[10月3日15:50.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅・新幹線上りホーム→東北新幹線1030B列車1号車内]
〔13番線に、15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車です。……〕
ホームに上がって列車を待っていると、接近放送が鳴り響いた。
17両編成の先頭車なので、ホームも結構先端部分で待つことになる。
〔「13番線、ご注意ください。15時57分、当駅始発、“はやぶさ”30号、東京行きが入線致します。尚、全車指定席となっており、自由席はございません。自由席特急券ではご乗車になれませんので、ご注意ください」〕
編成も車両形式もバラバラな状態で運転される東北新幹線には、まだホームドアは普及していない。
仙台駅にも、それはまだ無かった。
〔「黄色い線の内側を御歩きください。電車が参ります」〕
眩い純白のHIDランプを光らせて、エメラルドグリーンの列車がやってきた。
下り方向からの入線なので、利府の車両基地から回送で来たのだと分かる。
〔お待たせ致しました。13番線に到着の電車は、15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行きです。この電車は……〕
〔「13番線、まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。業務連絡、1030B車掌、準備できましたらドア扱い願います」〕
ドアが開く。
“はやぶさ”に使用されるE5系は、ロングノーズの先頭車が特徴的である。
しかしそういった構造の為、運転室の付いている車両は定員が中間車の半分くらいになってしまった。
そこでJR東日本では、そんな車両をプレミアム化。
グリーン車よりもグレードの高いグランクラスを設けて、定員減少分の運賃・料金を回収しようとした。
さすがに両側の車両でやるのは無理があると思ったか、私達が乗った1号車の部分は普通車である。
尚、ロングノーズ構造のせいで定員が減ったのは秋田新幹線用のE6系も同じ。
こちらは新幹線にしては編成が短い為、上り方向の先頭車(11号車)をグリーン車にし、下り方向の先頭車(17号車)は普通車としている。
先代のE3系より定員が減ったことを受け、それより1両増結して7両編成としている。
絵恋:「リサさん、荷物乗せてあげるね」
リサ:「ん、よろしく」
乗り込んで、指定された席まで行くと、絵恋さんが荷棚に荷物を乗せた。
リサは今や絵恋さんより小柄の為、絵恋さんが気を使ってリサの荷物を乗せてあげたようだ。
リサが中学校に編入した時は、まだ2人とも似たような体型だったのだが、(一時はBOW化しかかったものの)一応は普通の人間である絵恋さんは成長して、今やリサよりも身長が高くなっている。
リサの場合、食べ物から吸収したエネルギーは形態変化や人外的な身体能力に消費されてしまう為、身体の成長に回せないということが判明している。
その後遺症か、人間に戻れた善場主任も確かに小柄な体型である。
〔「ご案内致します。この電車は15時57分発、東北新幹線“はやぶさ”30号、東京行きです。仙台を出ますと、大宮、上野、終点東京の順に止まります。停車駅にご注意ください。また、この電車には自由席はございません。自由席特急券でのご利用はできませんので、ご注意ください。尚、本日、お席にはまだ空きがございます。お手持ちの自由席特急券で、この列車をご利用のお客様は、車掌までお申し出ください。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
リサ:「♪~」
で、リサ、早速クレーンゲームで取った景品の食べ物を開ける。
絵恋:「本当にリサさん、底なしの胃袋ね」
リサ:「ん。BOWの宿命」
愛原:「喜んでいいのかな……」
私は首を傾げた。
と、そろそろ手持ちのスマホのバッテリーが残り少なくなった頃だ。
グリーン車やグランクラスなら、全席にコンセントが付いているが、普通車ではデッキのすぐ前の席以外は、窓側にしかコンセントが無い。
そこで私は、予め充電しておいたリチウムバッテリーで充電を始めた。
リサ:「おっ、先生!賢い!」
愛原:「賢いって、オマエにも買ってあげただろ」
リサ:「忘れて来た……。ずーん……」
愛原:「そうだったのか!で、充電は?」
リサ:「昨夜はホテルから借りた」
そうか。
ホテルによっては、充電コンセントの貸し出しをしている所がある。
愛原:「何だ。それなら、俺のを使うか?」
リサ:「いいの?」
愛原:「いいよいいよ。俺にはこっちのバッテリーがあるから」
私は自分の荷物の中から、充電コンセントを取り出した。
愛原:「窓の下にあるだろ?」
リサ:「サイトー、足邪魔」
絵恋:「あっ、ごめんなさい!」
リサ、その言い方は……。
