報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「元公民館を探索」

2021-12-05 19:54:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日12:00.天候:曇 宮城県遠田郡美里町某所 愛原公一の家]

 チェーンカッターを入手したリサ達は、再び家の中へ戻った。
 家の外は化け物がいたが、中は相変わらず静かなものだ。
 異変さえなければ、長閑なものである。

 リサ:「お昼ごはん」
 愛原:「今からかよ!?」
 リサ:「もうお昼だし」

 リサは家の中の時計を指さした。
 真っ昼間なのに薄暗いのは、雲っているからだろう。
 リサは台所に行くと、勝手に冷蔵庫を開けた。
 すると、中には公一が作り置きしていたであろうお握りが2つほど入っていた。

 リサ:「おー!」
 愛原:「これは伯父さんが昼食用に作り置きしていたヤツだろう。勝手に食べるのは……」
 リサ:「美味しい」

 愛原の注意も効かず、リサは冷蔵庫の中を食べ漁った。

 高橋:「こういう所はゾンビ同然だな」

 高橋も呆れたように言う。

 愛原:「しょうがない。俺達は先に、袋棚の封印を解こう」
 高橋:「分かりました」

 愛原と高橋は、仏間の方へ行ってしまった。
 リサはお握りの他、焼き魚や冷凍庫にある生の牛肉までペロリと平らげた。

 リサ:(そういえば、この仕事が終わったら、焼肉食べ放題なんだった。それなら、腹8分目っていうし……)

 リサは最後に冷蔵庫に入っていたペットボトルのお茶を飲んで、それから昼食を終えた。
 大食のBOWが冷蔵庫の中身をどれだけ食べたかは、【お察しください】。

 リサ:「先生の後を追おう」

 だが、その前にトイレに寄ることにした。
 元は公民館だった建物なので、トイレは男女に分かれている。
 もっとも、政令指定都市にあるような公民館と違い、それはとても小さく、実際は集会所に近い広さである。
 リサはその女子トイレに立ち寄って、用を足した。

 リサ:「ん?何これ?」

 洋式便器の下に、バルブハンドルが落ちていた。
 周りを見渡すと、トイレの水を供給する水道管に付いていたバルブハンドルのようだった。
 確かに、これではレバーを押しても水が流れない。
 急いで、取り付けなければ。
 しかし、手を伸ばして届く所にハンドル取り付け位置があるわけではない。
 だが、こういう時、BOWは便利だ。
 リサは右手から触手を出すと、それでバルブハンドルを掴み、スーッと伸ばして、ハンドルの位置にそれを取り付けた。
 そして、それを回すと水が流れる音がした。
 それからレバーを押すと、便器に水が流れたのである。

 リサ:「おー、リサ・トレヴァーで良かった。……でも、早く人間に戻りたい」

 用を足してから洗面所で手を洗っていると、何かが落ちる音がした。
 振り向くと、さっきのバルブハンドルである。
 どうやら、元々取り付け具合が良くなかったようだ。
 もうここのトイレを使う者はいないだろうから、放っておいても良いのだが……。

 リサ:「ん。一応、持って行こう」

 リサはバルブハンドルを手に、トイレから出た。

 愛原:「遅かったな。腹一杯になったか?」

 仏間に行くと、既に袋棚の鉄扉は開扉されていた。

 リサ:「腹8分目。で、さっきトイレに行ってきたから、またお腹空くと思う」
 愛原:「夕食までには、仕事終わらせたいなよな」
 リサ:「で、奥には何があったの?」
 愛原:「隠し扉&エレベーターだ」
 リサ:「エレベーター!?」

 仏壇の下を潜るように進むと、1つの小部屋に入る。
 位置関係からして、女子トイレと隣り合わせになっているはずだ。
 そこには、古めかしい木製扉のエレベーターがあった。
 リサが以前聞いた機械の音は、これだったのか。
 小部屋の照明も、電球1個というものだった。
 だが、その電球というのがLED電球であることから、この小部屋は今も使われている。
 ということは、そのエレベーターも使われているということだ。

