報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東北新幹線“やまびこ”30号」

2021-12-16 20:01:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月3日15:50.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅・新幹線上りホーム→東北新幹線1030B列車1号車内]

〔13番線に、15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車と11号車です。……〕

 ホームに上がって列車を待っていると、接近放送が鳴り響いた。
 17両編成の先頭車なので、ホームも結構先端部分で待つことになる。

〔「13番線、ご注意ください。15時57分、当駅始発、“はやぶさ”30号、東京行きが入線致します。尚、全車指定席となっており、自由席はございません。自由席特急券ではご乗車になれませんので、ご注意ください」〕

 編成も車両形式もバラバラな状態で運転される東北新幹線には、まだホームドアは普及していない。
 仙台駅にも、それはまだ無かった。

〔「黄色い線の内側を御歩きください。電車が参ります」〕

 眩い純白のHIDランプを光らせて、エメラルドグリーンの列車がやってきた。
 下り方向からの入線なので、利府の車両基地から回送で来たのだと分かる。

〔お待たせ致しました。13番線に到着の電車は、15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行きです。この電車は……〕
〔「13番線、まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。業務連絡、1030B車掌、準備できましたらドア扱い願います」〕

 ドアが開く。
 “はやぶさ”に使用されるE5系は、ロングノーズの先頭車が特徴的である。
 しかしそういった構造の為、運転室の付いている車両は定員が中間車の半分くらいになってしまった。
 そこでJR東日本では、そんな車両をプレミアム化。
 グリーン車よりもグレードの高いグランクラスを設けて、定員減少分の運賃・料金を回収しようとした。
 さすがに両側の車両でやるのは無理があると思ったか、私達が乗った1号車の部分は普通車である。
 尚、ロングノーズ構造のせいで定員が減ったのは秋田新幹線用のE6系も同じ。
 こちらは新幹線にしては編成が短い為、上り方向の先頭車(11号車)をグリーン車にし、下り方向の先頭車(17号車)は普通車としている。
 先代のE3系より定員が減ったことを受け、それより1両増結して7両編成としている。

 絵恋:「リサさん、荷物乗せてあげるね」
 リサ:「ん、よろしく」

 乗り込んで、指定された席まで行くと、絵恋さんが荷棚に荷物を乗せた。
 リサは今や絵恋さんより小柄の為、絵恋さんが気を使ってリサの荷物を乗せてあげたようだ。
 リサが中学校に編入した時は、まだ2人とも似たような体型だったのだが、(一時はBOW化しかかったものの)一応は普通の人間である絵恋さんは成長して、今やリサよりも身長が高くなっている。
 リサの場合、食べ物から吸収したエネルギーは形態変化や人外的な身体能力に消費されてしまう為、身体の成長に回せないということが判明している。
 その後遺症か、人間に戻れた善場主任も確かに小柄な体型である。

〔「ご案内致します。この電車は15時57分発、東北新幹線“はやぶさ”30号、東京行きです。仙台を出ますと、大宮、上野、終点東京の順に止まります。停車駅にご注意ください。また、この電車には自由席はございません。自由席特急券でのご利用はできませんので、ご注意ください。尚、本日、お席にはまだ空きがございます。お手持ちの自由席特急券で、この列車をご利用のお客様は、車掌までお申し出ください。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 リサ:「♪~」

 で、リサ、早速クレーンゲームで取った景品の食べ物を開ける。

 絵恋:「本当にリサさん、底なしの胃袋ね」
 リサ:「ん。BOWの宿命」
 愛原:「喜んでいいのかな……」

 私は首を傾げた。
 と、そろそろ手持ちのスマホのバッテリーが残り少なくなった頃だ。
 グリーン車やグランクラスなら、全席にコンセントが付いているが、普通車ではデッキのすぐ前の席以外は、窓側にしかコンセントが無い。
 そこで私は、予め充電しておいたリチウムバッテリーで充電を始めた。

 リサ:「おっ、先生!賢い!」
 愛原:「賢いって、オマエにも買ってあげただろ」
 リサ:「忘れて来た……。ずーん……」
 愛原:「そうだったのか!で、充電は?」
 リサ:「昨夜はホテルから借りた」