高橋:「先生、戻りました。……って、何やってんスか?」
喫煙所でタバコを吸っていた元不良カップルが乗って来た。
愛原:「いや、ちょっと、リサが充電コンセント差してるんだよ」
絵恋:「リサさん!そんなに屈んだら、スカート(の中)見えちゃうよ!?」
リサ:「だからサイトー、足邪魔だって」
高橋:「……楽しそうっスね」
愛原:「まあな」
高橋:「あ、先生、ついでにコーヒー買ってきました」
愛原:「おっ、ありがとう」
ホームの売店で買った紙コップ入りのレギュラーコーヒーだった。
しばらくして、ホームから壮大な発車メロディが聞こえてくる。
地元楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団が演奏した“青葉城恋唄”を録音した物である。
〔「15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行き、まもなく発車致します」〕
甲高い客扱い終了ブザーが聞こえて来て、ドアが閉まる。
ホームドアは無いので、車掌は車両の閉扉を確認したら、運転士に発車オーライの合図を送るのだろう。
そう思っていると、列車はインバータの音を響かせてスーッと走り出した。
元々上り本線にいた為に、ポイントを渡ることはない。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“はやぶさ”号、東京行きです。全車両座席指定で、自由席はございません。次は、大宮に止まります。……〕
仙台市内ではまだ徐行運転する列車だが、市外に出るとグングン加速する。
愛原:「あれ?そういえば絵恋さん達の分も東京までで買っちゃったけど、良かった?大宮で降りる?」
絵恋:「いえ。私達も東京のマンションに帰ります。どうせ明日は学校ですから」
愛原:「そうか。それは良かった」
グングン加速している最中、進行方向左手に見えますのは、パチンコ“パラディソ”名取店でございます。
リサ:「おっ、新台入れ替え!リニューアルオープンだって」
愛原:「どこだ!?」
高橋:「どこだどこだ!?」
パール:「どこですか!?」
絵恋:「こらこら!パチンカス3バカ!」
リサ:「もう過ぎ去ったよ」
私や高橋はともかく、パールがメイド服姿のままでパチンコ台の前に座っている姿はシュールである。
しかも、タバコをくわえて(最近は台での禁煙を謳う店が増えてきている)。
何だか最後、楽しい旅となってしまったが、とにかく残念なのは、“トイレの花子さん”の盗まれた遺骨を見つけることができなかったことだ。
〔13番線に、15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車です。……〕
ホームに上がって列車を待っていると、接近放送が鳴り響いた。
17両編成の先頭車なので、ホームも結構先端部分で待つことになる。
〔「13番線、ご注意ください。15時57分、当駅始発、“はやぶさ”30号、東京行きが入線致します。尚、全車指定席となっており、自由席はございません。自由席特急券ではご乗車になれませんので、ご注意ください」〕
編成も車両形式もバラバラな状態で運転される東北新幹線には、まだホームドアは普及していない。
仙台駅にも、それはまだ無かった。
〔「黄色い線の内側を御歩きください。電車が参ります」〕
眩い純白のHIDランプを光らせて、エメラルドグリーンの列車がやってきた。
下り方向からの入線なので、利府の車両基地から回送で来たのだと分かる。
〔お待たせ致しました。13番線に到着の電車は、15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行きです。この電車は……〕
〔「13番線、まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。業務連絡、1030B車掌、準備できましたらドア扱い願います」〕
ドアが開く。
“はやぶさ”に使用されるE5系は、ロングノーズの先頭車が特徴的である。
しかしそういった構造の為、運転室の付いている車両は定員が中間車の半分くらいになってしまった。
そこでJR東日本では、そんな車両をプレミアム化。
グリーン車よりもグレードの高いグランクラスを設けて、定員減少分の運賃・料金を回収しようとした。
さすがに両側の車両でやるのは無理があると思ったか、私達が乗った1号車の部分は普通車である。
尚、ロングノーズ構造のせいで定員が減ったのは秋田新幹線用のE6系も同じ。
こちらは新幹線にしては編成が短い為、上り方向の先頭車(11号車)をグリーン車にし、下り方向の先頭車(17号車)は普通車としている。
先代のE3系より定員が減ったことを受け、それより1両増結して7両編成としている。
絵恋:「リサさん、荷物乗せてあげるね」
リサ:「ん、よろしく」
乗り込んで、指定された席まで行くと、絵恋さんが荷棚に荷物を乗せた。
