報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原家のクリスマス」 4

2021-12-26 20:02:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月25日13:09.天候:晴 東京都港区新橋 都営バス新橋停留所→業10系統車内]

 政府機関の隠れ蓑NPO法人デイライト東京事務所をあとにした私達。
 本来ならすぐにでも帰るところだが、ちょうどお昼時ということもあり、またリサの機嫌を損ねる前に昼食を取ってから帰ることにした。
 駅近くにラーメン屋があったので、そこでラーメンを食べることにした。
 さすがは、サラリーマンの町と言われるだけのことはある。
 もっとも、今日は土曜日で、サラリーマンの姿は少なかったが。
 カウンターだけの店に横並びになったが、やっぱりリサはトッピングの具材を全部乗せしていた。

 愛原:「久しぶりラーメン食ったな」
 高橋:「そうっスね。ごっそさんです」
 愛原:「いやいや。寒い時にはラーメンだからね」

 都内の昼は、晴れればまだ暖かい。
 だが、それ以外の時はやっぱり寒くてしょうがなかった。
 リサは別として。
 ジャージの上着の更に上には、何も着ていない。
 しかし、平気な顔をしている。
 別に、ラーメンを食べたばかりだからというわけではないだろう。
 それから新橋バス停に向かう。
 『新橋駅前』ではないのは、駅から少し離れているが、しかし新橋地区にあるからだろう。
 『新橋駅入口』ではダメだったようだ。
 本数は多いので、それ相応の利用客がある。
 しかし、前の方に並んでいたので、1番後ろの席に並んで座った。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは、ほぼ満席の状態で発車した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。この都営バスは勝どき橋南詰、豊洲駅前、木場駅前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きです。次は銀座六丁目、銀座六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗本行寺と常泉寺へおいでの方は、終点とうきょうスカイツリー駅前でお降りください。次は、銀座六丁目でございます〕

 高橋:「先生。さすがに今日も晩飯は外食しないですよね?」
 愛原:「そうだな。悪いけど、用意してくれるか?」
 高橋:「任せてください。それじゃ、ちょっと買い物に行きませんと」
 愛原:「分かった。俺達は先に帰るから、買い出し頼むよ」
 高橋:「分かりました」
 愛原:「ケーキは宅配で届くみたいだし」
 高橋:「その方がいいですね」
 リサ:「お兄ちゃん!骨付きチキン!骨付きチキン買って来て!大きいヤツ!」

 リサは自分のスマホで、七面鳥の画像を出しながら行った。

 高橋:「いや、ターキーって無理だろ~」
 愛原:「これって日本のスーパーで売ってるもんなの?」
 高橋:「見た事無いっスよ?」
 愛原:「ワンチャン、コストコとか成城石井みたいな高級スーパーで売ってる……かな?」
 高橋:「鶏のヤツなら余裕で売ってますけどね」
 リサ:「フライドチキンじゃなくて……」
 愛原:「KFCのフライドチキンも美味いもんだよ。だけどまあ、要はチキン丸ごと一羽焼いたヤツをリサは食べたいって言ってるんだよ。多分、スーパーで売ってるだろ」
 高橋:「ローストチキンっすね。まあ、そうっスね」
 愛原:「それでよろしく頼むわ」
 高橋:「了解しました」

[同日14:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 菊川駅前でバスを降りた私達。
 高橋はそのままスーパーへ行き、私とリサは先に家に帰った。

 リサ:「やっと帰ってゲームできる」
 愛原:「冬休みの宿題もあるんだろ?それもちゃんとやれよ」
 リサ:「分かってるよ」

 帰ってからベランダに出て、向かいのマンションを見てみる。
 7階の部屋は見た感じ、何とも無い。
 だが、室内は相当荒らされているという。
 帰って来た時、片付けが大変だろうと思った。

 リサ:「さて、ゲームゲーム」

 ジャージから私服に着替えたリサは、冷蔵庫からジュースを取り出した。
 私服といっても、半袖のシャツに黒い短パンである。
 まだ部屋は暖房を入れたばかりで寒いのに、BOWの体温は本当に違うのだと分かる。