 そうか。
 ホテルによっては、充電コンセントの貸し出しをしている所がある。

 愛原:「何だ。それなら、俺のを使うか?」
 リサ:「いいの?」
 愛原:「いいよいいよ。俺にはこっちのバッテリーがあるから」

 私は自分の荷物の中から、充電コンセントを取り出した。

 愛原:「窓の下にあるだろ?」
 リサ:「サイトー、足邪魔」
 絵恋:「あっ、ごめんなさい!」

 リサ、その言い方は……。

 高橋:「先生、戻りました。……って、何やってんスか?」

 喫煙所でタバコを吸っていた元不良カップルが乗って来た。

 愛原:「いや、ちょっと、リサが充電コンセント差してるんだよ」
 絵恋:「リサさん!そんなに屈んだら、スカート(の中)見えちゃうよ!?」
 リサ:「だからサイトー、足邪魔だって」
 高橋:「……楽しそうっスね」
 愛原:「まあな」
 高橋:「あ、先生、ついでにコーヒー買ってきました」
 愛原:「おっ、ありがとう」

 ホームの売店で買った紙コップ入りのレギュラーコーヒーだった。
 しばらくして、ホームから壮大な発車メロディが聞こえてくる。
 地元楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団が演奏した“青葉城恋唄”を録音した物である。

〔「15時57分発、“はやぶさ”30号、東京行き、まもなく発車致します」〕

 甲高い客扱い終了ブザーが聞こえて来て、ドアが閉まる。
 ホームドアは無いので、車掌は車両の閉扉を確認したら、運転士に発車オーライの合図を送るのだろう。
 そう思っていると、列車はインバータの音を響かせてスーッと走り出した。
 元々上り本線にいた為に、ポイントを渡ることはない。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“はやぶさ”号、東京行きです。全車両座席指定で、自由席はございません。次は、大宮に止まります。……〕

 仙台市内ではまだ徐行運転する列車だが、市外に出るとグングン加速する。

 愛原:「あれ?そういえば絵恋さん達の分も東京までで買っちゃったけど、良かった?大宮で降りる?」
 絵恋:「いえ。私達も東京のマンションに帰ります。どうせ明日は学校ですから」
 愛原:「そうか。それは良かった」

 グングン加速している最中、進行方向左手に見えますのは、パチンコ“パラディソ”名取店でございます。

 リサ:「おっ、新台入れ替え!リニューアルオープンだって」
 愛原:「どこだ!?」
 高橋:「どこだどこだ!?」
 パール:「どこですか!?」
 絵恋:「こらこら!パチンカス3バカ!」
 リサ:「もう過ぎ去ったよ」

 私や高橋はともかく、パールがメイド服姿のままでパチンコ台の前に座っている姿はシュールである。
 しかも、タバコをくわえて(最近は台での禁煙を謳う店が増えてきている)。
 何だか最後、楽しい旅となってしまったが、とにかく残念なのは、“トイレの花子さん”の盗まれた遺骨を見つけることができなかったことだ。
コメント (3)
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“私立探偵 愛原学” 「昼下がりのJR仙台駅」

2021-12-16 16:07:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月3日15:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅コンコース]

 ハピナ名掛丁というアーケード街にあるゲーセンで昼食後の一時を過ごした私達は、そこでゲットした景品などを手にJR仙台駅に向かった。

 リサ:「兄ちゃん、クレーンゲーム上手いね!」
 絵恋:「パールも上手いのね!」
 高橋:「けっ、褒めたって何も出ねーよ!」
 パール:「お褒めに預かりまして」

 2人の少女は高橋達に取ってもらったクマのぬいぐるみを抱き抱えていたが、さすがに目立つので、ビニールバッグを貰ってそこに入れた。
 しかし、リサもリサでなかなかクレーンゲームが上手い。
 もっともそれは、お菓子のクレーンゲーム限定だが!
 それ以外はてんでダメなので、高橋に取ってもらった。

 高橋:「何でオマエ、食べ物が絡むと変わるんだ?」
 リサ:「特技」
 絵恋:「リサさん、ステキ!カッコいい!」
 リサ:「むふー」

 クレーンゲームの中に、景品のお菓子が山積みになっている筐体があるだろう?
 あれだよ、あれ。
 あれだけリサは上手い。
 また、あのゲーセンにはお菓子だけでなく、ビーフジャーキーなどのおつまみが景品の筐体もあって、それもリサはゲットした。
 きっと、新幹線の中で食べるつもりだろう。
 現に、取ってすぐに食べようとしていたのを私が阻止した。

 絵恋:「まあ、それはそれとして……。お土産買って行っていいですか?」
 愛原:「ああ、そうするといい。リサは……うん、飲み物だけでいいかな?」
 リサ:「クレーンゲームには無かったお菓子も食べたい」
 愛原:「ああ、そう……」

 私は少し頭を抱えた。

 愛原:「ラチ内コンコースで全部買えるからいいな?」
 絵恋:「らち?拉致されるんですか!?り、リサさんになら拉致られてもいいかも……」
 リサ:「で、線路の上に放置する」
 愛原:「ゴメン。キミ達のお前で鉄道用語使うべきではなかった」
 パール:「御嬢様、ラチとは改札のこと。つまり、愛原先生は『改札内コンコース』と仰ったのです」
 絵恋:「そ、そうだったの」
 愛原:「パール、詳しいな?」
 パール:「御嬢様に知識を提供するのもメイドの務めです」
 高橋:「さっき、こっそりググッてなかったか?」

