うのがイリーナ組だ。
勇太:「百均もあるから、そこでもちょっと探してみよう」
マリア:「なるほど。それはいい」
それで結局何だかんだ買っちゃって、予算オーバーになるのが百均の罠w
駅前ロータリーにトールワゴンタイプのタクシーが止まる。
……しかしそれはカムフラージュ。
そのタクシーみたいな車には、屋根に行灯が載っているわけではなく、しかも種別表示器も無い。
そして何より、車のナンバー。
タクシーでは当たり前の緑ナンバーではなく、白ナンバーである。
稲生勇太:「ありがとう。それじゃ、キップ買ってくるから待ってて」
マリア:「私も行こう」
リアシートから勇太とマリアが降りて来た。
2人とも魔道士のローブを羽織っている。
12月に入り、長野県北部でも雪が舞うようになった。
魔道士のローブは夏は防暑着になり、冬は防寒着になるので便利である。
勇太:「もうネットで予約してあるから、あとは窓口で発行してもらうだけだ」
マリア:「なるほど」
先月、両親達の送り迎えをした駅構内に入る。
“みどりの窓口”の閉鎖の代わりに導入された最新の指定席券売機を使い、それで予約済みのキップを発券する。
従来の指定席券売機と違うのは、希望すればオペレーターと連絡でき、そことやり取りしながらキップを発券してもらえるというものである。
しかし、鉄ヲタの勇太にその機能は不要だった。
尚、運賃・料金に関してはクレジットカードで既に決済している。
勇太名義のカードであるが、あくまで立替で、後ほどイリーナから払ってもらえる。
マリア:「やはり、師匠はビジネスクラスか」
勇太:「そりゃそうだよ。偉い先生だもん」
チケットを受け取り、それをローブのポケットにしまう勇太。
マリア:「ビジネスクラスなんだな?」
勇太:「ん?」
マリア:「ファーストクラスじゃないな?」
勇太:「違うよ。JRのグリーン車ってのは、セカンドクラス。つまり、ビジネスクラスだよ。『ロ』だからね」
マリア:「Ro?」
勇太:「JR在来線車両には、必ず形式番号とカタカナの記号が付いている。その記号には、その車両の等級を表す物も付与されているんだ。普通車、つまり3等車が『ハ』、グリーン車は『ロ』、そして一等車は『イ』なんだよ」
マリア:「ふーん……。悪いね。ルーシーなら目を輝かせて、しっかり興味を持つんだろうけどね」
勇太:「あ、いや、その……」
マリア:「別にいいよ。鉄ヲタの勇太がそう言うんだから、間違い無いのだろう」
これは『いろは歌』から等級を当てていったからである。
1等車『イ』、2等車(グリーン車)『ロ』、3等車(普通車)『ハ』といった感じ。
勇太:「とにかく、JRのグリーン車はビジネスクラスだと思って間違い無いよ」
マリア:「分かった」
勇太:「そんなにイリーナ先生、ファーストクラスが嫌いなの?」
マリア:「というより、1番高い席は大師匠様がお掛けになるという考え方だから。あの1期生達は」
勇太:「『本当のVIPはファーストクラスには乗らない。自家用機(専用機)に乗るんだ』って、何かの映画のセリフで聞いた気がするけど……」
マリア:「大師匠様は専用の邸宅はどこかに持っていらっしゃるみたいだけど、プライベートジェットまでお持ちだとは聞いたことがない」
勇太:「だって瞬間移動魔法、使い放題だもんね」
マリア:「ただ、あの魔法のエネルギーは結構デカい。MPの消費量半端ない。あれって距離に関係あるのかと思いきや、本当に行きたい場所に寸分違わず行こうとすればするほどMPの消費量が高いんだって、後で気づいたよ」
勇太:「そう。だから、近場の方がMPの消費量が却って大きいっていうね……。中距離くらいの方が却って少ない」
マリア:「そうそう。例えば師匠の故郷、ロシアのサンクトペテルブルクに行こうとするじゃない?その町の街区まで指定しようとすると、いきなりMPの消費量が跳ね上がる」
勇太:「サンクトペテルブルクがどんな町なのかは知らないけど、適当に指定して、トンデモ危険地帯に着いちゃったら泣きを見るからね」
マリア:「そうそう」
そんな魔道士あるある話をしながら、2人は車には戻らず、駅前の足湯に向かった。
マリア:「先月入ってから、これが気に入った。温まっていい」
勇太:「この近くにも温泉があるみたいだよ。入る?」
マリア:「……いや、また今度にしよう。師匠には『キップと日用品の買い出し』としか言ってないから」
勇太:「そうなんだ」
足湯は寄り道にならないのかというと、駅舎のすぐ隣に設置されており、ギリギリ駅前ロータリーに接していなくもない。
その為、これも駅の設備と見做せば、寄り道には当たらないというのがマリアの言い訳だった。
マリア:「あー……これはいい。師匠も連れて来てあげよう」
勇太:「帰省の時、この駅を利用するから、その時に入る?」
マリア:「それはいいかもしれないね」
しばらく入って、温まったところで足を拭くマリア。
勇太:「……!」
マリアはグレーのプリーツスカートを穿いていた。
女子高生が制服のスカートとして穿くものと、何ら変わらない。
マリアが足湯から出る時に足を上げると、中がチラッと見えた。
幸い、他に客はいなかったものの……。
勇太:(黒か……)
マリア:「どうした?さすがに長居すると、師匠に怪しまれるぞ?」
勇太:「あ、うん!すぐ出る!」
足を拭いてから靴下と靴を履き、足湯から出る。
ロータリーの前には件のタクシーと同じ車種の車が止まっており、それに乗り込んだ。
マリア:「今度はSupermarketまで行って」
運転手:「かしこまりました」
スーパーといっても、食料品だけでなく、日用品も売っている。
食料品はマリアのメイド人形達が買い込んで来るが、自分達が使う日用品は自分で見繕うのがイリーナ組だ。
勇太:「百均もあるから、そこでもちょっと探してみよう」
マリア:「なるほど。それはいい」
それで結局何だかんだ買っちゃって、予算オーバーになるのが百均の罠w