 リサ:「それじゃ早く、下に……」
 愛原:「それが電源が入ってなくて、ボタンを押しても、うんともすんとも言わないんだ」
 リサ:「それじゃ……」
 愛原:「ここに、スイッチを入れる鍵穴がある。どこかで、鍵を見つけてこないと」
 高橋:「え?また、大手町中央ビルから鍵を借りてくるんスか?」
 愛原:「いやあ、これは三菱じゃないだろう。とても古い……恐らく、オーチス辺りじゃないか?」
 高橋:「じゃあ、どうするんですか?」
 愛原:「今も使われているのなら、きっとこの家のどこかに鍵があるはず。で、どうやらその鍵の在り処、あの秋葉氏が知っていたようだ」

 愛原は秋葉が持っていたメモ書きを取り出した。

 『ELVキー→仏壇→足し算』と書かれていた。

 高橋:「足し算って何スか?」
 愛原:「分からんな」

 リサ達は、取りあえず一旦、仏間に戻ることにした。
 仏間に戻って、仏壇を調べてみる。
 すると仏壇の下に、小さな引き出しが8つあるのに気付いた。
 引き出しの右上にはそれぞれ、小さく『壱』『弐』『参』『肆』『伍』『陸』『七』『八』と書かれていた。

 愛原:「この数字を足して、何らかの数字にすると開くというわけかな?」
 高橋:「何の数字ですか?」
 愛原:「知らん」

 愛原は、まず『壱』の引き出しを開けた。
 すると、この中にはマグナムの弾が入っていた。

 愛原:「高橋、弾を補充しろ」
 高橋:「あざっす」

 そして、その隣の『弐』の引き出しをあける。
 しかし、そこには何も入っていなかった。
 次に、『参』の引き出しを開ける。
 その中には、薬液の入った瓶が入っていた。

 リサ:「これ、回復薬だよ。グリーンハーブを調合したものだね」
 愛原:「じゃあ、これも頂いておこう」

 そして、次の『肆』の引き出しを開けようとした。
 だが、開かない。

 愛原:「これは開かないか……」

 しかし、その次の『伍』の引き出しも、『陸』の引き出しも、とにかく残りの引き出しは全く開かなかった。

 愛原:「参ったな……。恐らく、開かない引き出しのどこかに、エレベーターの鍵が入っているかもしれないのに……」
 高橋:「ピッキングか何かで開けますか?」
 愛原:「つったって、鍵穴なんて無いだろ」
 高橋:「それもそうですね……」
 愛原:「多分、今開いてる引き出しも、何かの条件に合っているから、開いているんだろうな」
 高橋:「もしかしたら、『一度に開けられる引き出しは、3つまで』とか?」
 愛原:「あー、なるほど。しかし、それだと、『足し算』はどこに行ったんだ?」
 高橋:「まあ、取りあえずやってみましょう」

 愛原は取りあえず、全部の引き出しを閉めた。
 今度は、『八』の引き出しを開けようとする。
 だが、開かない。
 それどころか、『七』の引き出しも開かなかった。

 愛原:「これは一体、どういうことなんだ!?」

 試しにもう一度、『壱』の引き出しを開けてみる。
 これは開いた。
 では、『壱』の引き出しを閉めて、『弐』の引き出しを開けようとすると、開かない。

 愛原:「???」

 どうやら、無条件で開く引き出しは『壱』だけのようだ。
 何とかして、『肆』以降の引き出しを開けたい。
 さて、一体どうやれば、『肆』以降の引き出しを開けられるだろうか?
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「元公民館を探索」

2021-12-05 11:54:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月2日11:30.天候:曇 宮城県遠田郡美里町某所 愛原公一の家]

 私達は公一伯父さんの家の中に入った。
 家の中は薄暗いが、しかし時折雲間から日差しが出てくることもあり、それで家の中に日光が差し込んで来ると、途端にホラーな雰囲気は無くなる。
 このギャップが凄い。
 アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザードだって、舞台となった農場は、かつて普通の農家だったということもあり、場所によっては全くホラーな雰囲気は無かったという。
 にも関わらず、そういった所にもクリーチャーが出たりして、そこが尚更不気味だったらしい。
 この家もそうなのだろうか。