リサは今や絵恋さんより小柄の為、絵恋さんが気を使ってリサの荷物を乗せてあげたようだ。
リサが中学校に編入した時は、まだ2人とも似たような体型だったのだが、(一時はBOW化しかかったものの)一応は普通の人間である絵恋さんは成長して、今やリサよりも身長が高くなっている。
リサの場合、食べ物から吸収したエネルギーは形態変化や人外的な身体能力に消費されてしまう為、身体の成長に回せないということが判明している。
その後遺症か、人間に戻れた善場主任も確かに小柄な体型である。
〔「ご案内致します。この電車は15時57分発、東北新幹線“はやぶさ”30号、東京行きです。仙台を出ますと、大宮、上野、終点東京の順に止まります。停車駅にご注意ください。また、この電車には自由席はございません。自由席特急券でのご利用はできませんので、ご注意ください。尚、本日、お席にはまだ空きがございます。お手持ちの自由席特急券で、この列車をご利用のお客様は、車掌までお申し出ください。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
リサ:「♪~」
で、リサ、早速クレーンゲームで取った景品の食べ物を開ける。
絵恋:「本当にリサさん、底なしの胃袋ね」
リサ:「ん。BOWの宿命」
愛原:「喜んでいいのかな……」
私は首を傾げた。
と、そろそろ手持ちのスマホのバッテリーが残り少なくなった頃だ。
グリーン車やグランクラスなら、全席にコンセントが付いているが、普通車ではデッキのすぐ前の席以外は、窓側にしかコンセントが無い。
そこで私は、予め充電しておいたリチウムバッテリーで充電を始めた。
リサ:「おっ、先生!賢い!」
愛原:「賢いって、オマエにも買ってあげただろ」
リサ:「忘れて来た……。ずーん……」
愛原:「そうだったのか!で、充電は?」
リサ:「昨夜はホテルから借りた」
そうか。
ホテルによっては、充電コンセントの貸し出しをしている所がある。
愛原:「何だ。それなら、俺のを使うか?」
リサ:「いいの?」
愛原:「いいよいいよ。俺にはこっちのバッテリーがあるから」
私は自分の荷物の中から、充電コンセントを取り出した。
愛原:「窓の下にあるだろ?」
リサ:「サイトー、足邪魔」
絵恋:「あっ、ごめんなさい!」
リサ、その言い方は……。
高橋:「先生、戻りました。……って、何やってんスか?」
喫煙所でタバコを吸っていた元不良カップルが乗って来た。
愛原:「いや、ちょっと、リサが充電コンセント差してるんだよ」
絵恋:「リサさん!そんなに屈んだら、スカート(の中)見えちゃうよ!?」
リサ:「だからサイトー、足邪魔だって」
高橋:「……楽しそうっスね」
愛原:「まあな」
高橋:「あ、先生、ついでにコーヒー買ってきました」
愛原:「おっ、ありがとう」
ホームの売店で買った紙コップ入りのレギュラーコーヒーだった。
しばらくして、ホームから壮大な発車メロディが聞こえてくる。
地元楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団が演奏した“青葉城恋唄”を録音した物である。
〔「15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行き、まもなく発車致します」〕
甲高い客扱い終了ブザーが聞こえて来て、ドアが閉まる。
ホームドアは無いので、車掌は車両の閉扉を確認したら、運転士に発車オーライの合図を送るのだろう。
そう思っていると、列車はインバータの音を響かせてスーッと走り出した。
元々上り本線にいた為に、ポイントを渡ることはない。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“はやぶさ”号、東京行きです。全車両座席指定で、自由席はございません。次は、大宮に止まります。……〕
仙台市内ではまだ徐行運転する列車だが、市外に出るとグングン加速する。
愛原:「あれ?そういえば絵恋さん達の分も東京までで買っちゃったけど、良かった?大宮で降りる?」
絵恋:「いえ。私達も東京のマンションに帰ります。どうせ明日は学校ですから」
愛原:「そうか。それは良かった」
グングン加速している最中、進行方向左手に見えますのは、パチンコ“パラディソ”名取店でございます。
リサ:「おっ、新台入れ替え!リニューアルオープンだって」
愛原:「どこだ!?」
高橋:「どこだどこだ!?」
パール:「どこですか!?」
絵恋:「こらこら!パチンカス3バカ!」
リサ:「もう過ぎ去ったよ」
私や高橋はともかく、パールがメイド服姿のままでパチンコ台の前に座っている姿はシュールである。
しかも、タバコをくわえて(最近は台での禁煙を謳う店が増えてきている)。
何だか最後、楽しい旅となってしまったが、とにかく残念なのは、“トイレの花子さん”の盗まれた遺骨を見つけることができなかったことだ。