 ペデストリアンデッキから駅2階に入る。
 そこからエスカレーターに乗って3階に上がった。
 そして、新幹線改札口の前で立ち止まる。

 愛原:「キップは1人ずつ持とう」

 私が乗車券と特急券が1枚になっているキップを配ろうとした。

 絵恋:「先生!私はリサさんの隣でお願いします!」
 リサ:「私は先生の隣」
 パール:「私はマサの隣でお願い致します」
 高橋:「いや、パール!サバイバルナイフ取り出して頼むことを『お願い』とは言わねぇ!」
 愛原:「う、うん。ナイスツッコミ」

 正確には『恐喝』または『脅迫』だろう。
 いずれにせよ、無言の恫喝と言える。

 愛原:「そうなると、こういう席順になる」

 絵恋さん『A席』、リサ『B席』、私が『C席』、高橋が『D席』でパールが『E席』と。
 3人席のある新幹線普通車ならではの席順だな。

 愛原:「それじゃ、早速中へ入ろう」

 キップを自動改札機に通す。
 新幹線用の改札機ということもあって、在来線のそれより一回り大きなサイズである。
 東海道新幹線なら青色(東海道新幹線の色。在来線だとJR東海のオレンジになる)だろうが、JR東日本だと黄緑色(山手線の色)になる。

 高橋:「空港みたいな金属探知機が無くて良かったっスね」
 愛原:「俺達の銃に関しては、許可済みだから大丈夫だよ。もちろん、ちゃんと許可証の提示とか、申請書の提出とかは必要だけどな」

 だから飛行機に乗る時は、例え国内線であっても面倒だったりする。
 新幹線に関しても、手荷物検査の導入の是非が問われているが……。

 愛原:「まだ少し時間があるから、土産とか見て来るといい」
 リサ:「はーい」

 ラチ内コンコースには、他にもJR東日本系の書店(BOOK EXPRESS)がある。
 高橋とパールは、ここで立ち読み。
 私はリサ達の買い物に付き合うか。

 愛原:「リサのお土産って何だ?」
 リサ:「これ」

 リサが手に取ったのは仙台牛タン。

 愛原:「自分用かいw」
 リサ:「ダメ?」
 愛原:「ダメじゃないけど、もっとこう……学校の友達用とかさ……」
 リサ:「あれよりはマシだと思う」
 絵恋:「小島にはこのお菓子でいいわね。淀橋は甘い物が好きじゃないから、このビターチョコにして……。あと、山田には……」
 愛原:「何で?」
 リサ:「取り巻き確保用のバラマキ」
 愛原:「そういうこと言わない!」

 確かに私が学生の時にも、クラス中に土産を配って回るヤツとかいたけどさ……。
 結局リサはリサで、リサの取り巻き……もとい、比較的仲良く付き合っているコ達に買って行くことにしたようだ。

 リサ:「私のウィルス感染寄生虫を少し混ぜておけば、サイトー以上の取り巻きの出来上がり……」
 愛原:「おい、聞こえてるぞ!BOW!ラスボス!リサ・トレヴァー『2番』!」

 リサの監視役に、令和版スケバン刑事が必要なのかもしれない。

 愛原:「高橋とパール。買う本見つかったか?」
 高橋:「俺はこの『走り屋天国!セコハン市場!!』で」
 愛原:「オマエ、走り屋卒業したんじゃねーのかよ!……パールは?」
 パール:「私はマサと違いまして、メイドの道を極めるべく、こういった本で勉強しようかと……」
 愛原:「『Theメイド道!ヴィクトリア期のメイド解全!!』……こんな本あるんだ?」
 高橋:「先生、騙されちゃいけません」

 高橋はその本に挟まれた、別の本を3冊抜き出した。

 愛原:「『令和新装版!完全他殺マニュアル』『サバイバルナイフの全て』『元死刑囚が語る!完全犯罪マニュアル!』」
 パール:「ちっ、余計なことを……!」
 高橋:「先生に隠し事は禁止だぜ!あぁ?」

 こんな本、普通は売ってない。
 もちろん、フィクションです。
 ていうか、最後の本にあっては、絶対インチキだと思う。
 完全犯罪できなかったから警察に逮捕され、死刑宣告まで言い渡されているのだから。

 愛原:「アタマ痛くなってきた。さっさと買ったらホームに行くぞ」
 高橋:「うっス!」
 パール:「かしこまりました」
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