 愛原:「リサ、化け物の気配はするか?」
 リサ:「今のところは……」

 リサは今、第1形態になっている。
 見た目は額に一本角が生え、両耳は長く尖り、瞳は赤くなり、両手の爪は長く鋭く尖る様は、正に鬼そのものである。
 そしてこの時の、リサの索敵能力は強い。
 食卓へ行くと、食事は片付けられていたが、台所のシンクには、まだ洗っていない食器が置かれていた。
 食事の後片付けを放置して、どこかに行ったとは思えない。
 伯父さんの性格的に、それは有り得ない。
 すると、後片付けをしようとして何かに巻き込まれたのだろうか。

 愛原:「伯父さーん!いますかー!?」

 私は時折、大きな声で呼びかけた。
 しかし、それに応じる者はいない。
 伯父さん本人もそうだし、潜んでいるかもしれないクリーチャーもだ。

 高橋:「誰もいないみたいっスね?」
 愛原:「うーん……」

 書斎に行ってみるが、難しい本が置かれているだけで、何も見当たらない。
 いや、もしかしたら、本の中がくり抜かれていて、中に鍵とか入っていたりするのかもしれないが、何の情報も無しにこんな本の山の中から探すのは面倒だ。
 別の場所を探してみることにした。

 愛原:「トイレ。……何も無いか?」
 リサ:「! そういえば……」

 リサのエルフ耳(便宜上、長くて尖った耳のことをこう称する)がピクッと動いて、何かを思い出したようだ。

 リサ:「この前、泊まった時のことなんだけど……」

 リサは仏間の話をした。

 愛原:「なるほど。そうか」

 私達は仏間に行ってみた。
 すると、何だか仏間が他の部屋より荒らされている感じがする。
 気になったのは、仏壇の下にある袋棚である。
 普通は襖のような扉になっているはずだが、それが取り外されていて、観音開き式の鉄扉に変わっていた。

 愛原:「何だこりゃ?」

 しかも、両側の取っ手にチェーンが掛けられ、それを固定するように南京錠が取り付けられている。
 明らかに怪しい。
 というか、この前来た時、こんな扉は無かったはずだ。
 あればこんなごっつく目立つ扉、すぐに気づいている。
 前に来た時は、ごく普通の襖タイプの扉だったはずだ。
 しかも、その扉は近くに転がっている。
 何者かが、急ごしらえで造って取り付けたとしか思えなかった。

 愛原:「鍵なんてどこにあるんだよ!?」
 リサ:「私の力でも引きちぎれるかどうか……」
 愛原:「うーむ……」
 高橋:「あ、でも、先生。もしかしたらこの家、チェーンカッターくらいあるかもしれませんよ?」
 愛原:「あ、そうか!確かにありそうだ!よし、それを探そう」

 私はありそうな部屋を探した。
 農機具の一環で持っていそうだから、屋外の農機具小屋にありそうだ。
 行く途中で気づいたのだが、さっきの書斎。
 本棚の上に、ショットガンタイプの猟銃を発見した。
 机の上に、狩猟について書かれた本があり、それを見て、伯父さんが狩猟免許を持っていたのを思い出したのだ。

 愛原:「ショットガンだ。弾もある」
 高橋:「ショットガンと言えば先生です。それは先生がお持ちになってください」
 愛原:「分かった」

 因みに机の引き出しを開けると、中から未使用の銃弾も入っていた。
 もちろん、この猟銃用である。
 もしかしたら戦闘になるかもしれない。
 こういうのは持っておいた方がいいだろう。
 そして、外に出ようとした時だった。

 愛原:「あっ!?」

 引き戸式の玄関をブチ破って、侵入してくる者がいた。

 秋葉ゾンビ:「アァア……!」

 3つ首ティンダロスに変化したジョンに食い殺された、探偵の秋葉氏がゾンビ化していた。

 高橋:「っしゃぁーっ!」

 高橋がマグナムを一発、ドゴンと放つ。
 ザコゾンビは、それ1発で倒すことができる。
 胸に高橋のマグナムを食らった秋葉ゾンビは、家の外に弾き出されるほどの衝撃を受け、仰向けに倒れて、血の海を作りながら息絶えた。

 愛原:「そうだった。聞いた話、霧生市にはジョンみたいな3つ首ワンチャンが1匹、徘徊していたらしいな?」
 リサ:「そうなの。それに関しては、どこかのアホ研究員が間違って逃がしちゃったらしく、それでリサ・トレヴァーの何人かが捕獲に向かうことになったというわけ。もちろん、『1番』も含めて、そんな命令はガン無視で、実質的な脱走だったけどね」