 リサ:「あ、でも、お兄ちゃん帰ってきたら、私も料理手伝う~」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「家庭科の調理実習もやったし、お兄ちゃんばっかりに作ってもらうのもね」
 愛原:「いい心掛けだ。だけど、生肉調理とする時、そのまま食うなよ?」
 リサ:「う……。だ、大丈夫」
 愛原:「本当かい?」
 リサ:「大丈夫だから」
 愛原:「まあ、信じるよ」

[同日18:00.天候:晴 愛原のマンション]

 配達員:「ありがとうございましたー!」
 愛原:「どうも。お世話さまでした」

 このタイミングで届くのか。
 高橋とリサは調理中で忙しいので、私が代わりにケーキを受け取った。
 配達員も大忙しだろう。
 因みに玄関に出て対応してみて気づいたのだが、結構外は風が出ている。
 当然それは冷たい。
 もう冬本番だな。

 愛原:「善場主任からケーキが届いたぞー」
 リサ:「おー!」
 高橋:「バカ!包丁振り上げるんじゃねぇ!」

 リサは喜ぶ時、両手を挙げる癖があるので。

 愛原:「ローストターキー、ガスバーナーで焼くのか?」
 高橋:「いや、さすがにここでそれは無理なんで、もう既に焼かれてるヤツ、買って来ましたよ」
 愛原:「本当か」

 こうして、夕食の準備は整った。
 やっぱりメインディッシュは、ローストターキーか。

 高橋:「先生!まずは一杯!」
 愛原:「おー、ありがとう」

 私は高橋からグラスにビールを注がれた。

 高橋:「それでは皆様、お手を拝借!」
 リサ:「お手……お手!?」
 愛原:「高橋!それ、忘年会の後!」
 高橋:「あっ、サーセン」
 愛原:「俺が音頭を取ろう。それでは、メリークリスマース!」
 リサ:「メリークルシミマース!」
 高橋:「メリクリっス!」
 リサ:「ケーキは!?ケーキ!」
 愛原:「ケーキは食後だ。スイーツだからデザートだろ」
 高橋:「先生の言う通りだぞ!」

 因みにリサは……。

 リサ:「チキン美味しー!」

 と、言いながら、バリボリバリボリ骨まで食べていた。

 愛原:「骨まで食べるんじゃない」

 まあ、予想していたことではあるが。
 何とか今年も、無事にクリスマスを過ごすことができた。
 あとは、年末年始か。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原家のクリスマス」 3

2021-12-26 15:52:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月25日09:00.天候:晴 東京都中央区日本橋大伝馬町 東横イン東京日本橋]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 いや、参った。
 昨夜は大変だった。
 楽しみにしていたクリスマスケーキを踏み潰された上、足蹴にされたリサがブチギレ。
 一気に第2形態まで変化して、侵入者2人を追いかけた。
 エレベーター内で戦闘になるものの、たかが泥棒が持っていたハンドガン程度でリサが倒れるはずがなく、泥棒達は血みどろの意識不明の重体に追い込まれた。
 さすがにそれがやり過ぎだということで、今、ホテルに隔離されているのである。
 警察権は及ばない。
 もはや、BSAAとか政府機関直轄法人デイライトの管轄になり、私や高橋も責任取らされてついでに隔離されているわけである。

 愛原:「あーあ……。このまま東京湾に沈められるのかなぁ……」
 高橋:「ええっ!?」

 朝食はデイライトの人と思われる黒スーツのいかつい人達が、部屋食として持ってきてくれたが……。

 愛原:「!?」

 と、その時、部屋がノックされた。

 愛原:「は、はい!?」

 私が部屋のドアを開けると、いかつい黒服の人がいた。

 黒服A:「出発の時間です」
 愛原:「出発!?どこに!?」
 高橋:「東京湾?それとも、甲州の山まで片道ドライブ……」
 黒服A:「デイライトの事務所です。もう車を用意してあるので、速やかにお願いします」
 リサ:「ヤダヤダ!行きたくない!」
 黒服B:「こら!暴れるな!!」