 リサは留守番を命じられてしまった為、脱走することはできなかった。

 愛原:「で、そのティンダロスに襲われた人間もまたゾンビ化したとか……」
 リサ:「あれもTウィルスで造るからね」
 愛原:「すっかり忘れてたよ」

 とにかく、ゾンビのいなくなった庭を突っ切って、軽トラやトラクターの止まっている小屋に向かう。
 あいにくとその小屋も鍵が掛かっていたが、幸いチェーンカッター自体は軽トラの荷台に置かれていたので助かった。
 レンタカーも今のところ無事だ。
 でもいざという時の為に、この軽トラの鍵は手に入れておいた方がいいかもしれない。
 その鍵の場所は知っている。
 私はそんなことを考えながら、再び家の中に戻ろうとした時だった。

 秋葉ゾンビ:「ウゥウ……!」
 愛原:「えっ!?」

 倒したはずの秋葉氏のゾンビが、また呻き声を上げて立ち上がった。
 そんなバカな!?
 ザコゾンビは、血の海ができるくらいのダメージを負えば、回復力が間に合わず、出血多量でそのまま死に至るはずだ!

 リサ:「化け物の臭いがする!気を付けて!」
 秋葉ゾンビ(クリムゾンヘッド):「ガァァァァッ!!」

 秋葉ゾンビは、全身を赤銅色に変化させ、特に頭の部分が真っ赤になった。
 そして、両手の爪はリサもかくやと思われるほど長くて鋭くなっている。

 高橋:「お、おい!何か、リサみたいになってんぞ!?」
 愛原:「あれはもしかして……!クリムゾンヘッドじゃないのか!?ほら高橋、霧生市であんなゾンビいただろ!?」
 高橋:「そ、そう言えば!」

 倒されたゾンビの中には、体内のウィルスが死滅せず、それが体内で更に再編を繰り返して、脅威のゾンビとして復活することがある。
 特徴として全身が赤く染まるのはもちろん、特に頭部が真っ赤に染まる為、クリムゾンヘッドと呼ばれるのである。
 他にはリサみたいに、爪が長くて尖り、それで攻撃してくるのと……。

 高橋:「は、速ぇ!?」

 普通のゾンビが酔っ払いの千鳥足みたいな感じで、ヨロヨロモタモタと向かって来るのに対し、クリムゾンヘッドは普通に走って向かって来る。
 また、ジャンプして飛び掛かって襲って来ることも可能だ。
 この動き、まるでリサみたいである。

 リサ:「私が行く!」

 リサもまた爪を立てて、クリムゾンヘッドに立ち向かった。
 私は猟銃を構えて、発砲のチャンスを伺った。

 高橋:「先生!やっぱりザコゾンビの亜種と、元からボスクラスのリサとじゃ、やっぱり違いますよ!」
 愛原:「そのようだな」

 どうもクリムゾンヘッドの方は、動きが大仰である。
 しかし、リサの方はもっと効率的な動きであった。

 クリムゾンヘッド:「ギャッ!」

 リサは自分の爪で、クリムゾンヘッドの頭を引っ掻いた。
 そこから血が噴き出す。

 愛原:「今だ!」

 私は手持ちのショットガンを放った。
 見事に命中するが、それだけでは倒せない。
 更にリサは、クリムゾンヘッドの頭にかかと落とし!
 どうやら、名前からして頭が弱点だと思っているようだ。
 まあ、元々ゾンビは頭が弱点ではあるのだが。

 高橋:「トドメは俺が!」

 そして、高橋がマグナムを放つ。
 彼の大きな銃弾は、クリムゾンヘッドを頭を吹き飛ばすのに、十分な威力であった。
 そして、かつて探偵の秋葉氏だったクリムゾンヘッドは、頭が無くなってついに倒れたのである。

 愛原:「ふぅーっ!何とか倒したな」
 高橋:「そうっスね」

 秋葉氏のポケットの中から、何やらメモ書きが出て来た。
 これ見よがしに出て来たので、私は念の為に頂くことにした。
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