 リサは第2形態まで変化して服が破れたので、代わりに黒いジャージを着ていた。

 愛原:「リサ、いいから。一緒に行こう」
 リサ:「うぅう……。先生とお別れしたくない……」
 高橋:「オメェが暴れたからだろうが!先生のことは俺に任せて、オメェはとっとと死刑にでもなりやがれ!」
 愛原:「高橋、静かにしろ。ホテルの中だぞ」

 私は高橋を黙らせた。
 取りあえず、手荷物を持ち、エレベーターに乗って1階のロビーへ向かう。
 そして、1階に着くと、ロビーには善場主任がいた。

 善場:「おはようございます。愛原所長」
 愛原:「お、おはようございます」

 無表情でポーカーフェイスの善場主任からは、その真意が読みかねた。

 善場:「では、事務所に向かいましょう」

 ホテルの真ん前には、黒塗りのミニバンが止まっていた。
 素直にそれに乗り込む。

 善場:「事務所まで」
 部下:「はっ」

 運転席には、既に他の黒服と同じ黒スーツを着た運転手がいた。
 黒服Aが助手席に座り、黒服Bが助手席の後ろに座る。
 善場主任は運転席の後ろに座り、私達は1番後ろの席に3人並んで乗る形となった。
 車が走り出してから、主任は言った。

 善場:「取りあえず、リサの殺処分は無くなりました」
 愛原:「ほ、本当ですか!?」
 善場:「はい。幸い被疑者2人の意識が戻ったそうですので、今後、死亡することはないでしょう。ただ、ケガの状態が酷く、それ故弁護士の反対もあって、逮捕状は請求できても、まだ逮捕できない状態ではありますが……」
 愛原:「すると、これからは……」
 善場:「今後の事をお話しする為に、事務所へ向かうわけです」
 愛原:「良かったな、リサ。殺処分は無いってよ」
 リサ:「おー!」
 善場:「因みに斉藤社長からは、侵入者への厳しい撃退に対し、感謝の言葉と、弁護士の紹介が打診されています」

 オートロックが施されているマンションに、どうやって侵入したのかは不明だが、どうやらどこかでカードキーを偽造したらしい。
 侵入者2人の所持品からは、偽造されたカードキーが出て来たそうだ。
 侵入者2人の確定容疑は住居侵入、窃盗と銃刀法違反である。
 あいにくとリサは人間ではない為、殺人未遂罪は成立できないだろうとのこと。
 どうしてもというのであれば、動物愛護法違反などは問えるかもとのことだが……。

 愛原:「そうですか」

 尚、リサが壊したエレベーターについては、侵入者2人の拳銃の暴発によるものとされた。
 それにしては、もうカゴやドアごと交換しなければならないほどの壊れ具合だったが……。

[同日12:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 善場:「……今後は分別の付いた行動をするように。分かった?」
 リサ:「はい。すいませんでした」

 最後に再び主任からキツく注意されて、取りあえず話は終わった。
 リサのやり過ぎはともかく、窃盗犯を捕まえたことに対しては、褒められるものだっただろう。

 善場:「私からのクリスマスプレゼントがまだだったね。本当はそれはスルーしようと思ってたんだけど、まあ、犯罪者を捕まえたという功績は認めましょう。その御褒美に、ダメになったケーキをプレゼントするから、後で先生達と食べなさい」
 リサ:「! おー!」
 善場:「私も同じこと(クリスマスケーキを踏み潰された上、足蹴にされた)をされたら、確かに拳銃1発撃つかもしれないからね」
 愛原:「おい、高橋、聞いたか?善場主任がケーキを持っている時は要注意だぞ?頭が無くなるぞ?」
 高橋:「うス!気をつけます!」
 善場:「私は人間に戻れましたが、まだリサ・トレヴァーだった頃の名残があるもので……」

 ケーキは夕食に合わせ、届くようにしてくれるという。
 イブには食べれなかったが、そもそも今日がクリスマス本番なのだから、この方が良い。

 愛原:「じゃあ皆、取りあえず帰ろうか」
 高橋:「はい」
 リサ:「はーい!」

 私達が事務所を出ようとした時だった。

 善場:「愛原所長は、この冬休みに、どこかお出かけされる予定はあるんですか?」

 主任が、そう話し掛けて来た。

 愛原:「ええ。何でも来年度、リサの高校に上野凛さんが入学するかもしれないそうじゃないですか」
 善場:「さすが所長。情報が早いのですね」
 愛原:「一度、また天長園に泊まってみたいと思います。宗教団体は、年末年始の行事で忙しいかもしれませんが」
 善場:「入信だけはしないようにお願いしますよ」
 愛原:「分かってますって」

 私はそう言って、事務所をあとにした。
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“愛原リサの日常” 「高飛び開始の斉藤家」

2021-12-26 11:20:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月25日06:57.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅→東北新幹線3001B列車10号車内]

〔17番線に、“はやぶさ”1号、新函館北斗行きと“こまち”1号、秋田行きが17両編成で参ります。【中略】黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 帰省ラッシュ第一波で賑わう大宮駅。
 当然ながら、その中心地は新幹線乗り場である。
 その中でも長距離運用の“はやぶさ”は頗る賑わっていたが、斉藤家が並ぶ車両は空いていた。

 母親:「あなた、いくら何でも奮発しすぎじゃ……」
 斉藤秀樹:「仕方無いだろう。飛行機にしようとしたら、絵恋が、『リサさんから「高飛び」って言われたからヤダ!』って言うものだから……」
 母親:「娘に甘過ぎよ」
 斉藤絵恋:「だってぇ……」
 秀樹:「ま、悪いのは私だ。私が全て責任を取るさ」
 母親:「本当よ」

〔「17番線、ご注意ください。6時57分発、“はやぶさ”1号、新函館北斗行きと“こまち”1号、秋田行きが到着致します。黄色い点字ブロックまで、お下がりください。大宮を出ますと、次は仙台に止まります。また、自由席はございませんので、ご注意ください」〕

 赤い列車を先頭に、長大編成の列車が入線してきた。
 それはE6系“こまち”である。
 11号車のグリーン車以外の座席は、ほぼ埋まっているように見えた。
 しかし、その後ろの車両……。
 10号車のグランクラスは、ほんの数えるほどしか乗客が乗っていない。

〔「おはようございます。大宮ぁ、大宮です。6時57分発、東北新幹線“はやぶさ”1号と、秋田新幹線“こまち”1号です。お乗り間違えの無いよう、ご注意ください。次は仙台、仙台に止まります。前の方に続いて、ご乗車ください」〕

 斉藤家は1等車たるグランクラスに乗り込んだ。

 秀樹:「私はこっちに乗るから、キミ達はそっちに座りなさい」
 母親:「ええ」
 絵恋:「はぁい……」

 グランクラスは1列席と2列席が並んでいる。
 秀樹は1人席に腰かけ、絵恋と母親は2人席に座った。
 1等車ということもあり、2等車であるグリーン車よりも広い。
 すぐにホームから、発車ベルの音が鳴り響く。

〔17番線から、“はやぶさ”1号、新函館北斗行きと“こまち”1号、秋田行きが発車致します。次は、仙台に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
〔「17番線、まもなくドアが閉まります。ご注意ください」〕

 そして、甲高い客終合図のブザーが鳴り響いて、列車のドアが閉まる。
 大宮駅ではまだホームドアは設置されていないので、列車のドアが閉まり切ると、列車は動き出した。

 母親:「あなた、本当に大丈夫なの?」
 秀樹:「……心配無い。北海道には、私の友人がスキーペンションをやっている。絵恋が冬休みの間、そこに匿う……もとい、滞在させてくれるそうだ。スキーだけじゃなく、温泉もあるから、冬休みの間滞在するには最適だ」
 母親:「そうじゃなくて、会社よ」
 秀樹:「…………」

 秀樹は何も答えられなかった。

 アテンダント:「失礼致します。ご利用くださいまして、ありがとうございます。おしぼりをお持ち致しました」

 グランクラスでは専任のアテンダントがいて、車内サービスをしてくれる。
 かつてはグリーン車にもあったのだが、それは全廃されてしまった。

 母親:「ありがとう。……ほら、あなたも」
 秀樹:「うむ……」
 アテンダント:「軽食をお持ちしても宜しいでしょうか?」
 母親:「ええ、お願い」
 アテンダント:「かしこまりました」

 グランクラスではおしぼりサービスの他、軽食や飲み物の無料提供もある。
 国内線航空機のビジネスクラスへの対抗心が窺える。
 尚、あくまでも軽食なので、弁当形式の物が出るのだが、ボリュームは通常の駅弁より小さい。
 だが、大食のリサにはおやつ程度の量でも、少食の者にあっては十分な量なのではなかろうか。
 軽食を食べてから秀樹は……。

 秀樹:「悪い。着くまで、少し休ませてもらうよ。キミ達は気にせず、寛いでてくれ」
 母親:「ええ」

 秀樹は窓のブラインドを降ろし、座席のリクライニングを最大限まで倒し、レッグレストを出した。
 そして、ブランケットを掛けて、更にグランクラス専用のアメニティグッズの1つであるアイマスクを着用した。

 絵恋:「お父さん、どうしたの?昨夜から忙しそうだったけど……」
 母親:「ちょっと……会社の方でね、色々あったのよ。大丈夫。別に、潰れるわけじゃないから。ただ、社長として、色々ね……」
 絵恋:「ふーん……?」

 しかし絵恋も少女とはいえ、女。
 思春期真っ只中で、いわゆる『女の勘』が働く頃である。
 母親の言葉の中に、何となくウソを感じたのだった。
 しかし絵恋は、それ以上は追及しなかった。
 それよりも、気になることがあったからだ。

 絵恋:「いくらLINEを送っても、リサさんが返信してくれないの。既読にすらならない。どうしよう……?嫌われちゃったよぅ……」
 母親:「LINEの送信も程々にしないと嫌われるって何度も言ったでしょ?とにかく、既読が付くまで、あとはもう送信をやめなさい。愛原さんだって忙しいんだから、すぐにLINEを確認できない時だってあるでしょ」
 絵恋:「でもォ……」
 母親:「でもじゃない」
 絵恋:「だってぇ……」
 母親:「だってじゃない」
 絵恋:「ぶー……」
 母親:「むくれないの」
 アテンダント:「失礼致します。お客様、お飲み物は何になさいますか?お茶菓子も御用意してございます」
 母親:「ほら、飲み物だって。私はハーブティーを頂くわ。あ、それと、あちらの人は休んでるから、飲み物は結構よ。……ほら、絵恋は?」
 絵恋:「アップルジュース……」
 アテンダント:「かしこまりました」

 飲み物と茶菓子も無料サービス。
 ……全てのサービスを受けられれば、もしかしたら、グリーン料金とグランクラス料金の差額分は取り戻せるかもしれない?
 そんな貧乏くさい考えをしている作者は、一生グランクラスには乗れないだろう(グリーン車は“えきねっと”の『トクだね割』を使えば安く乗れる)。

 絵恋:「むー……」

 絵恋は機嫌が直らないまま、ジュースを飲みながら、ふと車内のLED表示板を見た。
 そこでは、ニュースの文字放送が流れていた。

『◇◆◇参詣スポーツニュース◆◇◆ 雲羽百三氏、大宮駅東口にて女性とデート!?相手は同い年の無宗教の女性!雲羽氏の「寿退転宣言」は本当か!?』

 絵恋:(どーでもいいわ……)

『◆◇◆嫁入新聞ニュース◇◆◇ 昨夜21時頃、東京都墨田区菊川のマンションで、男性2人が意識不明の重体で発見された。2人はこのマンションに窃盗目的で侵入しており、エレベーターで逃走中に、持っていた拳銃が暴発したと見られる。尚、2人は「化け物が現れた」「化け物だ。助けてくれ」などと、意味不明の発言をしていたことが判明しており、警察では意識が回復次第、精神鑑定を進めるとしている』

 絵恋:「ブーッ!」

 絵恋、ジュースを噴き出す。

 絵恋:「ええーっ!?」

 絵恋はそれがリサのしわざであると、ニュースの文字放送だけで分かったのであった。
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